気がついたことあれこれ

逆転現象の例

状態の遷移と認定結果が符合しない、、、軽くなったのに認定は重度化、重くなったのに軽度化、、以前から再三指摘されてきた逆転現象は、新制度化でも健在です。このあたりの事情は、土肥先生のサイト「介護保険制度ウォッチング」で早くから指摘されていたところです。このサイトは必見ですゾ!

介護認定審査会委員テキストの事例

ご存知、、、とも限りませんが、認定審査員テキストで例示されているケースです。多少は調べて選んだ(作った)のか、一項目での逆転はありませんが、二項目ではこのとおりです。

もう少し詳しく見てみましょう。この事例での逆転は「状態を重くすると判定が軽くなるもの」に限られます。そして、実際の逆転は、間接生活介助、機能訓練、医療関連の3つの樹形図で生じています。

そこで、A.I.モードの設定を変更して再実行します。変化は「重度化」のままとし、変化させる項目を「1項目」、表示パターンを「すべて」にしてGO(結果はこちら)。一項目の重度化で、基準時間が短くなるパターンを抜き出すと、こうなります。

                          清潔      BPSD 機能 医療
基準時間   食事 排泄 移動 保持 間接 関連 訓練 関連 要介護度等
 40.8+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  6.1  4.2 要介護1
 37.8+ 0.0  3.4  2.0  2.0  3.0 10.9  6.2  6.1  4.2 要介護1 1-2.拘縮(膝関節) 0→1
 35.4+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0  7.7  6.2  6.1  2.0 要介護1 2-12.外出頻度 0→2
 39.5+ 0.0  3.4  2.0  2.0  7.6  8.0  6.2  6.1  4.2 要介護1 3-1.意思の伝達 0→1
 39.5+ 0.0  3.4  2.0  2.0  7.6  8.0  6.2  6.1  4.2 要介護1 3-1.意思の伝達 0→2
 39.5+ 0.0  3.4  2.0  2.0  7.6  8.0  6.2  6.1  4.2 要介護1 3-1.意思の伝達 0→3
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-1.被害的 0→1
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-1.被害的 0→2
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-2.作話 0→1
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-2.作話 0→2
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-3.感情が不安定 0→1
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-3.感情が不安定 0→2
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-4.昼夜逆転 0→1
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-4.昼夜逆転 0→2
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-5.同じ話をする 0→1
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-5.同じ話をする 0→2
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-6.大声を出す 0→1
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-6.大声を出す 0→2
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-7.介護に抵抗 0→1
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-7.介護に抵抗 0→2
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-8.落ち着きなし 0→1
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-8.落ち着きなし 0→2
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-9.一人で出たがる 0→1
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-9.一人で出たがる 0→2
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-10.収集癖 0→1
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-10.収集癖 0→2
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-11.物や衣類を壊す 0→1
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-13.独り言・独り笑い 0→1
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-13.独り言・独り笑い 0→2
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-14.自分勝手に行動する 0→1
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-14.自分勝手に行動する 0→2
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1 4-15.話がまとまらない 1→2
パッと見で明らかなのは、機能訓練関連行為の樹形図では、4群(精神・行動障害)絡みで相変わらず簡単に逆転が生じることです。もう一つ注目すべきは、2-12.外出頻度 0(週1回以上)→2(月1回未満)で間接生活介助と医療関連行為の樹形図に逆転が生じることです。

これで明らかでしょう。この二つのパターンが組み合わさると32分の壁を越えて要支援1がつくわけです。

資料4 事例演習

そろそろ当地でも新制度での要介護認定等が行われます。それに先立ち、いくつか資料が配布されました。そのうちの一つが「資料4 事例演習」です。一次判定が、要介護1(No.1)と要介護5(No.2)の事例が一つづつ収められています。しかし、、、本当に期待を裏切りませんね。

