長くなってしまいました。三分割といたします。
■岩堀様
きのうは失礼しました。けさはとりたてて用事もなかったのですが、それでもなんやかんや雑用に追われてこんな時間になってしまいました。さっそく始めます。
まず「司馬遼太郎の推理小説観」について記します。といっても、瀬戸川猛資の『夢想の研究』からの孫引きになりますが。
「豚と薔薇」への言及はこの本の「5 ビデオ雑記帳」にあります。ここではハーバート・ロス監督の「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」(1976)という映画が紹介されていて、そのなかで司馬作品とその「あとがき」が引き合いに出されています。
「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」から司馬遼太郎の「豚と薔薇」に話題を転じて、世の中には当の作者から嫌われる作品というものが存在するのだ、と瀬戸川さん(姓だけを呼び捨てにするのはいかにも無礼な感じがしますので、死者ではあっても「瀬戸川さん」と記します)は指摘します。そしてそうした作品の実例を挙げ、「どういう理由かは知らぬが、そこには厭うべき何かが存在するのである」としたあとで、
《が、この小説の司馬遼太郎の場合は単純明快。それがミステリだからである。〈あとがき〉には次のように書かれている。》
と司馬遼太郎の「あとがき」が引用されます。それを引用します、というか、孫引きします。
《「豚と薔薇」は、「兜卒天の巡礼」とはちがい、多少読者を意識する時期になってから、書いた。べつに動機はない。推理小説がはやっているからお前も書け、ということで、誌面を与えられたのである。
私は、推理小説にはほとんど興味をもっておらず、才能もなく、知識もない。書けといわれて、ようやく書いた。むろん、推理小説というものはこれ一作で、生涯書くまいとおもっている。》
ここで「次の数行、つくづくと司馬遼太郎の観察眼の鋭さを感じさせる」といった瀬戸川さんの文章が挿入され、ふたたび「あとがき」の引用。
《私は、推理小説に登場する探偵役を、決して好きではない。他人の秘事を、なぜあれほどの執拗さであばきたてねばならないのか、その情熱の根源がわからない。それらの探偵たちの変質的な詮索癖こそ、小説のテーマであり、もしくは、精神病理学の研究対象ではないかとさえおもっている。》
そして瀬戸川さんはこうつづけます。
《ミステリ・ファンの多くは自覚していないけれども、世にミステリ嫌いが存在する理由はこの点にあるのではないだろうか。
探偵たちよ、お前たちは何故そんなに他人の謎や秘密を嗅ぎまわるのだ? そんなことばかりしているお前たちの心の中にこそ謎がひそんでいるのではないか?──そういうことを考えた人が、司馬遼太郎以外にも海の向こうにいたのである。》
つまりここで話題になっているのは「ミステリ嫌い」、より端的にいえば「探偵嫌い」です。もしかしたら本人にも自覚されていないかもしれない「厭うべき何か」のせいで、人があるものを、あることを、あるいはある人を嫌ってしまうことがある、ということです。
ここで話は「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」に戻るわけですが、私はたぶんこの映画を観ているはずです。観ているはずなのですが、ほとんど記憶がありません。瀬戸川さんの紹介を写しておきます。
《映画「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」は、名探偵シャーロック・ホームズ(ニコール・ウィリアムスン)が少壮気鋭の異端の医師ジークムント・フロイト(アラン・アーキン)に精神分析で心の中を探偵される物語である。「ホームズさん、あなたはどうしてモリアーティ教授を敵視するのですか? あの老人はあなたの家庭教師だったのですよ。そこに何か秘密があるんじゃありませんか? そもそも、あなたはなぜ探偵になったのですか?」……かくて、ホームズの幼年時の記憶が呼び覚まされ、ショッキングな過去の秘密が明かされる。》
