葦原の瑞穂の国と言われた日本は古来から木に覆われた国でした。 作るのに膨大な木の燃料を必要とした鉄が発達した古代において、伐採により朝鮮半島は禿山になって しまいましたが、日本の山は３０年で元に戻ったと言われています。 恵まれた森林の恩恵の中で、日本の建築はこの木によって作られて来ました。 いつも用材の年輪を数えるたびに、樹齢４００年余りといえば信長の時代に生えた木なんだと想像を膨らませると、 つい手を合わせたくなってきます。 ３００年の樹齢の木を使って３００年持たせて次の木の生長を待つ、 と昔から言われました。今で言う環境サイクルの実践です。 しかした大径木が国内では調達できなくなって久しく、今では社寺建築の用材の主流は米国、カナダに頼っています。 何か肝心な事を置き忘れて来て、後世の世代に申し訳ないようなことをしてしまっているようで心が痛むこともあります。 だからこそ丈夫に作って長持ちさせる事が大事です。 古代の技法は大変すばらしいものですが、一部大衆受けするように曲解されて伝わっていることも少なくありません。 伝統技術に現代の建築学的技術を組み合わせて合理的、実証的な工法を採用していくことが重要だと思っています。