No.1 一次判定結果:要介護1

三項目重度化で要支援1です。逆転は「状態を重くすると判定が軽くなるもの」に限られるようです。

                          清潔      BPSD 機能 医療
基準時間   食事 排泄 移動 保持 間接 関連 訓練 関連 要介護度等
 42.6+ 0.0  3.4  2.0  2.0  7.6 10.9  6.4  6.1  4.2 要介護1
 30.7+ 0.0  3.4  2.0  2.0  5.8  3.0  6.4  6.1  2.0 要支援1 1-2.拘縮(膝関節) 0→1  2-12.外出頻度 0→2  3-1.意思の伝達 0→1
 30.7+ 0.0  3.4  2.0  2.0  5.8  3.0  6.4  6.1  2.0 要支援1 1-2.拘縮(膝関節) 0→1  2-12.外出頻度 0→2  3-1.意思の伝達 0→2
 31.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  5.8  3.0  7.6  6.1  2.0 要支援1 1-2.拘縮(膝関節) 0→1  2-12.外出頻度 0→2  3-1.意思の伝達 0→3
 30.4+ 0.0  3.4  2.0  2.0  5.8  4.7  6.4  4.1  2.0 要支援1 1-2.拘縮(膝関節) 0→1  2-12.外出頻度 0→2  3-7.場所の理解 0→1
 31.7+ 0.0  3.4  2.0  2.0  7.6  3.0  7.6  4.1  2.0 要支援1 2-12.外出頻度 0→2  3-1.意思の伝達 0→1  3-7.場所の理解 0→1
 31.7+ 0.0  3.4  2.0  2.0  7.6  3.0  7.6  4.1  2.0 要支援1 2-12.外出頻度 0→2  3-1.意思の伝達 0→2  3-7.場所の理解 0→1

この例でも、2-12.外出頻度が逆転に大きく貢献しています。

                          清潔      BPSD 機能 医療
基準時間   食事 排泄 移動 保持 間接 関連 訓練 関連 要介護度等
 42.6+ 0.0  3.4  2.0  2.0  7.6 10.9  6.4  6.1  4.2 要介護1
 34.2+ 0.0  3.4  2.0  2.0  7.6  4.7  6.4  6.1  2.0 要介護1 2-12.外出頻度 0→2
外出頻度単独で、実に基準時間を8.4分も減らしています。 要介護1前後では、2-12.外出頻度の影響は総じて大きいように感じます。この目的のためには、外出頻度は「月一回以上」で十分です。しかも「外出の目的や、同行者の有無、目的地等は問わない」と認定調査員テキストに明示されています。とにかく連れ出す(たとえば、主治医意見書を作成するためにどこかに受診させるだけでもよい)なり、通所系の介護サービスを利用するなりした方が、要介護度等は高めに出ることになりそうです。

(追)外出頻度に関しては、以前から頻度が低い方が予防給付だったようです。廃用の程度を評価する際、素通しの歩行「できない」を除き、外出頻度は「週1回以上」でないと介護給付になりません(参考資料:介護認定審査会委員テキスト2006)。したがって、要介護1前後での2-12.外出頻度の挙動は、むしろ当然の帰結かもしれません。

No.2 一次判定結果:要介護5

こちらは、一項目から逆転あり。スタートが要介護5ですから、逆転は当然「状態を重くすると判定が軽くなるもの」のみです。

                          清潔      BPSD 機能 医療
基準時間   食事 排泄 移動 保持 間接 関連 訓練 関連 要介護度等
112.4+ 0.0 11.2 20.8 17.2 23.1  9.4  6.1 15.4  9.2 要介護5
107.6+ 0.0 11.2 20.8 17.2 23.1  4.6  6.1 15.4  9.2 要介護4 2-7.口腔清潔 1→2
109.8+ 0.0 11.2 20.8 17.2 20.5  9.4  6.1 15.4  9.2 要介護4 3-1.意思の伝達 2→3
108.5+ 0.0 11.2 20.8 17.2 23.1  9.4  6.1 15.4  5.3 要介護4 3-2.毎日の日課を理解 0→1
104.8+ 0.0 11.2 20.8 17.2 15.5  9.4  6.1 15.4  9.2 要介護4 3-4.短期記憶 0→1
101.6+ 0.0 11.2 20.8 17.2 23.1  9.4  6.1  4.6  9.2 要介護4 3-7.場所の理解 0→1
三項目までにするとべらぼうな数です。A.I.モードの出力ファイル(およそ1.6MBあります)

この事例では、逆転以前の問題として、認定調査結果か中間評価項目得点のいずれかが間違っています。公開されている資料では、第4群 精神・行動障害の中間評価項目得点は91.1、しかしチェックは4-12.ひどい物忘れ「ある」のみです。これでは4群得点は96.0のはず。4-5.同じ話をするも「ある」だったんじゃない? ちなみに、この変更を施しても逆転はしますので念のため。

第6回要介護認定調査検討会の事例

平成20年11月25日に、第6回要介護認定調査検討会というのが開催されています。ここで、モデル事業用審査会資料(見本)というのが紹介されています。

新制度が出来上がる前の資料ですから、当然現在のシステムでの審査判定とは細かいところが違います。しかし、要介護認定等基準時間だけは36.9分で共通です。ここだけは最初に決めておいて、中間評価項目の点数やら樹形図の形やらを調整したということでしょうか?

