先日、恒例の地元中学生の職場体験研修があり、当社も希望の生徒を3名ほど受け入れました。
木の事が好きだったり、大工さんになりたいという子供たちで、3日間ほど実際に現場で働いてもらいます。
最初私の方から少しだけ古建築や木のことを話してあげます。どんな木を知っているかを聞くと意外と答えられないものらしく、
杉、檜くらいは出てくるのですが松、楢、桐などは少し縁遠い木になってきているのでしょうか、答えの中には出てきません。
いつだったか「ベニヤ」と答えた子がいました。本物の木だと思っていたようです。
実際の木の断面を見せてあげて年輪、赤味と白太、柾目と板目の話をしてあげると目を輝かせて聞いてくれます。
木材と森林伐採、森林保全や環境問題へと話が進展すると少し中学生には難しくなりますので、具体的な例をあげて説明します。
1年間に使い捨てられる割りばしの量は40坪の家1万件分もあるけれども、間伐材や製材屑から取るもので決して森林伐採ではなく、
資源の有効利用とも言えること、別の試算ではA4版の紙1枚分は割りばし4膳分、新書1冊で軽く100膳分だと言うと、
紙の節約をした方が環境にやさしいのが分かってもらえるようです。
更に大工道具の説明をするといつも感心してもらえます。
特に指し矩は幾何学的要素がふんだんに使われでいるので驚いてしまいます。
指し矩一つでピタゴラスの定理や円周が求められたり、平方根や立方根まで求めることができるのが不思議な様子でした。
そんな話の後に現場へ出てもらって実際に大工さんたちと仕事をすると最初は緊張の面持ちでしたが、3日目には冗談を交わすまでに
慣れるものです。お施主さんから戴き物をもらって良い印象で帰宅したようでホッとしています。
経済的尺度だけの職業観でない、ものを作り、完成させる達成感や、そのことによって人に喜んでもらえる充足感こそが仕事の本質で
あるということを少しでも分かってもらおうと思って受け入れを続けています。
1週間後位に3人の礼状と感想文が送られてきました。「大きな仕事を成し遂げるには一人の力ではなくみんなの協力が必要だと思った」、
「本箱を作れてうれしかった」等の感想があると、この中から夢を持って建築の世界に入ってきてくれる人が出ればいいなと思います。
それには建築業界の方で若者たちが希望を持ってやっていけるような基盤作りが必要です。第2の農業のようにしてはなりません。
受け入れを始めて10年位になるでしょうか、その中から当社の従業員になっている子が一人います。 夢を持ってやってくれているのでしょうか。夢を壊さないような会社の姿勢もいつも問われているとも言えますね。
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