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オーナー:庵本譚 |
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95. 2005年01月08日 16時26分19秒
投稿:青縁眼鏡 [http://homepage3.nifty.com/spectacles/index.htm] |
こんにちは。55号室青縁眼鏡です。遊びにきました。 1日1冊ペースでミステリを読んでいらっしゃるなんて、すごいですね。目標にしたいです。 |
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94. 2005年01月08日 12時14分39秒
投稿:庵本譚 [http://www3.wind.ne.jp/kobashin/cgi-bin/nagaya/nagaya.cgi?room=079] |
庵主です。 昨年もなんとか一日一冊ペースで本を読む事ができました。 (上下巻が多かったので一日一作品とはいきませんでしたが) 新本格第一世代の復活やら、幻の本格作家の商業誌デビューやら 新たな翻訳探偵小説叢書の登場やら、犬は勘定にいれないけるべろすやら ミステリ的にもえすえふ的にも話題が尽きない年だったといえるでのは ないでしょうか? そんな新作・旧作とりまぜて、一応、わたしなりの読了本ベスト12を 順不同で掲げておきます。 「無法地帯」大倉崇裕(双葉社) 最強オタク伝説の幕開けを告げる理想の軽ハードボイルド。 文句なしの傑作です。無理解な世間に対してこれが本当のオタクなのだ! と秋葉の中心で愛を叫びたいです。 虎だ!虎だ!お前は虎の穴で本を買うのだ! 「貧者の晩餐会」イアン・ランキン(ポケミス) 作者の小説巧者ぶりを味わい尽せる贅沢なツイストのフルコース。 この作品集で作者を見直し、リーバスものの大長編も何作か読む気に なりました。(読んだ長編のなかでは「死せる魂」が好みでした) 「魔術師」ジェフリー・ディーヴァー(文藝春秋) リンカーン・ライム最大の敵の登場。逆転のインフレは青天井。 全編これツイストの固まり。裏をかく事に命の全てを掛ける真犯人像は まさに21世紀の怪人二十一面相であります。 小林少年役の女性魔術師も良い味を出しておりました。 「唾棄すべき男」ジューヴァル&マール(角川文庫) 今年は月1冊ペースでマルティン・ベック・シリーズを読了いたしました。 その中から、一番犯人に感情移入したこの作品を代表で。衝撃のラスト シーンが、これまたいいんですよ、うん。 (今年は、某慟哭作家が、短篇でこのシリーズのオマージュをやっていて、 シンクロニシティーに驚きました) 「ナイン・テイラーズ」ドロシー・セイヤーズ(創元推理文庫) ようやく「学寮祭の夜」ともども読み終わりました。なるほど これぞクラシックであります。読了後も、頭の中で幸せの鐘が でぃーんどぉーーんと鳴り響きます。 「時の娘」ジョゼフィン・ティ(ハヤカワミステリ文庫) 非の打ち所のない知的遊戯。教養と探偵眼を試されるとびきりの オモシロ読み物でした。やはり「魔性の馬」を蹴落としてでも オールタイムベストにあげなければならない作品でしょう。 「ぼくのキャノン」池上永一(文藝春秋) 面白さに衒いのない作者が贈る沖縄戦への鎮魂のスラップスティック。 スーパーナチュラルは控え目ですが、どっこい、キャラの立たせっぷり一つで エンタメ読みの予想を裏切り、期待に応える快作です。 キャノン様、万歳!!池上永一様 万歳!! 「6ステインズ」福井晴敏(講談社) 長いばかりが能じゃない、ところをみせた作者の隠し玉集。 短い分、作者の作劇法がよく見えます。格好良さの見本市。 「津町湘二作品集」津町湘二(京都大学推理小説研究会) 幻の同人誌作家の集大成。「巽昌章」としての鋭い評論の裏には このような実作でのトレーニングが隠されていたのであります。 天城一ばかりが目立った一年でしたが、こちらもも商業ベースで 復刊するだけの値打ちがある作品集でありましょう。 トマス・フラナガンを彷彿とさせる中世ものの本格推理の連作が 凄いです。 「武器と女たち」レジナルド・ヒル(ポケミス) 昨年は、精力的にダルジールシリーズの積読を消化しましたが、 その分厚い教養が最も軽やかにストーリーに馴染んでいたのが この作品でした。骨太のフェミニズムがなんとも心地よいお話です。 「天使の帰郷」キャロル・オコンネル(創元推理文庫) この作品を読むために、マロリー・シリーズを固めて読みました。 女性ハードボイルドの歴史的傑作として断然オススメします。 この後に続編を書けるのが不思議なほどの魂の燃焼がここにはあります。 「ボートの中の三人男」ジェローム・K・ジェローム(中公文庫) 今年は何故かこの作品に因んだミステリやSFの出版が相次ぎました。 で、コニー・ウィリスやロナルド・ノックスやピーター・ラヴゼイの 「本歌取り」を読む前に「一応原典を」と手に取ったところ、丸谷才一の 名訳とも相俟って、爆笑と苦笑に翻弄される幸せな読書時間を体験する ことができました。これが、英国の伝統の厚みといふものなのですね。 青年諸君、コックス云々する前に、まづはボートにのりたまへ。 (お、我ながら綺麗なオチだ) 新作に絞れば、上記以外に 「紅楼夢の殺人」「キマイラの新しい城」「百器徒然袋 風 」 「暗黒館の殺人」「生首に聞いてみろ」「サイコトパス」 「誰でもない男の裁判」「白い果実」「蛇の形」「閘門の足跡」 「イデアの洞窟」「サム・ホーソンの事件簿3」「幻のハリウッド」 「奇術師」「荊の城」といったところが印象に残っています。 あと、ベスト映像作品はNHKBSで放映された「名探偵モンク」で決まり。 とりあえずそんなところです。 |
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93. 2005年01月07日 06時47分58秒
投稿:庵本譚 [http://www3.wind.ne.jp/kobashin/cgi-bin/nagaya/nagaya.cgi?room=079] |
庵主です。 おくればせながら 新年のご挨拶を申し上げます。 ここ1ヶ月ほど、ふと気がつくと口ずさんでいる歌があります。 NHK教育「ドレミノテレビ」のテーマソング(?) 「どれみみずんど」 エスニックな音階と南国風リズムに エンリコ・モリコーネっぽい合いの手が入る、 歌詞はぶっとんでいるかとおもうと We are the Worldだったりする、 踊っているUA(ううあ)は、ぎんぎらな鶏の格好してるし 珍しいキノコ舞踊団の振り付けがまたなんとも「妙」 あまりのインパクトの強烈さに、 家族で一日一回は踊っているかもしれません。 昨年末からの読了本は以下の通りです。 12月28日「天城一の密室犯罪学教程」天城一(日本評論社) 伝説の寡作家による本格推理ショートショート集。 同人誌バージョンで大体読んでいるために事実上の再読でした。 書かれた年代を踏まえて読まないと「ありゃりゃあ」で 「何を今更」なトリックが居並んでいます。 この作品集がこのミスでも入賞したというのは、 ひとえに作者への敬意故でありましょう。 グランド・マイナーに捧げるエールとでも申しますか。 12月29日「隠花平原(上)」松本清張(新潮文庫) 12月30日「隠花平原(下)」松本清張(新潮文庫) 脂の乗り切った頃の作者による長編大凡作でした。 なるほど、これは連載以降20年以上単行本にならなかった だけのことはあります。 静かな導入部と素人探偵による探索行が進む上巻は まずまずなのですが、下巻に入って行き当たりばったりで ご都合主義の因縁が縺れ、終盤に入って扇情的なまでに ばたばたと殺されるメインキャラクター、 そして、驚愕の真犯人とその動機! とどめは怒涛の「告白書」でこじつけの一本締め。 