と書き写していて、ひとつの映像的記憶が浮かんできました。それは、ホームズ坊やの部屋を目指して階段を昇ってくるモリアーティ青年の姿、であるように思われるのですが、この映画にはそんなシーンがあったのでしょうか。
小林さん、大阪圭吉、やはり、基本文献としては、戦前の雑誌に集中していますね。「講談雑誌」で、表紙がとれていたものに、大阪さんの作品が掲載されていましたが、通過しました。あとで、連絡したら、売り切れ。
見たときが買い!、ですね。
中さん、すでに、やよいさんがかかれておられますが、他には、集英社文庫の、阿刀田高・選、日本ペンクラブ編『恐怖急行』はどうでしょうか。1985.4.25 1刷、「二廃人」(廃は旧漢字)、p55−73、が収録。ご存知と思いますが。
芦辺さん、雑誌「別冊 少年朝日」収録の、少年ものはテキストとして揃われましたか(少年ものの、処女作か?、あまり知りませんので、申し訳ありません)。
ご存知のように、そこでは、「かみつ きょうすけ」と、ルビがふられていました。
今年中に出す予定の光文社文庫〈幻の名作〉の『少年探偵王』では、目玉の一つに高木彬光氏の神津恭介ジュヴナイルを再録したいと考えています。今のところ私の手元にテキストがそろい、読み得たのは:
『吸血魔』(別題・消えた魔人)
『死神博士』
『白蝋の鬼』
『黒衣の魔女』
『オペラの怪人』
ですが、『オペラ――』がちょっと筋がゴタつくのを除くと、いずれも兄たりがたく弟たりがたし。こちらのページならお読みになった方もおられるでしょうし、いずれを採るべきか、ご意見いただければ幸いです。
少し予告しましたが、創元推理文庫・大阪圭吉傑作選『とむらい機関車』『銀座幽霊』の刊行に併せ、「大阪圭吉作品リスト」の、再整備を行いたいと思っています。
まだまだ、未見、未確認の作品が多数あります。
皆様のご協力により、完成に近づけて行ければ、と考えています。ご協力をお願い致します。
作品リストの最新バージョンを、上のURLの場所にアップしました。
未見、未確認の雑誌には、その旨明記しました。
未見、未確認の雑誌の情報など、お気づきの点は、どんな事でも、教えて下さい。
特に以下情報を求めています。
持っている方はもちろん、所蔵している機関などの情報を、教えて下さい。
◇ 「ユーモアクラブ」「奇譚」「讀切講談」「戦線文庫」「にっぽん」については、ほとんど未見です。
◇ 「近代生活」「少女の友」「新天地」「新国民」の該当号も未見です。
「近代生活」昭和13年2月号は、何年か前に、愛知県の古書店の目録に掲載されたことがあります。
◇ 會津信吾氏『日本科学小説年表』によると、雑誌「くろがね叢書」昭和19年12月号に、「海底諜報局」が再録された、とあります。
◇ おそらく満洲で発行された雑誌「ますらお」「満洲良男」について、ご存知ありませんか?
◇ 第8著書『誓ひの魚雷』については、本当に発行されたかどうかを、確認できていません。
古書目録で見かけた、などの情報でも構いません。情報を求めています。
小林文庫です。
古本まゆ さん
> このメモは、工事中のHPを立ち上げた時には、そこで公開したいとも思っているのですが、問題はありませんでしょうか?
私が答えて良いのか疑問は有りますが、問題はないと思います。
もちろん、情報源や典拠については触れておく必要はありますが。
ネット上に、ミステリーに関する情報が充実するのは、大歓迎です。
HPの公開も期待しています。
私のブックマークには、もう古本まゆさんのHPのURLがマークしてあります。(ホント!)
中 相作 さん
『澪標の旅人 馬場孤蝶の記録』の該当個所は一応読んだのですが、その時は「小説的虚構」のように感じました。
ホントのところどうなのでしょうか?
「夢野久作全集」は、私も所有していたので確認してみました、乱歩の文章は見つかりませんでした。
古本まゆさんのおっしゃる通り、久作の文章以外は、収録されていないですね。
やっぱり「月報」なんでしょうか?
