黒猫荘
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オーナー:かい賊
ミステリ&ラノベ&コミック etc
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81. 2005年12月26日 22時19分32秒
投稿:かい賊
竹本健治「フォア・フォーズの素数」(角川文庫)
シェフのこだわりフレンチバイキング、という印象の一冊。
まずはスパイスの効きすぎた最初の5編に面食らう。「匣」はもちろん「狂い壁」や
「トランプ」にも感じられた観念小説の色合いにビビリました。それが続く「非時の
香の木の実」を読んで、おや? さらに先の「白の果ての扉」で勝手に、なるほど。
これはきっと味覚音痴のワシのために作者が用意してくれた“慣れ”のための一策に
違いないと。両編の違和感や浮遊感はいきなり読んだのでは味わいきれない淡くそして
深いものがあるように思われます。辛さの果ての地平、ましてや宇宙なんて想像を
絶しています。
妙なことですが「銀の砂時計が止まるまで」はこれが初読でありたかった。この短編集に
あって、ラストを締めくくるにふさわしい爽やかな喪失感! 秋山瑞人「イリヤの空、
UFOの夏」に通ずるラノベの最高峰(大袈裟かな)。
十三編中のベスト3はこの3編「非時」「白の扉」「銀の砂時計」ですね。そりゃあ
「ウロボロス」矢崎・酉つ九の“そこはそれカップル”「メニエル氏病」も最初から
最後までにやにやしながら読んでしまいましたがね。
久々に非連作短編集で完成度を感じる一冊でした。
80. 2005年12月26日 21時41分18秒
投稿:かい賊
石田衣良「4TEEN」(新潮文庫)
直木賞受賞作。文庫化を待っていた作品のひとつだったので嬉々として読む。
4人の少年が主人公の8編の連作短編集。とは言ってもティーンエイジャーらしいのは
「ぼく」だけで、あとは、老成してたり、老人ぽかったり、無闇にデカかったりでおよそ
少年らしくない。
月島をメインの舞台に、作者独特の「街のにおい」が漂う心地よく漂う小説。つい最近
漫画化していましたね。誰の作画だったっけ、失念失念。
「ぼく」を除きメインもサブもゲストもどこか壊れている登場人物たち。「ぼく」も
壊れていないからこそ壊れている(わけわかりませんね)というような自覚で、自他を
冷静な目で見つめている。だからと言って全然さめた話ではありませんよね。
8編中3編目「飛ぶ少年」がお気に入り。半ば虚言癖、というか有言実行の末、毎回の
ように大失敗(大スベリ)で終わるユズル君がゲスト。
『「でもあの瞬間はほんとうに空を飛んでいる気分だった。時間がすごく長く延びて、
ずっと四階の窓の外に浮かんでいる気がした」』
ホントに飛んじゃいました。
この小編のラストと7編目「空色の自転車」のラスト、そして最終編「十五歳への旅」
のラストとのリンクがたまらなく切なくて大好きです。作者があとがきで触れている
ように、ワシも彼らとの再会を楽しみにしています。
79. 2005年12月19日 20時01分12秒
投稿:かい賊
西澤保彦「黒の貴婦人」(幻冬舎文庫)
中篇1本と短編4本。4人組シリーズが久しぶりだったから、嬉しさのあまりあっと
いう間に読んでしまいました。彼らのやりとりが楽しいので、タックが単独の中篇
「スプリット・イメージ または避暑地の出来心」(最後の謎解きはウサコといっしょですが……)と「ジャケットの地図」は今一つピンと来なかったり。
でも一番気に入ったのは「ジャケットの地図」だったりする。幼少期の孤独のトラウマ
から玩具収集にお熱になってしまった資産家の愛人が、彼の遺品の宝物(金銭的価値は
期待していない)を探すために、我らがタックをだまくらかそうとする。んなことが
できるわけもなく、結局タックによって謎は解体されていきます。なかなか複雑な去り
逝く者の心境が語られるわけですが、人はアンビバレントな存在で、だからこそ愛おしい、
こういうのがワシのツボなんですねえ。
表題作「黒の貴婦人」とラストの小品「夜空の向こう側」は、わいわいがやがやの
四方山話。このシリーズはホントに食べ物がおいしそうなんで、それも楽しみの一つ
なんですね。次が出たらハードカバーでも購入しちゃいそう。
78. 2005年12月19日 02時49分03秒
投稿:かい賊
桜庭一樹「GOSICK V ベルゼブブの頭蓋」(富士見ミステリー文庫)
今回もネタ満載でなかなかよかったですなあ。奇術応用ものから、大仕掛け、それから
叙述トリックまでいろいろと楽しませてもらいました。
今巻のラストが次巻へのプロローグになっています。さっさと出ないかしらん。
今年のいろいろなまとめ本で「少女には向かない職業」や「砂糖菓子」の評価が高い
のでファンとしては嬉しい限りです。ジャンルや枠にとらわれず、多方面で活躍して
ほしいですね。
[NAGAYA v3.13/N90201]