題材が、同族金融機関の闇や、絵画市場の暗部、 新興宗教の裏側といった今の時代にも堂々と通用するテーマな だけに、腰をすえて書き込めば、清張中期を代表する作品になった のではないかと残念至極です。 まあ、どんな選球眼のいい4割バッターにも6割の凡打はある、ということで。 12月31日「終戦のローレライ(上)」福井晴敏(講談社) 1月1日「終戦のローレライ(下)」福井晴敏(講談社) 「戦後60年」がキーワードとなる2005年の夜明けを迎えるにあたり、 年越し本としてスーパードレッドノート級の潜水艦架空戦記を召集してみました。 里程標的大傑作「亡国のイージス」に比べて、よりSF色が濃厚で、 骨だけ切り出せば、未来少年コナンか、Vガンダムを思わせる 「ボーイ ミーツ ガール小説」でありました。 ただ、キャラクター造形の巧さは認めながらも、潜水艦戦エンタテイメントと しては、「沈黙の艦隊」で描きつくされた世界の焼き直しといった印象に終りました。 「沈黙の艦隊」を読んでいなければ、更に評価は上がったと思いますが、 この書を手に取る人の8割以上は、かわぐちかいじの読者のような気がします。 アイデアには星野之宣の処女作も入っているかもしれません。 エピローグも冗長で、作者の思い入れだけが滑ってしまった感を免れません。 「亡国のイージス」が万人に薦められる作品なのに対して、読者を選ぶ 作品といえましょう。 1月2日「セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴」島田荘司(講談社ノベルス) 「占星術殺人事件」直後の事件として描かれたクリスマス・ストーリー。 エカテリーナ2世の放埓な性談義から昔語りに入った途端、御手洗の人格が ぐんにゃりとワープするのが笑えます。なるほど、昔の御手洗はこんな感じで 石岡君を振り回すばかりでしたよね。御茶ノ水の教会で起きた奇妙な一家の 振る舞いから、事件を洞察していく過程は圧巻の一言。得意の都市論も交えながら 綴られる物語は、奇跡を呼ぶ「宝捜し」へと収斂していきます。邪を挫き、 聖なる想いを助ける奇矯な騎士物語。いい仕事です。 1月3日「死の笑話集」レジナルド・ヒル(早川書房ポケットミステリ) ポケミス史上最大ページの新作に挑んでみました。これはあらゆる意味において 「死者との対話」の後日談で、この物語でようやく「言葉に淫した犯罪絵巻」が 完結します。「ワードマン」の魔手から逃れたカップルの物語、論壇に立つ 元犯罪者とパスコーの葛藤、冤罪疑惑に追われながら「大仕事」に挑むダルジールたち、 文芸の魔を散りばめながら綴られる3つのタペストリーがやがて渾然一体となって 怒涛のクライマックスに流れ込んでいく悠々たる筋運び。やはりこれはヒルにしか 書き得ない小説でありましょう。果してこれを推理小説と読んでいいものなのか どうなのか、戸惑いを感じます。キャラクター小説もここまでくれば文学。 教養の厚みに言葉を失う逸品でした。 1月4日「目撃者」中町信(講談社文庫) でました、温泉で地震!お得意の叙述トリック炸裂の連続殺人譚。 はっきり申し上げて、素人探偵夫婦のリアリティーはゼロで魅力もゼロ。 中盤の密室トリックや、ダイイングメッセージは「ためにする」ガジェット。 それでも、この作品の叙述部分に秘められた一発逆転ネタには、久々に 一本とられました。改めて題名の意味に唸らされた次第です。 中町信ファンの評価は高いだろうなあ、と感じました。 1月5日「ニワトリはいつもハダシ」火浦功(角川文庫) 年賀状に使ったので、とりあえず読んでみました。すちゃらかSF作家が 缶詰になったホテルで遭遇したニワトリ連れの殺し屋、そして死体と謎の メッセージ。はたして締め切りは間に合うのか?一攫千金はなるのか? 金のようかん、銀のみみ、探偵はいつもかけあし、ニワトリはいつもハダシ。 「軽ハードボイルド」と言うと「軽ハードボイルド」ファンに叱られそうな すちゃらか小説。なんと連載時の結末は更にトンデモだったようで、こんな いい加減な仕事が仕事として罷り通っていたバブルな時代の墓標としての 値打ちしかない作品でありましょう。30分で読み飛ばせます。 1月6日「上高地の切り裂きジャック」島田荘司(原書房) 内臓を持ち去られた美人女優、落ちそうで落ちない容疑者、おぞましい残滓が 語る因縁のドラマに御手洗の喝が飛ぶ表題作。山の手の屋敷の地下で起きた 不可能な餓死事件と鉄道の幽霊譚が交錯する悲劇「山手の幽霊」の二編を 収録した中編集。いささか野卑な表題作よりも、作者らしい奇想と悲劇性が 光る幽霊譚に軍配をあげたくなります。トリック先行でありながら、きちんと 感涙も絞らせるプロット力に脱帽であります。 とりあえずそんなところです。 今年もよろしくです。 |
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92. 2004年12月28日 06時33分47秒
投稿:庵本譚 [http://www3.wind.ne.jp/kobashin/cgi-bin/nagaya/nagaya.cgi?room=079] |
庵主です。 この終末もとい週末は、風邪で死んでました。 熱にうなされ、活字を受けつけない身体になり、 どっぷりとアニメ(ガンダム)三昧してしまいましたとさ。 SAMANA様 私も「キングとジョーカー」は傑作だと思います。 私が読んだディキンスンの中で、 ジュヴィナイルを除けば唯一眠たくならなかった作品です。 こういう書き方であれば、日本でも「天皇探偵もの」が 書けるのではないかと思ったりもしました。 仮面ライダー剣ネタなら「カテゴリー・キングとジョーカー」 というヤオイ本がだせます。 いずれにしても探究するだけの値打ちのある作品だと思います。 ホント、これを復刊し、続編を新訳して、セットで出す勇気ある出版社は どこぞにないものでしょうか? 通りすがりのM様 爆笑感謝です。 元ネタは「色事根問」とも「いもりの黒焼き」とも 呼ばれるネタで、10までいくと少しダレますが、 とりあえず「五精、六おぼこ」ぐらいまでは 作れると思います。事情が許せば失笑覚悟で ご披露いたします。 金曜日と月曜日に読んだ本は 原書房のホームズアンソロジー「ワトソンの災厄」と、 文春ミステリ10の第1位、双葉社の雫井脩介「犯人に告ぐ」。 前者は、生真面目で可もなし不可もなしのパスティーシュが並ぶ中、 ホームズ役者が劇場で起きた盗難事件を解決せざるを得ない立場に 追込まれるという設定が素敵な「うろたえる女優の事件」が 印象に残りました。最後まで笑わせてもらえます。 後者は「劇場型犯罪に対するには劇場型捜査だ!」というおバカな設定を こてこての浪花節と警察裏話で、感涙サスペンスに仕立てた一作。 悪くはないのですが、新宿鮫あたりにくらべて、やや腰高な印象を うけました。「チョンボの小川」という道化まわしの使い方など、 もう一押し「泣き」をいれてもいいのになあ、と思いました。 ここは「笑いどころ」、ここは「泣かせどころ」というト書きが 透けて見えるというべきでしょうか。 ただ値段分の仕事はしてますので、一読の値打ちはあると思います。 とりあえずそんなところです。 |
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91. 2004年12月25日 22時41分10秒
投稿:SAMANA [http://www.asahi-net.or.jp/~yu4m-nkns/index] |