逆転は当然あります(今回も期待は裏切られず)。要介護1程度ですから、2-12.外出頻度がキーです。なんとこれ一つで要支援1になります(A.I.モード全出力)。そもそも、外出頻度は今回の改定で新しく樹形図に入った項目です。これまでの経験を踏まえて、もう少し上手に取り入れていただくわけにはいかなかったのでしょうか。

逆転には2パターンあります。9割以上は、前述のように2-12.外出頻度でもって間接生活介助と医療関連行為で稼ぐのですが、外出頻度なしでも1-2.拘縮(膝関節)と3-1.意思の伝達の組み合わせで逆転します。基準時間が最短になるのは、2-12.外出頻度と1-2.拘縮(膝関節)の組み合わせによる28.5分です。

                          清潔      BPSD 機能 医療
基準時間   食事 排泄 移動 保持 間接 関連 訓練 関連 要介護度等
 36.9+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0 10.9  6.2  2.2  4.2 要介護1
 31.5+ 0.0  3.4  2.0  2.0  6.0  7.7  6.2  2.2  2.0 要支援1 2-12.外出頻度 0→2
 28.5+ 0.0  3.4  2.0  2.0  3.0  7.7  6.2  2.2  2.0 要支援1 1-2.拘縮(膝関節) 0→1  2-12.外出頻度 0→2
 31.0+ 0.0  3.4  2.0  2.0  3.0  8.0  6.2  2.2  4.2 要支援1 1-2.拘縮(膝関節) 0→1  3-1.意思の伝達 0→1

隠れ下駄の例

運動能力の低下していない認知症高齢者のケア時間加算ロジックというのがあります。これまではレ点だったのが時間を加えるように改められたというだけで、仕組み自体は以前から(前々回、2003年度からかな?)のものと基本的に同じです。

実際の認定審査会では、実はあまりお目にかかりません。私は『「認知症高齢者の日常生活自立度」がⅢ、Ⅳ又はMかつ、「障害高齢者の日常生活自立度」が自立、J又はAであり、、、』の加算要件が厳しすぎるために、要件を満たした時点でそれよりも重度の要介護度(要介護3以上)に判定されてしまうのではないかと踏んでいます。というのは、これ以外の要件、つまりスコア0.5以上を満たすケースが散見されるためです。

早い話、前項の資料4 事例演習のNo.1 一次判定結果:要介護1の認知症加算スコアは0.8723です。こういう下駄を履きそこなった事例は、スコアが審査会資料には明示されないために、おそらく注意が払われていないものと推察されます。

資料では、このケースの二次判定は要介護1です。審査過程として、一次判定は要介護1でOK→認知症高齢者自立度は不一致(認定調査Ⅱb、意見書自立)、蓋然性評価67.6%等から「介護給付」が提示、この先は二つに分かれます、Ⅱ以上とみなす→よって要介護1(01認知機能の低下等)、Ⅰ以下とみなす→状態の安定性を吟味→安定性評価は「不安定」→よって要介護1(02不安定な状態)、、等々とあります。

しかし、このケースは要介護度変更の指標が3つもつきますから、要介護2と判断されても良かった。日常生活自立度の組み合わせも支2/介1 48%、介2 37.1%でいい勝負です。

何が言いたいかというと、だから素直に下駄を履かせて要介護2を提示するシステムでも良かったんじゃないの? と思うわけです。加算スコア自体は基準をクリアしているわけですから、要は認定調査票の認知症高齢者の日常生活自立度がⅢ以上でなかったというだけで加算が吹っ飛んでしまった。な~んか納得いかないですね。

ちなみに、平成13年度の集計データで作った日常生活自立度の組み合わせによる要介護度別分布(介護認定審査会委員テキスト(平成15年1月版)の24ページ)を見ても(つまり、下駄システムのない時代のデータを見ても)、認知症高齢者自立度Ⅲ以上で非該当に判定されたケースはすべての組み合わせで0%、要支援1(当時は要支援)は障害高齢者の日常生活自立度が自立の場合に限り10%、つまり、下駄がない頃だって要介護1より低く判定されたケースはほとんどありません。

過去の審査事例から

調査項目が変更になっているため、過去のデータをそのまま今の基準で再判定することはできません。しかし、特記事項や意見書の記載からあたりをつければ、何とかならなくもありません。現実問題として、過去のケースがどのくらいに判定されるのかの感覚を身につけておかなくては、とてもじゃありませんが怖くて審査判定できません。

