オバＱといっしょ

黒猫荘
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オバＱといっしょ
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89.　2006年01月30日 20時14分24秒　投稿：かい賊　
朝松健「旋風伝　レラ＝シウ　一」（ＧＡ文庫）

我ながら信じ難いことにこの作者にして初の単行本。今更ながらに検索した著作リストを
眺めつつ「犯罪に等しい（未読なのが）かも……」と複雑な気分。もちろん理由はあるの
ですがね。第一にワシの中では朝松さんは「ホラーの人」だから。いや決して「ホラーの
本を読むことがダメ」というわけではないんです。「ホラーを気に入ってしまうことが怖い」
のです。物理的にも何より時間的に無理っ！　自慢ではありませんがワシは人よりも多少(?)
収集欲が強く、しかも一端始めてしまうとなかなか後に引けなくなるタイプ。ミステリーを
文庫にとどめているのもそんなところに理由があるのです。だって単行本で拘り始めたら、
やれ文庫版解説が、やれ加筆修正が、やれ新装丁が、やれ月報が、想像するだに怖ろしい。
ということで「踏み込むジャンルを増やしたくない」が正確なところですかねえ。
第二にすれちがい。ワシの中で朝日ソノラマは「クラッシャージョウ」と「Ｄ」の最盛期
（これも実は解釈が難しいですが、まあ“好みの問題”ということで）で終焉していたので
「逆宇宙ハンターズ」「逆宇宙レイザース」「私闘学園」の各シリーズは存在を知りこそすれ
踏み込むには至らなかったというか、タイミングをはずしていたのですな。

長い前置きでしたがその朝松健の手によるこの「旋風伝」、実は新作ではなくというか近年作
ですらありません。単行本としては約十五年前、雑誌『獅子王』発表時はそれ以上前という
かなりお年を召した作品です。しかし古さを感じないんですなあ、これが。舞台が五稜郭の
戦い直後の北海道ということで現代感や未来感と切り離されているところと、重厚な筆力が
物を言っているのでないかと愚考します。

『突然、新之介の行く手で、道が二つに岐れた。
　一本は北西へ、いま一本は北東へ延びている。北西はこれまでと変わらぬ。うねうねと
蛇行した細い道が続いている。
　だが、北東へ続く道は、曲尺を当てたように一直線だった。
「なんだ。この道は……」』

このあたりを読むと「おお、和製ヒロイックファンタジーだ」と思ってしまうんですなあ。初期の
グイン・サーガと共通の雰囲気や香りがバリバリで、非常に好みです。「ノーザン・トレイル」
シリーズとしてノベルズで刊行されたこの作品は未完のまま版元の業務縮小により中断して
しまった（あとがきより）が、あらためて2002年に出された単行本が今回ＧＡ文庫として
三巻立てで刊行されるとのこと。果たして完結されているかどうかも含めて今後追いかけます。

読み応えのある伝奇モノを希望される方にぜひオススメです。

88.　2006年01月30日 18時55分34秒　投稿：かい賊　
織田兄第「ハノン　～君の目指す明日へ～」（ＧＡ文庫）

誤植かと思って確認したけどやっぱり「第」なのね、「弟」じゃなくて。

『あまりにも呆気ない、ひとつの生命の終焉だった。
「い、イヤだ……こんなのイヤああぁぁぁーーッ」
　――また守れなかった。
　――また死なせてしまった。』

プロローグでいきなり主人公が死んでしまいます。『また』が示すように時間ループを
予感させるオープニングで、実際進むにしたがってそのループが生まれる経緯や困難
（具体的には所謂“敵”ですが）が明らかになっていきます。

第一章からはプロローグで死んでしまった少年の視点で物語が紡がれていきます。謎の
転校生の少女を追ううちに次第に心魅かれ……、というコテコテの展開。おまけにその
少女は、実は人工生命体でプログラムにすぎないはずの“感情”がやがて育ち……、
という輪をかけてコテコテな展開。

