黒猫荘
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やわらかそうな本の上へでもすわってください
オーナー:砂時計
床を埋めつくす積読本の山、山、山。
ドアからベッドへと続く一筋のケモノ道。
最後に掃除機をかけたのは何年前だっけ……(遠い目)。
そんなダメ人間の部屋へようこそ。
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349. 2006年07月26日 22時49分00秒
投稿:砂時計
「この街は、お前たちの街だ。お前たちが何とかしろ」
こんばんは、砂時計です。
『サスペリアミステリー』9月号を書店でチェック。
鮎川哲也「中国屏風」のコミカライズ作品と、横溝正史「霧の別荘」(「霧の山荘」のほうじゃなくて)を原作とした「霧の別荘の惨劇」が掲載されています。
前者は、三番館のバーテンは美形、私立探偵も美形、弁護士は美女、というアレンジ(そこらへんについては作画の河内実加さんも自身のサイトの日記で書かれてます)。中心となる謎と解決は原作に忠実で、話は現代に置き換えて独自の脚色を施したものになっていて、コミカライズ作品としてのバランスの良さを感じました。
この雑誌では、美形の鬼貫警部、美形のバーテンさん、と続いたので、次は美形の星影龍三かな(それは別に違和感ないか)。
後者は、まさか平成になって読むことができるとは思わなかった影丸穣也氏による金田一耕助物の新作。『八つ墓村』や『悪魔が来りて笛を吹く』で氏が描いた金田一よりも原作のイメージに近くなったような気が(『悪魔が来りて笛を吹く』のほうは東映映画版のコミカライズとして意識的に西田敏行氏に似せたんでしょうけど)。
どちらもサラッと読んだだけなんですが、この二作だけのために雑誌を買うのはさすがに……。もう少し他の作品も謎解き興味の強いラインナップだったらなー。
■7/25・7/26の購入本
●『陰悩録 リビドー短篇集』 筒井康隆 (角川文庫)
・創元推理文庫
●『彼女はたぶん魔法を使う』 樋口有介 ●『二島縁起』 多島斗志之
●『停まった足音』 A・フィールディング (論創海外ミステリ)
●『赤い指』 東野圭吾 (講談社)
●『青春と読書』8月号――マンガ『DEATH NOTE』のノベライズ(『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』。集英社より8月1日発売)についての西尾維新インタビュー目当てで購入。単行本2巻に事件名だけ出てきた「語られざる事件」の小説化。本編の中で最も好きなキャラクターの探偵Lが主役の話なので楽しみ。インタビューで語られた裏話はいろいろと興味深いものでした。
●『本の窓』8月号――佐野洋『ミステリーとの半世紀』、今回は「推理作家協会賞 よもやま話」。こちらもいろいろと興味深いエピソードが紹介されていて面白かったんですが、その中に気になる誤記が。都筑道夫の「都筑」が二箇所だけ「都築」になってます。あと、黄色い部屋は「改造」じゃなくて「改装」されたんですが……。
●『ミステリマガジン』9月号
348. 2006年07月24日 23時20分32秒
投稿:砂時計
「ウマコは、どこだ」
こんばんは、砂時計です。
来月より創元推理文庫で中村雅楽探偵全集が刊行開始。待ってました!中村屋!(<それは違います)。
■7/23の購入本
●『クロイドン発12時30分』 F・W・クロフツ (ハヤカワ・ミステリ文庫)――新訳版。帯には「「刑事コロンボ」「古畑任三郎」へと繋がる倒叙ミステリの大傑作!」という惹句が。大倉崇裕『福家警部補の挨拶』の帯にも「刑事コロンボ、古畑任三郎の系譜」とありましたし、すっかり倒叙ミステリの代名詞になってますね、この二つのドラマ。
●『COMICAL MYSTERY TOUR 4 長〜〜〜いお別れ 』 いしいひさいち (創元推理文庫)
●『千一夜の館の殺人』 芦辺拓 (カッパ・ノベルス)
●『あなたが名探偵』 泡坂妻夫 西澤保彦 小林泰三 麻耶雄嵩 法月綸太郎 芦辺拓 霞流一 (創元クライム・クラブ)――犯人当て小説集。出た時は装丁が好みじゃないという理由でスルーしたんですが(収録作品は読もうと思えば手持ちの『ミステリーズ!』でも読めるし)、徳間書店の『犯人当てアンソロジー 気分は名探偵』と合わせて読みたいと思い、購入。
●『青春俳句講座 初桜』 水原佐保 (角川書店)
●『IN★POCKET』7月号
●『本の雑誌』8月号
●『小説現代』8月号――加賀恭一郎シリーズ最新長編『赤い指』についての東野圭吾ロング・インタビュー目当てで購入。1999年に『小説現代』で発表され短編集『嘘をもうひとつだけ』の最後に収録されるはずだった同タイトルの短編が長編化された経緯を中心に、加賀シリーズの現在などについて語られています。今は練馬署から久松署に異動してるんですね。このインタビュー以外の記事で個人的に惹かれたのが、リリー・フランキー&西原理恵子対談。『ユリイカ 詩と批評』7月号のみうらじゅん・西原対談と合わせて読むと面白さ増。あと、清水義範&西原理恵子『独断流「読書」必勝法』は夏休み特別講座「泣ける話に四苦八苦」。ハカセがお薦めする泣ける話の紹介の最後で業田良家『自虐の詩』が取り上げられていることについて「礼儀ってもんがあるだろうが。ここは立場上「ぼくんち」だろうが」とサイバラが書いてるのには笑いました。
