毎日新聞総合メディア事業局企画室委員、岩下恭士さんの講演
岩下恭士さんの写真

司会者:
それでは、講演1「点字新聞からユニバーサロンへ」という題で、毎日新聞総合メディア事業局企画室委員、岩下恭士様にお願いいたします。
岩下様なんですけれども、プロフィールは講演の中でお話ししていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、岩下様、よろしくお願いいたします。

岩下:
今、こちらに着いてからですね、「とりへい」のおいしいお弁当を頂きまして、お腹いっぱいで目の皮がくっ付きかけたとこなので、がんばって話します。
それで、今日は視覚障害の方がたくさんおられることを聞きましたので、私自身全盲の視覚障害者なんですけれども、今やっている仕事は必ずしも視覚障害者を対象としているものではないのですが。
今日はあえて視覚障害者に特化したお話ということで、私の経験などを混ぜてお話しして行きたいなと思っております。
今日は、講演のテーマが「点字新聞からユニバーサロンへ」ということなのですけれども、私自身失明しましたのが10歳の時、網膜剥離で失明しまして、それから盲学校に入りまして、点字なり白状歩行を覚えまして、その後も盲学校に行きまして、その後大学に進学して。
ちょうど卒業の年に毎日新聞の「点字毎日」、これは1922年から毎日新聞社が、普通の墨字の新聞を読めない視覚障害の人に、自ら指で読める新聞を作るべきだということで、発行創刊されたもので、現在も続いております。
まあ、ご存じの用に日本で唯一の点字、しかも大手の新聞社が独自に編集部を設けて、そういう点字の新聞を発行するという意味では世界でも例の無い新聞と言われている訳なんですけれど・・・。
この「点字毎日」でですね、全盲のスタッフを募集するということで、それがちょうど私が大学を卒業する年だったのですね。
で、公報がありまして、私自身は学校の方では心理学を勉強してまして、カウンセラー、カウンセリング的なことをやりたいなと思っていた訳なんですけれども。
丁度そんな訳で点字毎日に就職の話がありまして、でまあ、私自身人間に興味があったこともありまして、こういうマスメディアの世界に入って、同じ人間を対象にする仕事とい意味では、カウンセリングと同じようなことがやれるかなと。
そういうつもりで受験した訳ですけれども、そうしましたところが、まあ幸運な時に入りまして。
それが1986年のことなんですけれども、それで「点字毎日」には以前から視覚障害のスタッフがいた訳ですけれども、専門的な言葉で言うと「触読校正」という、点字図書館などにもいらっしゃると思うのですけれども、指で触って点字を読むベースの校正をする、それがメインの仕事で一応点字毎日の方にいらっしゃったのですが。
私が入った時にですね、これからは点字毎日であるにも関わらず、自社部門の社員にそういう方がいたということで、そういう校正だけでなくて編集取材とひっくるめた形でできるスタッフを募集した形で。
まあ、実際に採用したのは「点字毎日」なんですけれども、一般の晴眼の記者と一緒に入社式を迎えまして、同じような形で毎日新聞の方に入社して、そういう形だったのですね。
そんなことで大阪の点字毎日の支部に配属になりましてですね、8年間大阪の方でおった訳なんですけれども、点字毎日に入ってみるとですね、やはり点字の校正作業が非常に多いということですね。
なかなか取材とかですね、私がやりたいと思っていた仕事が、なかなかできない。
そういう状況で3年か4年位ですか、その頃ですね、ほんとうに点字毎日紙面の校正と、あと、ご存じのように点字毎日では、点字図書と一部の教科書を発行しておりまして、それの校正を毎日やっていた、そういう状況だったのですけれども。
ちょうど90年頃ですかね、1990年、今から10年位前、、ちょうど一般にパソコンが普及すると同時に、我々視覚障害者がパソコンを使えるような「スクリーンリーダー=画面読みソフト」が開発されまして。
それで、その点字の編集作業にもですね、パソコンが導入される、そういうことになりまして、
で、私どももその編集作業でもって、非常にパソコンを使うことで合理化が進んだ訳ですね。
で、今はもう点字印刷は自動化されていまして、ドイツ製の印刷機を使っていますけれども、ご存じのとおり点字の編集ソフトを使うことで間違えの訂正とかですね、そういう編集作業が非常にスムーズに行えるようになったのです。
