FPグループの他地区交流事業として7月、秋田県の鹿角市と横手市で元気な営業をされている2工務店を視察、拝見する機会がありました。
鹿角(かづの)市は秋田でも十和田湖に近い北端の町で、昔社会の教科書にも出てきた尾去沢銅山のある花輪町や小坂町が合併したところで、
鉱山町としての面影を少し残しています。
新幹線で盛岡まで行き、あとは車で東北自動車道を北へ行くこと1時間半でその中心地花輪町に着きます。もう青森・弘前まで40分くらいのところです。
ここで営業しておられる田中建設さんの住宅を見学させていただきました。
人口3万余ほどのところで年間25棟ほどの棟数をこなしている秘訣は徹底した現場見学会にあるようでした。
毎週のように組まれた週末の現場見学会には2日間で70組が訪れるという盛況ぶりだそうです。
チラシと新聞広告を媒体としているため毎週のように名前が出ることによって知名度は上がるといいます。
この鹿角市は江戸時代までは南部藩領で今の岩手県でした。明治後秋田に編入されましたが、いまだに多くの文化的部分で南部風を残しているとも言われますが、
特に地域的特徴のあるデザインを採用しているわけではなく、洋風の外観はサイディングとガルバ鋼板が中心です。
用材としての秋田地場産材についてはあまり使われることが少なく輸入材中心となっているのは、いずこも事情が同じのようでした。
人口規模に対する棟数からすると抜群の占有率で独断場状況ではないでしょうか。
実際の現場を見てもらってお客様に納得、理解していただくという方向性が確実なのを改めて実感させられました。
翌日はずっと南下して横手市の増田町というところで営業されている三浦建築さんを見学させてもらいました。
同じ秋田でも東北自動車道を使って鹿角から3時間半ほどかかる場所です。冬は特に雪深いところで「かまくら」でも知られる横手ですが、
夏の7月ではその一端も窺い知れません。この増田町は昔から商家の町として知られ、重厚な蔵がずらりと並んでいます。三浦建築さんは無類の木材蒐集家でもあり、
会社倉庫には欅から吉野桧まで銘木がずらりと並びます。これを見てもらうだけでも客さんにはアピール度大です。
見せて戴いた住宅はサイディング外壁に樋なしの金属葺き屋根で勾配は0.5寸程度のフラット状態。玄関前に風除室を設けたり、屋内に駐車場を設えたり、
エアコン等の室外機が地盤置きではなく2階床高さほどの壁掛け型になったりしているのもすべて雪対策で、その積雪量が想像できます。
地域的に高断熱の「FPの家」が効果を発揮できる場所で、その断熱力に加えて集中暖房と内部の造作に銘木類を使って特徴を出しているのが印象的でした。
でもどちらも「秋田」という地域性と少し昔の文化の残滓が住宅デザインに反映されているのではないかという期待については見事に裏切られました。
これでは日本全国同じ住宅デザインになっていってしまうような気がしてしまいます。
建築における地域性をデザインに残し生かすというのは、少し離れたところから地方を見る設計側の独善なのでしょうか。
地域材の活用と同じで、使おうと思っても価格の面で安い輸入材に太刀打ちできない、ハウスメーカーによる都会的デザインの刷り込み、
新幹線の駅舎のデザインに似て地域色が希薄になってしまっています。翻って我々も地域性を考えて住宅や建築を設計しているのか、
自問せねばならない気持ちにさせられた秋田視察となりました。
駆け足の日程で観光地らしきところを見て回ることはできませんでしたが、増田町の銘木を漆で塗りあげた漆蔵と、 横手から北上へ抜ける道すがら見た錦秋湖が山深い中にあって東北の風景として印象に残りました。
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