今進行中の寺院本堂の構造現場見学会をこの彼岸中に行いました。
といっても住宅の見学会のような一般向けを対象としたものではなく、檀信徒の方々を対象とした見学会です。
多くの場合、寺院本堂の建立は多くの壇信徒の方々の協力と浄財から成り立つもので、
一個人のみで出来るものではありません。発願があってから建設委員会というものを立ち上げて、
規模、形を想定しながら既存寺院を見学してから設計に入り、図面が確定したのち業者を決めて、
見積り、契約となってやっと着工になるという長い時間経過が必要になる大事業です。
業者側にとっても契約後は材料調達に吉野地方や台湾にも出かけて材料調達をし、
現寸図を書いて屋根の反りや彫刻の型を起こして墨付け・加工となっていきます。
上棟までが長い時間を要するわけです。
今回の本堂は木造の二階建てで一階部分が一般で言う客殿部分で、二階部分を本堂とする形式になっています。
床面積150坪で唐破風の玄関を持つ構造となっています。大工の造作工事が山場を迎えている頃合いに合わせて、
広く壇信徒の皆様に新本堂の中身を披露しながら経過報告を行うことを目的としての今回見学会です。
住宅でもそうですが、完成見学会では全体像とその仕上がり具合がよく分かって見栄えがするのですが、
肝心の構造材や隠れてしまう部分の工事については、やはり構造見学を開いて見ていただくのが一番です。
本堂上部を支える地松の大梁や床組み、断熱材、そして設備関係の配管やダクト類などは文字通り
「縁の下の力持ち」ですので、仕上材で隠れてしまう前に是非とも見ておいていただきたい構造材なのです。
長期優良住宅や200年住宅構想もあって、今住宅では長いスパンを保守も施しながら長く使っていこうというのが、
環境や省エネを考えていくうえで主流となっていますが、
寺院本堂では更にもっと長い期間持たせていくことが期待されます。
そのためには保守管理が容易なように工夫しながら、樹齢のいった太い部材を使い、
乾燥と断熱に配慮して無用な結露を防ぎ、金物も錆びないようにステンレス材を多用するなどの工夫をしていきます。
そして現在の基準法に適合するよう許容応力度設計による構造計算をしつつ、
耐力壁、金物補強を施しても行かねばなりません。
そういう現代の技術を導入しながらも、仕口や継手には古来からの技法を取りこんでいきます。
長ほぞ込栓や鯱継、格天組等は今でも使って行きたい技法類です。
そんなお話をしていきながら説明と実際の現場を確認することで皆様には納得して戴ける気がするのです。
いつも大工たちと決めている事があります。
・「完成した本堂にみんなが手を合わせてくれるような建物にしよう。」
・「いつの日か解体されるときに、こんな仕事をしたんだと後世の
人に褒められるような仕事を残そう。」 そんな気持ちでやって
います。
暑い夏が去って、空気の乾燥した気候になってきた彼岸の天気の良い日
に、木の香りを胸一杯に吸ってもらいながらの楽しい見学会の一日となり
ました。
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