黒猫荘
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カフェ「白梅軒」
PLMS : mys030  
オーナー:川口且真 
(OPEN:1999年7月19日)

「白梅軒」へようこそ。
ジャンル不問で、皆様の本の話題をお待ち申し上げております(横レス歓迎!)。
「集めても読んでも本はおもしろい」(by 店主)
「紙の悪魔を集めて笑え。お前が買わねば誰が買う?」(by よしだまさしさま)
「多読を誇らず、少読を恥じず」(by 内藤陳氏)


伝えられるお客様の数人。(since 1999/09/13)

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4785. 2013年10月10日 22時43分54秒  投稿:かわぐち 
赤塚敬子『ファントマ』(風濤社)読了。面白い!夢中になり読みふけってしまった。
フランスの暗黒小説のヒーローの誕生からその与えた影響までを詳細に記述。なかでも本書の特徴は、約半分を費やしてシュルレアリスムを中心とした芸術面への影響に言及していることであろう。通常ならこうしたものが生み出される社会的背景、さらにまた逆に社会的影響が語られるのが(わかりやすいといえばわかりやすい)常套手段ではなかろうか。
とにかく紹介すれば「へぇ〜」と思う人が多いに違いない〈ネタ〉は幾多もあるが、他人の紹介をいただいて得意になるのも恥ずかしい。ぜひお読みいただきたい。
ちなみにファントマが広く知られたのはやはり映画の影響、それも1913-14年にかけて制作されたルイ・フイヤード監督によるものが大きい。
この作品、2004年にNHK-BSで放送されたのだが、昼間で、放送時間の移動があり、そのために3・4作目は録画に失敗…。以後、放送されていないのでは。
海外でDVDも発売されてはいるが、なまじ日本字幕放送があっただけに再度の放送を期待して買いそびれている。

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4784. 2013年10月10日 00時07分40秒  投稿:かわぐち 
立研介『ほとけを造った人びと』(吉川弘文館)読了。
題名・全書判サイズから仏像入門の1冊にみえる。そう思って読むと困惑するだろう。飛鳥時代から鎌倉前期までの仏師の足跡を史料で探る学術書。
仏像の本はたいてい○○仏とはどういうものかの解説ばかり。それを造った仏師が話題になることは少ない。まあ、本書で記述される人たちのように記録が残っている人のほうが少数で、大部分の仏師は名前も不明なのだから当たり前か。
気軽に読むにはきついかもしれないが、〈入門〉ばかり読んでいて物足りなくなっている人にはおすすめしたい。

ルイ・シュヴァリエ『三面記事の栄光と悲惨』(白水社)読了。
ロミの『三面記事の歴史』(国書刊行会)の翻訳が刊行されたこともあり、この機会にモネスティエ『図説 世界三面記事全書』(原書房)と併せて読むことにした。現在私が知っている限りでは、この分野で日本語で読めるのはこの3冊くらい。
本書は、『歓楽と犯罪のモンマントル』の著者だけあって、興味本位に扇情的な三面記事をセレクトして紹介した本ではない。
三面記事が近代フランスにおいてどのように受け止められていたかを、特に文学者に比重を置き概観したものだ。したがって、好事家的な楽しみのみを期待する分には失望するであろう。
私が本書で心に残ったフレーズは「三面記事はいつも他人事」。確かに自分の身内なら三面記事で知ることではなく、国家・政治・経済のように回りまわって関係してくる分野は三面記事にはならないであろう。
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4783. 2013年09月28日 17時53分23秒  投稿:かわぐち 
ゲイビー・ウッド『生きている人形』(青土社)読了。
おそらく翻訳が出た2004年に割とすぐ読んだはずだ。しかし、印象は薄かった。
今回、このところのからくり人形に関する知識を整理するために再読してみた。
ヴォーカンソン、「ターク」、エジソンの人形がテーマとなっている1〜3章は、知識の整理はできたものの、目新しいことはなかった(再読だから当たり前か)。
しかし4章メリエス、5章「フリークス」に関する記述は、まさかこういうものが対象になっているとも思わず(すっかり忘れていたわけだ)興味深く読めた。
これは本書は「からくり人形の本」という思い込みのため、これらの章の内容は別の本だとインプットされていたからだろう(たとえば第5章は完全に柳下毅一郎『興行師たちの映画史』だと思っていた)。

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4782. 2013年09月25日 20時16分51秒  投稿:かわぐち 
A・M・ルロワ『ヒトの変異』(みすず書房)読了。
奇形学を遺伝子面から見た考察。見世物、文化史面から見た本は読んではきたが、こうした面からのアプローチは私個人にとっては新鮮。
どうしてもその問題上、〈差別〉とは向き合わざるをえない分野だが、こうして遺伝子異常の面から解説されると、どう向き合えばよいのかヒントをもらったような気になる。
奇形学ではフィードラー『フリークス』(青土社)が価値を変えることのない名著であるのは間違いないところだが、ヤン・ボンデソン『陳列棚のフリークス』(青土社)も必読書であろう。
そのボンデソンが症例の典拠としているのが、G.M.Gould & W.L.Pyle- Anomalies and Curiosities of Medicineである。約900頁に図版約300点が収載。まだネットのない時代に6000円ほどで購入したが、検索を使えばもっと安く買えるはず。
日本では天保年間に『畸形図』という本があり、諸例が載っているが、その中のシャム双生児については馬琴『兎園小説外集』(日本随筆大成第2期24巻)に引用されている。
まあ、この分野の本は他にも多少持ってはいるが、引く人も多いだろうからよしておこう。
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4781. 2013年09月20日 22時36分54秒  投稿:かわぐち 
>よしださま
早速読み始められたんですね。エイズ以前の時代ということをお忘れなく。いまではさすがに怖いでしょう。
著者はヌード写真集まで出しておるので顔は簡単にネットで見られます。まあ平凡な顔かなと。

ピエール・プチ『モリニエ、地獄の一生涯』(人文書院)読了。
倒錯したエロスの特異な画家の実像。伝記というわけではないので、幼少期や学生時代のことはそれほど詳しいわけではない。ブルトンに認められ、画家として活動しながらの奇矯な行動が中心といえようか。
なにせ人物が人物だけに、どんな破天荒なエピソードが出てきても驚かない。
私が関心を抱いたのもブルトンの知遇を得てからのこと。意外にもブルトンは倒錯した性には冷淡(彼の父は警察官)。対してモリニエは破滅型のマゾヒスト。どうしてこの二人が親交を持てたのかと思ったが、やはり長続きはしなかったようだ。
モリニエについてはJean-Luc Mercie- Pierrre Molinier (les presses du reel)の英語版が出ている。
日本でも美蕾樹などでの個展はあったが公共美術館での展覧会は開催されていない。まあ、ハンス・ベルメール展もないような国では望めないか。
[27.143.84.251][Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729; McAfee)]

4780. 2013年09月20日 12時50分52秒  投稿:よしだ まさし 
今朝から『カトリーヌ・Mの正直な告白』を読み出しました。
ううっ、これって、通勤電車の中で読んでいていい本なのか?
しょっぱなからひたすら派手な展開に圧倒されています。
このレベルになると、ほとんど異世界ファンタジーのようなもので、とても本当の話とは思えないです。思わず、文庫本の背中に「ハヤカワ文庫NV」って入っていないか、確認しちゃいました(NFでした)。
とりあえず、ぐいぐい読めてしまいそうですね。
[36.2.13.159][Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 10.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/6.0; MAAU)]