それで「点字毎日」では全部で1ページに27行に決まっておりまして、27行で、その記事を1本必ずそのページに収まるように、そのページの最後で終わるような形に修正する。
そういう決まりになってまして、そうするとなかなか27行ピッタリで終わらないことがあるんですね。
そういう場合に、これまでですとパーキンスのタイプライターを使って校正していた時には、もうものすごく無駄な時間がかかっていた訳なんですけれども、パソコンが入ってからそういう作業が非常にスムースに行った訳なんです。
そのことによってですね、私にも校正以外の仕事ができるような、まあそういう余裕が出てきまして。
そこで、取材と記事を書くように、そのような時間ができるようになったのですけれども。
その時に、はたと気が付いたのが「じゃあ、どうやって情報収集したら良いのだろうか?」ということなんですね。
なかなか、もちろん点字で読める情報ならば構わないんですけれども、いざ実際自分が情報を集めようと思うとですね、回りはその、墨字の資料ばっかりでですね、ええ、そういう事情ですと、なかなか自分でですね情報を集めるっていってもなかなか難しい。
そんな時にパソコン通信が始まりましてですね、まあこれに飛びついた訳なんですけれども、皆様方の中にもたくさんやってらっしゃる方もいらっしゃると思うのですけれども。
このパソコン通信を使うことでですね、いろんな、新聞記事を始めですね、色々な各地の情報を取り、視覚障害者でも入手できるような、そういう状況が出で来まして。
そうなってみるとですね、はたして「点字毎日」自体の存在意義って言うのはどうなんだろうかというような、そういう疑問を私は持ったのですね。
で、ご存じのようにその後インターネットが出てきて、益々それに拍車がかかった訳ですけれども、電子メディアと言うのは、分量・紙面という物理的な制約がありませんから、情報がどんどん盛り込める訳ですよね。
特に、「点字毎日」のスペースは限られていますから、大体「点字毎日」1ページを墨字に直して450字分くらいしか情報が入らないんですね。
そうなって来ると、例えば本誌から抜粋するような記事もある訳なんですが、そうなって来るとですね、ほとんど晴眼者が読んでいる記事の何分の1っていうのがですね、その程度の情報でしか載せられない訳ですね。
そうすると、視覚障害者が受ける情報量っていうのはですね、晴眼者に比べて遥かに少ないように思います。
まあ、そういう状況に気が付きまして、これは点字新聞があるだけではこの情報社会に視覚障害者が、晴眼者と対等に生き延びるためにはですね、「これだけじゃ、だめなんだ」まあ、そういうことで、私自身思った訳なんです。
一番印象的だったのは、今も覚えているのですけれども「点字毎日」では、選挙の時に必ずその候補者、それから当選者名簿を点字で出すのですけれど、これがですね、本誌の選挙本部ってのがありまして、そこから資料をいただいて、それを点字に変換して直すという作業をやるのですけれど。
この作業をしている時に、まず普通は立候補者のプロフィールとか横顔とかをですね、そういうものが新聞にはいっぱい載っている訳なんですけれども、そういうものが全然入らないんですね。
「点字毎日」には名前と所属の政党とか、その程度しか入らないのです。
それで、これだけの情報の違いで、視覚障害者が選挙に臨むというのは「これで対等と言えるのだろうか」と、非常に感じました。
今年、6月に行われた選挙でもそうですけれども、インターネット上で各新聞社が選挙の候補者名簿を載せていましたけれども、例えば候補者名をクリックすると、その人のプロフィールなどの情報が全部出て来るのですけれど、そういった状況になって来ると、そういう新しい電子メディアを視覚障害者が活用することで、そういった情報の較差を狭めることができるのではないか、そのようなことを思った訳です。
それで、94年ですかねえ。
日本でもインターネットが普及し始めまして、毎日新聞でも「ジャムジャム」(現在は、毎日インタラクティブ)というホームページを作ったのですね。
当時はまだ新聞社が電子メディアに乗り出し始めた時期で、特に「毎日新聞社」はですね、ひとつには5紙の売れ行きと言う意味では、他社に比べて若干遅れをとっているものがあったので、電子メディアに力を入れようと各社に先駆けてかなり力を入れてスタートしたのですけれども。
