8月上旬の余りの暑さに、一時しのぎでもと逃げるように長野・蓼科高原に週末疎開(?)してきました。
軽井沢や清里など一般に避暑地と言われる場所も観光地化、
都会化されてしまって車の多さと人の賑わいで涼しさを感じるどころか逆に暑さを感じてしまうところもありますが、
八ヶ岳西麓の蓼科高原は標高1,200mほどの高さにあり、榛の木やコナラなどの木々が豊富で乾燥した高原の空気を味わうことができます。
一帯は東急系列が開発したリゾート地で、ホテルからスキー場まで揃って夏冬楽しめるようにできてはいますが、
猥雑さはなく少し落ち着いた雰囲気を持っています。
泊ったのはコテージでしたが、同じ温度でも夜クーラーを使わずに寝られるのはやはり睡眠の質が違うように思われ、
近くを流れる清流のせせらぎの音が聞こえ余計に涼しさを感じさせてくれました。
翌日はせっかく来たので、蓼科を挟んで八ヶ岳と反対側にある入笠山(にゅうかさやま)に登ってみました。ゴンドラで一気に5合目付近まで行くことができ、
降りるとそこは気温17℃という世界。眼下に富士見町を見下ろしたその先には八ヶ岳の全貌が見えるわけでしたが、
あいにくその日は雲がかかって見えずじまい。
6月の晴れた日には手前にドイツスズランの白い花が一面に咲き誇り、初夏の八ヶ岳が見下ろせるのだそうです。
8月ではスズランはとうに時期を過ぎて、その葉株のみ見えるだけで想像するしかありませんでした。
ゴンドラ駅から先は入笠山への登山道となっていて、途中入笠湿原を抜けて行けるようになっています。
この湿原は木道がよく整備されていて歩きやすく、脇には多くの種類の高山植物を見ることができ目を楽しませてくれました。
南アルプス系山中での湿原は珍しいとのことで、3億年前の秩父古生層に属する湿原ですでに陸地化が進んでいる状態といいます。
花の名前はトンと不案内ですが、白花から黄花、紫花と春から秋にかけて花が絶えないのだそうです。
行ったのが夏の真っ盛りの時期だっただけに、ワレモコウやキリンソウ、サワギキョウなどが短い夏を惜しむように奇麗に咲き誇っていました。
湿原を過ぎると休憩所がある登山口にでます。そこから少し登ると入笠山山頂への登山道が2股に分かれている追分に出ます。
岩場コースを行けば40分との案内が出ていましたが、帰りの時間と頂上の雲の多さを考えて今回は登頂は断念しました。
晴れた視界の良い時には1,955mの頂上からは八ヶ岳をもとより、
南・中央・北アルプスから乗鞍、御嶽、富士山まで360度の展望が楽しめるのだそうです。
百名山にこそ入っていない入笠山ですが、初心者から上級者まで楽しめる隠れた名山なのです。
それにしても余りの暑さ。天気予報では毎日のように「不要不急の外出は控えて!」と宣っていますが、こちらは外の現場仕事。
日本で一番暑い地域に住んでいる不遇を呪いながらも、もう少し年をとってこの酷暑を乗り切れなさそうになったら、
こんな高原に1か月くらい滞在して下界の夏から逃げてこないといけない日が来るかもしれません。
そういえば茅野や富士見町付近には尖石遺跡(とがりいしいせき)や井戸尻遺跡など縄文期の遺跡が数多く残されています。
今より平均気温が10度も高かった5,000年前の縄文前期、海水面も上昇して関東平野でいえば、
東京は上野と板橋を残してあとは全部海底の中、栃木の野木や藤岡付近まで海が迫っていたのが貝塚跡でわかるといいます。
暑さと海岸線を奪われたことから縄文人たちは逃れるように標高1,000mを超す狩猟採集に適したこの八ヶ岳の高原地帯に全国から民族大移動してきました。
出土した渦巻文土器からも分かるように一帯は活気に満ちた殷賑な集落を形成して豊かな文化を花開かせていたことが想像されます。
これからもこんな暑さが毎年続くようだと、かつての縄文人がそうしたように高原に移り住むという先祖返りのようなことをしなくてはなりませんね。
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