16号室SAMANAです〜。 >「お、サンリオとは立派やな。腐ってもサンリオ、栗より美味い十三里オと > いうからな。んで、なに抜いてん?ディキンスンかい?」 サンリオ文庫のディキンスンといえば、『キングとジョーカー』。 夏の乱歩オフの時に18号室の無謀松さんが「あれは面白い!」とキッパリ断言 していた姿がすっごく印象に残っています。それでますます欲しくなってしま いましたが、見つけるのは難しいんでしょうね。 面白いのなら、どこかで復刊してくれないかしら…(爆)。 そいでは!! |
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90. 2004年12月25日 15時26分59秒 投稿:通りすがりのM |
「蔵書一代(本釣り?)」爆笑しました。続きが楽しみです。 師匠! 支障なければもっとお話を聞かせてください。 お願いします。 |
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89. 2004年12月24日 17時38分46秒
投稿:庵本譚 [http://www3.wind.ne.jp/kobashin/cgi-bin/nagaya/nagaya.cgi?room=079] |
庵主です。 36号室のよつやさんに共感して、 「フレンチ警部と漂う死体」祭りを開催してみます。 「フレンチ警部と漂う死体」は戦後初のクロフツのハードカバーか? 戦前には、ハードカバーで「樽」を始め「マギル卿」「英仏海峡」などが上梓 されていたクロフツですが、某「お父ちゃんの古本日記」に、 「ひょっとして、今回の『〜漂う死体』は戦後初のハードカバーではないか?」 という指摘がございました。 「クロフツといえば創元推理文庫」な世代としては、 「それはそうかもしれない」と納得しちゃうところなのですが、 「いやいや待てよ、全集ものがあるぞ」と思って国会図書館を探ってみると、 講談社 世界推理小説大系 第4巻「樽」 東都書房 世界推理小説大系. 第12巻「樽」「クロイドン発12時30分」 なんかがヒットしていまいました。 残念!音羽斬り! でもこの「全集」というのは単行本とはまた別のジャンルかなと思いなおし <「フレンチ警部と漂う死体」は戦後初のクロフツのハードカバーの単行本である> ということであれば、言えなくもないかな? そう思って、もう一度調べてみると、今度は 中央公論社の「ザ・スクープ」がヒットしてしまいました。 「漂う提督」や「警察官に聞け」などと並ぶ ディテクション・クラブの合作長編です。 ううむ、しかもちゃんと表紙や背にまでクロフツの名前が、、 残念!リレー斬り! じゃあ、これでどうだ <「フレンチ警部と漂う死体」はクロフツの長編としては、 戦後初めてのハードカバーの単行本である> はあはあ。 と、ここまで書いてきたところで 「おんどり・みすてりい」の存在を忘れていたことに気がつきました。 こけこっこーーー。 なんと昭和25年に「樽」だの「ポンスン事件」だの 「マギル卿最後の旅」が、薄手ながらも一応ハードカバーで ちゃっかり刊行されているではないですか。 し、しまったああ。 早川がポケミス以前に出していたハードカバーの 「世界傑作探偵小説シリーズ」全10巻に クロフツが入っていなかったものだから、油断してました。 くうう、残念!おんどり斬り しかし、しかし、 「おんどり・みすてりい」は確か戦前訳を流用したお色直し出版だった筈。 ならば! <「フレンチ警部と漂う死体」はクロフツの新訳長編としては、 戦後初めてのハードカバーの単行本である> ぐらいは言わせていただきたいっ! …って、なんだか、もの凄く当たり前の話になってしまいました。 まあ、とりあえず祭りだ、祭りだああ! それ、わっしょい、わっしょい。 …しかし祭りの喧騒の向こうでは、殆どのクロフツの著作が 「残念!版元切れ!」 とりあえず回文 「クロフツへ打つウエッブログ」 |
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88. 2004年12月24日 12時53分44秒
投稿:庵本譚 [http://www3.wind.ne.jp/kobashin/cgi-bin/nagaya/nagaya.cgi?room=079] |
あなたからメリー・クリスマス わたしからメリー・クリスマス 庵主です。 愛猫鉄人さま どもども、ご高評感謝です。 やっぱり「日記は受けてなんぼ」ですから。 何かしら反応があると報われた気になりますです。 ベロウの件は、良くも悪くもショックです。 原書で一番金を突っ込んだ作家なだけに、、、 ここを、にっこり笑ってすごせるかどうかで、 己の戦いの年季が決まるみたいですね。 古本の神様に試されてるかなあ。(しみじみ) 来年もよろしくです。 昨日の祝日は、年賀状の準備にトランクルームに行って 蔵書を引っ掻き回して参りました。整理が悪いとこういうときに大変です。 2000年の辰年から干支にちなんだミステリ等の書影で年賀状を作って いるのですが、来年については、二ヶ月前に講談社文庫版の「狐の鶏」を 処分してしまったのが痛恨の一撃。 「数少ない『鶏』が題名に織り込まれたミステリ本なのにい」と ニワトリの歯ぎしり状態です(そんな格言はない) 海外・国内を問わず、鳥の名前を織り込んだ題名は、ケッコウあるのです (裏庭で羽を残す孔雀とか、数を数えないカラスとか、多すぎるフクロウとか、 溺れたり逃げたりするアヒルとか、殺される駒鳥とかカナリアとか、 おしゃべりなスズメとか、猫が入り込んだ鳩の群れとか、子供を攫うウブメとか、、) が、これが「鶏」となると、コッケイなほど少ないのであります。 いっそ、アニメのポアロに出てくるアヒルのオリバーを描いて「アヒルだね・ オリバー」という一発ギャグもありかなどと思いつめもしたのですが、 なんとかかんとか5冊+αでカッコウがつきそうです。 実は今回の構想段階では、シャーロット・マクラウドの「風見鶏大追跡」で 一つは頂き、と考えていたら、なんと「風見鶏大追跡」ではなくて 「風見大追跡」だったんですね。 扶桑社文庫の表紙絵の風見も、ちっとも鶏ではなくて天使(?)でしたし。 ピンチと引き換えに長年の誤解が一つ晴れました。(とほほ) 昨日の読了本はそんな1冊から霞流一の「火の鶏」。ハルキノベルスの 1冊で奇蹟鑑定人ファイルの3作目。このシリーズ、馬・鹿ときたので 次は河馬かと思ったら鶏でした。題名は勿論、日本一の漫画家のライフワークの 地口。いっそのこと「火の鶏 卵生編」とでも銘打つってえのはどうでしょうか? 口から火を吐きながら闇を飛ぶ鶏、という「奇蹟」の鑑定に練馬区を訪れた 寺社捜査局の魚間岳士と自称奇蹟鑑定人にしてモヒカン刈りの天倉真喜郎。 そこで遭遇した、ノリのいい自然食主義者たち。 そしてオーガニックなグルメ談義の合間に起きる奇怪な連続不可能殺人事件。 ある者は羽毛につつまれ、またある者は串にさされ、鶏のような死に見舞われる。 黎明にヤマトの食の未来を託す。俺の胃袋は宇宙だ!復活せよ、奇蹟鑑定人。 いつもながらのスーパーおばかトリック炸裂の一編ですが、 「衆人環視の密室」の仕掛けはエレガント。 この一事をもって、記憶に残されていい作品でありましょう。 そして、これもいつもながらのB級グルメ談義が、自然食というテーマを 得て、更にパワーアップ。馬やら鹿にくらべて食材として馴染みのある鶏 だけに、食欲中枢直撃、読者垂涎の一編に仕上がっています。 ご馳走さまでした。 もういっちょ、一昨日の読了本は、お懐かしやF・W・クロフツの 「フレンチ警部と漂う死体」。論創海外ミステリの中でも古典マニアが 鶴首して待っていた1冊です。 クロフツは、ここ5年ぐらいの間に「老後の楽しみ」と称して積読にして おいた作品を片っ端から読み尽くし、その面白さを初めて認識している ような次第で、この作品も一応原書で押さえてはいたのですが、未読でした。 