これがですねえ、むしろ情報を一般付けようということで、非常に華やかな・目立つページを作った訳なのですけれども、これがなかなか、いわゆる「バリアフリー」という点では非常に問題が多いホームページだった訳なんですね。
私自身、94年後半くらいから、インターネットというものを知りまして。
当時は「パソコン通信のテキストモード」というのがありまして、PCVANとかアサヒネット、そのようなところからテキストモードでインターネットに入れる、そういうサービスがあったのですね。
これを使いましてですね、一応見られる状況があった訳ですが。
それでですね、我が社のページに繋げて音声で読んでも何が書いてあるか分からない、そういう状況で当時はまだ「点字毎日」にいた訳ですけれども、「この状況ではいかん」ということでクレームを付けたのですね。
これからは、アクセシビリティーが必要になって来るから、いずれ我が社のページも改善の苦情や批判が出るから改善して欲しい。
そういうことを機会あるごとに発言しておった訳なんですけれども、残念ながらですね、「点字毎日」というものの位置づけがですね、毎日新聞社社内に対しては誇りとして認識されているようですけれども、実際的には社内的には非常にマイナーな組織で、他の部署の社員でも実際に「点字毎日」の作業を、どういう風に進められているか、そういう事情がなかなか、同じ社員でありながら知らないという状況がありまして。
それを「点字毎日」の中の私一人が「アクセシビリティー」なんてことを言ってもですね、なかなかこういう話は通らない訳です。
で、そんなことでいろいろ話し合ってみたりしたんですけれども、なかなか上手く行かないのでした。
そういう事情がありまして、これでは、このままでは「いかん」ということで、私は1997年からですね、それならば、実際に先進国のアメリカへ行って、あちらの地で視覚障害者はインターネットをどのように使っているのだろう、そういうものを見て来た上で社に対して何か言うようにすれば、多少はインパクトがあるかなということで、まあ、うちの会社に留学制度というのがありまして、休職扱いなんですけれども1年間留学ができるのですね。
その制度を活用しましてアメリカの方に留学しまして、実際にはカナダのコロンビア大学というところに、たまたまそこで、客員研究員として迎えてくれたので、そこに1年間行きましてですね。
ええ、そのブリティッシュコロンビア大学というのはですね、視覚障害者のための録音図書制度がありまして、これを一般大学として図書を制作して、学生はもちろんですけれども、学外、それから海外に対してですね、録音図書を貸し出している非常にユニークな大学で。
恐らく正確ではないかも知れませんが、世界では初めと言っても良いんじゃないかというくらい、一般大学でそういう施設、設備を作ったところとしては、珍しいところなんです。
それで、そこを拠点にして各地を回りまして、アメリカのテクノロジーを障害者のために活用する様子を、あちらこちらを回りまして見てきた訳なんです。
そうしましたら、面白いんですけれども、うちの会社の方もですね、態度を変えまして「じゃあ、是非我が社のメディアにバリアフリーをやってくれないか」という話になりまして。
まあそういう訳で1998年の10月上旬ですから、今から2年前になる訳なんですけれども、今のメディア事業局というところにいまして、まあ「点字毎日」をそのままということではなくて、まあ「点字毎日」を吸収して、よりマルチメディア時代に相応しいような、そういうバリアフリーのメディアを創れという話になりまして、「毎日新聞ユニバーサロン」と言うホームページ、「毎日インタラクティブ」の中のひとつのコーナーなんですけれども、「バリアフリー」をテーマにしたページを創っている訳なんです。
で、ご存じのようにホームページそのものについては、今は個人でも創れる訳ですし、それから皆様もボランティアの方も、ホームページをお持ちの方がいらっしゃるでしょうし、「パソボラ」っていうグループでも創っていらっしゃるでしょうし、それから障害者団体でもですね、ホームページを創っていらっしゃる。
そういう状況が珍しくない、そういう状況だと思うのです。
それで、そういう中でですね、果たしてメディアはユニバーサロンにページを創る意義っていうのは、どこにあるのだろうか?そういうことを思った訳なんですけれども、ひとつには例えば障害者個人、あるいはボランティアグループなんかのページには素晴らしいものがたくさんあります。