347. 2006年07月21日 22時53分14秒
投稿:砂時計
「おげんきですか?しぶやはきょうもいい天気です」
こんばんは、砂時計です。
『別冊宝島1330 刑事コロンボ完全捜査記録』(宝島社)を、改訂による追加部分を中心に読みました。
特に新シリーズの解説は読み応え充分。楽しい時間を過ごしました。
個人的な希望なのですが、別冊宝島で、これと同じように町田暁雄氏の作品解説を中心とした『古畑任三郎完全捜査記録』を作ってもらえないかなあ。
『古畑』には『コロンボ』からの引用が多いので、そこらへんのリンクも網羅した形で。
『古畑』のムックならそれなりに売り上げも見込めるだろうし、是非読んでみたいと思うのですよ。
ところで、この本の中のコラム「横溝正史・鮎川哲也はコロンボファンだった!?」での早見裕司氏執筆の「横溝正史」の項で、横溝正史が「コロンボ」のファンだったことを示すものとして、サラ・ブックスのカバー折り返しの「私のコロンボ」に書いた文章と、『横溝正史読本』のインタビュー中の発言が取り上げられていますが、横溝正史が最も長く深くコロンボについて語ったと思われるサラ・ブックス版『別れのワイン』巻末の「コロンボ談義」(聞き手・石上三登志。のちに「特選」シリーズの『カリブ海殺人事件』巻末に再録)への言及が無いのは少し不思議な感じがします。
『別冊宝島973 刑事コロンボ完全事件ファイル』を読んだ時に「あれ?」と思ったんですが、今回もそのままでした。ページ半分という限られた分量だし、コロンボ・金田一耕助・横溝正史の共通点についての考察というポイントにそぐわないので敢えて外したのかもしれませんが、一言触れてもらえると嬉しかったかな。
この石上三登志氏をホストとした「コロンボ談義」、自分は昔図書館で読んだっきりなのですが、老舗サイト「安葉巻の煙」さんのデータで確認してみると、ゲストは、
(1)都筑道夫
(2)松山実
(3)横溝正史
(4)双葉十三郎
(5)岡本喜八
(6)水森亜土
(7)渡辺祥子
(8)森中あさ子
という面々。
そして、カバーコラムの「私のコロンボ」のほうは、常磐新平、飯島永昭、小森和子、小池朝雄、矢崎泰久、井上ひさし、筈見有弘、生島治郎、横溝正史、都筑道夫、岡本喜八、サトウサンペイ、中島河太郎、小林亜星、田中小実昌、手塚治虫、小泉喜美子、小林安次、佐野洋、斉藤茂太、長新太、水木しげる、小鷹信光、川谷拓三、犬養智子、黒柳徹子、羽仁未央、中田耕治、赤塚不二夫、という執筆陣(こちらも「安葉巻の煙」さんのデータで確認させていただきました)。
以前から思っていることなのですが、この「コロンボ談義」と「私のコロンボ」、一冊にまとめて二見文庫あたりで出してくれないですかねえ。
それだけでも価値ある一冊になると思うのですが。
346. 2006年07月18日 01時14分45秒
投稿:砂時計
「商売って、そういうものじゃありません?」
こんばんは、砂時計です。
大倉崇裕『福家警部補の挨拶』(創元クライム・クラブ)読了。
『刑事コロンボ』を愛する著者が、『刑事コロンボ』研究の第一人者・町田暁雄氏との共同作業で生み出した、『刑事コロンボ』的倒叙ミステリ作品集(『刑事コロンボ』と著者の関わりや、このシリーズの成り立ちについては、巻末の小山正「倒叙ミステリへの遙かなる想い」に詳しく書かれています)。
収録作品は「最後の一冊」「オッカムの剃刀」「愛情のシナリオ」「月の雫」の四編。
どの作品も、手がかりと伏線と犯人のドラマによる構築の綺麗さに快感を覚えました。
犯人による犯行の経緯は最初に描かれるけれど、読者に対して伏せられているカードがあり、さりげない伏線がラストの意外性を呼ぶという点で、「本格ミステリ」としての面白さも備えています。
『コロンボ』の本歌取りという面では、「オッカムの剃刀」のラストにおける『コロンボ』や『古畑』でおなじみの「質問」への答えや、「月の雫」の最後、「ここでアレを持ってきたか!」というあたりに特に膝を打ちました。
ところで、福家警部補が初めて登場した場面で、折り畳み傘をうまく畳めずにいる描写があったんですが、これはコロンボの始祖の一人でもあるブラウン神父の蝙蝠傘を意識したものではないか、という気がします。小柄で刑事には見えない風貌の福家が裏社会の人間に対して見せる態度にも、フランボウと対決した時のブラウン神父を思い出したのですが……考えすぎかな。
息の長いシリーズとして続けてもらいたいと思います。できれば45作品……。
『福家警部補の挨拶』を読んで、もっと倒叙ミステリの短編集が読みたい!という欲求にかられ、引っぱり出してきた東野圭吾『嘘をもうひとつだけ』(講談社)を読了(積読年数:6年)。
収録作品は「嘘をもうひとつだけ」「冷たい灼熱」「第二の希望」「狂った計算」「友の助言」の五編。
冒頭で犯人の側から犯行を描いているわけではなく「倒叙ミステリ」とはいえないんですが、視点人物である事件関係者の前に現れる加賀恭一郎は「倒叙ミステリの名探偵」に近い立ち位置で、作品自体にも倒叙ミステリに通じる味わいがあるのです。
こちらは表題作を除けば『コロンボ』のような各界のプロフェッショナルとの対決という要素はなく、どこにでもいるような人達の愛憎が引き起こす事件が中心。しかしながら、切れ味のある伏線や手がかり、意外性のあるトリックなどが盛りこまれ、物語と推理の融合ぶりに、巧いなあ、とため息。地味ではありますが、こういうのも好きなのです。
堪能しました。
[NAGAYA v3.13/N90201]