以前この欄で紹介したこともある欅材の伐採で留め置いてあった
丸太を先日盤挽き製材してきました。
伐採から約2年弱の期間ですのでまだ本乾きとはいきませんが、製材品にすることで乾燥を速める狙いもあります。
3本あったうち最も径の太い欅丸太は樹齢約150年の目通り5尺の大木と以前にご紹介しましたが、当初運搬時には12トン
の幹重量があったものが製材台に上げる際の計量では8トンほどになっていましたが1台のフォークリフトでは持ち上がらず2台で
移動しました。
製材しながらどんな目のものが出てくるかはいつもドキドキするものですが、今回はきっと素姓の良いものだろうことが
予測できましたので安心して見ていられました。
樹皮の甲羅部分を何回かに分けて削り落としてから中の板目部分が現れましたが、案の定赤みを帯びた目の素直な杢目が出てきました。
独特の香りとおが屑に囲まれながら巾8寸ほどの盤を4枚ほど採りました。
他の2本も同じように径に応じて角材や平角材に製材してみましたが、
この間帯鋸のバンドソーの刃を2回も交換しなくてはならないほど欅材は堅い樹肉です。
今後、盤と盤の間に筋(台)を入れて何年か寝かせて乾燥と変形を見定めますが、きっと良い虹梁か桁材になってくれることを
思いながら待つこととなります。
今の製材はレールに乗った架台に丸太を乗せてレーザー光線を墨代わりに照射し、帯鋸という効率の良い製材道具で板状に
製材することが容易ですが、かつてはというより昔は長い間、人力で「オガ」と呼ばれる手挽き鋸で2人一組になって製材したもので、
葛飾北斎の富嶽三十六景の木版画にみられるような重労働だったと思います。
ただその時のほうが楔割りや竪引き鋸を使用することで木の繊維を切ることなく引けるので後の割れ方が少なかったとも
言われています。 効率の良い分木には負担をかけているのかもしれません。
その製材所も近在にはだんだん少なくなってきてしまい、その技術者も年々少なくなっています。材木屋さんがかつては丸太を
仕入れて自分のところで製材をするのが当たり前でしたが、今は乾燥した製材品が多種しかも安価に出回るようになって、
製材では採算が合わなくなってしまいました。
端材として出る甲羅樹皮の部分を貰い受ける業者がいたり、おが屑を養豚場などに敷き詰めるために引き取ってもらったり、
またカブトムシを飼うのに子供たちがかつてはよく貰いに来たりと、循環型のサイクルができていたのですがそれも今は昔です。
齢150年の木を製材した以上それを上手に使わせてもらうと同時に、次の世代のための木や森林のためにお返しを しなくてはなりません。
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