情報的にもですね、密度の濃いものがたくさんあるんですね。
ところが残念ながら、そういうページを見に来る人っていうのは、やはりそういう関係者、あるいは周辺の人たち、同じ同士、障害者同士とかですね、それからボランティア仲間で、どうしてもそういう仲間になってしまうというところがある訳なんですよね。
で、「ここを何とか繋ぐようなことを、メディアとしてやれないかなあ」ということが、ひとつの動機だったんですね。
メーリングリストなんかもそうなんですけれども、障害者関係のメーリングリスト、あるいは、例えばパソコンボランティアのメーリングリストがありますけれども、なかなか当事者同士のコミュニケーションになってしまって、それを繋ぐっていうことができない。
そういうことがあるんじゃないかなって思って・・・。
私が「点字毎日」にいる時に、もうひとつ思った「歯がゆさ」っていうのは、「点字毎日紙面」に色々な社会の無理解、視覚障害者に対する無理解、雇用の問題であるとか、それからバリアフリーの問題であるとか、そういう当事者の悩みとかですね、問題点がいっぱい出てくる訳なんですよ。
実際にそういうものを改善するにはですね、それに必要な行政の人たちとかですね、メーカーの人たち、それから一般市民の人たち、そういう人たちの目に触れない。
「点字毎日」の中だけでですね、そういうことを問題にしていても結局、一般の人に伝わらないから、仲間同士で愚痴をこぼしあって傷を嘗めあって、それでおしまい、そういうことになっちゃうんですね。
「これでは、全然、一歩も進歩しないじゃないか」そういう歯がゆさが結構ありましてですね、やっぱり何とか一般の人たちの目に触れさせて、視覚障害者がこういう問題を抱えているんだっていう、そういう状況を伝えるようなメディアを作らなければいかんじゃないか。
まあ、そういうことがもうひとつあったんですね。
そういう意味があって、こういう「ユニバーサロン」というものを作って、障害者、障害者とボランティア、そういう人たちも、それ以上にですね、一般の人たち、こういう障害者のこととかをですね、ボランティアのことを全く知らない人たち、そういう人たちにこういう問題があることをですね、伝えて行きたい。
そういう狙いがひとつありまして、それでこういうものを作って、やはり、新聞社のページですから色々な一般の人たちが見に来る訳です。
そこにバリアフリーのページが出来ていて、「何だこりゃ」ということで、まあ、関心を持たない人も多いでしょうけれども、中には関心を持って、こういうところでページを見て、福祉の研究ということで少しでも触れて貰えればと、そういう思いがありまして作った訳なんですね。
で、これまで具体的なことを言いますと、例えば「電子マネー」ですね。
「デビットカード」っていう様な物が普及スタートしてますけれども、こういう物のバリアフリーについて、その業界、業界の人たちは、全く視覚障害ってことを意識してなかった訳なんですけれども、この「ユニバーサロン」の掲示なんかを見てですね、そういう視覚障害者が必要としているんだということをですね、認識していろいろ動き出したというような、そういう実例というか成果もある訳ですね。
それから今「ユニバーサロン」でですね、なかなかホームページだけでは、特に視覚障害の方はまずそこまで行かない人たちが、たくさんいらっしゃいますから、多少ですね、そういう人たちにも情報を流せればということで。
私の方でもメーリングリストを作っていますけれども、これは一般のですね、無料のメーリングリスト、「フリーメール」って言う、これを使っているんですけれども、これがちょうど1年位になりますかね。
1年前に、このメーリングリストをスタートさせた時に、このメールが「無料」という引き替えに、ヘッダーの部分に広告が入るようになっているんですね。
それで、この広告入りのメールをいちいち見せられると、視覚障害者にはですね、音声を使ったときに非常に鬱陶しい。
必ず読み飛ばさないと、同じような広告が必ず入るっていうことですね。
それをですね「フリーメール」の主催者の方に、メールを書きまして「実はこういうメーリングリストで、今、視覚障害者も音声で情報交換しているんですよ」だから、なるべく広告を何とかして貰えないかというメールを書いたんですね。
