自動車のエコポイント制度が8月で切れて先食いになった分、車の売れ行きが少しダウンしていると聞きます。
でもその中にあってエコカーと呼ばれるハイブリッド車の売れ行きは好調が続いているようです。
トヨタのプリウスやホンダのインサイトなどは、いつも売れ行きランキングの上位に顔をのぞかせています。
ご存知の通り、ハイブリッド車は電気モーターとガソリンエンジンの両方を使って駆動する方式ですが、
究極の無公害車である燃料電池車、電気自動車が普及するまでのつなぎ役だとも言われています。
12月には日産自動車が「リーフ」という電気自動車を発売するようですが、自宅のコンセントで電気を充電させる「プラグイン」式の電気自動車が普及してくるのも、
そう遠い将来のことではないでしょう。
走行距離、充電スタンド等のインフラ整備など、クリアしていかなければならない課題はまだありますが、
クルマの非化石燃料化は避けられない流れになっています。
ここに、プラグイン式のクルマ社会と住宅との関係が将来の住まい方に影響してくることを示唆する「スマートハウス」という考え方が、
実現に向けて青森・六ヶ所村などで実証実験を始めています。
「スマートハウス」とは、住宅内のエネルギーを“見える化”することによって、エネルギーの需要と供給をコントロールできる住宅を差します。
簡単にいえば、エアコンやテレビ、照明など家電製品が消費した電力量を専用モニターやテレビなどに表示する一方、天気や時間帯によって、
太陽光などで発電するタイミングを制御したり、センサーを活用して、無駄なエネルギー消費を抑制したりするシステムを言います。
電気自動車を30分で充電する急速充電設備を自宅に設置した場合、電気の契約容量を上げなければならなかったり、
地域によっては月額の電気料が8万円位になってしまうそうで、その割高感で電気自動車の導入が進みにくい一因になっていると言われています。
また、自動車そのものから排出されるCO2は少なくなりますが、充電するために火力発電によって生み出された電力を使うと、
トータルではCO2排出量は多くなってしまうと計算する人もいます。
そこでスマ−トハウスを運用して、電気自動車の普及に結びつける、文字通り車の両輪としていくために、
トヨタ自動車など自動車業界が力を入れているというのです。電気自動車を太陽光発電の蓄電機能として利用すれば、
住宅への再生可能エネルギーの導入を更に促進できるのも狙いだと言います。
そんな観点から、自動車業界、電機業界、通信業界など異業種の参入によって住宅の運用を変えていく構図が進んでいます。
住宅が単なる住まいの器から、社会インフラの一部として機能していく大きな転換点を見るようです。
国も、環境省が発表した「地球環境温暖化対策に係る中長期ロードマップ」の中で、2030年時点で全ての新築住宅を、
50年時点で既存住宅を含めた全ての住宅でゼロエミッション(CO2排出量をゼロ)住宅化する目標を掲げて動き出しています。
では異業種に主導権を握られた感のある住宅・建設業界はどうすればよいか。
自然エネルギーを最大限に生かして住宅そのものをゼロエネルギーに近づけることが求められ、
設計側の責務になっていくことは避けられないこと、住宅が建設されてから解体されるまでの間に発生するCO2の総量を、
太陽エネルギーなど再生可能エネルギーの活用によって相殺し、最終的にはマイナスにしようという方向になっていくことが求められてきます。
確実に言えるのは、今後ユーザーが家を選ぶときの関心が「新築時」だけでなく、「建てた後」に広がっていくということです。
われわれも、FPの家のような高断熱性能の技術を通して、環境負荷の小さい住宅を供給してきましたが、
今後これらを最大限に生かしたシステムを整備して、ユーザーのエコライフに寄与していくことが社会的責任になってきそうです。
スマートハウスの動きが10年後の住宅産業に与えるインパクトは大きいと言えます。
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