4779. 2013年09月19日 20時28分32秒  投稿:かわぐち 
本が到着。The Resurrectionist- The Lost Work of Dr. Spencer Black
amazonのカートに入れたままであったが、先日のCuriosity Historyの紹介で俄然欲しくなり購入。
内容は、スフィンクスや人魚、ペガサスなど幻獣の解剖図(!)なのだ。ただ記述は生物学的にまともであろうとしており、「ペガサス脳」や「ミノタウロス胃袋」があるわけではないw。
巻頭にはこれを残したスペンサー・ブラック博士の生涯が語られる。しかし、私にはどうもこの人物が実在したとは思えないのだが。
モルゲンシュテルン(鼻行類)やアーマイゼンハウフェン博士(秘密の動物誌)の仲間じゃないのかな。
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4778. 2013年09月19日 20時12分38秒  投稿:かわぐち 
マーガレット・A・マレー『魔女の神』(人文書院)読了。
1931年初版刊行(翻訳は52年新版に基づく)。魔女学の古典。
ノーマン・コーンやギンズブルクに手厳しい批判を受けたマレーではあるが、やはり「古典」として目を通しておいたほうがよい。
さて、本書の感想としては、魔女というのがどの文明にも見られるシャーマンでしかないということ。「キリスト教に改宗しなかった者」なのだ。
魔女の悪魔との関係、サバト、妖術の類の話はほとんどがキリスト教の審問で〈明らか〉にされたものであることを認識しておきたい。
その手法は、民俗学的調査を踏まえ、その論にフレイザー「王権論」に負うところが多い。
先に「読んだほうがいい」と言ったのは、あくまである程度見極めようとする場合。
「魔女」研究については、上田安敏『魔女とキリスト教』(人文書院、のち講談社学術文庫)をまず第一に推したい。
[27.143.88.157][Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729; McAfee)]

4777. 2013年09月18日 19時54分17秒  投稿:かわぐち 
W・ハース『ベル・エポック』(岩波書店)読了。
ベル・エポックは大方では1900年から第一次世界大戦までの時期をいう。
本書はその時期、ヨーロッパ(といっても英独仏の3国だけだが)の綺羅星のように輝いた文化人たちのエピソードが綴られる星座図のようだ。
私が関心深く読んだのは、この時期に貴族階級でない女性の活躍が目立ち始めたこと。ルー・サロメ、コジマ、サラ・ベルナール等々、名前は知っていても詳しくは知らなかった女性が出てきたことが新しい時代を象徴するようだ。
4章までは割りと知っている人たちの「おさらい」のような感じで読み進めていたのだが、やはり著者はベルリンで活動していた文芸誌編集者であって、5章以下のドイツに対する記述が一番力が入っており、またこちらも一番知らなかったことなので新知がいろいろあった。
ベル・エポックというとセットで登場する感がある万国博覧会であるが、本書にはその記述が全くないのもかえって新鮮味を覚えたことを付言しておこう。
[27.143.88.157][Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729; McAfee)]

4776. 2013年09月11日 20時44分14秒  投稿:かわぐち 
店主でございます。2日続けて出てみました。

>よしださま
あら、またもやすごい早いお越しで痛み入ります。新宿には中央かどうかはわかりませんが、区としては所蔵があります。文庫にもなっているみたい。

トム・スタンデージ『謎のチェス指し人形「ターク」』(NTT出版)読了。
ポオ『メルツェルの将棋指し』でミステリファンにも御馴染みの、自分で手を考えてチェスを指す自動人形という触れ込みで欧米で人気を集めた「ターク(トルコ人)」の歴史。
これまで漠然としか知らなかった自動人形の誕生からその死まで、関連エピソードも交えて紹介する本書は、私にとってはありがたい存在だ。
2002年に原書が刊行され、05年にamazonのカートに入れたままにしていた本書だが、知らない間2011年に翻訳が出ていた。

タークを造ったのは、ケンペレンというハンガリー人。ハンガリー=オーストリア帝国の女帝マリア・テレジアの命で18世紀に造られた。これを見てもわかるように、このケンペレン、宮廷付きの文官で、インチキ人形でひと山たくらむ山師などではなかった。
乞われて仕方なくタークを披露はしたものの、晩年は見せることもなく物置に仕舞われたままであったという。
ケンペレンの死後、これを入手したのがメルツェルという興行師。彼はタークを従えて、欧州、そして米国へ。詳しいことはお読みになっていただくとして、ポオにその秘密を暴かれたわけだが、覚えておきたいのは、その正体を言い出したのはポオだけでもなく、またメルツェルが認めたわけでもなく、あくまでも推測に終わったということ。
ともかくメルツェルはほぼ破産に近い形で船上で死を迎え、タークはその後オークションで売られたあと、1854年7月5日、フィラデルフィアの火事でその生命を終えた。

前々から不思議に思っていたことは、タークの〈中の人〉のことだ。タークは相当強く、名人と呼ばれる人たちにもかなりの勝利を収めている。マリア=テレジアはもちろん、ナポレオン、フリードリヒなどとも対戦している。
しかし、中の人は拝謁も叶わず、どんなに名人に打ち勝ったところで名乗りを上げるわけにもいかず、人形の中で息を殺して腕と頭脳を振るっていたのだ。彼は〈王様の耳の秘密〉をついに吐露することもなかった。
本書11章では、その中の人の推定も描かれているのだが、これだけ秘密を死守できたのだから、ケンペレン時代に1人、メルツェルで3人くらいだろうと思っていた。しかし、著者によればこちらの想像以上に多くの人間が中に入っていたようだ。

[27.143.89.194][Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729; McAfee)]

4775. 2013年09月11日 12時31分16秒  投稿:よしだ まさし 
ちょうど11ヶ月ぶりの書き込みですね。
ご紹介いただいた本はたいそう興味深いので、機会があれば読んでみようと思います。はたして、新宿の図書館にあるかなあ?
[36.2.13.159][Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 10.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/6.0; MAAU)]

4774. 2013年09月10日 19時59分48秒  投稿:かわぐち 
店主でございます。再開店したと思えば、またもや休業状態になり赤面のいたりでございます。近頃は屋台(twitter)のほうがメインになってしまい…。やはり簡便さ・テクノロジーには勝てません。大概ばれてしまったので明かしてしまうと、アカウントはCentaurus@GingaStationです。

カトリーヌ・ミエ『カトリーヌ・Mの正直な告白』(早川書房)読了。
フランスの美術雑誌『アート・プレス』の編集長の職にある女性が、その奔放な男性遍歴を赤裸々に記述し、大ベストセラーになった本。
私は正直、とても〈感動〉した。ポルノグラフィは「我々が当然のように考えている道徳に対して価値の転換を提示するファンタジーである」というのが私の持論だが、本書はまさに私なんかのつまらぬ世界観に転換を迫るものであった。
興味深いのは、著者の関係を持つ相手の選択である。いわゆる〈ヤリマン〉女性はナンパされたら応じるという印象があったが、著者は

・旅先や酒場で声を掛けられた相手と寝ることはまずない。
・乱交パーティーのようなものはいとわないが、それ以外では関係した相手の紹介、あるいは仕事関係と寝ることが多い。

私が男性だからか、日本人だからか、(まあこれが一番の理由だが)小心者だからか、仕事関係は異性関係を求めるには一番避けたいところなので、衝撃であった。

さて、本書は性描写はもちろんあるものの、それが下品ではない。いってしまえば〈実用〉とはほど遠いのだ。これは絶えず著者が自分のセックスを〈批評・観察〉する視線を持っているためであろう。ここで著者が雑誌編集長であるということを忘れてはならない。
批評とは、「自分がなぜそれに感動する(あるいはしない)のかを分析して言葉にするものが根本であると思う。著者は男性、セックスについて、自分がどうしてそれを感じて知るのか、どういうセックスは好ましい、あるいはその逆なのかを絶えず分析して記述する。
本書に比べると、たとえ女性が書いたといわれるポルノグラフィでさえ、登場人物が絵空事にみえてならない。

