お盆休みを利用して、滋賀県琵琶湖東側、鈴鹿山脈の山腹にある「湖東三山」を 訪ねてきました。目当ては西明寺と金剛輪寺。本当は有名な紅葉の時期に来れれば一番見ごたえがあるのでしょうが、
猛暑の中、汗をかきかき長い参道を登ってきました。
それぞれ天台宗の寺院で、国宝の本堂・三重塔・二天門が残されています。
鎌倉時代から南北朝時代の創建と考えられていて、屋根の桧皮葺きと外部の蔀戸の構成が特徴かつ印象的です。
時代様式から和様と呼ばれる造りになっており、柱は円柱で、隅柱が他の柱より少し長くなっている隅延びという工法が使われています。
後世のような華美な彫刻も少なく、男性的で力強い出組になっていて落ち着きを感じさせます。内部の内外陣の境は低い格子戸と大きな
菱欄間が入れられていて、安置されている本尊は薬師如来像と阿弥陀如来像で、これらもいいお姿をしています。
真夏に訪れる人も少ないせいか、境内は閑散としていて周りの木々に止まった蝉の声がやたらと大きく騒々しく聞こえていました。
蝉と言えば、西明寺の境内は二年ほど前に封切られた「蝉しぐれ」という藤沢周平原作の映画の一部場面になったところで、
切腹させられた父の亡骸を主人公が受け取りに来て待たされる場面がこの西明寺本堂の正面でした。行った時期と同じように
暑い夏のシーンとして描かれていて、入っている蝉の声は効果音ではなく西明寺境内の蝉ではなかったかと思われるようでした。
山深い奥地に境内を造成して、重たい材料を運びつつ秀麗な伽藍を建てた昔の工人に敬意と尊敬を抱かずには居られません。 織田信長の比叡山焼き討ちの際にかろうじて免れたもので、二天門より下はことごとく焼失したようです。 参道の傍らにお盆だからでしょうか、お地蔵さんに赤い「かざぐるま」と前掛けが真新しく掛けられていたのが幽玄な感じを 演出していました。
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