一族の家電会社を一流企業に育てあげた実業家が、引退を仄めかすところから 物語は幕を開ける。なんと彼は、遙かオーストラリアから、没交渉だった 甥を呼び寄せ後継者に指名してしまう。収まらない係累の間で起きる不協和音。 そして当主の誕生パーティーの夜に、事件が起きた。 一家全員が食中毒に冒されたのだ。一族の娘と恋仲にある掛かりつけの医師は、 そこに何者かの悪意を見出す。 だが、それは来るべき真の惨劇への序章に過ぎなかった。 病から癒えた彼等が参加した地中海への船旅の途上、一行の一人がアフリカの 港町で行方不明になったのだ! 船長と旅行会社はスコットランドヤードに隠密捜査を依頼。 ヤードきっての名警部ジョゼフ・フレンチは船旅に心弾ませながら、 一族の謎に迫る。 いいです。 これは、本当にくつろぎながら読める作品です。 舞台が船上に移るまで、延々長編の半分かけて田舎の毒殺未遂事件が 語られます。船上になったらなったで、丸々1章を割いて、事件とは 無縁の海の男たちの日常が描かれます。 職人魂に敬意を払い続けた作家・クロフツの面目躍如たるものが あります。フレンチ夫妻のほのぼのとした掛け合いも微笑ましさ爆発です。 はっきりいって、「そんなんありかい?」のトリックはどうでも よくなってきます。 暇文学としてのミステリを余裕を持って楽しみたい人に是非。 そんなところです。 |
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87. 2004年12月23日 11時35分41秒 投稿:愛猫鉄人 |
庵主様 久々にXX節を楽しませて頂きました。懐かしいです。 これを読んだだけで、「正体」が判ってしまいそうな文章ですね。 (お前の正体もバレバレじゃい!ってか) 鷲尾や楠田の復刊にも驚きましたが、ベロウがこれだけ復刊されるとは、常識では考えられない出来事です。 まあ、何と言ってもあの「キーラー」を復刊されている店なのですから、何を出しても不思議ではないのですが。 >なんと、本棚対ピアノの二大オオモノ激突! は、うちに関してはピアノの勝ち!です。やはり1階に自分の部屋を作らなかった のが失敗でした。 「選択と集中」の時代なので、それに有った収集をするしかないですね。 |
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86. 2004年12月23日 07時14分32秒
投稿:庵本譚 [http://www3.wind.ne.jp/kobashin/cgi-bin/nagaya/nagaya.cgi?room=079] |
庵主です。 風読人掲示板で、ノーマン・ベロウの原書が大量に復刊される(かもしれない) ことを知りました。それも1冊2千円程度(18ドル)という適価です。 順調に出版されれば、これまで大枚叩いて集めてきても道半ばだった私的 収集が一気に進むことになります。 1冊に何万円も出してきた身の上としては、内心忸怩たるものがありますが、 これもまあ、世の流れというものでしょうか。 翻訳書で何が出ても驚かなくなりましたが、原書の世界でも黄金期の『復刊』が 相次いでおり、その台風の目に風読人主宰が立っている、というのが凄いよなあ とつくづく感じる次第です さて、この黒猫荘 52号室「屋根裏」さんの 1655番目の書込みとして掲載されている萩元さんとおっしゃる方の 芸にいたく感銘をうけたので、猿真似をしてみました。 えー、昔から「蔵書一代」と申しまして、 本を集める趣味というのは、その人一代限りで終わってしまうことが 多いそうです。 一つには、蔵書家は嫁さん貰ろてる暇がないてなことがございまして、 ごくごく希なことにめでとう所帯を持てても、今度は子供を作る暇がない。 なんかの拍子にひょっこり子宝に恵まれても、今度は、なんですな、 父親の蔵書っちゅうもんは、大概、家族から目の仇にされてしまい、 父親が死んだら「やれ嬉し」とばかり古本屋に二束三文で売り捌かれて しまう、というのが世間の通り相場でございます。で、「蔵書一代」。 嫁さんが古本極道の旦那を掴まえて「私と本とどっちが大事やのっ!?」と 迫っても 「そら、お前、勿論、本」といいかけて 「…さいが大事」とかごにょごにょとごまかす。 「私を二号扱いするんかいなあ!」と怒鳴られてると 「そんなことあるかい!」と嫁さんの帯をさして 「普通、二号に帯はつかんのじゃ」と答えた、てな話もございます。 まあ、それでも古本の好きな人は絶えんようでして、 「いてはりますかあ」 「いてるで」 「あの〜ええ古本ミステリが手に入る工夫はおまっしゃろか」 「なんやねん、来るなりいきなり」 「いや、これから冬の古本市がまた始まりまっさかいに いっぺん、ちゃんと勉強しとこと思いまして」 「まあ、そら、ええこっちゃけど、おまはんに古本の 趣味があるとは、知らなんだな。そやな 一見え、 二高、 三金、 四ネット、 五精、 六おぼこ 七ぜりふ 八力 九肝 十評判 てなことを言うな」 「…そ、それはなんじゃもんじゃの薔薇の名前だっか?」 「それもいうなら『薔薇のつぼみ』」 「がぶっ」 「こら、な、何すんねん、噛みつく奴があるかいな、 ちゃうがな、これが古本が手に入る十か条、 このうちの一つでもそなわっとったら古本が手に入るというな」 「手に入りますか」 「手に入るな」 「ほな、一番目は何ですねん。」 「一見え(いちみえ)というて、まずは眼力やな。古本屋で、ざっと棚を 見渡して、これぞという逸品を選び出す眼力がないと、カスばあっかり つかまされることになるな」 「なるほど。ほたら、どないです、私の眼力。」 「うわあ、こらまた血走った目開きよったなあ。で、なんかエエ買いもん したことあるんかい?」 「ブックオフの百均でサンリオ文庫、抜いたりました」 「お、サンリオとは立派やな。腐ってもサンリオ、栗より美味い十三里オと いうからな。んで、なに抜いてん?ディキンスンかい?」 「大きい声ではいえまへん」 「そやな。『生ける屍』や『鳥の歌いまは絶え』やったら、まあ、万馬券 みたいなもんやからな。心配すな、だまっとったるさかいに、こっそり教え」 「…ハロー」 「『ハローサマー、グッドバイ』かい!?そらたいしたもんやがな。 こら、おうたコニイ教えられやで!」 「…ハロー、キティーのかず遊びブック」 「あほ。去(い)に、もうええわ」 「あきませんか、わたしの眼力」 「あっかいな。まあ、いうたら『侍のアナウンサー』か」 「なんですねん」 「武士アナ」 「ぶしあなあ〜?」 「『ふしあな』な上に濁っとる」 「エラいいわれようやな。 ほしたら、二番目はなんです」 「二高(にたか)というてな、背が高いとそれだけで古本を探しやすいな。 高い棚に有る本でも、ひょいと手伸ばして取れるさかい、ちっこい人間が脚立 探しとる間に勝てるな。古書市の棚も高いところから見下ろすさかいに、 遠くまでよお見える。抜き合いになっても、ふっと視界の外から手が降ってくる 感じやな。抜かれた方からすると『書を見て、森を見ず』っちゅうか」 「なんかよう判らへんけど、ええわ。 んで、どないです!、私の身の丈」 「まあ、もう三尺高こうて、人並みか」 「晒し首でっかいな。 もうええわ。ほな三番目はどないです?」 「三金(さんかね)というて、お金やな。 当り前の話やけど、古本の世界でも金があったら、なんぼでもええ本が集まる。 デパート市でも、棚から買うたりせんと、ショーケースんとこで買いもん できるな。『並ばずにケースから買うお大尽』ちゅうてな。 まあ、お医者さんとか、漫画家の先生とか、金に糸目をつけんと、 ええ本、集め捲ってはる人は仰山いてはるで。」 