夏休みを利用した恒例の子供向け「木工広場」が、市内の大工建築業者が主体となって市北部の渡良瀬川河川敷の木陰のある一角で開かれ、
多くの親子連れでにぎわいました。
対象は主に小学生以下の子供たちで、予めこちらで用意した杉板と本箱やいすの工作図が与えられて自分で加工組立をしてもらいます。
板を切ったり、丸く穴をあけたりの手助けを廻りに陣取った大工さんたちがやってあげる仕組みです。
大工さんたちも発電機を始め丸ノコやカンナ、ジグソーなどを持ち込んでの対応になります。自分の子供のころは家業としての大工仕事が日常にあふれていて、
いつも大小の工具を器用に操る大工の技術は一日中見ていても厭きないものでした。
実際格好良かった。板に墨差しで描き込んだ絵図板というものに「いろは」と「一、二番」の番付けを入れたものだけで、材木に墨を打ち、
使い込んだノミや手ガンナで柱や土台ができて、その百以上の部材を組み立てて一軒の家ができていくのを感心してみていたものでした。
大工棟梁というのはすごい技術者なのだと子供心に思っていました。
この「木工広場」でも、大工さんに板を切るのを頼みに来てそれを見ている子供たちも、当時の自分ときっと変わっていないのではと思う様なまなざしをしています。
今でも小学生たちのなりたい職業の上位には必ず大工さんが入っていると言います。
でも今、その大工が年々減っているという統計が現実には出ています。
最新のデータによれば、現在国勢調査で確認できる大工の数は2005年時点で約54万人。1980年には93.6万人だったので、ほぼ半減しています。
住宅着工戸数も160万戸から80万戸へと半減しているので、きれいに需要とリンクしている格好です。54万人は2005年の数字ですから、
現在はさらに減少していることが予想され、実際、2010年国勢調査の速報値では約40万人と、5年で14万人減少していました。
しかも、2005年時点での50歳以上の比率が5割を超えており、高齢化が進んでいます。今後この世代がリタイアしていくため、若手の育成が急務とされています。
工法の合理化などで熟練大工がなくても躯体は施工できるようになっていて、今後はTPPを利用して海外から職人を受け入れるという手もあると言います。
しかし、多能工的スキルと現場経験、コミュニケーション能力が求められるリフォームなどには熟練大工が不可欠です。コストと手間は掛かりますが、
苦しくても若手大工を社員化し育成することが競争力となる時代になってきています。
市内の職業訓練校の木造建築コースでも、受講生が減って存続の危機に陥っています。
2年生が2名で1年生がゼロという現状は、構造的な問題だとすれば今後も増える予想は立てにくい状況です。
合理化されたプレカット工法という機械工法ができたからこそ木造の軸組み工法が残ったと言える反面、そのために仕口や継手、
隅木や垂木留めなどの技能士的技術が不必要とされるというジレンマに陥っていると言えます。
職業訓練校で規矩術と呼ばれる大工工法を身に付けて、
試験で晴れて1級技能士の資格をとっても社寺建築など一部の分野を除いてはそれを発揮できる場所がないのが現状でしょう。
職能としての魅力と現実として所得を得ていくという職業の間で、どこまで世界に冠たる大工技術を残せるか。与えられた課題は重いと思っています。
そんな中、今月も地元中学生の職場体験学習を受け入れます。元気な四人の男子生徒が希望してくれて、二日間に渡り大工経験をしてもらう予定です。
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