今月、イタリアのラクイラというところでサミット(主要国首脳会議)が開かれました。
このラクイラという地は今年4月に大地震に見舞われたところで、ベルルスコーニ首相が復興状況を各国首脳に見てもらうために
急遽開催地が決まったようです。
中川問題で地に落ちた感のあった日本の評判が、そのイタリアで今、ふたつのことを契機にV字回復しているということを、
イタリア在住の作家・塩野七生(しおのななみ)さんが伝えています。
第一はローマで開催中の「広重」の展覧会で、早くも入場者が2万人を超えたという盛況ぶりで、特に若い人が多いそうです。
「東海道五十三次」で名高い安藤広重ですが、その浮世絵人気のほどが察せられます。
第二は先ほどのラクイラを襲った地震です。日本に似てイタリアも地震帯の上に乗っている国ですが、
地方都市のラクイラを中心にした一帯がマグニチュード6の地震によって壊滅状態になってしまいました。
中世の石造建築物が多い
イタリアは石を積み上げただけの作りが多く、厚さは五十センチもありますが、地震の横揺れが来ると無抵抗に上からぐしゃっと
つぶれてしまいます。地震が起きても火事にはならない代わりに、上から垂直につぶれてしまうケースが多く、
その為、ラクイラでは山岳地帯で人口密度が低い地方であるにもかかわらず300人を越える死者を出してしまいました。
ここでイタリア中から声が挙ったそうです。先進国の中ではイタリア同様地震大国の日本では、この程度の地震では死者は出ない
というではないか、と。これにイタリアのその分野の専門家たちがここぞとばかり答えたそうです。「日本人は、耐震技術の向上と
その普及に熱心に取り組んでるのです。」
それ以来、日本に学ぼう、という声がわき上がり、連日テレビや新聞で日本の耐震対策が称賛され始め、今も続いているというのです。
地震国日本ができることがここにあるような気がします。関東大震災から新潟、宮城沖、阪神淡路と様々な震災を経験し、
その都度耐震技術を向上させ、今では耐震のみならず免震・制震といった技術までが一般住宅にも普及し始めているこの国です。
耐震技術の専門家をイタリアに派遣してそのノウハウを伝え、耐震技術の粋をつくした建造物を建てて贈ることでも出来たら、
イタリアのマスコミはこぞって報じるでしょうし、更にはイタリアに限らずヨーロッパからも中東からも見学者が殺到するに
違いありません。ものを作って輸出で喰ってきた日本ですが、それに陰りが出てきている昨今、この耐震技術の輸出がその後大きな
ビジネスチャンスに発展もするような予感さえします。しかもあちらがトクすると同時にこちらもトクする形で。
訪問中の麻生首相にはそんな「顔の見える外交」をして貰って不人気挽回の一助にすればよかったのにと悔やまれます。
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