巽昌章 さん
りえぞん さん
掲示板にご登場、情報提供、ありがとうございます。
ドイツ語の文献がサッと出てくるとは、素晴らしい、感嘆するばかりです。
これからも、いろいろ教えて下さい。
>中さま
丸谷才一編アンソロジーですが、文春文庫「探偵たちよ スパイたちよ」には「ヴァン・ダイン論その他」(江戸川乱歩/小林秀雄)、「江戸川乱歩の三つのリスト」が収録されています。発行日は1991年4月10日 第1刷です。
中 相作様
>まことに勝手ながらあすの朝、あらためて投稿して…
いえいえ、どうぞごゆっくり…。
私の書きこみ、変換ミスあり、お恥ずかしいです。
会社では、部下の文章などみて「しっかりしろ…」と言っているのに
自分の文章は自分で見直しても意外と気付かないんですね。
司馬遼太郎のエッセイで 専門化→専門家 でした
中相作さま
この本は、4日前の東京出張の時に見ました。もう少し早く教えていただければ、必要なデータを調べることができたのですが・・・。古本は状態によって値段が全然違いますが、並以上の状態で、東京創元社の「貼雑年譜」を買うのと同水準か、それ以上の出費の覚悟が必要かと思われます。
ところで、
> 夢野久作全集 第八巻
> 【発行日】昭和十一年六月十五日発行
> 【発行所】黒白書房
> 【著】夢野久作
> 【収録】「押絵の奇蹟」読後感
発行年などは間違いないのですが、本には(他の巻も含めて)夢野久作の作品しか収録されていないようで、肝心の乱歩の文章のみつかりませんでした。当店のデータでは月報や附録の存在は確認できていないのですが、もし乱歩の文章が収録されているとすると、そのような形しか考えられないので、当店としてはちょっとお手上げの状況です。
「山羊鬚編集長」の方に乱歩の文章が付いていることは、当店のデータベースにも入っております(直接の確認はできておりません)。
中さん、
『澪標の旅人 馬場孤蝶の記録』(本の泉社)について、p50から52まで、読んでいて、当惑してきます。
とくに、昭和14年、村上タキが孤蝶に紹介されて乱歩を訪ねたところには、驚きました。
もし、本当ならば、乱歩は何かメモを残しているのではないか、と考えてしまいます。村上タキが残していたとされるメモがあるならば、それを紹介してもらいたい、と思いました。
奈良さん、購入しても、私は積読していました本の一冊です。読んでいないことが知られてきます。
探偵小説社からは、手元には2冊あります。
・『探偵小説 恐怖の一夜』江川蘭平、昭和26年10月5日発行
・『探偵小説 失われた花嫁』江川蘭平、昭和26年10月5日発行
いずれも、場所として、奉天市がでてきます。
奈良さんが書かれた、あの流れには気付きませんでした。
■古本まゆ様
ありがとうございます。例によって商品をお調べいただくのはじつに恐縮なのですが、次のデータをご確認いただきたく、よろしくお願いいたします。
夢野久作全集 第八巻
【発行日】昭和十一年六月十五日発行
【発行所】黒白書房
【著】夢野久作
【収録】「押絵の奇蹟」読後感
それから、これは『江戸川乱歩著書目録』に直接関係することではないのですが、この第八巻の乱歩の文章は、なんといいますか巻末解説みたいな形で収録されているのでしょうか。あるいは夢野久作論集成みたいなページがあって、そのなかの一篇ということなのでしょうか。
ついでにもうひとつ、春秋社の『夢野久作傑作集(一) 山羊鬚編輯長』は、これはもうめったにお目にかかれない古書であると認識すべき一冊なのでしょうか。
■iizuka様
『奇妙なはなし』、必要なデータが完璧にわかりました。なんだかあっちこっちお探しいただいたみたいで、たいへん申し訳なく思います。ありがとうございました。
■岩堀様
ご丁寧なご返事をたまわり、お礼を申しあげます。さっそくお答えいたすべくキーボードを叩き始めたのですが、あいにく時間切れになってしまいました。世間では三連休の中日だと申しますのに、きょうは朝から雑用が立て込んでおりまして、どうにも致し方ありません(亡父の墓参はきのう済ませたのですが)。まことに勝手ながらあすの朝、あらためて投稿して私見を申し述べたいと思います。どうも相済みません。ご寛恕ください。
●謎のアンソロジー
時間がないと申しておきながら、ちょっと気になることが出てきましたので、とりいそぎお訊きいたします。
岩堀さんへのお答えを書くために瀬戸川猛資の(私は基本的に死者に敬称は不要だと考えております)『夢想の研究』(創元ライブラリ)を眺めていたとき、あることが気になってきました。
