社寺材に使うヒバ材の検品のため台湾に出向いてきました。
3年ぶりに訪れた3月初旬の台湾は旧正月が終わってひと月ちょっとというのに日中の気温が25℃と、
もう半袖でもよいくらいの暑さで、来月4月にはもう梅雨に入ります。
製材をいつもお願いしているところは東海岸の宜蘭県にある製材所ですが、前回までは台北から車で中央山脈を峠越えして
3時間半くらい掛けて行ったものですが、昨年から山脈をぶち抜いた大トンネルが完成して1時間半で行けるようになり驚きました。
台湾の製材所はかつて日本の統治した期間が50年あったためか、尺寸挽きができるので助かります。比較的製材技術も
しっかりしている上、カナダからの直輸入材を直挽きしてくれるためコストも抑えられます。しかしここ何年かの不況によって
製材業者の数が集約され、10年ほど前には数十社あった東海岸の製材所もいまは2〜3社に減ってしまっています。
台湾経済も昨年末からのリーマンショック以来、対中国の輸出額が激減して改めて中国への過度の輸出依存が問題視されているそうで、
発足1年余の馬英九政権の戦略課題になっているとも聞きます。
台湾と中国との関係は統一と独立という政治的な絡みがあって複雑で、大陸からやってきた外省人と原住の内省人との確執だけでなく、
何年か前までは考えられなかった事ですが、建国の祖である蒋介石の再評価まで行われていると聞きました。彼が外省人というだけでなく、
莫大な隠し資産の発覚による反駁もあるのでしょう、これまで「中正国際空港」と呼ばれていた空港も2年前がら「桃園国際空港」に
名称替えされていたことに少々驚かされました。「中正」とは蒋介石総統の別号でしたから、これを敢えて変えたということになります。
我々日本人も日中戦争からの歴史的経緯を考えると、現地の方の話にもなんとなく他人事には思われない係わりを感じてしまいます。
そんな中、開通して1年余の台湾新幹線に乗ってみたくて、時間を工面して終着駅の「高雄」まで往復してきました。
時速は約270キロで台北から約1時間半で高雄に着きます。
ご存知のように日本の新幹線の初の海外輸出で700系の車両が使われています。
紆余曲折あってレール下までは独仏連合のグループによるプロジェクトで、車両と運行システムが日本の新幹線という合作型ですが、
乗り心地は国内新幹線同様静かで安定していました。
南に向かうにつれ田園地帯が広がり、最初は水を張り始めた田んぼの風景であったものが、高雄に近づくにつれ稲が青々と茂っている
風景に変わっていく様を見て、さすがに北回帰線以南の熱帯二期作地域だとの感を強くしました。
西海岸地域は扇状地が大きく開け、
東には玉山(ゆいさん)に代表される3000m級の山々が聳えていて美しい景観を湛えています。17世紀にここを統治した
オランダ人がこの島を「フォルモサ(美麗島)」と呼んだ気持ちがわかります。(高雄の地下鉄の駅名に「美麗島」があるのを見て感激!)
でも日本の新幹線と違うところは赤字路線だということ。我々が乗った時もガラガラで利用客がまだまだ少ないとのことでした。
台湾に夜着いて3日目の午前中に帰国するという2泊2日の強行日程でしたが、
かろうじて「からすみ」のお土産だけは買って帰りました。
来週にはヒバ材が陸揚げされる予定です。
|