ラストもお約束なお涙頂戴になるのですが、あえて苦言を。事態のおおもととなったある
人物とその周辺があまりにも薄く感じました。紙数も尽きていたのか第八章の“真実”が
今ひとつとってつけたようになっていて、それがために最終部もなんだかぼやけがちに
なってしまったように思います。第八章をなくして第五章のSide.Ｂからもう少し大出しに
してラストシーンまでには全てが明らかになっていた方が、……う～ん、ワシの好みでした。

そう、あくまで好みの問題なんですよね。こういうコテコテ話って大好きなんですよ自分。
それだけに自分のイメージと着地がずれていると、わがままな思いが頭をもたげてきて。
まあ、それだけ注文が出てしまうくらいに気に入ってしまったということでフォローに……、
なっていないか？

えー、ともかく、タイムループ属性や人工生命体属性の方には超オススメです。

87.　2006年01月26日 22時47分24秒　投稿：かい賊　
水野英多：画　城平京：作　「スパイラル　～推理の絆～　⑮」（ガンガンコミックス）

完結しましたねえ、ええ見事に“完結”してくれました。確かに賛否両論がありそうな、という
より紛糾しそうなオチの仕掛けではありましたが、ワシは全肯定。仕掛けが想像通りで自画自賛と
いう側面もありますが、べつに歩の論理を看破していた訳ではありませんので、高所見所から
デカイツラをする気もありません。「スパイラル」というタイトルも、「推理の絆」という副題もすべて
語りつくされていると思いますし、推理作家による原作進行と同時に漫画を描かねばならないと
いう、一般的な元本があってのコミカライズとは一線を画した創作にも関わらずついに破綻せずに
締めくくられたことは大いに賛辞に値すると考えます。というわけで、自分の中の評価を揺るがせに
するような意見など見たくもないので各種感想サイトは一切覗いていません。

んが、しかし、

このオチについては
『兄貴は確かだと思えるところにこそ罠をはる』（一言半句すべて合っている自信はなし）
から十分想像できるというより、明々白々だと思う（万が一そうでなかったら、ヤツは火澄並みの
特別なブレードチルドレンだった、ぐらいじゃないと釣り合わない）。

何より
『「その底なしの混沌と暗闇でお前を今支えているのは何だ？」
　「悪いがそれは企業秘密だ」』
この“企業秘密”は間違いなく、カノン・ヒルベルトＶＳ鳴海歩と愉快な仲間たち、のときに、
ヤツが何回か口にしたあの言葉だから、オールオッケーなのです。

ああ、これ、ＴＢＳの土曜１８：００枠でアニメ化してくんないかなあ。大泣き必至だぞ。
いや、ワシが。ガンガンだからない話ではないと思うのだが……、ま、タイミングを逸し
まくってるか。

なにげにＢＧＭ。
平井堅「Precious Junk」　いろいろジャンクだけど頑張ろう（意味不明）。
郷ひろみ「いつも心に太陽を」　ラストの二人に。

86.　2006年01月19日 19時37分08秒　投稿：かい賊　
やれやれ、お久しぶりです。

流石に年間の最繁忙期に突入して年明けから仕事場に足を運ばなかった日は元旦だけ。
まあ、毎日のようにお得意様がお見えになられるので仕方のないところではあるのですが。
「読」と「観」に時間を割けないのがつらいです。そう、今は「書」もですね。

この板には対象に対する感想とその反応のみにとどめて、近況報告はそのうちブログでも
始めることになったらそちらで、とも思っていたのですが、なんだかんだで通信環境が
滞っていることも含め、きわめてネット上の動きが取りづらい状況に陥っているので、
言い訳も兼ねて新年のご挨拶の続きを試みる次第。

と言いつつ、砂時計様のとこに書き込みしてたらいつの間にかタイムアップ。
できれば近日中に更新したいなあ。

[NAGAYA v3.13/N90201]