この文庫本の解説は丸谷才一さん(たとえ嫌いな作家でも生者なのですから敬称はつけます)がお書きなのですが、本を開いてその解説に眼をとめた私は、丸谷さんが編んだミステリー関係のアンソロジーに乱歩作品が収録されていたのではないか、そんな話を誰かから聞いたことがあるのではないか、とふと思ってしまった次第です。
そんなアンソロジー、どなたかご存じないでしょうか。
巽様、りえぞん様、
ケンプナーとブーシェについての情報ありがとうございます。お陰様で長年の懸案が解決しました。さすがここの掲示板はちがいますね。巽さんのおっしゃる通りに、平田元吉の本が乱歩の種本だとおもいます。
ウジェーヌ・ブーシェの略歴については、ファーストネームとつづりさえ判れば、フランスの友人に問いあわせてみればどうにかなるのでは、と思います。
ところで、続けざまで御迷惑でしょうが、もうすこしおつきあいねがえませんでしょうか。
「孤島の鬼」で言及される、「犀のような鼠」という、鼠のしっぽを鼠の口の上に移植に成功したアルゼリアという人物について御存じでしたらお教え下さい。
また大河原元侯爵の蔵書である「探偵術」の著者で元警視庁捜査一課長の恒岡恒の生没年は御存じ無いでしょうか。
中 相作様
>そうはおっしゃられましても、「偏執的な詮索癖」はやはり気色の悪いもの
>だと私には思われます。この問題を司馬遼太郎の推理小説観にからめて話題に
>してゆくと結構面白>いことになるのではないかと予想される次第ですが、
>私にはちょっと手が廻りかねます。
司馬遼太郎は、「豚と薔薇」のあとがきで、「推理小説の探偵役は好きでない、
他人の秘事をあばきたてるその情熱の根源がわからない」という意味の事を
書いていて、そこに「偏執的な詮索癖」という表現を使っています。要は、
いい意味で使っていないのですが、私は、ある対象を徹底的に調べる「情熱」に
は、必ず「偏執的な「詮索癖」を伴うものだと思います(「偏執的」というのが
微妙ですが、程度の問題でしょう)。したがって、この言葉は、必ずしも悪い意
味ではないと思います。
司馬遼太郎のエッセイに「ある情熱」というのがありますが、これは文倉平次郎
という人物について書かれたものです。この人は、明治中期、サンフランシスコ
で偶然咸臨丸乗組員の墓を発見したことから、それ以後生涯を賭けて咸臨丸の事
を調べ上げ、「幕末軍艦咸臨丸」という本を残した人ですが、司馬遼太郎は、
「…これほど精緻な…名著が、専門化でもなんでもないひとによって書かれ
たということについて、人間の情熱というもののふしぎさを、書棚でこの本
の背文字を見るたびに考えこまされる。」と書いています。(中公文庫「幕末
軍艦咸臨丸」(上・下)‘93発行、上巻末にも本エッセイ収録あり)
対象がなんであれ、「人間の不思議な情熱」というものは根元的には皆同じ
ではないだろうかと私は思います。ある人間を徹底的に調べるというのも一つ
の情熱でしょうし、これは推理小説で犯人を追及する、あるいは謎を解き明かし
たいという事にもつながるものだと思います(*)。又、中さん始め多くの人の
「…書誌」作成というのも「一つの情熱」でしょう。上のエッセイのような文章
を書いている司馬遼太郎が、推理小説については冒頭のような事をいっているの
が、私には不思議ですね、司馬さんの偏見ではないでしょうか(^o^)。
* 松本清張の芥川賞受賞作「ある『小倉日記』伝」は、小倉時代の森鴎外を
調べる人間の生涯を書いていますが、この作品に対する坂口安吾の評は、
「推理作家 松本清張」を予言したものとして有名です。又、森鴎外の史伝
物の代表作「渋江抽斎」には、渋江抽斎という殆ど無名の人物の事を調べ
て回る鴎外自身の姿が出てきますが、これなどはまさに犯人の手がかりを
求めて歩きまわる探偵を思わせます。
我ながらつたない文章で、自分の考えている事を充分書けてないというもど
かしさを感じていますが、意のあるところをよろしくお汲み取り下さいませ。
中相作様
ちょっと前の書き込みにあった『奇妙なはなし』が出てきました。
奇妙なはなし アンソロジー 人間の情景6
【発行日】1993年2月10日 第1刷
【発行所】文藝春秋/文春文庫
【編者】文藝春秋
【収録】防空壕
では。
中相作さま
黒白の夢野久作全集、既に売約済みですが、1セット手元にあります。今でしたら、なんなりとお調べいたします。
■桜様
江戸川乱歩賞全集のお知らせ、ありがとうございました。ここまでお教えいただければ、あとはお手数をおかけしなくてもいくらでも調べられます。