一次判定:要介護2、二次判定:要介護2

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これまでの基準ならば一次・二次ともに要介護2であったケースです。新制度下(既に、現行制度下というべきですが)の一次判定は要介護1です。加算スコアは1.2376と高値ですが、隠れ下駄になります。

一次判定:要介護1相当、二次判定:要介護2

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これまでの基準では一次判定:要介護1相当。二次判定で要介護2となったケースです。新制度(現行制度)では一次判定:要介護1(認知症自立度Ⅱ以上の蓋然性67.6%および状態の安定性スコア2.6530)。加算スコアは1.2235の隠れ下駄です。

以上3例で気づくのは、第4群の精神・行動障害、いわゆる問題行動に案外チェックがないということです。これは下駄の基準を見れば明らかです。運動能力の低下していない認知症高齢者のケア時間加算ロジックという名称からは、運動能力の低下していない認知症高齢者の精神・行動障害が問題視されるものと、私は考えてしまうのですが、さにあらず。ケア加算ロジックに直接影響するのは 1-11.つめ切り、1-10.洗身、2-5.排尿、2-8.洗顔、2-10.上衣の着脱、5-2.金銭の管理、5-5.買い物 です(要介護1以下の場合)。これ以外に、中間評価項目のうち3つ(1群、2群、4群)が関連します(要介護1以下の場合)。

ですから、問題行動ゼロ(4群 100点)でもケア加算ありというケースもあり得ます。『「認知症高齢者の日常生活自立度」がⅢ、Ⅳ又はMかつ、「障害高齢者の日常生活自立度」が自立、J又はAであり、、、』の加算要件こそが最大のハードルであり、この要件さえ満たせば、あとは運動機能が低下していればいるほど加算ロジックでは有利になります。

最近の事例から

当然、新制度下の事例にも隠れ下駄は存在します。

一次判定:要支援1

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一次判定:要支援2

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最短「非該当」を求めて

Q:18分未満の非該当はあるのか? A:15.2分まであります

運動能力の低下していない認知症高齢者のケア時間加算ロジックについては、次のような規定もあります。

一次判定が非該当となった場合で要介護認定等基準時間が18分未満の場合、相応の基準時間(引用者注:7分)を加算しても要支援1にならない(引用者注:25分に満たない)ので、加算後要介護認定等基準時間が25分になるように調整されます。 (介護認定審査会委員テキスト 46ページより)
しかし、そんなケースがあり得るのでしょうか? なお、すべてOKの非該当では基準時間は22.8分です。

非該当(16.3分)→要介護1?

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不毛な試みとは思いながらも、探してみると割と簡単に見つかりました。下駄前の基準時間は実に16.3分!1-11.つめ切りが「一部介助」ならば非該当、そもそも『「認知症高齢者の日常生活自立度」がⅢ、Ⅳ又はM、、、』の加算要件を満たさなければ、そのまま非該当なのですから困ります。要支援1に10分近く足りないギンギンの非該当は、果たして変更を認められるのでしょうか。ちなみに、基準時間の上限ぎりぎりとか下限ぎりぎりは、今後の?認定審査会では考慮されるようですから、油断なりません。現に、テキストにはこうあります。

■ 変更を検討する際の参考として活用
 要介護認定等基準時間は、介護に要する時間を測るための「ものさし」であり、示された時間に応じて要介護状態区分が決まります。要介護認定等基準時間が隣の区分の境界の近くに位置するのか、遠くに位置するのかの相対的位置関係を把握することは介護の手間にかかる審査判定において合議体の中で議論が分かれた場合などに、共通の視点をもつことができるという意味で有用です。
 たとえば、要介護3は、要介護認定等基準時間では70 分以上90 分未満と定義されますが、対象ケースが、71.2 分を示すなら、要介護2に近い要介護3とみることができます。逆に88.6分であれば、要介護4に近い要介護3とみることができます。(介護認定審査会委員テキスト24ページ)
また、上述の資料4 事例演習のNo.2でも、「基準時間がすれすれなので、もともと要介護4に近い」云々といった馬鹿げた議論が示されています。くわばらくわばら。

非該当(15.2分)

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調子に乗って、さらに基準時間15.2分の例まで確認しました。数項目調整!すれば下駄が効いて要介護1ですが、このままでは非該当。8つの樹形図のうち実に6つ(排泄、移動、清潔保持、BPSD関連行為、機能訓練関連行為、医療関連行為)が最短、残る二つのうち、食事は下から2番目です。唯一、間接生活介助の2.7分が惜しまれるところですが、第2群生活機能の中間評価項目得点が14.4以下でないとこれ以下の水準は望めないので、期待薄です。つまり、今のところこの15.2分が最短と考えます。