現在、それがストレートに聞き入れられたのか分かりませんけれども、広告をメールの本文の終わった後に付けるような方式に変更してくれまして、まあ、後ろには付いてますけれども、後ろにある分にはですね、じゃまにならないから、そこまで聞かずに読み飛ばせば良い訳ですね。
まあ、広告効果は落ちるかも知れませんけれども、非常に使いやすくなった。
こういう例にもあるように、ようするにその、一般の人たちは知らない訳ですね。
視覚障害者が音声を使いホームページを見るとか、メールをやり取りするとか、こういう状況はまだまだ知られていないと思うのですね。
私の職場ですらですね、今メディアの仕事に携わっている人間が200人くらい、アルバイトを入れて200人くらいいるんですけれども、まだまだ私がですね、職場で「イヤホン付けて何やってるんだ」って、分かんない人間がいるんですね。
で、2年くらい前からいた人間はですね、大分理解して「音声でもページ見られるんですか」と、そういうことが浸透しつつある訳なんですけれども、一般にこれがどれだけですね、その、知られているかって言うと、まだまだ疑問だと思いますね。
もう、しつこいくらいですね「音声でもホームページを聞ける」ということ、そのメリットを伝えて行かないといけないのではないか、そんなことを思っている訳なんです。
つぎにインターネットの視覚障害者にとってのメリットということについて、ちょっと、具体的にですね、まあ、既に使ってらっしゃる方は、既にご存じだと思うんですけれども、まあ、これから始めてみようかなと思っていらっしゃる方にお話したいと思うんです。
私、学生の時分にですね、非常に悩んだことがありまして、やっぱり視覚障害者っていうのは、晴眼者の中に入った場合にどうしても受け身になってしまう、「お客さん」になってしまうということが多いのですね。
例えば、サークル活動とかゼミでの活動とか、そういうところの場において、なかなか人に色々やって貰うことは多くても、自分からサークルとかそういうことに貢献できることは少ない。
そこを何とかできないものだろうかと悩んだことがありまして、そういう時に私が見つけたのはですね、まあ自分で言うのも何ですけれど、私、結構真面目だったものですから、大学の授業にはきちんと出ていたんですね。
晴眼の学生っていうのはアルバイトとかが多くてですね、だいたい5月の後半になると「授業に出てこない」と、そういうことが多いのですね。
で、私はきちんと出てますから、私はサークルの人間に今授業で何やってるとか、そういう情報を提供する。
あるいはその「時にはレポートを書いて」あげる。
(会場から、笑い)
そういうことをやって貢献した訳なんですね。
そういうことをやって私は非常に珍重されまして
(会場から、笑い)
サークルの中でも大きな顔ができた訳なんですね。
まあそういうことがありまして、なかなかこの「ギブ&テイクの関係」になるのが非常に難しいなと思うんですね。
その中でもうひとつやったのが、例えば大学やサークルの中でコンパとかありますね。
で、コンパの幹事とかをですね、なるべく積極的にかって出て、できる範囲で協力、セッティングする。
例えば、お店を見つけてお店の場所をとりに行くとかですね。
そういうことをやることで、貢献することができた訳なんですけれども。
で、そんな時に、最近思ったのは「あの時にインターネットがあったらもっともっと情報が集められたなあ」ということを思ったのですね。
最近私がやっているのは、インターネット上でですね、そういうコンパの検索とかをかけますと、「ダアーッととお店の情報」とか、そういうレジャースポットなど、そういうところがごちゃっと出てくる訳なんですよね。
そういうものを見つけてですね、晴眼者に教えてあげる。
そういうことが視覚障害者でもできるんですね。
そうすることによって、まあ、例えば「岩下は、目が見えないけれどもいろんな情報を良く知っている、色々集めて来るじゃないか」ということで評価される、ということが可能だと思うんですね。
で、それからもうひとつ、例えばやっぱり視覚障害者が対等に関わるっていう意味ではですね、情報を単に「おんぶやだっこ」で教えて貰うだけじゃなくて、少しは自らが提供することで評価されることはあると思うので、
例えば、まあ、あのう、デートの状況なんか考えますと、女の子を誘うとしますよね。
その時に上手くデートに誘えて
