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赤石建設株式会社 一級建築士事務所
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平成24年7月


 音楽評論家で文化勲章受章者の吉田秀和さんが5月末亡くなりました。
98歳でした。音楽だけでなく美術、芸術全般にわたり碩学を誇った一級の知識人でした。
 学生のころからその文章の巧みさや正鵠を射る論点の素晴らしさに憧れてきて、その著作をいつも近くにおいて来ました。 お年を召していたとは言え、吉田さんの逝去に対して一文を書かずにはいられませんでした。
 西洋音楽を基本から学ぶために戦後間もないころに欧州や米国を廻り、当時楽壇で活躍していたフルトヴェングラーやトスカニーニ、 ハイフェッツなどの演奏に生で接し、演奏を会場で実際に聞くことの大事さを経験として終生語られていました。
 若き日は詩人の中原中也や吉田一穂らと親交を結び、詩の持つ本質をとらえる感性に深く影響されたと言います。
 行動の人でもあり、戦後斎藤秀雄と共に桐朋学園の前身である「子供のための音楽教室」を興し、中村紘子、小澤征爾、 堤剛などの世界的音楽家を育て上げてきました。
 また20世紀音楽研究所という実験の場では現代音楽の紹介に努め、武満徹などを発掘しても来ました。

 晩年は水戸芸術館の館長として地方における楽団の運営を通してその在り方や意義を実践されていました。 そして本業の音楽評論の分野では、これまで日本にはなかった形式での音楽評論を試みその草分けとなります。 音符を例示しその解説の元に演奏や楽曲の説明をし、時にはワーグナーやブラームスの音楽にセザンヌやプルーストの話を持出し解説するなど、 その芸術全般の造詣の深さに舌を巻かれることもしばしばでした。

 いろんなエピソードも残っています。バッハのゴールドベルク変奏曲でデビューしたグレン・グールドの評価について、 世間一般にはジャズ的だなどと価値を認めない論調の多かった中、いち早くその才能と革新的な演奏解釈を見抜いて世に紹介しました。
 戦後亡くなったバルトークの訃報記事の扱いがあまりに小さいのに怒り、新聞社に抗議したこともあったと言います。
 また前評判の高かったホロヴィッツの初来日時の演奏会では、聴衆のほとんどがその演奏に酔いしれた感想を述べる中、もはや骨董品だと揶揄し、 しかもひびが入っており、それも一つや二つのひびではない、と手厳しい評価をインタビューで述べてその本質を突きました。 演奏が不本意だったのを分かっていたのはホロヴィッツ自身だったようで、吉田さんのレビューを聞いてのち、 再度練習を重ねて再来日し復活を遂げたのは吉田さんの見る目の確かさを強く印象づける出来事でした。 演奏をする人たちに対しての目はいつも暖かく、「音楽評論を通して現代という時代を見る」という眼が大事なことを幾度となく教えてもらいました。 支持される演奏家の解釈が時代と共に変化するのも、そういう表現が求められる時代のめぐりになってきたからだという解釈をされます。

 東日本大震災後の水戸芸術館での挨拶では、甚大な震災被害を想定外という言葉で間に合わせるような気風を見るにつけ、 その人たちを責めるというよりも自分たち日本人全体としてのイマジネーションが貧困だったことを認めたうえでこう話されました。 芸術の仕事というのは、今目の前に見えているもの、あるいは見えていないものを契機として物事を想像する力、今までそこに無かったもの、 だれも夢見たことの無いようなものを一瞬でも出現させる、そういう働きが芸術の根本的な仕事の一つだと言います。 今回のことで想定外っていうことは、芸術に関する仕事をしている自分達にとっても、本当は他人事じゃないんだ、 そう自省されていました。新しいものを作るうえで一番大事なことは想像力で、それを感じ取れる力を培うのが必要だとし、そこに芸術の役目、 可能性を見出していくことを求めていました。
目の前のことから半歩でも踏み出して、もう少し豊かなもの、楽しいもの、もう少しビターなもの、毒のあるものを想像する。 そういったことをやってみて欲しいと若い人たちに語っておられました。

 遺稿となった音楽雑誌に連載していたエッセイの表題が、孔子の論語から取った

「これを知る者はこれを好む者に如かず、これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」 でした。

 知っているだけの人は好んでやっている人にはかなわない。好んでやっている人も楽しんでやっている人にはかなわない。 そんな人生訓を言い表したタイトルでした。

遺稿にあった一文をお借りして追悼とします。

『「音」は音楽の生命である。しかも、その生命は一瞬にして消える。何とはかないことだろう。だから、私たちはそのはかない者の生命を大事にし、こよなく愛する。』

                                         
合掌





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