万人に薦められる本ではないだろうが、私は人間というものに関心があれば決して読んでソンはない名著だと感じた。
三島由紀夫は、澁澤龍彦『サド侯爵の生涯』書評で「これを教科書として採用する高校があったら、それは人間性について最もまじめな見地を持った学校として推賞できるのである」と書いたが、本書に対して私も同じ気持ちである。

[27.143.89.194][Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729; McAfee)]

4772. 2012年10月12日 01時36分37秒  投稿:かわぐち 
ああ、すみません。まさか書き込みがあるとは思いもよらず(汗)、
9月30日ならまだそれほど間も空いてないじゃん、くらいに考えていました。

東映チャンネル、以前は確かに契約しておりましたが、いまはしてません。
「江戸川乱歩シリーズ 明智小五郎」を放送してくれたら直ちに契約と、
毎月「来月のラインアップ」をチェックしているんですけどね。
前回契約したのも、この放送があったからなんですが、ビデオで録画したため、
いまではテープはあるものの観られない状態です(涙)。
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4771. 2012年09月30日 20時26分27秒  投稿:砂時計 
こんばんは。
明日から東映チャンネルで「特捜最前線 傑作セレクション」が放映されますね(「2012」のほうはまあいいとして)。
店主さまはご覧になります?(たしか契約なさってたかと……)
第1話以外はすべて長坂秀佳脚本回で、それもテンションの高い話ばかり。
キカイダー伴直弥氏もゲスト出演する神代夏子死亡前後編、大滝秀治氏熱演の「死刑執行0秒前!」&「子供の消えた十字路」、怒涛の津上殉職前後編、そして終幕三部作。
もしよろしかったらこの機会に……。
[210.239.21.131][Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; ja; rv:1.9.2.12) Gecko/20101026 Firefox/3.6.12 ( .NET CLR 3.5.30729)]

4770. 2012年09月19日 01時20分05秒  投稿:かわぐち 
9月9日
思い立ち新宿御苑へ。「旧洋館御休所」が第2・第4土曜のみの公開なので。
建築としては、同苑内にある旧御涼邸も見逃せない。

一度帰宅して、武蔵野美術大学へ。「博物図譜とデジタルアーカイヴV」。
同大学が所蔵する、旧荒俣宏蔵書を中心とした博物書が並ぶ展示。
5回目なのだが、先の4回が図書館の一角の展示スペースであったのに対し、
今回は美術館の1室を使用した大規模な展示であった。
先のイメージを持っていたので、すぐに見終わると思い出掛けたのが大誤算。
100冊になろうかという博物書がずらりと並ぶ展示に時間はあまりにも少なかった。
図録、クリアファイル、豆本、付箋を購入。
クリアファイルと付箋は、大好きな美しいエルンスト・ヘッケルのクラゲ図だ。

9月15日
三井記念美術館「近江路の神と仏 名宝展」へ。
東京で近江の宗教美術を観られる機会は滅多にない。本展のチラシでも「初」と謳っている。
期待して見に行ったのだが・・・う〜ん、これはというモノは、昨年の滋賀3館合同企画「神仏います近江」で観たものがほとんどだ。
わざわざ滋賀に行った甲斐はあったなと認識はできたが・・・。これを先に観ていなかったら、感動できたと思う。
しかし、点数は単独一館の企画なので仕方ないが、すべてがガラスケースの中とあっては、滋賀近代美術館でそれこそ息がかかるほど間近で眺められただけあって、
物足りなさを感じずにはいられない。
「マウリッツハイス展」もそうであったが、こうして徐々に贅沢な不感症になっていくのかもしれない。

続いて葛西臨界水族園へ。今回足を運んだのは、「“うをのぞき”から“葛西臨海水族園”まで」という特別展が目当て。
上野動物園の水族館から130周年を記念して行われる歴史展示。期間が9月15〜23日と短い。
水族園は3連休初日とあってすごい賑わい。友達もいない私はぼっち見学なので、明らかに場違いであった。

9月16日
府中市美術館「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅展」へ。
今回のデルヴォー展は、まだデルヴォーがその世界を確立していない青年期、そして最期に描かれた作品まで、画家の作歴が紹介されている点に特徴。
いわゆる誰もが思い描く「デルヴォー」とは違った面が観られるのは貴重だが、多くは「デルヴォー世界」に浸りたくて来るんじゃないのかな。
そうした観客は肩透かしを食らう可能性大。そういう意味ではマニアックな企画なのだが、驚くことにこれが姫路・埼玉・岡崎・秋田と巡回してしまうのだからわからないものだ。

読了本
『瀬下耽探偵小説選』(論創社)
『角田喜久雄探偵小説選』(論創社)
ジョセフ・ニーダム『ニーダム・コレクション』(ちくま学芸文庫)
『大下宇陀児探偵小説選II』(論創社)
小野不由美『残穢』(新潮社)
エドモント・ハミルトン『キャプテン・フューチャー全集11 鉄の神経お許しを他全短編』(創元SF文庫)
日夏耿之介・矢野目源一・城左門『巴里幻想譯詩集』(国書刊行会)
『ヘルメス叢書1 象形寓意図の書・賢者の術概要』(白水社)

キャプテン・フューチャーの本の解説で、海外では日本で観られないアニメがDVD化されていることを知る。
それもドイツ、フランス、イタリアで。ドイツは廃盤らしく、アマゾン中古でもまあまあの値段(それでも日本でリリースされると、きっとそれ以上の値段だろう)。
フランスも廃盤らしいが、それでもテレビ版全52話7枚組が45ユーロほどだ。日本語音声収録らしい。
私は、実はアニメはほとんど(1話しか)観ていないので思い入れはないのだが、原作のファンなので見たくなっているところ。
いまはまだカート内だが、そのうちポチっと・・・。
[110.132.140.202][Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; GTB6; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729)]

4769. 2012年09月03日 01時02分56秒  投稿:かわぐち 
細々と続けている日常雑記であるが、溜まるとなかなか苦しい。
こうしていつしか止めてしまうのであろうか。
ひとまず今日までのことを箇条書きだけでもしておこうと思います。

7月24日 東急文化村にて「クライドルフ展」。

7月27日 東京国立近代美術館にて「吉川霊華展」。

7月28日 早稲田大学大隈講堂にて「歴博フォーラム 河童とはなにか」。その前に坪内博士記念演劇博物館、 會津八一記念博物館見学。
これで早稲田大学近代建築はひととおり押さえられた(校舎も味のある建物多いんですけどね)。

8月4日 江戸東京博物館にて「二条城展」。

8月7日 江東区森下文化センターにて「杉浦茂のとと?展」

8月10日 東急文化村にて「レーピン展」。

8月11日 東京藝術大学美術館にて「契丹展」、都立美術館にて「東京都立美術館ものがたり」、東京国立博物館常設展。

8月15日 三の丸尚蔵館にて「珍品ものがたり」。

8月17日 銀座松屋にて「タツノコプロテン」。

8月19日 約25年ぶりに全生庵にて「円朝幽霊画コレクション」。

8月24〜27日 大阪・和歌山旅行。以下はツイッターの再利用。

大阪では1日目は「大阪周遊パス」を使い、大阪城・歴史博物館・四天王寺・市立美術館・天然温泉なにわの湯・空中庭園と忙しく回ってきた。これだけ回り、交通費もすべてコミで2000円は安い。
2日目は、住友大社・綿業会館・東洋陶磁美術館・中之島公会堂・中之島図書館・日本銀行・大阪倶楽部・大阪ガスビルなど建築巡り。炎天下の中、よく倒れなかったと我ながら思う。先にツイートした学天則も嬉しい対面。
3日目は大念仏寺の後はレンタカーで寺巡り。観心寺・金剛寺・根来寺・そして高野山へ。私は後部座席でタバコをくゆらせては連れて行ってもらうだけのお大名。まるで澁澤龍彦スタイルだね。この日は宿坊泊。
最後の4日目は、高野山見学の後、丹生都比売(にうつひめ)神社・善福院・長保寺・紀三井寺。高野山の金剛三昧院の多宝塔が改修中で残念。これさえなければ和歌山県の国宝建造物が制覇できたのに。
大阪では1軒の古本屋にも寄っていない!自分でも信じられないくらいだ。

