黒猫荘
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オバQといっしょ
オーナー:かい賊

ミステリ&ラノベ&コミック etc
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20. 2005年10月11日 21時02分19秒  投稿:かい賊 
羽生善治「決断力」(角川oneテーマ21)
かい賊は将棋も趣味です。暇なときにはよく「24」でネット将棋なんぞを。

現棋界第一人者の筆者が、将棋を通して勝負に勝つ、勝ち続けるために必要なものを説く啓蒙書。

将棋に詳しくない人にでも理解できるようにとかなり気を遣って書かれています。
多少将棋を知っていれば面白さ4倍増。なるほどハブさんって日頃こんなことを
考えているんだなあ、とか思いながら読むのは幸せです。

『勝つのは一点差でいい。五点も十点も大差をつけて勝つ必要はない。
常にギリギリの勝ちを目ざしているほうがむしろ確実性が高くなると思っている。』

“かっこつけやがって”と思われる向きもあるかもしれませんが、実際ワシ自身、
負けるときは大差でボロ負け、勝つときはギリギリで逆転、ということが多いです。
へたくそなので大抵序盤で不利になります。逆転できるときは相手が安全勝ちを
「ねらいすぎて」いるときです。
物事、勝負でも仕事でも集中力を切らさない距離というものがあるのかもしれません。

いろいろな局面に応用が利く一冊です。
19. 2005年10月11日 20時29分05秒  投稿:かい賊 
吉田直樹「スノウ・バレンタイン」(祥伝社文庫「不透明な殺人」より)
家を整理中に出てきて再読、また整理が中途半端に……。

アンソロジーのタイトルに反して殺人の「さ」の字もない作品。タイムループのSF物。

正直、重箱の隅をつつけば穴だらけとも言えるのですが、読後感が最高に切なくて
無二念に「合格」です。これで三杯は飯が、というか最近ハヤリのお涙頂戴映画一丁あがり、
って感じですね(いやあの、これでも誉めてるんです)。
立ち読みでもあっという間なので、ぜひご一読あれ。古本屋の均一本に転がってますし。

マイキャスト
おれ:唐沢寿明  わたし:麻生祐未  エンディング曲:中島みゆき「May Be」

でも、みんな幸せにしてあげたかったね。だから切ないんだけど。
18. 2005年10月11日 20時05分26秒  投稿:かい賊 
久々(でもないか?)の書き込み。
本日まで連休。でも、土曜日は「出」だったので3連休。
すっかり家でゴロゴロ君でしたが接続不良のためこちらはナマけていました。

真嶋磨言「憂鬱アンドロイド」(電撃文庫)
今年の積み本より。電撃小説大賞最終選考作、デビュー作。

多視点オムニバスで、読み易く感情移入し易い作品に仕上がっています。面白かったです。

気になったところとしては、主人公が男の子の方なのか女の子の方なのか読了後の
今となってもよくわからない(まあ、どちらでもいいといえばいいんですけど、気分が……)、
第三話の全体の中での位置づけが曖昧(好きな話なんですけどね)、などがあげられます。
極めて個人的な「魚の小骨」なので、面白さそのものには影響しないと思います。

それよりも、処理されていない大きな問題が一つ残されてしまったのは残念です。
シリーズ化が前提なのでしょうか。ワシは基本的にラノベ万歳な人間ですが、
こういう作りを安易に許してしまうところにはお手上げです。物語的に処理されるべき問題が
先送りにされるときは、初めから「第一巻」として発売してほしいものです。
もちろん海のものとも山のものともつかない新人の作品をいきなりシリーズ化することは
難しいでしょう。それならそれでシリーズ化に支障をきたさない程度に、
物語にケリをつけておかないと、物語そのものが可哀相だと思うのです。
それは、編集者の腕の見せ所であり、同時に作者の責任であると考えます。

というわけで、続編を希望いたします。
それにしても、う〜んなPNだ。長瀬智也本人が作者だったら笑うけど。
ま、「言葉を磨く」なんて好きですがね。
17. 2005年10月06日 22時33分03秒  投稿:かい賊 
森絵都「アーモンド入りチョコレートのワルツ」角川文庫

児童書系の人はなかなか文庫落ちしてくれないので困ります。この人ももう結構な著作数のはずなのに、「リズム」なんてもう15年くらい前(たしか)の作品だぞ。何をやっちょる講談社(たしか)! ましてや理論社や童心社の作品なんていったいいつになったら。

三つの短編からなるこの作品集。「子供は眠る」は“わかる”。「アーモンド入りチョコレートのワルツ」は物語世界に“あこがれる”。ワシの一番のお気に入りは「彼女のアリア」で、“いてもたってもいられない”。キーワードは“旧校舎・ピアノ・不眠症・卒業”。引用でもしますか。好きなシーンの一つです。

『乱暴に戸を開く。アップライトのそばに人影はなかった。が、藤谷はいた。窓際の壁にもたれ、怪人二十面相でも迎えるような目つきで、戸口のぼくをじっと見すえていた。……いや、どちらかというとそれは、明智くんを迎える怪人二十面相の目つきだった。』

解説の角田光代が「……どんなに抵抗しても、ゆっくりと終わりを告げる――」「残酷な変化」と表現しているように、ワシがこの3編に共通して感じるのは、“終わり”または“喪失感”です。すべてに幸せな時間があり、しかしいつしかそれは変質し、失われていく。ただし、森絵都はそこでただ悲しみにひたることを許しません。必ず次のステージへと頭をもたげさせます。児童文学の書き手だからというだけでない、作者の強い意志が感じられて実に心地のよい作品に仕上がっています。

特に中学生に読んでもらいたいなあ。気に入ってくれて、毎年とか、折にふれて読んでくれると一生ものの一冊になると思うのです。

[NAGAYA v3.13/N90201]