「実は、金なら少々蓄えが…」 「おっ、これはお見それした。お前みたいなんが、思わん小金を 貯めとるっちゅうのは、こら、あるこっちゃ」 「単行本で買うところを、文庫落ちを待って、 新刊で買うところを、古本落ちを待って 自分で買うところを、図書館に買わせて八年間、貯めに貯めました」 「買うことあるんかいな?まあ、いずれにしても、よう頑張った。 ほんで、どのくらいあんねん?」 「いや、そんな事、ゆうたら狙われる」 「誰にも言わんさかい、言うてみ」 「いや、あんたでも、それがためにむらむらと悪心を起して、何がおこるやら」 「こらまた、大層に出たな。お前から金とろとは思わへんから、ゆうてみって」 「…150円」 「何い?」 「150円!」 「アホ!ブックオフでも2冊も買えへんわ」 「あ、ブックオフでしたら割引券があと50円分あります」 「ドアホ! 何が『それがためにむらむらと悪心を起し』じゃ」 「あきませんか」 「あっかい!」 「ほしたら四番目は何ですか?」 「だんだんアホらしなってきたけど… 四ネット(しねっと)というて、インターネットやな。 最近はネットの古本屋やらネットオークションやらいろいろあるさかいに これをコマメに追っかけとるだけで、結構ええ買いもんができるな。 特に原書で読む人はネットのおかげで、随分と楽に安う買いもんできる ようになったらしいで。そやけど、おまはん、パソコンもっとるんかい」 「馬鹿にしなはんなや。パソコンぐらいありますがな」 「ほほー、そら感心やな」 「世界のブランド品でっせ」 「どこのや」 「NINTENDO」 「そら、ファミコンや」 「親指シフトキーで」 「あれは十字ボタン」 わいわいゆうております「古本根問い」半ばでございます。 とりあえず回文 「乱歩の嘘と土蔵の本ら」 そんなところです。 |
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85. 2004年12月22日 06時18分39秒
投稿:庵本譚 [http://www3.wind.ne.jp/kobashin/cgi-bin/nagaya/nagaya.cgi?room=079] |
庵主です。 また間を空けてしまいました。 単に早起きができなかったというだけの理由です。 とりあえず先週木曜日からの読了本は以下の通りです。 「迷宮の暗殺者」デヴィッド・アンブローズ(ヴィレッジ・プレス) 噂に違わぬ怪作。航空機事故で夫を失った女性精神科医が巻き込まれた 巨大なる陰謀譚と、仕掛けて仕損じなしの秘密諜報員の活躍譚が 交錯するところ、仮想と現実の汀で策謀の輪舞が始まる。 うつし世は夢、夜の悪夢こそまこと。 活劇部分の「らしさ」がハリウッドで鍛えられた作者の実力を 証明していますが、いや、それにしても、よくまあ こんなぶっ飛んだお話が書けたものです。 あとがきを読むとどうやら作者は大マジメのようです。 えーっと、或る意味、2004年に非常に相応しいお話 だったのかもしれません。 「ナイト・ブリード」友成純一(ハルキホラー文庫) 作者の住まう福岡を舞台にした近未来ハルマゲドンスプラッタ大河小説の 第1章。ありとあらゆる魔物や妖怪が当り前に出現するようになった日本。 だが、自然現象と化した筈の殺戮には演出者がいた。 混乱する時局に乗じて九州の独立を目論む影の勢力。 狂奔する教義、不死身の探索者、憑依する無自覚、破滅への能弁、 果して、さ迷う魂たちの邂逅の果てに待つものとは? それは作者も知らんもんね。とりあえず妖怪風呂敷きは広げてみました、 みたいなお話でした。やれやれ。 「深夜の魔術師」横溝正史(出版芸術社) 戦中・戦前の埋れた作品を発掘して一挙出版したマニア垂涎のシリーズ 第2巻。この収録作を古本で探そうとすると、数年の歳月と数万円の 費用が掛かります。ありがたやありがたや。 個人的には、名のみ知っており、長きにわたって「一体どんな 話なんだろう??」とあれこれ妄想してきた「玄米食夫人」が読めて 非常に満足しております。 ベストは、中公文庫の『明治・大正・昭和 日米架空戦記集成』にも 採られた「慰問文」ですが、その他の時局小説にも、様々な正史らしさが 見え隠れしていて、ファンならば手に取らずにはいられない作品集 といえましょう。 「ケルベロス第五の首」ジーン・ウルフ(国書刊行会) 本年度最も話題になったSF、といっても宜しいのではないでしょうか。 このミスにランクインしたこともあって、とりあえず参戦してみました。 結果は3日間掛けて半泣きで読み終え「もう、なにがなんだかわからん よう」と尻尾を巻いて帰ってきた次第です。 特に第二部が辛い。 延々他人の退屈な悪夢に付合わされているような苦痛の読書体験でした。 こんなに辛いのは「黒死館殺人事件」以来です。 SFマガジン10月号の鼎談や、殊能ページの詳細な絵解きを見て初めて 「ああ、そーゆー話だったのかあ〜」と解かったような気になった次第です。 ですが、新本格推理と比較して語るおっちょこちょいな物言いは慎んで 欲しいです。リストの超絶技巧と関西弁ラップぐらい違うと思うんですけど。 「最後のディナー」島田荘司(講談社ノベルズ) 四十の手習いで英会話学校に通う羽目になった石岡先生が、 出会った上品な老紳士。半年間の交友が、運命の聖夜に収束した時、 謎を残して「父」は消えた。ハート・ウォーミングな一編で、 桜木町から関内、黄金町といった横浜散策小説でもある作品。 小品ですが、人物造形が巧みで、読まされます。救いのある エンディングもクリスマスに相応しい贈り物でしょう。 原書房版の小洒落た造本のわけが理解できました。 それにしても女性に厳しい事を書きながら、圧倒的な女性の支持を 取り付けるというのは羨ましいとしかいいようのない才能であります。 「白い果実」ジェフリー・フォード(国書刊行会) 国書刊行会が「超訳」をやると、こうなるわけですね。 世界幻想文学大賞を受賞した3部作の第1巻。 一人の超人の夢を具現化した理想境の自壊と、鼻持ちならない エリートの魂の遍歴を描いた快作。 見た事もないガジェットが満載で、傲岸不遜、豪華絢爛、轟然一声の ノンストップ・ファンタジー。 山尾悠子の異界言語で綴られた禁断の果実を巡る探索と再生の ドラマは、凡百のライトノベルを超越した高みへと読者を 導くのでありました。 ああ、早く続きが読みたい。 「エラリー・クイーン Perfect Guide」EQFC(ぶんか社) 生誕百周年に向けたジャンピングボード。 EQFCのメンバーとしては、目新しい話はないですが、 それでも、この本を通読すると、無性に頭からEQを 読み返したくなります。今日は、古本屋でペンギンブックス版の 「The Roman Hat Mystery」に遭遇したのをこれ幸いと 序文を流し読みして、懐かしさに耽ってしまいました。 ああ、一体誰がエラリー・クイーン夫人になったのだらう。 引退してイタリアで暮すのはいつのことなのだらう。 なんだ、ちっともフェアじゃないぞ、エラリー・クイーン! そんなところです。 |
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84. 2004年12月16日 06時39分43秒
投稿:庵本譚 [http://www3.wind.ne.jp/kobashin/cgi-bin/nagaya/nagaya.cgi?room=079] |
