新年あけましておめでとうございます。
総選挙で慌ただしかった年末が過ぎて迎えた平成27年ですが、どんな一年になるか期待と不安の入り混じる心持ではないでしょうか。
成熟社会となった日本の経済状況は明らかな需要不足で、欲しいものがなかなか見つけにくい売り手にとっては難しい時代です。
こういった経済状況が果たしてデフレ状態なのか成熟した社会の経済模様なのか素人の自分には分かりかねますが、
少なくとも金融緩和や財政出動だけで景気が一様に上向くという旧態の経済政策とは何か違うのではないかと感じます。
中間層が少なくなり上下層がはっきり分かれるような社会では売り手側もなにをターゲットに売るのかを考えないといけなくなっているように思えます。
そんな中ですが正月の休日、寒いところを避けるように南国土佐を訪ねてきました。
ところが行った日は寒波の影響で風花が舞う気温2℃という予想外の寒さとなってしまいました。
高知と言えば東西に長い四国の南部で弓なりになった海岸線から海のイメージが強いですが、
龍馬空港に降りる時の飛行機から見る地形は山が海の近くまで迫る典型的な山国に見えます。
山地率は89%に及ぶと言います。南は太平洋、北は四国山地の急峻な背骨を衝立として瀬戸内地方と分断され、
90年代後半に高速道路が整備されるまでは「陸の孤島」と呼ばれた理由が分かるような気がします。
その分いろんな文化がはぐくまれ、歴史上の人物も相まって魅力ある名産・観光スポットが多くあります。
景勝地では桂浜、四万十川、名所には高知城、はりまや橋、食ではカツオと果物、人物では物理の寺田寅彦、
植物学の牧野富太郎、政治家の濱口雄幸、歴史では長宗我部元親、山内一豊、板垣退助、そして坂本龍馬と枚挙にいとまがありません。地形、気候、歴史上、
独特の土佐人気質が熟成されて生まれてきたのが容易に想像されます。
桂浜に出て見たかったのは黒潮。その名の通り、南の海から流れてきている巾100qにも及ぶ暖流は透明度が高いため黒く見えることに由来しますが、
たしかに遠く帯のように海面に黒く浮かんで見えます。その海水温は冬期でも20℃近くあり真冬の朝などは海面から湯気が立っているのが見えると言います。
世界3大潮流と呼ばれるこの潮がもたらしたものは多かったに違いありません。
日本沿岸を世界有数の漁場とし、沿岸地帯に温暖な気候を与え、遠くには日本人の祖先の一部ももたらしたと言われています。
坂本龍馬記念館の持ち出しになったデッキから黒潮を眺めているとそんなロマンを感じさせ飽きることがありません。
龍馬でなくともこの大海原の先に何があるのか見てみたい気になります。
四国八十八ヶ所霊場は空海に由来しますが、この高知にも十六霊場があり中でも市内の五台山にある竹林寺が有名です。
あの「よさこい節」で「坊さん かんざし 買うを見た」のモデルとなった僧・純信のいたのがこの竹林寺で、
今年が高野山開創千二百年を迎えることからいろいろな催し事が行われていることもあって大いに盛況でした。
柿葺きで扇垂木と軒反りの強い屋根形状を持った禅宗様式を思わせる重文の本堂と、真新しい五重塔を中心に多くの伽藍と庭園が配されています。
高速道路が瀬戸内海側まで開通してから、車を飛ばせば香川県までは40分くらいで行くことが出来ます。
かつては祖谷峡谷をかき分けるように何時間も掛けて行き来した時を考えると隔世の感があります。
帰路、空海の生誕の地と言われる香川・善通寺にも立ち寄って来ました。屏風浦五岳山誕生院善通寺の寺号が示す通り、
空海は讃岐の五峰が連なる善通寺市屏風浦で誕生したと言われています。善通寺は高野山、東寺と並んで弘法大師の三大霊跡と言われるだけあって、
西院、東院に分かれた空間には凛とした空気が漂っているように感じます。この地方で慕われている弘法大師空海の偉大さの片鱗を感じる思いです。
ここには葬式仏教と揶揄される都会的な仏教ではなく、生の中で感じる苦しみや悩みを弘法大師に縋って解放されて生きたいという信徒の敬虔な信心の深さを感じます。
実在して多くの人々のために生きた大師を容易に頭に描くことができるせいでしょうか。
小さな国ですが多くの普遍のものをもたらしている四国の一部を旅して、少し心が充たされたように感じながら帰路に着いたのでした。
良き一年となりますように!
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