ちなみにこの事例は架空のものですが、各項目は極力チェックを増やし、かつ、状態像的にもそれらしく構成したつもりです。もちろん、警告コードにも引っかかりません。こんな感じ。

ええ、足腰は弱いです。両足とも力は落ちていると思います。まあ、寝起きは自分でできますし、歩くのもつかまれば何とか。ああ、片足立ちはさすがにね、よろよろするので支えないと。食べるのは自分で食べますけど、とにかく口に詰め込むし、ちょっとむせるようなこともあるので、飲み込めるかどうかは見てます。オシッコは良くわかんないときがあるみたいで、、もそもそするから「トイレ?」って声掛けてあげたりしてます。歯磨きは大丈夫ですけど、顔を洗うときは結構服を濡らすので注意してます。整髪?髪の毛ないですからね。ズボンはまあ何とか履けます。シャツとか上着も着られはしますけど、順番が頓珍漢なので見てないと駄目なんです。外出はまずしませんね。意思の疎通ですか?まあ家族ですから「お腹が減ったかな」くらいはわかりますけど、あとはちょっとねぇ。まあちょっと前のことなんかは結構憶えてますけど、場所については家にいるかどうかもわかってないみたいだし…。外へは出やしませんが、徘徊っていうんですか?家の中はしょっちゅううろうろしてますよ。おとなしい人ですから、あんまり困ったことはないんです。ただ、子供の顔とか忘れちゃってるみたいで、私に訊くんですよね。薬やらお金のことやらは自分では全然できません。ただ、丸っきりしっちゃかめっちゃかというわけでもなくて、服なんかは一応自分で選んでますよ。他の人といるのは苦手みたいで、普段はそんなことないのに大きい声出したりとかね。買い物はまあ滅多にしないですね。外へ出ないし。でも、あれ買ってきてくれとか、そういうのはあります。カップ麺とかたまに食べますけど、自分では作りません。前はやってましたけど、鍋焦がしたりで大変だったんで、今はやってあげちゃってるんです。

ラッキーセット

例えば、2-2.移動や2-4.食事摂取などは、いずれかを「一部介助」にすれば単独で基準時間が32分以上になります。ただ、このような状態はあまりにも不自然でしょう。だから、これらはラッキーセットとはしません。しかし、これならばどうでしょうか。

二項目で要支援2/要介護1

例えば、1-8.立ち上がり「つかまれば可」、4-8.落ち着きなし「ときどきある」で要介護認定等基準時間は32.8分。認知症高齢者の日常生活自立度によっては要介護1がつきます。以下、同様の組み合わせです。