9月2日 世田谷美術館「村山知義の宇宙展」、横浜高島屋「ルパン三世展」、松濤美術館「藤田嗣治と愛書都市パリ展」。


ひとことずつくらいはコメントつけたいのになぁ・・・・・・。

読了本
吉野裕子『山の神』(講談社学術文庫)
フンボルト『自然の諸相』(ちくま学芸文庫)
『大下宇陀児探偵小説選I』(論創社)
『横溝正史探偵小説選I』(論創社)
『宮原龍雄探偵小説選』(論創社)
前川道介『愉しいビーダーマイヤー』(国書刊行会)
横山泰子『妖怪手品の時代』(青弓社)
トレヴァー・ノートン『世にも奇妙な人体実験の歴史』(文藝春秋)
『守友恒探偵小説選』(論創社)
前川道介『アブラカダブラ奇術の世界』(白水社)
ジム・ステインメイヤー『ゾウを消せ 天才マジシャンたちの黄金時代』(河出書房新社)
レオ・ペルッツ『夜毎に石の橋の下で』(国書刊行会)
佐伯泰英『惜櫟荘だより』(岩波書店)
『大阪圭吉探偵小説選』(論創社)
『延原謙探偵小説選』(論創社)

購入本
Dawn Jacobson- CHINOISERIE (PHAIDON, 1993)
Michael Sappol- HIDDEN TREASURE: The National Library of Medicine (Blast Book, 2012)
今森光彦『好奇心の部屋デロール』(福音館・たくさんのふしぎ傑作集)

次回はもう少しきちんと書きます。
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4768. 2012年07月21日 21時59分13秒  投稿:かわぐち 
7月20日
仕事帰りに国立西洋美術館「ベルリン国立美術館展」へ。
「学べるヨーロッパ美術400年」なんて副題が付いているけど、これで美術史概観はなんぼなんでも無理だろう。
しかし、展示自体は渋い名品が並ぶ、私個人としては「マウリッツハイス美術館展」よりもはるかに満足のいくものであった。
観客もそれほど多くはないし、なんといっても鑑賞マナーが大違い。
久々によい気分で美術館鑑賞ができた気がする。
リーメンシュナイダーはやはりよかったし、イグナーツ・エルハーフェンの細妙な彫刻は目を疑うほどすばらしい。
ジャン=アントワーヌ・ウードンといった、これまで未知であった作品の紹介も楽しめた。
素描コーナーも印象深いものでした。ミケランジェロはやっぱりさすがとしか言いようがない。

読了本
山折哲雄『仏教民俗学』(講談社学術文庫)
アルベルトゥス・マグヌス『鉱物論』(朝倉書店)
堀江あき子『怪獣博士!大伴昌司「大図解」画報』(河出書房新社)
五味文彦『後鳥羽上皇』(角川選書)

Stephen D. Korshak (ed.)- A Hannes Bok Showcase (Charles F. Miller Pub.,1995)
アメリカパルプマガジンのイラストレーター・ハネス・ボクの画集。
カラー図版は8点しかないが、状態も良く、満足できる買い物ではあった。
9月のHannes Bok: A Life in Illustrationが楽しみだ。
しかし、この本、アメリカamazonマーケットプレイスに注文したのは5月。
まさか2ヶ月もいまどき郵送にかかるとは(フランス・ポストで送られてきた)。
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4767. 2012年07月16日 15時46分12秒  投稿:かわぐち 
7月13日
福岡へ。あいにくの雨(これがすごい災害になる)。
今回の旅行のきっかけとなった福岡市博物館で開催中の「幽霊・妖怪画大全集」へ。
日本画家吉川観方のコレクションが中心であるが、これを知ったのは1997年発行の別冊太陽『幽霊の正体』であった。
その後、2001年の国立歴史民俗博物館「異界万華鏡」で一部を観る。
そして、今回、その全貌がこの展覧会で知ることができると思ったのだが・・・・・・。
なんと吉川コレクションの総計は約12000点、今回はそのうち160点の出品だという。
もちろん、厳選された見応えのある作品なんだろうが、「全貌」とはまだまだいかないようだ。
現にみんぱくに出品されていて、最も印象に残った月岡芳年「幽霊図」がない。
女陰のような顔の幽霊で、見忘れるべくもない強烈な作品だ。

ともかく、状態の良い、もちろん質の高い幽霊肉筆画をこれでもかというほど堪能。
さらに、妖怪図の決定版ともいえる佐脇嵩之「百怪図巻」を一気に見せる。

このあと、大阪、横浜にも巡回するが(今回の旅行は知らずに予約をいれてしまった)、
そのことを忘れれば、福岡まで観に来てよかったと思わずにはいられない。
今年は約25年ぶりに谷中の全生庵の円朝コレクションにも出掛けよう。
そして、先の『幽霊の正体』で知った大阪・大念仏寺の幽霊画公開にも行くつもりだ。

会場では図録はもちろん、絵葉書、若冲「付喪神」日本てぬぐい、観芳幽霊画うちわ、妖怪カルタと買ってしまった。
うちわ、いいですよ〜。

その後、雨が降りしきる中、福岡市文学館へ。
辰野金吾による煉瓦建築。
ここで2003年に開催された「福岡ミステリー案内 赤煉瓦館事件簿」を購入。
ミステリと福岡市の関係を作家別紹介、都市論、実在事件とそれを題材にした作品など多方面な切り口で紹介。
「警察管区別」という視点はこれまでに見たことがない気がする(東京ならあるかな?)
ちょっと長いが、目次を引用

はじめに
総論
警察管区別事件簿
座談会 夏樹静子の登場と福岡の文壇状況
福岡ゆかりのミステリー作家/作品紹介
 夏樹静子 石沢英太郎 中村光至 杉本章子 白石一郎 大下宇陀児
 多岐川恭 渡辺啓助 大西巨人 花田清輝 加田伶太郎 久丸修
 原寮(ウ冠なし) 赤川次郎 野阿梓 乙一 夢野久作
コラム 私の夢野久作体験 友成純一
    二人のミステリー翻訳家〜中村能三と田中小実昌
インタビュー 乙一
都市
事件
 イルマ殺し 黒焦げ死体事件 吉塚駅ふとん包み死体事件
 広域指定105号事件 保険金替玉殺人事件 ホテル「月光苑」放火殺人事件
関連作家一覧
著書年譜

著書年譜は年代順に収録作品まで網羅したすごいもの。
網羅性・正確性はどこまでのものなのか、私には判断ができないが、よくもここまでと思う。

7月14日
大宰府→九州国立博物館へ。「美のワンダーランド 十五人の京絵師」開催中。
九州国立博物館は、評価が微妙。他館所蔵のものが目立つ。少なくとも、こんな場所では仕事帰りに立ち寄ることはできないわなぁ。

雨はまさに土砂降り。このあとは端折るが、仕事のため帰る家人と別れて、私一人、小倉へ向かう。
小倉には松本清張記念館があるのだが、それほど強い思いいれもないため、今回はパス。

