フサモとホザキノフサモ

  

フサモとホザキノフサモについて

 フサモとホザキノフサモは、ともにアリノトウグサ科フサモ属の水草で、池や沼に見られます。水中での様子はよく似ていますが、花をつけるために水上に出す茎につく葉の様子が違います。フサモの葉はやや大きくて多少羽裂しているのに対して、ホザキノフサモの葉はごく小さくて裂けていません。
 それぞれ別のところで見つけて、そっくりなため別の水槽に植えておきました。残念ながら今年は、身近で花を比べることはできませんでした。でも、秋になって、この2種に違いが見られ始めました。

 

 

 10月はじめ、別の水槽で育てていたフサモとホザキノフサモに違いが現れたのに気づきました。水面上に立てる花序を見なければ見分けがつかないほど良く似ている2種でだったのですが、水温が低くなるにつれ、フサモは先端の葉が縮まりだしたのです。

 
フ サ モ                 ホザキノフサモ

 11月になると、フサモの先端の葉が縮こまった部分がさらに長くなり、2cmを越えるようになりました。どうやらこれは、フサモと同じ水槽で育てているイヌタヌキモの場合と同じ、越冬用殖芽(冬芽)のようです。一方、ホザキノフサモの方は全く変化がありません。

 
ホザキノフサモ

 そこで、フサモとホザキノフサモを水槽から取りだして、改めて見てみました。
 フサモの方は、全裂していた葉がワイヤーのように茎にからんでいるのがよくわかります。


フ サ モ 


 一方、 ホザキノフサモは、茎の先までのすべての葉がきれいに全裂しています。


ホザキノフサモ 

 11月中旬になると、フサモの茎は堅く折れやすくなってしまいました。そのため、水槽に植えておいたのにポキポキと折れて、水中を漂うものがたくさん見られるようになりました。ホザキノフサモの茎は以前と変わらず柔軟で、水中でゆらゆらとしています。


水中を漂うフサモ

 このころ、イヌタヌキモは既に1cmほどの太った毛虫のようになって水面に浮かんでいました。同じ越冬用殖芽でも、普通の茎が残っているフサモとは大きな違いです。

 1月になると、フサモは越冬用殖芽だけになり、水底に沈んでいきました。



 一方のホザキノフサモは、昼間でも水温が10度近くなのに相変わらずで、のんびりと光合成をしています。


酸素のあわをつけるホザキノフサモ

 2月上旬になると、今までぴっちりとからまっていたフサモの越冬用殖芽の葉が、少しずつほどけ始めました。

 2月の下旬には、フサモの越冬用殖芽から白い根が1本でてきました。まだ水温は低いのですが、春に向けての準備が着実に始まっています。

 3月になると、フサモの中には、生えてきた根を水底の小石の中に伸ばし、直立するものが見られるようになりました。

 ホザキノフサモの方は、途中から枝分かれした新しい茎が順調に伸びてきました。

 3月下旬には、越冬したフサモの越冬用殖芽から、どんどん根が出てきました。けれども不思議なことに、越冬用殖芽自体は水底に根づかないものも多く、水中に浮かんで根だけを錨のように水底に延ばしていました。

 そして、4月上旬になると、両わきから新しい茎が伸び、下の画像のようにかなり妙な姿になりました。