「双子座流星群」やら「獅子座流星群」とか きくたびに、消火器詐欺の話を連想してしまう庵主です。 「消防署の方から来ました」 「双子座の方から来ました」 昨日は、赤坂の旭屋書店で銀河通信のダイジマンさんに応対して いただきました。ダイジマンさんは、SFマガジンや朝日新聞にも 載ったことがあるカリスマ書店員さんの一人です。 ここ数日、探しあぐねていたアンブローズの「迷宮の暗殺者」を、 ちゃちゃっとどこかからか取りだしてきてくれた手際に感動して、 つい買う予定のない本まで買うことになってしまいました。 カバンが重い! 財布が軽い! 一昨日読み終わったのは福井晴敏の「6ステイン」。 作者の初短篇集。銀座の旭屋にサイン本が積まれていたので 発作買いしてしまいました。 収録されているのは防衛庁情報局、通称「市ヶ谷」の 末端に連なる人々の様々な「闘い」を描いた2中編+4短篇。 作者はてっきり「長編の人」だと思い込んでいたこちらの蒙を啓く 粋で小癪で気の利いた人間ドラマが満載。 元情報局員だった中年サラリーマンが私怨を抱いた北のプロと 死闘を演じる羽目になる「いまできる最善のこと」 冷戦の危険な遺物の争奪戦に一人の男を待ちつづけた女の凛とした 気風が光る「畳算」 デスクワーカーが冷徹な十代の娘と組んだ夜の命のやり取りと 鮮やかな逆転を描いた「サクラ」 母なるものの存在を巡る諜報ゲームの顛末と一人の女性 エージェントの怒りと癒しを活写した「媽媽」 引退した老掏りの最後の大仕事と純愛、そして母たちの復讐を 痛快に描いた「媽媽」の後日談「断ち切る」 引退間際のタクシードライバーAPが待ち続けたのは 誰だったのか?伝説の狙撃手と新たな伝説となる若き狙撃手。 策謀の夜に操りの牙が躍る「920を待ちながら」 どれも、福井晴敏の作劇力が短篇でもその威力を発揮することを 証明してみせる逸品揃い。 発刊の時期が各種ベストの締切後だったために、年末ベスト10祭の 蚊帳の外に置かれていますが、個人的に今年の年間ベストを選ぶ際には 絶対忘れてはいけない作品集だと確信します。 ああ、どいつもこいつも格好いいぞおっ! 「格好いい」といえば、昨日の読了本もまさにそれ。 トレヴェニアンの「ワイオミングの惨劇」(新潮文庫)。 19世紀末の小さな鉱山町で起きた、マッドな3人の脱獄囚と 個性豊かな住民+一人の流れ者の闘いを描いた純粋西部劇であります。 虚実ないまぜとなった昔語りのうちに、弁舌爽やかな少年の 心の傷と匂い立つような鉱山街の日常が私達の眼前に迫って きます。そして舞台を切り裂くように降臨する狂った破壊神、 痛みと怯えを支配し、暴走する「教義」。忍従と腹背の夜に 立ち上がった者、その背負いし過去と今。 これは、およそミステリーからは遠すぎる、そう二十マイルは 遠すぎるお話なのですが、最後の一行に込められた実弾は確実に あなたのセンチメンタルな心の真ん中を撃ち抜く事でありましょう。 やられたあ。 |
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83. 2004年12月14日 06時43分34秒
投稿:庵本譚 [http://www3.wind.ne.jp/kobashin/cgi-bin/nagaya/nagaya.cgi?room=079] |
庵主です。 先週末から家族の間で嘔吐下痢症が蔓延し、 ネットどころではなくなっておりました。 「人口の3分の2が疫病に倒れた」 と書くと凄そうに見えますね。 この間に読み終わった本は以下の通りです。 「折々の犯罪」佐野洋(講談社文庫版) 盟友・大岡信の「折々の歌」にインスパイアされた推理短篇集の 第2弾。第1作の「〜殺人」から「〜犯罪」にトーン・ダウンした分、 騙しのバリエーションに広がりがでており、中にはとんでもなく 肩透しな作品もあります。個人的には縛りがきつい分、前作に軍配を あげたくなります。 「MAZE」恩田陸(集英社) アジアの何処かにあって、何千年も前から人を呑み込んできた「迷路」。 現代科学を武器にその謎に挑む4人の男たちの葛藤を描いた 不思議系ファンタジー。見事なキャラの立たせっぷりと大仕掛けな逆転に 感心しつつも、基本的な物理法則を誤解している所があって満点は あげられないなあ、と感じました。 「蝿の女」牧野修(光文社文庫) 作者の最新中編。キリストの復活を信じるカルトに追われる「オカルト マニア」たちが、助っ人に召喚したのは「蝿」、即ち「悪魔」だった。 エキセントリックで、アンニュイで、滅多やたらと強い「悪魔」像に 作者の洒落っ気を感じます。私は若い頃の吉田日出子のイメージで 読んでおりました。それにしても、キリスト教をここまでコケにして 宜しいものなのでしょうか? 「臨場」横山秀夫(光文社) このミスに入賞していたので、慌てて買ってみました。 本格推理!名探偵登場!といった選評に惹かれて、期待しながら 読み進んだのですが、テイストはお馴染みの濃厚な人情ドラマでした。 エピソード毎に語り手を替えて名探偵像を浮き彫りにしていく手法は、 こうして一冊の本になることで初めて「完成」したような気がします。 どの作品も、視点の逆転が鮮やかですが、さっくりと掟破りの フーダニットが光る「赤い名刺」と「眼前の密室」が本格マニアとしては オススメであります。 「奇術師」クリストファー・プリースト(ハヤカワFT文庫) 歴史を跨って対立してきた奇術師とその末裔。二つの書簡に綴られた イリュージョンを巡る確執、そして科学の魔、ダブル・イメージの 連鎖に息をのみ、悪夢的なクライマックスに茫然となる怪作でした。 全くもって推理小説ではないのですが、一種の叙述トリックが 異形のメタ・ミステリ好きの心をくすぐったのでありましょう。 個人的にも、私がFT文庫で最も愛している某作品を彷彿とさせる 部分があって、嫌いではありません。しかしこのラストの不気味さには 少し引いてしまいますね。 「フィリップ・マーロウより孤独」平石貴樹(集英社) ハードボイルドのパロディだとばかり思っていたら、全共闘世代に 捧げるセンチな「女子大生小説」でした。唐突な「謎」の提示と、 強引な筋運び、そして二人の女と二人の男を巡る別離の会話、 なるほど題名通りの話ではあるのですが、全然推理小説では ありませんでした。計算され尽した女子大生軽薄体が、一筋縄では いかないプロットをスキップしながら撫でていきます。 駄目な人には徹底的に駄目な小説でしょう。 「このミステリがすごい!2005年版」(宝島社) 初めて熟読してしまいました。どの作品も、すっかり読み終わった 気分です。あと、「バカミス」は、そろそろ賞味期限切れに なってきたかなあと思います。仲間うちの冗談が権威を持ちすぎて 腐ってきているという印象を受けました。 そうそう、未読王さんが書評しているのには「看板に偽りありでは なかろうか」と小一時間、でした。 「本格ミステリ・ベスト10」(原書房) 投票者のレベルが、このミスに比べると低いという印象は免れません。 もしかしたら近親憎悪なのかもしれませんが。 力点が国内ものにシフトしていて、「内輪受け」の域を 脱していない、というのが素直なところです。 きちんと海外もベスト6から10位の解題を行うべきなのでは? あと、「暗黒館」を本格ミステリであるとしてしまっては イカンのではなかろうかと感じております。 |
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82. 2004年12月08日 06時48分17秒
投稿:庵本譚 [http://www3.wind.ne.jp/kobashin/cgi-bin/nagaya/nagaya.cgi?room=079] |