7月15日
ようやく雨も上がり、この日は建築三昧。
門司港→下関→さらに博多に戻り九州大学建築群→旧福岡県公会堂貴賓館と、近代建築を回る。
食事する時間も取らず回ったおかげで、約20個の建築見学ができた。
朝は前日に買っておいたコンビニパン、夕方、やはりコンビニで買ったおにぎりを地下鉄待ちの時間で取る強行軍。
家人がいたら、列火のように怒るだろう。私一人だからできたこと。
こうして無事に帰ってきたものの、足は豆ができ、日焼けで首や腕は火ぶくれ状態です。

事前に調べておいた福岡県古本屋にまるで行かず。人間、変われば変わるものだ。

読了本
西桂『日本の庭園文化』(学芸出版社)
クリス・ボルディック選『ゴシック短編小説集』(春風社)
中村喜和編訳『ロシア中世物語集』(筑摩叢書)
ランペドゥーザ/A・フランス/メリメ『南欧怪談三題』(未来社・転換期を読む14)
 ランペドゥーサ、フランスはともかく、メリメがいまさら「イールのヴィーナス」とは・・・。
 もちろん傑作なんだけど、もう少しレア作品にしてほしいよ。
那谷敏郎『「魔」の世界』(講談社学術文庫)

購入は図録類以外はなし。
Riner Michael Mason- KURT SELIGMANN OEuvre Grave
 日本では『魔法』の著者としてのみ知られる(この本自体はオカルティズムの超基本図書)セリグマンだが、
本来はシュルレアリスムの画家である。本書は1982年ジュネーヴで開催の版画展図録。
セリグマンの絵はこれまで何点か観た機会はあるのだが、絵葉書として売られることもなく、まとめて観る機会はないものかと思っていた。
本書は版画作品の本なので、カラー図版はなし。まだまだ絵画作品を観るために本を探し続けなくてはならないようだ。
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4766. 2012年07月16日 15時45分03秒  投稿:かわぐち 
7月5日
都立美術館「マウリッツハイス美術館展」へ。
平日16時の段階で入場制限! 10分くらいの待ちではあったが、会場内はすごい人、人、人。
デン・ハーグの美術館が改装休館のため、フェルメールをはじめとした名品が来日との触れ込み。
正直、私は行かなくてもよかった気がしてならない。
レンブラントは確かにすばらしい作品がきているのだが、レンブラントは点数が多いだけに来日の機会も、国内所蔵作品も多い。
17世紀以降のオランダ絵画は、旅行の際、見飽きるほどの点数を見ており、特に今回新たな発見があったわけでもない。
そして、フェルメールの例の絵は、5時も過ぎると列が短くなり、並んでいるのも20人ほど。
で、前に立ち鑑賞していると(この間せいぜい2〜3分)、「早く動け!待ってるんだぞ!」と怒鳴られた。
これまで美術館でこんな無神経なことを言われたことがなかったのでビックリ。右も左も空いているのに。
会場内もやかましいし、こうした野次を口にする観客が来るだけでも、フェルメールなんて、正直来ないほうがいいや。
いっそのことフェルメール1点だけで開催し、オランダ絵画だけで別の展覧会にしてくれればよかったなあ。
(もちろんそれでは興行的に成り立たないのはわかっているけど)
コットンスカーフ付きのチケットが1500円であったので買ってしまったが、いっそチケットは誰かに1000円で売ってしまえばよかった。
その後、ツイッターで「よかった」「感動した」なんて発言見ると、荒んだ自分がますます嫌になってくる。

7月7日
弥生美術館「奇っ怪紳士!怪獣博士!大伴昌司の大図解 展」へ。
大伴の創造した少年誌グラビアの世界を満喫。例の怪獣図解の原稿(ラフ)を興味深く観る。
柳柊二、南村喬之、水氣隆義らの挿絵原画もある。
大伴がSFファンとして活動していたころの同人誌も貴重。
会場では絵葉書3種、クリアファイルを購入。どれも限定1000ということであるので、欲しい人は早めの来場がおすすめ。

その後は歩いて東京国立博物館へ。
1階は前回とそれほど展示替えはなかったが、2階の屏風絵のコーナーには尾形光琳、曾我蕭白が並ぶ。
そういえば、トーハクは140周年記念であり、毎月変わるスタンプラリーをやっている。
1月はそれに気づかず、2月から始めたものの、ようやく7月でスタンプが6個集まった。
先着3000名ということで心配していたが、まったくの杞憂で、20番目くらいで記念品をゲット。
「松林図屏風」の一筆箋とボールペンのセットでした。

7月12日
仕事がなくて休み。
この機会にと向かったのは、東京都現代美術館「特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」。
会場内は、東宝特撮映画をはじめとした小道具がずらり。
マニア感涙間違いなし、アドレナリン大放出状態で、それでも急ぎながら3時間半で観終えた。
もっとじっくり観たら5時間かかりそう。
途中飲み物飲んで休める場所もなく、坐れる場所もそれほどない。もちろんタバコは論外。
それでいて「再入場不可」というのでは、きつすぎるぞ。
今回の企画のために特撮の技をフル稼働してつくられた短編映画「巨神兵東京に現る」は必見。
ただし、私は「エヴァ」っぽいナレーション、ストーリーはちょっと抵抗が・・・。
そのメイキングは、特撮への愛が充満しており、すばらしい出来であった。
平日なのに人はいっぱい。これで休みの日となったら、どんなんだろう。
先のマウリッツハイスは、人混みの中、出掛けるほどのものかと思ったが、こちらはそれでも満足。
(私がアートよりも特撮の人間だからでしょうけど)
コアな特撮ファンなら、上京するだけの価値があると思う。
こんな展覧会(例えばBOB BURNSのコレクション展)の情報があれば、海外でも出掛けてしまいたい。
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4765. 2012年07月01日 22時22分28秒  投稿:かわぐち 
読了本
深谷大『岩佐又兵衛風絵巻群と古浄瑠璃』(ぺりかん社)
ウィンフリート・フロイント『冒険のバロック 発見の時代の文化』(法政大学出版局)
イアン・マクドナルド『サイバラバード・デイズ』(ハヤカワ・新・SFシリーズ)
スコット・ウエスターフィールド『ベヒモス』(ハヤカワ・新・SFシリーズ)
木下直之『股間若衆』(新潮社)
漆原直行『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』(マイナビ新書)

本を読んでいると、だいたい4つのタイプに別れている気がする。
1 個人的な関心分野で読んでいる研究書、古典の類。
この類は他人におすすめすることもまずなく、要は自分さえ読んでおけばそれでいいので、長々と感想を書く必要はない。
今回でいえば、冒頭の2冊が典型。

2 ミステリ、SFなど、いわゆるエンターテインメント系の本。最近はそれほど読んでいるわけでもなく、
私なんかより知識もはるかに上で、文章力にも長けている読み巧者がいくらでもいるので、無理に私が感想を書くこともないかなと考えている。

3 洋書、さらに知的好奇心を掻き立てる入門書の類。この分野は私自身がネットで情報を拾うにも紹介が少なく、
そのため少しでもあるといいなと感じている。実際、当店閉店中も気になる本を調べてみると、なんのことはない、
自分が数年前に書いた文が見つかるだけということが何度もあったので、
ないよりはマシという気持ちで、あえて紹介を心がける。
といっても、想定している読者は、20年前の自分自身。自分が若い頃にこうした本の紹介が欲しかったというものが多くなっている。

4 エンターテインメント小説系の読書だけではなかなかアンテナに引っかかってこない良書・奇書の類。
掲示板をやっていて、この類の紹介ができることは、一番嬉しい醍醐味である。
なかなかそんな本には出会うことは、私自身もないけど。