それから、以前ご教示いただきました『澪標の旅人 馬場孤蝶の記録』(本の泉社)、ようやく入手してきのう読み始めたのですが、これは評伝なのか小説なのか、判断に困っております。たとえば昭和14年、村上タキが孤蝶に紹介されて乱歩を訪ねたことになっているのですが、これは小説的虚構なのか、それとも(タキが残していたとされるメモに基づいた)評伝的事実なのか、いったいどちらだとお考えでしょうか。こうした評伝とも小説ともつかぬ曖昧な書き方を、私はどうも好きになれませんが。
■りえぞん様
どうもありがとうございます。人様の掲示板で自分のホームページの開設二周年を祝福していただくのも妙な話で、とても面映ゆい気がいたします。開設二周年記念大宴会スペシャルと申しましても、単に名張の飲み屋でひたすら酔いつぶれるというだけの話でして、遠方からわざわざ馳せ参じていただくようなものではまったくありません。またどこかでお会いしたいと思います。
■巽昌章様
ご無沙汰しております。こちらの掲示板、ずっとご覧でしたか。いやお恥ずかしい。探偵小説にも古書にも闇夜のように暗い私はご常連の博識に圧倒されてばかりで、仕方ありませんから意味もなく拙い芸に走っては顰蹙を買っております。いやお恥ずかしい。
平田元吉の『早まった埋葬』は、りえぞんさんがご推察のとおり、乱歩の種本であった可能性が高いと思います。勉強になりました。お礼を申しあげます。
●夢野久作二点
小栗虫太郎が片づきましたので、ふと思いついて夢野久作に移ります。下記二点、いずれも戦前の本なのですが、ご所蔵の方はいらっしゃるでしょうか。
夢野久作全集 第八巻
昭和十一年六月十五日 黒白書房
山羊鬚編輯長 夢野久作傑作集(一)
昭和十二年四月二十日 春秋社
よろしくお願いいたします。
今日は、頼まれて、知り合いの庭掃除に行きますので、時間がありません。話題を調べる時間がありませんでした。
巽さん、別名義の(としていいのですね)、短編集を入手以来、隠れたファンです。新しい短編を読む機会がきますことを望んでいます。
奈良さん、下にかかれた本、一部手元にありますので、みてみます。探偵小説社からは何点かでていますね。これはすごい。江川蘭平ですか・・・。
昨日ここに書きました、『石沢英太郎追悼集』中村光至編、1988、入手。博多の古書店の主人の原稿あり。石沢さんのサイン本はここで入手していました。
ほかの所で、『爆風圏』海渡英祐、昭和36.12.15発行。サイン有り。カバ付のため入手。以前、カバなしのを手に入れていたので、カバーコピーして、本棚におさめる。
巽昌章様
はじめまして。「メフィスト」の連載、毎回楽しみにして読んでおります。
しかしそのような本が日本でも出ていたとは! 時期的に見て、それこそが乱歩の種本かもしれませんね。
ところで"Denkschrift"(正式タイトルはDenkschrift über die Notwendigkeit einer gesetzlichen Einführung von Leichenhäusern 「霊安室の法的導入の必要性に関する陳情書」)はフリードリケの主著の一つなので、お手持ちの本のG.ケンプナーという標記は誤植か何かかと思います。フリードリケ・ケンプナーの簡単な経歴と主著一覧はこのサイトにあります。
http://www.gutenberg.aol.de/autoren/kempner.htm
またハルトマンの本は最初から英語で書かれているようです。
ではでは。奥様にもよろしく
昭和26年10月5日に探偵小説社というところから出た「恐怖の一夜」の作者名は江川蘭平となっていて、吉良運平がいたウイ−ンに行く件があります。もうなにがなんだか判りません。
桜様、私も「探偵小説談林」を読んで吉良運平には大変興味を持ちました。
探偵作家土曜会の講演や“ぷろふぃる”4号の新作家紹介の内容は手元では判らないので知りたいものです。
同じ未来社からシュニッラ−「愛欲の輪舞」がA6版で出ている(昭和21年11月25日)のですがこの訳者の名は末吉寛です。これも同じ人物かと思いたくなって来ます。それと“ぷろふいる”5号の[三人の作家]で紹介されたニ−ル・メイン(デンマ−ク)はオリエント書房「遺書の誓い」の次に刊行告知された「海濱ホテルの殺人」の作者でした。
皆様、初めて書きこませていただきます。いつも驚くべき博識にただただ圧倒されつつ楽しませていただいております。