庵主です。 このミスが出たようですね。 日本はベスト10のうちの3作、 海外は4作しか読めておりませんでした。 年末までには、せめて半分は読みたいものです。 これが「本ミス」の方だと、読了本が 日本6作、海外11作(わお!)になるのですが、 このミスでは題名を聞いてもピンとこない作品も 多数あって、まだまだ精進せねばと感じる次第です。 東京創元社からピンバッジの第6弾、SFマークが届きました。 ぱっと見ると、異様にでかく感じてしまいます。 やはり「文字」というのは、イラストとは感覚が異なるものなのでしょうか? 創元推理文庫の中のSFマークでマークを代表する本は何か? を考えてみると、私の場合は、読んでもいない 「年間SF傑作選」ということになりましょうか。 題名に「SF」が入っていて、傑作揃いでありながら 長く品切れ状態が続いている本、 最入手困難本と思われたロシアSFやら東欧SFが復刊された今、 最も復刊が待たれるシリーズではなかろうかと小一時間。 ベスト・オブ・ベストが出ているので、まあいいかという 噂もありますが、改めて収録作品を眺めてみると、その 贅沢なラインナップに唸る事請け合いであります。 読み終わった本はネヴァタ・バーの「死を運ぶ風」 小学館文庫です。 出るたびに版型が変わる女性パーク・レンジャー、アンナ・ピージョン シリーズの第3作です。 この作者の本を読むのはこれが初めてでしたが、 中盤までがきつかったです。 アナサジ族の遺跡で頻発する虚弱な観光客のトラブル、 そしてアンナが憎からず思っていた季節レンジャーの突然の死、 夜光るもの、悪い風、 外傷を残さず、命を奪っていく「亡霊」の正体とは? 遺された身体障害児との交感は、アンナ自身の癒しでもあったのか? 続いて起きるストーカーの事故、 敏腕FBI捜査官の登場は、Xファイルを開き、 悪の姿を暴き出す。 キャラクターを書き込み、エピソードを散りばめ、 アウトドアとオカルトのガジェットもたっぷりな作品なのですが、 メインの怪事件に到達するまでが悠長過ぎます。 全体を引っ張る「謎」の演出が恐ろしくへたくそで、 これがカーだったら、どれだけ魅惑的な謎に膨れ上がった事かと 残念でなりません。 また、キャラクターを、テレビ番組や雑誌を引き合いに出して語ると いうのは、小説家としては敗北のような気がします。 主人公のユニークさ(アル中寸前の中年女性パークレンジャー)で 人気があるのかもしれませんが、私にとっては、 並み以下の現代ミステリでした。 単にアウトドアミステリと私の相性が悪いだけなのかもしれませんが、、 |
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81. 2004年12月07日 06時32分55秒
投稿:庵本譚 [http://www3.wind.ne.jp/kobashin/cgi-bin/nagaya/nagaya.cgi?room=079] |
庵主です。 愛猫鉄人さま いらっしゃいませ。 こちらでは、はじめまして。 「にゃんだろう、 もしかしたら、あの人かもめ」 と見当をつけておりますが。 家族と家財の引越しは、とりあえず終わりましたが、 7畳半分のトランクルームに放り込んである 本の引越しがこれからです。 つまりワタクシ的には「まだ全然終わっていない」 わけであります。 家人のピアノもまだ動いていません。 なんと、本棚対ピアノの二大オオモノ激突!引越し総進撃は これからなのです。 ああ、自分で書いていて鬱になってしまいました。 鶴亀鶴亀。 深谷忠記は、やはり初期作をオススメいたします。 「花」伝説シリーズだけは避けてください。 大鮎哲のレベルには遠いですが、初期笹沢左保並みには楽しめると 思います。 kanauさん いらっしゃいませ。 海外古典に余り手を出されない方が読了されているというのが、 「時の娘」の「時の娘」たるところなのかもしれませんですね。 「古典」という言葉にこれほど相応しいミステリも ないかもしれませんし。 今更何が変わるというわけではないのに、 タイムリミットサスペンスのドキドキを 感じさせるというのが、単なる「歴史」新釈ではなく、 小説としても成立しているところ、かと。 いやあ、お見事でした。 作中紹介される「肖像画」をカラーで挟み込んで 欲しくなりました。 またお越しください。 古本屋の百均棚で拾った雑誌「GQ」の2000年3月号を パラパラ拾い読みしておりました。 チャンドラーがジェイムズ・M・ケインの原作を脚本化した 「深夜の告白」が一挙掲載されているほか、ハリウッドと チャンドラーのあれこれが手際良く紹介された特集記事満載。 更に、パトリシア・コーンウェルの本邦初訳短篇 「スカーペッタ『冬の食卓』」が掲載されているという お買い得な本でした。 こんな雑誌が出ていることすら知りませんでした。 出版元はあの今更企画の「グレートミステリーズ」を出している嶋中書店。 こういう専門誌以外の雑誌でのミステリ特集というのは、本屋で みつけると「よけいな出費」感があるのですが、 チェック漏れの挙句に古本屋で巡り遇うと、逆に「掘り出し物」感が 倍増いたします。 勝手なものです。 読了本は佐野洋の「折々の殺人」講談社文庫版です。 題名だけ見知っていたので「べたな題名の連作だよなあ」と 思っていたのですが、読み始めて、大岡信と作者が同窓で、 かつ朝日新聞で同じ釜の飯を食っていたことを知り、 「これは一本とられました」と反省。 原編者(大岡信)公認の企画だったのですね。 折々の歌に触発された8つの短篇を収録。 それぞれに人生の機微を感じさせるツイストの効いた 作品揃いで、驚天動地の大ネタはないですが、 10分間分の知的興奮はあるといった内容。 お気に入りは、電話口で暗転する恐怖が鮮やかな「夢の旅」。 男としてこれはとても怖い。 植草某の破廉恥事件を思わせる「衰える」も、なかなかに 動機がふるっています。 捜査官の会話だけで未亡人ができるまでを活写した「ひそかな思い」も お約束の捻りながら、巧さを感じさせてくれます。 また文庫版の解説は、佐野洋と大岡信と同窓の東大名誉教授が 当時の日記を参考に佐野洋の異彩ぶりを浮き彫りにしていて吉。 楽しい読み物に仕上がっていました。 |
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80. 2004年12月07日 00時35分22秒 投稿:kanau |
こんばんは、78号室のkanauです。 ジョセフィン・テイの『時の娘』を読まれたとの書き込みを見て思わずお邪魔してしまいました。 やっぱり面白いですよね、このお話。 海外、特に古典作品をほとんど読んだ事がない私の数少ない読了本です。 歴史も割と好きなので、それだけでも十分魅力的ですが、ミステリーとしても魅力たっぷりで、正に2つの味が楽しめる、といった所です。 まさか、あの稀代の悪役リチャード3世の所業を「冤罪」というとは・・・ それだけでも凄いと思います。 言いたいだけ言ってしまってすみません。 それではお邪魔しました。 |
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79. 2004年12月06日 06時31分29秒
投稿:庵本譚 [http://www3.wind.ne.jp/kobashin/cgi-bin/nagaya/nagaya.cgi?room=079] |