で、ながながと、いまさらのようなことを書いたのは、後の2冊、『股間若衆』と『ビジネス書を〜』が、この4の類にあたると感じたからだ。

『股間若衆』 これが『古今和歌集』のもじりであることは、容易に想像いただけたと思う。「ネーミング大賞」があるならば、まず筆頭として挙げたい。
「股間若衆」「新股間若衆」と章立てが続くが、つづいての「股間漏洩集」にはヤラレタ!
で、内容はというと、一見ふざけているように見えるが、男性ヌードの図像学の研究として、実に奥が深い。
駅前にある男性像を皮切りに、ヌード絵画、写真、さらにはホモ雑誌のグラビアへと対象は広がる。

『ビジネス書を〜』(長い!これもよくあるビジネス書の書名を皮肉っているんだろうけど) 
当店のお客の中にビジネス書読者なんているんだろうか。私自身のことをいえば、年間3冊くらいは〈読む〉ことがある。
ただし、それはあくまでも校正という仕事でだ。
当然、仕事上、同じ本を2度、3度、それなりに〈熟読〉しているわけだが、たいがいどっと疲れてしまう。
「成功」と「自己啓発」をこれでもかと連呼し、たいがいは著者の異常なまでの自己アピールが顔をのぞかせる。
著者によれば、この手の本が登場しだしたのは2000年代に入ってからだとか。
それまでは(好悪はあろうが)成功した企業経営者、学識者あたりが常連執筆者だったのが、21世紀に入ると実績がはっきりしない、
アジテーション力のある厚顔な著者が跋扈しだしたらしい(特に名前は挙げませんが)。
ビジネス書の大雑把な歴史と、それに騙されないためのコツを本書は要点よくまとめあげている。
もし、当店のお客様の中にも、ビジネス書を読む必要のあるかたがいらっしゃったら、ぜひその前に本書を一読いただきたい。
私自身が校正をしていて「こいつ、こんなことも知らないで本を書いているのか」「え〜、こんな奴に騙されて本を買っちゃう人がいるのか」
などと思うことが多いので、そんな著者に騙されないためにも。

購入本は
Carel Willink: zelfportret en architectuur
2000年ロッテルダムのボイスマンス・フォン・ベーニンゲン美術館で開かれた展覧会の図録。
オランダ魔術的リアリズムの代表的画家カレル・ウィリンクの作品がカラーで並ぶ。
以前、イギリス・アマゾンで取扱いがあったので注文したところ「品切れ・キャンセル」。
今回、英米アマゾンにもない本が、なんと日本国内のアマゾン・マーケットプレイスで買えました。

西桂『日本の庭園文化』(学芸出版社)
庭園の歴史を通覧する本。教科書みたいなつくりで、リーダブルとはいえないが、飛鳥時代以前からの庭園史を紹介。
資料性も高く、関心があれば手元に置いておきたい。
実は、私自身、図書館で借りていま読んでいるところであるが、これは欲しいと思い、紀伊国屋書店に注文。
アマゾンのほうは品切れであった。
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4764. 2012年07月01日 22時21分38秒  投稿:かわぐち 
忙しくて仕事に追われていると、(後からまとめて)日記を書こうにも、もはや忘却の彼方ということが多々ある。

6月22日
仕事が思いのほか早く終わったので、明治大学図書館「城市郎文庫展 出版検閲と発禁本」へ。
入り口前の小さな一角ではあるが、思いのほか出品点数は多い。
(出展リストを見ると228点。そんなにあった?)
冊子はカラー16頁。「一人1点にしてください」とあったので、他人の分を持ってくるのは控えた。
決してエロに限らない、出版文化史の充実した資料。

6月24日
GW以来、ようやくの連休確保。土曜はひたすらTVと昼寝。
日曜になり、疲れも取れてきたので、哲学堂公園に出かけてみた。
井上円了が精神修養の場としてつくった、ちょっと不思議な公園。
「哲理門」「宇宙館」など、名称からも伺えよう。
学生時代、サークルで散策して以来なので、約25年ぶりの訪問となる。
案内ビデオもあり、建物内部もほぼ開放。25年前に比べ、中野区が憩いの場として積極的にアピールしているようだ。
以前は行かなかった、近くの蓮華寺の円了の墓にも参る。
「井」の上に○(円)が乗った本人発案のデザイン(意味はわかりますね)。

6月30日
またも土曜出勤。帰りに三菱一号館美術館「バーン・ジョーンズ展」鑑賞。
これまで何度でも開かれた気がしていたが、驚いたことに単独の展覧会としては本邦初だという。
言われてみると、確かに「バーン・ジョーンズと前ラファエロ派展」のように、何か付いていた気もする。
それなりに美しく、すばらしい作品が並ぶのだが、先のエルンスト展のような感動が生まれてこない。
これは、展覧会のせいではなく、私の感性が荒んで、想像していたところから飛躍することがなかったせいであろう
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4763. 2012年06月18日 23時26分13秒  投稿:かわぐち 
妙に仕事が忙しくなってしまい、何もできない状態が続く。

6月5日
仕事Aの後、合間を縫って東京堂へ。いわずと知れた杉本一文原画展だ。
予想以上の点数に満足。最近でもこのような収集欲をそそるようなカバーの本があるのだろうか。
画集がないのが本当に残念。文庫カバーなんだから、ポストカードセット100枚1万円なんていいと思うんだけどなあ。
もっとじっくり眺めていたいのだが、仕事Bへ向かう。

6月6日
仕事帰りに夜間開館の東京国立博物館へ。会期もあとわずかになった「ボストン美術館展」は、さすがに混んでいるようだ。
「人が多すぎる」と不平をこぼす人多し。
私は恒例の常設展鑑賞。1〜2月に一度、こうして常設展に通いだして2年以上3年近くになると思うが、いまだに見ていなかった作品が出てくるんだからすごいよな。
1階仏像コーナーには十一面観音が3体並ぶ。上村松園「焔」がすごい!

6月10日
単行本の仕事をむりやり土曜に終わらせ、千葉へ。
千葉市立美術館「渓斎英泉展」観賞。
期待していたより状態がいまひとつの作品が多い気もしたが、文句はいえないだろう。
英泉をまとめて観ることのできる貴重な機会なのだから。
気になったのは、歌麿や清長と比べると、着物のデザインが垢抜けていないと感じられたこと。
まさか英泉のモデルだけが趣味が悪いとも思えないので、あの服装というのは、画家が作り出したデザインなのだろうか。
中期〜後期にかけては、着物も垢抜けてきたように感じる。
藍刷の魅力に目を見開かれる。
同時開催の「モダンガール 万華鏡」では、これまで意識にも止めていなかった山本昇雲、小早川清が俄然気になりだした。
「英泉展」の図録を購入。300頁超の労作。千葉市立美術館の図録は買い逃すと後悔することになるのは、これまででいやというほど思い知らされた。
「鈴木春信」なんて、いまだに探しているが、8000円以下では見たことがない。
今回も入手困難になるのはまず確実だと思う。

その後は今週にいたるまで、休みなく働いております。ああ、録画が溜まる一方だ・・・・・・。

読了本
谷崎潤一郎『乱菊物語』(中公文庫)
サイモン・ウィルソン『イギリス美術史』(岩崎美術社)
メアリー・ボイス『ゾロアスター教』(講談社学術文庫)
畑井弘『物部氏の伝承』(講談社学術文庫)
『怪奇・幻想・綺想文学集 種村季弘翻訳集成』(国書刊行会)
サミュエル・リチャードソン『パミラ、あるいは淑徳の報い』(研究社・英国十八世紀文学叢書1)
ウォルポール/バーク『オトラント城/崇高と美の起源』(研究社・英国十八世紀文学叢書4)