「じゃあ、どこへ行く?」
「君が探して」
これじゃ話にならないんですよね。
やっぱり誘う時には、
「こういう面白いところがあるんだけれども、一緒に行かないか?」
そういう誘い方をしないと相手ものって来ないのではないか、そういうようなものなんですね。
その時にインターネットを使って検索したら、
「こういう面白い場所を見つけたんだけど、一緒に行かない?」
とか、そういう誘い方をすると、相手がのって来るのではないか
(会場、少し笑い)
その時にですね、インターネットというのは、社会参加のために、非常に有効な武器として、インターネットは視覚障害者にとって非常に便利なものではないかと私は思うんですね。
それで、やっぱり誰でもそうだと思うんですけれども、視覚障害者は「何か、やろう」という積極性を見せればですね、晴眼者たちは手伝ってくれると思うんですね。
だから自分で何か、いくつか見つけて来る。
さっきの幹事の話に戻りますけれども、例えば
「今度のコンパの会場を見つけたんだけれど、どこが良いか、実際に下見したいから、一緒につき合ってくれない?」
とか、そういう言い方をするとですねえ、ほとんど手伝ってくれるケースが多い分けですよね。
だけど、最初からですね 「お店が1軒も無いんで、探してくれ」
これじゃあ、幹事として何の貢献もしてないってことになる訳なんですよね。
まあ、今のは一例なんですけれども、こういう色々な、例えば職場ですとかね、盲学校の中でもですね、視覚障害の先生が晴眼の先生に対して、こういった情報を提供するとかですね。
まあ、家族の中でもですね、全盲のお父さんが晴眼の子どもに対してですね、
「こんな面白いところを見つけたけれど、お前ら行ってみるか」とか。
そういう形でですね、いろんな情報をインターネットでゲットして、いろんな社会参加の手段に使うっていうことが、私は可能だし、また、そういうものとして使ったらどうかと思うんですよね。
私自身、仕事でホームページを創っている訳ですけども、それ以外に交流関係の中でですね、色々な情報を見つけて晴眼者に対して提供するという、そういうことができる訳なんですよね。
それで、資料にも書いたことは、ホームページに対してもインターネットっていうのは、単なる情報収集の手段だけじゃあなくって、そうやって社会参加するため、そうするためには、積極的に、受け身じゃなくてスタートするための道具に使って欲しい。
だから、これまでのメディアっていうのは読むとか聞くとかまあどちらかと言うと、単に受け身、受け取るだけのメディアだったのかも知れないんですが、インターネットっていうのは、僕は「使う道具」としてのメディアじゃないかなって思う訳なんですね。
それで、あと「使う」と言う意味ではですね、ご存じのように、今どんどん電子商取引(ECommerce)とかですね、言われてますけれども。
そう言う形でインターネット上でショッピングができるとかですね、いろいろな決済ができるようになっている訳ですけれども、これがやはりですね、ホームページ自体がですね、アクセシブルでないと、ここになかなか視覚障害者が関われないってことがある訳なんですね。
で、私自身、今、良く本を買うんですけれども、たいていインターネット上の本屋さんを覗いてですね、そうすれば前書きとか新刊書の目次とか、実は結構読めるんですね。
そうすると、我々が本屋に行ってもどうしようもない訳ですけれども、インターネット上ですとどんな本が出ているとかですね、重要な新刊情報が手に入るし、時にはそういう本の目次とか前書きが読めたりですね、本当に自分が探している本を探すということがですね、自分の手でいつでもできる。
ボランティアにいちいち頼まなくても、夜中に探したくなっても回線を繋いで、オンラインのブックストアに入って行けば、探したい本が探せる、そういうことがある訳なんですね。
そんな中で、私、ひとつ困ったのは、古本屋でインターネット上の古本屋っていうのがありまして、そこを覗いた時にですね、私、欲しい本があったんですけれども、その本の在庫状況をですね、色で示しているんですね。
それで青なら在庫があるっていう情報で、赤だとその在庫が無い。
これをですね、これを知るすべが音声で聞いている分には無い訳ですよね。