                          清潔      BPSD 機能 医療
基準時間   食事 排泄 移動 保持 間接 関連 訓練 関連 要介護度等
 22.8+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2  4.7  5.8  6.1  1.0 非該当
 32.7+ 0.0 10.1  0.2  0.4  1.2  4.7  5.8  6.1  4.2 要支援2 1-8.立ち上がり 0→1  3-4.短期記憶 0→1
 32.8+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  4.2 要支援2 1-8.立ち上がり 0→1  4-2.作話 0→1
 32.2+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2 10.9  5.8  6.1  4.2 要支援2 1-8.立ち上がり 0→1  4-6.大声を出す 0→1
 32.8+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  4.2 要支援2 1-8.立ち上がり 0→1  4-8.落ち着きなし 0→1
 32.8+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  4.2 要支援2 1-8.立ち上がり 0→1  4-9.一人で出たがる 0→1
 32.8+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  4.2 要支援2 1-8.立ち上がり 0→1  4-10.収集癖 0→1
 32.8+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  4.2 要支援2 1-8.立ち上がり 0→1  4-11.物や衣類を壊す 0→1
 32.2+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2 10.9  5.8  6.1  4.2 要支援2 1-8.立ち上がり 0→1  4-13.独り言・独り笑い 0→1
 34.2+ 0.0 10.1  0.2  0.4  1.2  4.5  5.8  6.1  5.9 要支援2 2-1.移乗 0→1  3-4.短期記憶 0→1
 34.5+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  5.9 要支援2 2-1.移乗 0→1  4-2.作話 0→1
 33.9+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2 10.9  5.8  6.1  5.9 要支援2 2-1.移乗 0→1  4-6.大声を出す 0→1
 34.5+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  5.9 要支援2 2-1.移乗 0→1  4-8.落ち着きなし 0→1
 34.5+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  5.9 要支援2 2-1.移乗 0→1  4-9.一人で出たがる 0→1
 34.5+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  5.9 要支援2 2-1.移乗 0→1  4-10.収集癖 0→1
 34.5+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  5.9 要支援2 2-1.移乗 0→1  4-11.物や衣類を壊す 0→1
 33.9+ 0.0  3.4  0.2  0.4  1.2 10.9  5.8  6.1  5.9 要支援2 2-1.移乗 0→1  4-13.独り言・独り笑い 0→1
 33.2+ 0.0 10.1  0.2  4.1  1.2  4.7  5.8  6.1  1.0 要支援2 2-2.移動 0→1  3-4.短期記憶 0→1
 33.3+ 0.0  3.4  0.2  4.1  1.2 10.9  6.4  6.1  1.0 要支援2 2-2.移動 0→1  4-2.作話 0→1
 32.7+ 0.0  3.4  0.2  4.1  1.2 10.9  5.8  6.1  1.0 要支援2 2-2.移動 0→1  4-6.大声を出す 0→1
 33.3+ 0.0  3.4  0.2  4.1  1.2 10.9  6.4  6.1  1.0 要支援2 2-2.移動 0→1  4-8.落ち着きなし 0→1
 33.3+ 0.0  3.4  0.2  4.1  1.2 10.9  6.4  6.1  1.0 要支援2 2-2.移動 0→1  4-9.一人で出たがる 0→1
 33.3+ 0.0  3.4  0.2  4.1  1.2 10.9  6.4  6.1  1.0 要支援2 2-2.移動 0→1  4-10.収集癖 0→1
 33.3+ 0.0  3.4  0.2  4.1  1.2 10.9  6.4  6.1  1.0 要支援2 2-2.移動 0→1  4-11.物や衣類を壊す 0→1
 32.7+ 0.0  3.4  0.2  4.1  1.2 10.9  5.8  6.1  1.0 要支援2 2-2.移動 0→1  4-13.独り言・独り笑い 0→1
 36.3+ 0.0 10.1  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  1.0 要支援2 3-4.短期記憶 0→1  4-2.作話 0→1
 35.7+ 0.0 10.1  0.2  0.4  1.2 10.9  5.8  6.1  1.0 要支援2 3-4.短期記憶 0→1  4-6.大声を出す 0→1
 36.3+ 0.0 10.1  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  1.0 要支援2 3-4.短期記憶 0→1  4-8.落ち着きなし 0→1
 36.3+ 0.0 10.1  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  1.0 要支援2 3-4.短期記憶 0→1  4-9.一人で出たがる 0→1
 36.3+ 0.0 10.1  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  1.0 要支援2 3-4.短期記憶 0→1  4-10.収集癖 0→1
 36.3+ 0.0 10.1  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  1.0 要支援2 3-4.短期記憶 0→1  4-11.物や衣類を壊す 0→1
 35.7+ 0.0 10.1  0.2  0.4  1.2 10.9  5.8  6.1  1.0 要支援2 3-4.短期記憶 0→1  4-13.独り言・独り笑い 0→1

排泄、清潔保持、機能訓練の樹形図はラッキーセットに全く関与していません。これは、上の方の分岐にかかわる項目が二段階以上の変化(例えば、介助なし、見守り、一部介助、全介助なら見守りと一部介助の間で線引きするなど)を要求するためです。一方、食事(3-4.短期記憶のみで3.4→10.1)、移動(2-2.移動のみで0.4→4.1)、間接生活介助(4群一項目程度で4.7→10.9)、医療関連行為(1-8.立ち上がりのみで1.0→4.2、2-1.移乗では1.0→5.9)は一項目一段階でも変わり得ます。これを上手く組み合わせれば、わずか二項目で32分を超えるわけです。

要介護2への道

要介護認定等基準時間50分となると、ハードルはぐっと高くなります。さすがに一段階の変化のみでは難しいようです。しかし、二段階まで許せば、四項目で要介護2となります。