谷崎は手持ちの本が乱丁で、中断され何年も未読のままであったもの(ちなみに未完なので、いずれにせよ結末まで読むことはできないのだけど)。
乱丁本なんて、交換するか処分してしまえばいいとわかっているものの、なんとなく「エラー本」というのは探したくとも見つからないものという惜しむ気持ちがあって・・・(切手収集の悪影響だと思うが)。
『パミラ』は読むのがつらかった! 古典といえばなんだろうが、英文学研究者でもない限り、これを楽しく読むなんて人がいるのかなあ?
パロディも多々書かれたようだが、なんといっても読みながら頭の中で想起されたのはサド『美徳の不幸』。
物語は、清い心のパミラが、貞操を狙う若主人に逆らい、心打たれた主人は反省してパミラと結婚する・・・という話。まさかこのまま終わるんじゃないよなというところまできて、残りはまだ300頁以上もある。
で、結局その「まさか」でした。おいおい。
ウォルポールは訳者解説が、その所持の城「ストロベリーヒル」のことを延々と紹介、ウォルポールの代表作は小説ではなく、その城の設計とそこでの生活とまで。
そこまで言われると行ってみたくなるじゃないか。先に購入した Strawberry Hill & Horace Walpole で火をつけられているだけに。
訳者は、この2010年に一般公開された邸宅を紹介するためにもこのように「偏った」解説にしたと告白している。
バークは今読んでも示唆に富む、本当に名著だと思う。
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4762. 2012年06月03日 23時15分25秒  投稿:かわぐち 
読了本
『益田勝実の仕事4 秘儀の島』(ちくま学芸文庫)
『益田勝実の仕事5 国語教育論集成』(ちくま学芸文庫)
ピエール・ルイス『紅殻絵』(奢灞都館)
E・R・バローズ『火星のプリンセス(合本版)』(創元SF文庫)

なんと「火星シリーズ」読んでしまいました。初読からは30年以上、1作目だけは20年位前に再読したけど、それでも・・・。
先にキャプテン・フューチャー読み返したときに、意外なほど面白くて喜んでしまったのですが、バローズはさすがにそこまでは楽しめませんでした。
とにかくきれいさっぱり忘れていたことに驚き。まあ映画『ジョン・カーター』を観る前にも読んでおいたほうがいいかなと思い。
もともとバローズがそれほど好きだったのかと考えると、さーて、どうだったか。
実際に読んで面白かったというよりも、大学生のころ、某サークルで知り合った方が大のバローズファンで、その方の影響が強かったのかも。
いまでも深夜の喫茶店でだべっていたとき、バローズの魅力を目を輝かせて話す彼の姿が思い出される。
彼を夢中にさせた魅力を知りたくて、自分は追いかけていたような気が、いまになるとしてくる。
思えば、あれだけ夢中に魅力を語れる作家を自分は持っているのだろうか、なんて考えてしまいました(今回、自省が多いなあ)。

バローズの本といえば、日本では武部本一郎の絵とセットのようなもの。
じゃあ、アメリカではどんな絵がつけられていたのか。昔なら知りたくてもわからなかったのだが、いまなら資料はある。
そんな感じで、SF美術の本を取り出して眺めていたのですが、いつしか「やっぱりパウルとボク、そしてフィンレイ。この3人が飛びぬけていいよなぁ」なんて横道に。
フィンレイはもとより、パウルも先に紹介した本が出ている。ハネス・ボクも画集は出ているんだけど、そういえば持ってないや。
そう思うと、さっそくネットに向かい・・・以前買おうとしたことがあったのだけど、内容もわからず、頁も少ないのにそれなりの値がするとあって買っていなかった画集を注文。
するとAmazonで発見したのは、なんと、Hannes Bok: A Life in Illustration なる本が9月に出るではないか!
456ページもあるというのだから、これまでとは比べ物にならない厚さだ。値段は(定価で)150ドルもするけど。
こちらも思い切って注文!
[110.132.134.165][Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; GTB6; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729)]

4761. 2012年06月03日 23時14分42秒  投稿:かわぐち 
5月15日
仕事の帰りに國學院大学伝統文化リサーチセンターへ。わずか1週間開催の「物語絵巻の世界」を観るため。
『伊勢物語』『竹取物語』の絵巻を中心とした、無料でひっそりと開かれるにはもったいない展示。
会場でもらった冊子がこれまた充実。
同館に行ったのは初めてであるが、神道文化、そして考古学の展示がすばらしい。

5月20日
伊豆へ。生まれて初めて踊り子号乗車。車で松崎町へ向かう。
ここに来たのは伊豆の長八の鏝絵を観るためだ。
鏝絵とは−−左官職人が漆喰でつくりあげた装飾のことで、それを始めたのは、この長八だといわれている。
十数年前、島根県邇摩郡の西往寺にある鏝絵(龍、道成寺、玉藻前の揃い)や、大分県安心院の鏝絵を観て回ったことがあるが、
肝心の祖・長八を観る機会を持たなかった。
職人の「魂の爆発」作品ではなく、意外なほどに繊細な作品だ。狩野派の絵を学んだことがあるらしい。
伊豆の長八美術館、長八記念館(浄感寺)、岩科学校と回る。
鏝絵については、藤田洋三『消えゆく左官職人の技 鏝絵』(小学館)が、カラー写真も豊富で1500円と手頃。

その後は堂ヶ島で島巡りクルーズ、城が崎海岸と観光。
いつも「取材旅行みたいだ」と不満げな家人も少し機嫌がよくなる。
城が崎海岸は戦隊モノのロケによく使われる場所。ああ、あの橋、あの岩って「ボウケンジャー」のオープニングのだ!

その日は川奈ホテルに宿泊。

5月21日
金環日食の日。そして奇しくもこの日は私の誕生日でもある。
今回、川奈ホテルに宿泊したのもこのためであった。
昭和11年開業のクラシックホテル。ここの売りはなんといってもゴルフ。
というより、このホテルは大倉財閥がゴルフを楽しむためにつくったもの。
したがって、ゴルフなんかには縁のない私が泊まることは、まず一生あるまいと思っていた。
しかし、ホテルが「日食鑑賞コース」として割安のプランをつくったのだ。
部屋からは東に面して見渡す海。水平線さえ見える。

さていよいよそのときだが・・・・・・空はどんよりとした雲に覆われ、雨さえ降ってきた。
テレビのニュースでは、各地で日食を楽しむ様子が流れている。悔しいことに、東京でさえ見えているというではないか。
わざわざ安からぬお金を使い、ここまで来たのに見られませんでした(思えば、これがこの日の前兆であった)。

ホテルをチェックアウトして熱海に。MOA美術館へ。
3月から連続3ヶ月の岩佐又兵衛絵巻物公開も、いよいよ最後の『堀江物語』。
同作には、不揃いの3巻分が残されているのだが、どうやらそちらがオリジナルに近いらしく、MOAのはそれを縮約した模本らしい。
確かに、先の『山中常盤』『浄瑠璃』に比べ、イマイチ過激さに欠け、また連続した場面なのに部屋の調度や服が変わっていても、それに注意をはらっていない気がした。
おそらくこれは分業作業によるせいではなかろうか。
それでも長年公開の機会をうかがっていた3本を今年度前半で全巻目にすることができたのは僥倖であった。
これとボストンン美術館展、千葉の蕭白展前後期に行けただけでも、本年は実り多い年といえよう。

このあと、わざわざ遠方まで行かなくてはならない展覧会といえば、11月に高知で開催される絵金だ。
高知県立美術館と香美市立美術館の2箇所で展覧会が開催される。
これに行けば、この土佐の血みどろ芝居絵のほぼ全貌がわかるのではないかと思われるので、飛行機乗ってでも行くつもりだ。

MOA美術館のあとは、伊豆山神社など熱海を少しぶらついて帰ることにする。

しかし・・・・・・このあと、事情を説明するのは面倒だし意味もないのでしないが、私は家にも入れず、誕生日の夕食を一人ファミレスで済ませ、ハチ公のように家人の帰りを駅前で夜10時半まで待つことになったのだ。
それもこれも「良かれと思ってしたことが裏目となった」ことが重なって起きた不幸のため。
最低の誕生日であった。