それとですね、注文したやつがバスケットに入っているっていう、そういうような仕組みになっていて、そこはですね、私はIBMの音声のブラウザの「ホームページリーダー」を使っているんですけれども、そこでバスケットに入れた後がですね、そこから「うんともすんとも」言わない。
出ることもできない。
結局、買うことができないんですね、そういう創りのページ。
ですんで、やっぱりそういう意味で、このアクセシビリティー、音声で利用している人たちにもですね、使えるようなページを創らなければならないっていうことですね。
そういうことを身にしみて実感した訳なんですね。
で、私、ユニバーサロンに付いてはですね、実際に皆さんがお読みになっていただければ良いかなと思うんですけれども。
少し、じゃあ何がアクセシビリティーなのかということをご説明しますと、まあ、たいていですね、ホームページの頭にいろんなメニューがですね、リストというかリンクがですね、こう「ダーッと」並んでいまして、音声で聞いているとそこが読まれて、ひとしきり読まれた後で肝心な内容が出てくる。
そういうページがほとんどの様なんですね。
せっかく検索しても検索結果も直ぐ出てくるんじゃなくて、そういう余計な情報が先にあって、やっと出てくるっていう。
そういうページ創りがほとんどで、これはやはりインターネットをやっていて非常に、こう、カッタルイことがあるんですね。
それで、ユニバーサロンでは余計なものは画面に付けない、リンクなんかは後ろに持って行く、例えば登録されている記事なんかについてもですね、番号が振ってあるんですけれども、今は記事がいくつあるか、ブラウザの方でできるばあいもあるのですけれども、晴眼者の場合はパッツと画面を見て「ああ、10〜20個くらいあるな」とかですね、ひと目で分かると思うのですが、視覚障害者の場合は頭から最後まで聞いていかないと分からないところがありますんで、番号を振っているんですけれども、ええと、これを逆順にしましてですね、一番頭が後ろの数字になる。
最後の方に行くと1に戻る。
そうすると、その時に記事が50本あるのか30本あるのかっていうのかが、頭を聞いただけで分かるんですね。
「35件から始まったら35本の記事があるんだな」って分かるようにしたんですね。
まあ、私自身はこういう形にして使いやすいんじゃないかなと思っているのですけれども、実際に使っていらっしゃる方はどうかっていうと、分かりませんけれども。
まあ、果たしてですね、今、実際にこのユニバーサロンがどれだけ使われているかということは、はっきり言ってまだ未知数のところがあります。
特にですね、「視覚障害者の場合やっとメールまでは来たかな」という印象を持っているんですけれども、なかなかホームページ上の掲示板とかですね、ああいうところの書き込みをしている人って、そういないんじゃあないかなって思うんですね。
まあ、一般の人ではメーリングリストもそうですけれども、ホームページ上の掲示板なんかに書き込みし合ったり、そういうことが多い訳なんですが、なかなかこう、まだ視覚障害者は行けていない。
やっぱりまだホームページが読めるってことに、バリアがあるのかな。
そんな気がしてまして、その辺を「どうやってサポートして読めるようにして行くのか。」ってことになって来ると、やはりこう言って皆さん、パソボラ・サポート群馬の活動によって、一人でも多くホームページの活用が、いかにこれが便利だってことを、分かっていただきたいな。
そんなことを思う訳なんですけれども。
で、そういう視覚障害者の中にも、まだまだパソコンサポートを「じゃあ、どこに頼めば良いのか?」って、どういう人たちがやっているのかがですね、当事者に情報が上手く伝わっていない部分っていうのがある訳なんですよね。
「これをどうやって伝えるか」ってことから始める必要があるのかなって気がしましてですね、要するに、例えばメーリングリストとかそういうホームページ上だけで、そういう募集をしてもですね、当事者はまだまだインターネットが使えない訳ですから、それだけじゃあまだまだ情報が伝わらない訳なんですね。
そこをどうやって、そういう人たちに情報を伝えて行くのかっていうのが、やっぱり課題なんじゃないかなってことですね。
だから、やっぱり盲学校であるとかですね、視覚障害者団体とかですね、こういうパソコンサポートボランティアの方々がですね、連携を取って何か情報を出せるようなそういう仕組みが全国的にできると良いのかなと、そういう気がしております。