さて、少し前に話題になっておりました、ハルトマン、ケンプナー、ブーシェにつきまして、いくらかご参考になるかもしれない本がありましたのでご紹介します。
『早まった埋葬』平田元吉著(京都 弘文堂書店刊 大正10年7月5日)
これは表題通り、生きたまま埋葬された事例を紹介し、それを防止する必要を世間に訴えるといった内容の本ですが、その冒頭に参考書目録がついていて、そこに、フランツ・ハルトマン、E・ブーシェ、ケンプナーの著書が挙げられているのです。ただし、ケンプナーはG・Kenpnerとなっています。ブーシェの著書名はLes Signes de la Mort、ハルトマンはBuried Alive、ケンプナーはDenkshriftです。ハルトマンは英訳版なのでしょうか。
桜さま
> 古本まゆさん、『白蟻』、複雑ですね。
今回皆さんから寄せられたデータは、複雑ですがなかなか面白いですね。古本屋にとって商品の本はいずれ手元を離れますし、実際店を運営していると、ここの本についての詳しい探索やデータを残しておくほどの時間もとれませんが、『白蟻』の三つの版についてのデータはメモ書きにして残しておきたいと思います。
このメモは、工事中のHPを立ち上げた時には、そこで公開したいとも思っているのですが、問題はありませんでしょうか?
閑話休題
今週出張の東京の市には、乱歩の「人間豹」・小栗の「紅殻駱駝の秘密」の超美本や、大阪圭吉の第一単行本なども出品されていて、眼の保養にはなったのですが、入札がこうした市の目玉商品中心になった為、全滅の可能性が高いです(爆)。
>平山雄一様
お役に立ててなによりです。えーそれで
ケンプナーのフルネームはフリーデリケ・ケンプナー(Friederike Kempner)です。彼女については池内紀が「シレジアの白鳥」というエッセイを書いてます(村松書館の同題の単行本(1978)に収録)。それによると彼女の生涯は
>フリーデリケ・ケンプナーは1836年6月、シレジアのポーゼンに生まれた。その
>夢淡き波乱の一生の生涯はいまは説かない。なに、ひとことでいえばいえもする
>のだ。すなわち、われらのフリーデリケは生涯を生娘で通し、そして詩を書い
>た。
とえらくアッサリとまとめられていますが(それにしても「生涯を生娘で通し」なんてなぜ分かるのでしょうか?)、乱歩や不木に影響を与えた本の著者ということは忘れられてはならないと思います。
ケンプナーと「早すぎた埋葬」の関連については、このサイトが少し触れてます。
http://www.google.com/search?q=cache:4VpEJz-AHYY:www.schultenhof-mettingen.de/barbkra.htm+Kempner+Scheintot&hl=ja
ブーシェ(たぶん「ブーシュ」が正しいと思いますが)は、このサイトとか
http://www.google.com/search?q=cache:IfdzgmxHGJA:www.bium.univ-paris5.fr/ishm/eng/v0202.htm+Bouchut+Mort&hl=ja
見る限りでは、フルネームはウジェーヌ・ブーシュ(Eugène Bouchut)であるようです。
>中 相作様
どうもご無沙汰してます。
このたびは「名張人外境」開設2周年おめでとうございます。今回は残念ながら馳せ参ずることはできませんが、遠方よりお祝いをひとことのべさせていただきます。
中さん、江戸川乱歩賞全集の初期の巻には、乱歩の文章が再録されています。しかし、以前のを本棚の前に積み重ねられた文庫の中から、探し出す自信がないので、返事を保留にしていました。
森下さん、書誌、とくれば、反応して、購入したくなります。また、追悼集も反応してしまいます。
先頃、石沢英太郎さんのも(中村光至編)、古書目録にでていました。
小林さん、新たな、大阪圭吉のリスト公開、待ち望みます。また、文庫、二冊分、待ち遠しいですね。
■奈良さま、桜さま
貴重な情報をありがとうございます。
奈良さまの「戦後推理小説叢書目録」を楽しみにしています。
■小林オーナーさま、桜さま
もうずいぶん前に作成した印刷版『マンハント総目次・索引』のことを言われると
面映ゆいです。あの書誌にはとんでもない大ポカがありまして、申し訳ない
有り様となっております。(作家別索引の都筑道夫の項です)
WEB版も現在、多少の修正をかけている最中です。しかし、WEB版の書誌って、
これで完成って時期がないのですね。(泣)
■小林オーナーさま
>『宝石作品総目録』は借用できる様になったでしょうか?
