新年あけましておめでとうございます。
暖冬で迎えた新年は中東情勢が不穏な動きで落ち着かず、中国経済の減速もあって、この1年はどんな経済の動きになるのか不透明さも垣間見えます。
スローガン政治と呼ばれているように、国のトップは1億総活躍とか出生率1.8とかGDP600兆とかいったくすぐったい目標を掲げますが、
水野和夫氏や内田樹氏などの論を借りれば資本主義は搾取するフロンティアがなくなり終焉を迎えていて、新たなシステムを創出していかなくてはならない時期に来ているといい、
その証拠が世界的なゼロ金利、利潤率ゼロになって表れているとしています。政治が安定するのは悪いことではないけれど、
旧態依然の思考でバラマキ政治を行ってツケを払わされるのは今の若い世代です。
男子の35歳の既婚率が50%、生涯未婚率30%という単身社会の急増を目の当たりすると先のスローガンが絵空事にしか思えません。
おっと、新年早々暗い話題になってはいけませんね。
木材調達の依頼をしている台湾のエージェンシーの方にお会いする用件もあって、この正月を台北で迎えることになりました。 といっても新暦正月は中国にとっては元旦のみ休日であとは普通の平日。旧正月の大休暇を前にかえって忙しく動いている店舗や現場が見受けられました。
台北は昼間人口が約300万人、夜間人口が250万人と云われ台湾全体の1割強を占める大都市です。 結構日本からの観光客も多く、故宮博物館、中正記念堂、龍山寺、台北101や近郊の九份などを廻るコースが一般的のようです。
亜熱帯特有の食材の豊富さや夜市でのアイテムの多さを見るにつけ、中国人の旺盛な生命力と横溢する活気に圧倒される思いがします。
食事が日本人にも合うようで、小籠包や北京ダック、フカヒレなどの名物が良く出されますが、よく考えれば北京ダックはアヒルの皮部分のみの料理だし、
サメのヒレなどコラーゲンが豊富なのでしょうが軟らかいだけで味も素っ気もありません。ツバメの巣などと共にきっと珍しがりの皇帝のための宮廷料理だったことが想像されます。
その証拠に一般庶民は牛肉麺や水餃子などの安くてうまいものを食しています。
そんな台湾は新年気分そっちのけで16日に迫った総統選挙一色です。3期目を法律で禁じられている総統職は2期目の馬政権が任期を終え、
与党国民党の朱立倫氏と野党民進党の蔡英文氏の一騎打ちの様相を呈しています。下馬評ではもっぱら野党の蔡氏が有力のようで裏では200万元もの賭けも行われているとか。
現政権の国民党・馬氏は大陸中共との接近が批判的に見られているようで、支持率は下落気味です。国民党のエースと言われる新北市長の朱氏を担ぎ出しての総統選ですが、
学者出身で女性候補の蔡氏は反中共と独立色が強い候補として人気のようです。
台湾人の大陸との感情は複雑です。経済的なつながりが強くなってきたとはいえ、もともと大陸で辛亥革命を戦って勝利した中華民国は自分達だし、
後から起こった内陸部の農民層だった共産党は今でこそ中華人民共和国ですが、民主化と個人的な経済的豊かさでははるかに上を行っているという自負もあります。
その証しが暦に西暦を使わず民国暦を使用していることです。辛亥革命の翌年がその元年ですから、今年は民国開国105年の表記が公式の場を含めて使われています。
中共を見る目も冷ややかで、この一党独裁がそう長く持つとは思っていないフシがあります。独立色の強い蔡英文候補には中共側からの牽制が多くあるようですが、
政権交代が現実味を帯びて来ています。一緒に行われる国会にあたる立法院選が焦点で、ここでも過半数が取れれば独立志向の民進党は安定政権となります。
「台湾有事」という言い方がありますが、今でも台湾海峡の大陸側には台北や高雄に向けて中距離ミサイルが配備されているといいます。
よもやそんなことはないとは言い切れない怖さがあります。尖閣や南シナ海の領有権どころではない同胞の独立こそ中共が最も恐れることなのですから。
4,000m近い背骨のような台湾山脈と豊かな緑を見た16世紀のポルトガル人が思わず「おお―、美麗な島」と呼んだこの島は、
かつてはポリネシア系が先住し16世紀にオランダが植民地化、鄭成功の勝利で漢民族が入りその後の日本統治、そして光復後の蒋介石等の来省と続き、
この間幾多のレジスタンス運動も含めて波乱万丈の歴史をたどってきました。
この先台湾がどんな方向に向かって行くのか、近い外国である日本にとっても興味の尽きない国なのです。
東京でいえば浅草寺に当たるような人気寺院の龍山寺という棟のそっくり返ったところでのお参りが今年の初詣となりました。
よき1年となりますよう!
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