庵主です。 先々週木曜日からこの日曜日の10日間に読み終わった 本は以下の通りです。 小島直記「遠い女」東都書房 バリンジャー・スタイルの「女を捜せ」サスペンス。 それなりに読ませはするのですが、 会社の役員から密名を受けて人探しに精を出す不器用な正義漢という 「探偵」の設定の不自然さに茫然としてしまいます。 妙に海外ミステリを意識しながら、根っこのところでどうしようもなく 日本で、しみったれた動機がなんとも昭和30年代、という作品でした。 古本市で巡り合うまで存在すら知らなかった作品です。 ミッキー・スピレーン「俺の拳銃はすばやい」三笠書房版 早川書房で出ていないマイク・ハマーものの初期作。 ひょんなことから赤毛の娼婦の心を救済したハマーが、 彼女の「事故死」に疑問を抱き、卑しい街を駆け巡るノリノリの一編。 一大売春組織 対 ハマーの闘いの中で、喪われる無辜の魂 対決は燃えさかる紅蓮の中で 俺の心は熱く 俺の拳銃はすばやい 一人称「ぼく」の訳文に面食らいながらも、 絶好調時のハマー節が光る作品。 菊池光あたりが一人称「私」で翻訳すると全然違う小説に なってしまうんでしょうねえ。 加納一郎「浅草ロック殺人事件」栄光出版社エイコーノベルズ 時は乱歩全盛の昭和初期、処はモダンとデカダンスと笑いの殿堂・浅草ロック 奈落の下でマネキンに模せられた死せる美女 猟奇の探偵作家と編集者が追う連続殺人の顛末を描いた時代推理 開化探偵帖までは古くなく ホック氏ほどにはパステイーシュでもない という中途半端なイメージのする作品。 当時の映画・芸能を勉強したい人はどうぞ。 黒田研二「ふたり探偵」光文社カッパノベルズ クロケン、トラベルミステリに挑戦。 寝台特急カシオペアを舞台に繰り広げられる 超絶探偵コンビ(?)と不可能犯罪の顛末記 仕掛けのための仕掛けが満載で、SF的設定を パズルの土台に組み込むところがイマ風。 てっきり、人形マニアのおたく青年が探偵を 勤めるものと思い込んでいたので、話に乗りきれないうちに 終わってしまいました。 それにしても、これのどこがトラベルミステリやねん! という感じの一編で、新幹線のキオスクで西村京太郎の ついでに買った普通の読者は面食らったでしょうねえ。 鳥飼非宇「非在」角川書店 瓶詰めの地獄が運んできた、人魚探しの殺人パズル。 「蓬莱」にUMAを追う大学のサークルが遭遇した 災厄と奇蹟のドラマ。 自然派探偵たちが解き明かす、死の連鎖と神獣の正体とは? 正史賞作家の第2作。 やや、正史に淫した感のあったデビュー作に比べて 随分と「自分らしさ」を前面におしたてた技巧作。 人魚も朱雀も「解明」されますので、 ご安心してお読みください。 恋愛ホラーアンソロジー「鬼瑠璃草」祥伝社文庫 女流作家ばかりのねっとりとした恋愛ホラー集。 高橋ななをという聞き慣れない作者ノ「シスターズ」という 作品が印象的でした。 篠田節子のパニック小説もオトコの脆さとオンナのしぶとさを 活写した逸品で、怖いような頼もしいような。 北山猛邦「『瑠璃城』殺人事件」講談社ノベルズ メフィスト賞作家の第2作。 輪廻転生を重ねては殺し合うことを宿命づけられた二つの魂。 その永劫の連鎖の始まりと終わりを描いた 最果ての不可能犯罪ミステリ。 第1作に比べれば、世界観が身近になりましたが、 とにかく人を殺す、殺す。 6人の首無し騎士を3回やるわけですから、それはもう 命の重みは、ドアノブより軽いぐらいです、はい。 ピーター・ラヴゼイ「服用量にご注意のこと」ハヤカワミステリ文庫 いまや押しも押されもせぬ英国ミステリ界の重鎮の軽やかな 短篇集。夫と妻に捧げる犯罪あり、小粋な時代推理あり、 クイーンもビックリの犯人当てクイズあり、英国の伝統的ホラーあり、 バラエティーの豊かさに唸りっぱななし。 一つ一つは軽量級ですが、読み終わって、これが一人の作家の 仕事かと思うと、「さすが」という称賛を禁じえません。 木村二郎氏の詳細な解説も初出から再録、雑誌掲載にまで 痒い所に手が届く出来映えで、 短篇集の解説とは斯くあって欲しいものだと思いました。 ジョセフィン・テイ「時の娘」ハヤカワミステリ文庫版 何を今更な歴史的大傑作。 かのシェイクスピアにも悪王として描かれたリチャード3世の 「冤罪」をマンホールに落っこちてリハビリ中の グラント警部が晴らすという、余りにも有名なベッド・ディテクティブ。 これまで、己の英国の歴史への無知ぶりに、避けてきたのですが とうとう思い切って読んでみました。 いや、これは凄い。 本当に面白い。 バウチャーや乱歩が絶賛したのもむべなるかな。 これを読まずしてベッド・ディテクティブは読む勿れ。 歴史とミステリの正しい立ち位置の在り方についての これぞ古典的教科書。 この作品を読んでこなかった自分を恥かしく思います。 倉知淳「まほろ市の殺人 春 無節操な死人」祥伝社文庫 新本格作家が四季を競作した連作の第1話。 マンションの高層階で「覗き」を犯した頃には 既に死んでいたバラバラ死体という魅惑的な謎に 普通の受験生が挑む、という作品。 三次元トリック一閃のお話ですが、無駄なところのない 引き締まり方が素敵です。 本編は30分で読み終わりますが、 まほろ市の地図を眺め、地名の語源を探るだけで、 1時間は楽しめます。 井上雅彦編「幽霊船」光文社文庫 光文社文庫に移籍して3冊目の異形シリーズ。 「幽霊船」という縛りで、書下ろしアンソロジーが 出来てしまう、というのが、欧米よりも進歩的なのでは ないかと小一時間。 飯野文彦の中編が、この作者にしては随分とコクのある ジェットコースターホラーで感心しました。 相変わらず菊地秀行が格の違いを見せておられました。 とりあえずそんなところです。 |
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78. 2004年12月05日 11時13分02秒 投稿:愛猫鉄人 |
庵主 様 ここは別世界ということで、HNもいつもと変えてみました。 ネコ自慢HPをやっていると言えば、正体はお分かりですよね。 本のご処分は大変そうですが、遂にお引越しなのでしょうか。 落ち着かれたら「復帰」も期待しております。 壮&美緒シリーズって庵主様が評価される位なので、結構行ける みたいですね。 私も鉄道ものは好きなので、読んでみたいと思います。 なかなか古本屋に行っても欲しいものが無いもんで、最近 行く気が湧いて来ないのです。 それでは。 |
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77. 2004年12月03日 09時36分58秒 投稿:庵本譚 |
庵主です。 ないとーさん いらっしゃいませ。 こちらこそご挨拶が送れてすみません。 >最近、なんか話題になりましたっけ?クイーンって、 来年2005年が、ダネイとリーの生誕100周年みたいです。 北村薫のパスティーシュも完結するでしょうし、 「まちがいの悲劇」もなんらかの形で翻訳されるでしょうし、 ここで盛り上がらなければ、あと100年待ちって事に なるのでは 「百年半待て」 って松本清張かい! 「緋文字」はどんな話かも忘れてしまっているところが凄いです。 不倫カップルのあとをつけて町中走り回る話でしたっけ? 今後ともとよろしくです。 |
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76. 2004年12月03日 01時06分56秒 投稿:ないとー |
はじめまして、ないとー44号室辺りです。 (最近投稿してなかったもんだから何号室かも忘れちゃったよホントに) いまさらですが、ご挨拶してなかったなと思ってきました。 なんだか以前ほどクイーンは話題になってない気がして、 いくつかハヤカワ文庫も品切れが出てきてちょっと淋しいなと思ってた頃に、 いきなりクイーン本が出たのには「?」となってたのですが、 最近、なんか話題になりましたっけ?クイーンって、 まさか『生首に聞いてみろ』が出たからとも思えないけど。 クイーンはここ何年も読んでないけど、僕は『緋文字』が好きですね。 ダイイング・メッセージの謎はまぁともかくとして、 エラリーが振り回されるシーンがとてもおかしかったので。 僕にとってはクイーンに小説としての面白さを感じた貴重な作品です。 なんだか、とりとめもなく書いてしまいました。 これからもよろしくお願いします。 |
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