>もし、まだでしたら、お貸しできます。
>「ヒッチコック・マガジン総目録」や「ミステリマガジン・インデックス」も、お貸しできます。
助かります。
実はミステリマガジンの目録の作成を計画していたのですが、すでにネットに
立派なものがあることを知って、「宝石」をやってみようと思った次第。
しかし、他人の書誌は楽しみですが、自分で作成するとなると、気が重い。(笑)
さっきこちらの掲示板を拝見しましたおり、「もっと謙虚になれよな。」というタイトルの投稿がありました。拝読していきなりカチンと来た私は、それを書き込んだ方に対して「謙虚になれとは笑止千万。謙虚になるべきはそこもとではござらぬか」みたいな啖呵をたったかたったか書き連ね、さあ投稿しようと思って再度こちらにお邪魔いたしましたところ、当該の投稿はすでに削除されたあとでした。ですからちょっと残念な気もするのですが、啖呵の部分は割愛して投稿いたします。
■やよい様
『日本語大博物館』のお知らせ、ありがとうございます。なさけないことに当地の本屋さんには、ちくま文庫の新刊はあまり廻ってきません。なんてとこに住んでるんでしょうか私は。刊行当初には見当たらなくても、お彼岸の幽霊みたいに時季遅れで廻ってくることはあるのですが。とりあえず本屋さんを覗いてみることにいたします。
この紀田さんのご本は、1994年にジャストシステムから出た単行本の文庫化だと思います。単行本は図版をふんだんに使った贅沢な造りでしたが、文庫本では図版の扱いがどうなっているのか、そのあたりにも興味を覚えます。
■日下三蔵様
きょうは江戸川乱歩賞の授賞式と聞き及びます。わが名張市からも、市立図書館の館長と市長部局の職員一名が出席するはずです。日下さんもご臨席でしょうか。もしもそうでしたら、名張市の田舎者二人、何かのおりにはよろしくお引き回しください。
乱歩賞といいますと先日、テレビ番組「真珠の小箱」の取材で名張市立図書館においでいただいた有栖川有栖さんと、撮影の合間にお話をしておりましたら、
「乱歩賞が決まりましたね」と有栖川さん。
「はい」と私。「乱歩賞の受賞作品は全部お読みになってるんですか」
「ええ」
「それはやっぱり職業倫理みたいなもので」
「いえ。なんていうか、ああ、今年も乱歩賞の季節だな、みたいな」
「ははあ」
いまや本邦文芸出版界の秋の風物詩となっております江戸川乱歩賞ですが、私が拝読した最新の受賞作は「天女の末裔」という作品です。一般の読者ならそれでもいいのですが、名張市立図書館の嘱託としては、これでは怠慢の謗りを免れないと思います。私はとっても怠慢なんです。怠慢ですから講談社文庫の江戸川乱歩賞全集(これも当地の書店では見かけたことがないように思うのですが)も、そういうのが出ていることはむろん知っておりましたが、せこいことして稼ぎたがるのね、みたいな印象を抱いただけでいまに至っております。
ところが、桜さんと日下さんのやりとりを拝読していて、卒然として気がかりを覚えました。それは、この江戸川乱歩賞全集の初期の巻には、もしかしたら乱歩の(というか、乱歩も含めた選考委員の)文章が再録されているのではないか、という気がかりです。怠慢を絵に描いたようなお尋ねで申し訳ないのですが、いかがでしょうか。
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