(36.3+ 0.0 10.1  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  1.0 要支援2 3-4.短期記憶 0→1  4-8.落ち着きなし 0→1)
                          清潔      BPSD 機能 医療
基準時間   食事 排泄 移動 保持 間接 関連 訓練 関連 要介護度等
 36.3+ 0.0 10.1  0.2  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  1.0 要支援2
 63.1+ 0.0 34.2  2.9  0.4  1.2 10.9  6.4  6.1  1.0 要介護2 2-4.食事摂取 0→2  2-7.口腔清潔 0→2
 51.2+ 0.0 10.1  8.3  0.4  8.0 10.9  6.4  6.1  1.0 要介護2 2-6.排便 0→2  2-10.上衣の着脱 0→2
 51.4+ 0.0 10.1 11.1  4.6  1.2 10.9  6.4  6.1  1.0 要介護2 2-6.排便 0→2  2-11.ズボン等の着脱 0→2

考え方としては、要支援2/要介護1を作る組み合わせに、二項目乗っけて50分越えをめざすというものです。上記の例は3-4.短期記憶「できない」と4-8.落ち着きなし「ときどきある」からスタートしたものです。私見では、下の二つがそれっぽいかなと(2-6.排便「一部介助」+2-10.上衣の着脱「一部介助」か2-11.ズボン等の着脱「一部介助」)。2-4.食事摂取が絡むと、数字の変化が極端すぎて(食事の樹形図のみ+24.1分!)現実味がありません。

まあ、いずれにしても、ラッキーセットの一次判定を素通しにする介護認定審査会はまずないでしょうから、実害はないと思います。ただし、そうは言っても注意は喚起されて然るべきですし(既にそのような通達が出ているのであれば、行き違い失礼いたしました)、そもそも、そのような注意が必要ないような(あるいは、心配しなくていいような)システムにしていただきたいものです。

一次判定における、主治医意見書の役割

要介護認定等における主治医意見書の役割については、すでにいろいろなところで強調されているので、屋上屋を架すような真似は致しますまい。しかし、一次判定におけるとなると話は違います。

そもそも、当初は一次判定と主治医意見書は全く独立していました。一次判定に主治医意見書の記載が反映されるようになったのは、新予防給付になってからです。では、一次判定における主治医意見書は重要な役割を果たすのでしょうか? 残念ながら、一次判定に反映されるのは、極めて限られた条件下において、意見書のごく限られた部分のみです。

認知症自立度Ⅱ以上の蓋然性評価ロジック

新予防給付の考え方が導入されて以降、予防給付と介護給付の境目のところでは、認知症高齢者の日常生活自立度がⅡ以上かどうかが問題となります。

わざわざ下線を引きましたが、主治医意見書の認知症高齢者の日常生活自立度(というごく限られた部分)が一次判定に影響するのは、要支援2と要介護1の分かれ目のところ(という限られた条件)のみです。認定調査と意見書で一致すればそれでおしまい。一致しなければ次のステップに入ります。それが表題の蓋然性評価です。

蓋然性評価で主要な役割を果たすのは、主治医意見書の日常の意思決定を行うための認知能力です。「主要な役割」といういささか大袈裟な表現はむしろ謙遜で、事実上これでほぼ蓋然性が決まります。しかも、「自立」か「それ以外」かで決まります。

樹形図を詳しく追って見ましょう。最初の分岐は、3群 認知機能の中間評価項目得点が93.9以上かどうかです。これ実は相当厳しい条件で、93.9以上になるには、チェックなし、3-1.意思の伝達「ときどきできる」のみチェック、3-9.外出して戻れない「ときどきある」のみチェックの3通りしかありません。しかし問題は次の分岐です。最初の分岐がどちらに転んでも、二番目は主治医意見書の日常の意思決定を行うための認知能力です。しかも分岐パターンも共通で「自立」か「それ以外」です。これが「自立」の場合、蓋然性が50%以上となるパターンは限られます。最終的には6つに分かれますが、そのうちのたった一つだけが50%以上、他はすべて25%以下です。一方、「それ以外」の場合、最初の分岐が93.8以下ならば、69.5~99.4%の蓋然性です。

最初が93.9以上の場合は、多岐になります(3.6~95.7)。そもそも93.9以上になる条件が厳しいことを思えば、こちらに分岐しても、意見書の意思決定を行うための認知能力如何で蓋然性が50%を超えること自体が驚きです。この場合の勘所は5-3.日常の意思決定で、これが「できる」ならば50%越えはありません。

以上細かく見たように、認知症自立度Ⅱ以上の蓋然性評価では、主治医意見書は主要な役割を担います。しかし、蓋然性評価が必要とされるのは、要介護認定等基準時間が32分以上50分未満で、認定調査票と主治医意見書の認知症自立度がⅠ以下・Ⅱ以上に分かれた場合に限られます。しかも、主治医意見書の項目のうちの日常の意思決定を行うための認知能力で大勢が決まります。これをもって「意見書の重要性が…」と言われてもねぇ。

