材料の検品のため、静岡県の天龍地方を訪れました。
平成の大合併で現在は浜松市の一部に編入となりましたが、浜松駅から車で約1時間半
北へ行った水窪(みさくぼ)という場所に共同組合の木材センターがあります。 もう長野県境に20分という山間部です。
天龍は杉で有名なところで、樹齢80〜90年の伐採期の杉を多く産します。明治期に金原明善翁が天龍川の治水に堤防を
築いた後、治山のために財を投げ打って植林をした産物が今の天龍美林で、その先見の彗眼は地元の人達にも敬意を持って
語られています。かつては「暴れ天龍」と言われた天龍川も、今はダムで堰き止められ人造湖が広く水を湛えていて
昔日の面影はありません。 今回の目的は、天龍杉の新月伐採木と言われているものの検品で、水を吸い上げない冬の伐採時期の
新月の時だけに限って伐採した杉材を見ることでした。新月伐採木はデンプン質が通常のものより少なく、半年くらい山で葉枯らしを
してから製材すると一般の伐採期のものと比べて虫や腐れが入り難く、割れにくい材に仕上がると言われます。すでにオーストリアの
研究者からも同様のデータが出ているそうで、ノイモントホルツ材と呼ばれているそうです。
動物の出産時期や、植性など月の満ち欠けとの関係とは古くから言われてきましたが、材木の伐採期も関係しているというのも
大変興味深いものがあります。
今度その材を使って住宅を建ててみることになっていますので、良い結果が得られるとよいと
期待しています。 山に入ってみて感じたのは、間伐や枝打ち等の山の手入れがだんだん厳しくなって不行き届きになってきている
現実です。 経費が出ないとの理由で、間伐した木をそのままの状態で放置してあって、下へ降ろせていない状態でした。
山の管理不足はやがては川への養分を減らし、海の魚介類へのプランクトン不足を招いて漁獲量を減らします。宮城県では漁業の
育成のために山の管理を行っているとも聞いています。
民間に任せたまま、経済的理由だけで山が疲幣していくのは、 将来の産業育成にも関連してくるものだけに今後国の管理で食い止めていかなくてはいけないのではと強く思いました。
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