5月27日
鎌倉へ。鎌倉国宝館でこの日まで開催された「鎌倉の至宝」展を観るため。
鎌倉→横浜市美術館「マックス・エルンスト フィギュア×スケープ展」→そごう美術館「細見美術館 琳派・若冲と雅の世界」と回る。
近年、西洋美術より日本美術への関心のほうが強くなっていると感じている。
西洋美術は、当たり前の話だが、ヨーロッパで観たほうがはるかに凄い作品が揃っており、とくに中世〜ルネサンスという一番関心を引かれる時代のものは、日本で観られるものなど限られている。
というわけで、今回エルンストはどうしようか迷ったほどだ。
自分の中では「もうわかっているから」のような気持ちがあったことは否めない。
鎌倉国宝館、そごう美術館とも、行ってよかったと思える収穫はあった。しかし、一番〈感動〉したのは、躊躇したエルンストであった。
〈わかっている〉とか、そういうものではない、アートによる感動があったのだ。
思えば、数年前、東京芸術大学美術館の「シャガール展」のときも、〈わかっている〉つもりのシャガールの作品を前にして、涙ぐむように感動してしまった。
日ごろ、本にしても映画にしても展覧会にしても、もはやルーティンワークと化しており、もちろんそのときそのときで、良いものをみれば「いいなぁ」と思いはするのだが、
結局は優劣を判断しては、頭の中にファイリングすることを繰り返しているのだろう。
先に五来重『石の宗教』で感じた、仏像を美術的な優劣だけで判断して、劣る道祖神には目もくれなくなる罠。

なにはともあれ、先週の不運より「どうせ俺なんて・・・」的に落ち込んでいたのが随分救われたような気持ちになれた。

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4760. 2012年05月14日 01時33分48秒  投稿:かわぐち 
4月29日
府中市美術館「三都画家くらべ」後期へ。
さすがに半月前の記憶はあやしい。後期で最も個性的で魅了するのはやはり、祇園井特であろう。
このなんともいえない妖しさ、ただものではない。三畠上龍という、少し似た画家も今回の発見であった。
月岡雪鼎はこれまでノーマークであった画家。この人も気になる。なんと芳年の父親であったのか。
なお同館では9月12日から11月11日まで「ポール・デルヴォー展」が開催予定。

5月4日
砂時計さん上京歓迎オフ。ここ数年間ではネット関係の唯一の集まりになってしまった感がある。
中華&珈琲とも私が店を決めたのであるが、個人的には両方満足。
砂時計さん以外はカラオケ好きというわけではなさそうなので、ただただ話をするだけで終了。
最近はすっかり小説離れなので、話題が提供できない。
このところミュージックプレーヤーですっかり覚えた戦隊モノ主題歌が歌えなかったことが残念と思っていたことは内緒である。

5月5日
立川へ。「都市を描く−京都と江戸−」第2部「江戸名所と風俗画」を観るために国文学研究資料館へ。
うう、一番観たかった「江戸図屏風」(国立民俗博物館)は前期だけの展示であったのか・・・・・・。
みんぱくの京都編と比べると、地味な刊本の出典が多く、思ったよりはあっさりと終わってしまった。
しかし、こんな地味な展示、それも立川のはずれ、せいぜい3人くらいの人出だろうと思っていたら、結構な賑わいであったのに驚かされる。
ついでにこれまで存在も知らなかった「南極・北極科学館」へ。
ここがまた相当の人出。みんな、なんでこんなとこ知ってるんだ?
展示が予想を超えて充実していたのにもビックリ。南極の氷や隕石に直に触れることもでき、なるほど、これは親子連れで楽しめるわい。

5月8日
仕事の前に国立東京博物館へ。
月に一度の常設チェック。今回は新しく国宝・重要文化財認定されたものの特集展示がある。
こういってはなんだけど、これまで認定されていなかったものだから、当然、先に認定済みのものに比べると「これはすごい!」といえるほどのものではない気がする。
しかし、こうしたものをまとめて観られるチャンスはありがたい(終了後はそれぞれの所蔵者に返却)。
仏像室の深沙像(教応護国寺)がすごい! 屏風コーナーには等伯。仏画がまた、ボストン美術館展に負けじと思ったのか、優品が並ぶ。
「北野天神絵巻」も必見。

5月12日
千葉へ。千葉市美術館「蕭白ショック!!」後期を観るため。
前期・後期合わせると蕭白のみで61点。ボストン美術館展に11点来ているので、計72点を観ることができたわけだ。
展覧会は、前期よりも後期のほうが蕭白の魅力がわかりやすいのでは。後期だけでも観てない人には薦めたくなる。
もうなんというか、蕭白のアドレナリンが大放出という感じだ。
いつも思うことだが千葉は遠い。しかし、たいていは来てよかったと思わせてくれる。
今回も「たいていは一度は観た作品だから」とも思いはしたのだが、やはり行って正解であった。
代表作「群仙図屏風」など5回目くらいの鑑賞だが、今回もその異様な迫力に感動してきた。
次回の英泉展の前売り券も買う。これで絶対に行くことになるだろうと、自己縛り。

その後は成田へ足を延ばす。他になにがあるのか知らないが、目的は当然成田山だ。
ここへは2001年に来ている。そのときは、日本のバロックともいえる極彩色の塔が目当てであった(「芸術新潮」特集「江戸の奇態美」でも紹介)。
しかし、今回は別の目的があった。ここの釈迦堂にはあの「五百羅漢図」の狩野一信の絵をもとにつくられたレリーフがあることを知ったからだ。
レリーフは、あの増上寺の「五百羅漢図」の奔放・奇抜さに敵うべくもないが、よく見ると妖しい、いわくありげな人相の羅漢様がずらり。
例の「顔びろ〜ん」や「お腹パックリ」のモチーフもあって嬉しくなる。

5月13日
静嘉堂文庫美術館「東洋絵画の精華 日本絵画コレクション」へ。
今回の目玉はなんといっても、「ボストン美術館展」&東京国立博物館・国宝室と並び「平治物語絵巻」が出品されていることであろう。
この3本が現存するすべてなのだ。しかし、静嘉堂の展示は3回に分けて巻き替えが行われる。結局、3回も足を運ばなければすべてを観ることはできないのだ。
そこまでするだけの気力はないので、最後の部分だけを観てきた。一度に広げられるだけのスペースがないとは思えないのだが。
それ以外の展示もなかなかではある。点数は少ないので疲れずに鑑賞できる。
「四条河原遊楽図屏風」は当時の見世物の風俗を描写したもので、非常に興味深く見ることができた。

読了本
山折哲雄『死の民俗学』(岩波現代文庫)
ガスケ『セザンヌ』(岩波文庫)
『益田勝実の仕事1 説話文学と絵巻』(ちくま学芸文庫)
ステファヌ・オードギー『モンスターの歴史』(創元社・知の再発見叢書) 原著買ったのに読めないまま翻訳本
中田勝康『重森三玲庭園の全貌』(学芸出版社)
『益田勝実の仕事2 火山列島の思想』(ちくま学芸文庫)
『益田勝実の仕事3 記紀歌謡』(ちくま学芸文庫)

購入本
『完本 石井輝男映画魂』(ワイズ出版映画文庫) こんな本が! たまたま目に付いたからよかったものの、見逃しそうだ。
Masako Watanabe- STORYTELLING IN JAPANESE ART (The Metropolitan Museum of Art) 昨年11月から5月6日までメトロポリタン美術館で開催されていた日本の絵巻物展図録。
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