理解及び記憶(主治医意見書)

もう一つ、主治医意見書が活躍するのが「理解及び記憶(主治医意見書)」です。主治医意見書と入っているだけに、意見書のうちの4項目(日常の意思決定を行うための認知能力、自分の意思の伝達能力、短期記憶、食事)を使って、7段階(0~6レベル)に区分します。詳細な算出方法は介護認定審査員テキストをご参照ください。

問題は、このあとの使い道です。この指標自体は、要介護認定等基準時間の8つの樹形図には出てきません。では何に使うかというと、運動能力の低下していない認知症高齢者のケア時間加算ロジックの要介護2用のスコア表で使います。他には全く利用されません。

先に述べたように、運動能力の低下していない認知症高齢者のケア時間加算(認知症下駄ね)の加算要件はかなり厳しいです。しかも、要介護1以下と要介護2ではスコア表が異なります。つまり、「認知症高齢者の日常生活自立度」がⅢ、Ⅳ又はMかつ、「障害高齢者の日常生活自立度」が自立、J又はAであり、要介護認定等基準時間が50分以上70分未満のケースの認知症加算の判定にのみ利用される指標です。しかも、スコア表上では7段階では評価されず、0、1、2か3、4~6の4段階評価に丸められます。それなら最初から4段階にしといてくれれば楽なのに、、、などとアマチュアプログラマの私は願ってしまいます。

不安定な状態とは

状態の安定性の評価は、13項目で行われます。大雑把にいって、一段階なら4~5項目程度に該当しなければ状態は安定とされます(二段階まで許容すれば二項目で「不安定」確定あり、一方、どうやっても一発で確定という選択肢はなし)。この指標も、要支援2/要介護1の判別にしか利用されません。よって、あまり多くの項目に該当するというのは不自然で、その意味では結構厳しい基準といえます。もっとも、そう感じるのはラッキーセットの後だからかも知れません。状態像の例が公開されていないので何ともいえませんが、テキストの例は要介護1で16項目ヒットしています。

まあ、これまでは5項目(歩行、移動、日中の生活、外出頻度、状況などの変化)で予防か介護か判断していたことを思えば(しかも、これまでは歩行不可なら無条件で介護給付だった。詳細は、介護認定審査会委員テキスト2006等を参照のこと)、進歩したんでしょうか。

興味深いのは、認知症下駄(運動能力の低下していない認知症高齢者のケア時間加算)との共通性です。状態の安定性ロジックには次の各項が登場します。このうち、太字の項目が認知症下駄(要介護1以下)とダブります。

歩行、つめ切り洗身、移乗、排尿、ズボン等の着脱、口腔清潔、今の季節を理解、毎日の日課を理解、介護に抵抗、日常の意思決定、金銭の管理、薬の内服
この4項目がすべて「全介助」の場合、要介護認定等基準時間は19.2分で「非該当」です。純粋にこの4項目だけを操作すると警告コード43にヒットするので5-5.買い物を「全介助」にしても、結果は同じです。この場合、状態は不安定(安定性スコア1.4690)だし、下駄もヒット(認知症加算スコア0.6501)します。これら各項はどうしても基準時間を下げるので、それを補填するために認知症下駄やら安定性スコアやらがあるのではなどと勘繰りたくなりますねぇ。


とりあえずの結論

最後の更新から丸二年、、、一次判定は極めて優秀と言わざるをえない状況が続いています。

認定審査会における一次判定変更率はどんどん下がりました。 往時は五割強くらいだった、つまり半分強が審査会で変更されていた一次判定は、2009年の改正でぐっと精度を上げ、昨今の変更率はせいぜい二割程度です。しかも、これは要支援2と要介護1の判定も含めての変更率であり、一次判定がおみくじ程度だった昔を知るものとしては驚異的な数字です。今や、変更率よりも一致率という表現の方が相応しいでしょう。

無論、このページで指摘しているあれこれが間違っているわけではありません。それどころか、今のシステムを使い続ける限り、今後もついて回る問題点です。しかし、幾多の問題点を割り引いても、実務上は極めて優秀なシステムに仕上がっている、、、これが、一次判定2009に対する、現時点での私の評価です。

そして、自分で使うために作った上州街道ですが、今はほとんど起動することなくディスクの肥やしとなっています。本稿も、ほぼその役目は終えたと考えます。


本稿で取り上げた事例のデータファイル。右クリックでダウンロードすれば、そのまま上州街道2009シリーズから開けます。


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