で、聞くところによりますと群馬の場合はですね、この程パソコン購入の助成金が出る、そういう制度ができたという話を聞いておりまして、全国でもですね、横浜なんかであるという話を聞いていますけれども、まだまだパソコン購入であるとかですね、機器に対する助成っていうのは、必ずしも多くないんじゃないかなという気がしてまして。
まあ、私なんかから見れば羨ましいんですけども、そういう状況をですね、もっと全国的に受けやすい制度になればいい訳で、森首相も最近盛んに「IT、IT」って言って
息巻いているようですし、
(会場から、笑い)
そういう実際の情報にアクセスできない弱者のことをですね、まず、そういうところから手を付けていただきたいなと、そんな風に思ってまして、色々書いていったりしてますけれども。
ええ、まあ、とりとめの無い話ですけれども、一応時間になったようですね。
このくらいにしたいと思いますが、何か質問があれば後でお時間があると思うのですけれども、よろしくお願いします。
どうもありがとうございました。
(会場、拍手)

司会者:
ありがとうございました。
大変良いお話が聞けたと思うんですけれども、あのう、岩下さんはこのように貴重な方なんですけれども、何か質問ありますか?
(会場から、質問者が名乗り出る)
司会者:
お名前を教えて下さい。

質問者:
植木です。

司会者:
少々お待ち下さい。
(質問者のところへマイクを持って行く)

植木:
貴重な講演、ありがとうございます。
先程、古本屋さんの話がでてまいりまして、バスケットに入れてその後が進まないっていう話なんですけれども
ええ、私も実は子どもにせがまれまして、本年3月ですか、ソニーのプレステツーのゲーム機を予約の登録に行こうと思いまして、あそこに何度か入りました。
ところが、入れても「認証登録」しなければならないんですが、その「認証登録」のところが音声が出てこない。
仮に「認証登録」を済ませても、今度、商品を買いに行くのにバスケットの中にまさしく入れて行くんですね。
そこで決済、自分のカードの番号であるとかを書く欄があるらしいんですが、画像見ないと良く分からない。
結局マップ形式になっているんですよね。
そういったことに対して、今後、我々パソコン利用者がどのような活動をして行ったら、その情報が我々に読みやすい状況になって行くのか。
その活動の方法っていうのが分からないのですが、先生がとりあえず推薦できるような方法を教えていただけますか?

岩下:
私が今やっているのはですね、もう直接メールを送り付けちゃうんですね。
「私は視覚障害者で音声を使ってホームページを読んでいるだけれども、おたくのホームページは非常に使えない」っていう具体的な話を書いて送り付ける。
案外、これが効果があってですね、先日も埼玉の方のですね、行政のページがですね、javaスプリクトを使っていて、全然ページを開いても上手い具合に読めないのですね。
それで、電話をかけて「これどうなっているんですか」って言ったら、「いやあ、全然知りませんでした」って言って。
「これから、今すぐは無理だけれども対処します」って、とにかく知らないんですよ、まず一般の人はね。
だから、せめてメールを書いて送り付けちゃうってことが、一番手っ取り早い方法で、解ればですねえ、結構改善してくれる部分もありますんでね。
javaを使っているのを直ぐに変えるのは難しいかも知れないですけれどもね。
そのときの話って言うのが、そこは「ユニバーサルデザイン」を担当している部署が作っているホームページっていうところで、そういうところがjavaスクリプトを使っていたので、私はちょっと「これはいったい、何考えているんだろうなあ」っと思って直接電話をかけたら平謝りしてました。
とにかく、メール攻撃をかけるっていうのが一番いいんじゃないか、と思うんです。

平田:
あのう、javaの話については、林さんが専門家ですからね。
少しお話を伺えるんじゃあないかと思うんです。

司会者:
植木さん、よろしいですか?

植木:
解りました。

司会者:
ええと、もう一本質問を受けたかったんですけれども、時間の関係でこれで岩下さんの講演を終わりたいと思います。
どうもありがとうございました。
(会場から、拍手)

毎日新聞「ユニバーサロン」へリンクします。




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