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40. 2005年10月30日 20時27分25秒  投稿:かい賊 
続き
橋本崇載「アマプロ平手戦 自戦記」(週刊将棋10/19&10/26)

対局当日朝の様子。
『私はお気に入りのピンクのシャツとロザリオのネックレスを身につけて、鼻歌混じりに
部屋を出た。

時間が早いので大好きな歌舞伎町をのんびりと歩く。男と女の欲望にあふれた魅力的な街。
勝ちたかった勝負に負け、悔しさのあまり家に帰ることができずに何度ここへ足を運んだか
わからない。』

棋士というとビシッと和服を着て畏まりながら駒を持つ、というようなイメージがありますが、
現代棋士はこんなもんです。橋本五段は髪の毛も真っ金々に染めています。買うはどうか
わかりませんが、飲むと打つに関しては昔ながらのイメージどおりです。もちろん昔と
較べれば格段におとなしくなったようですが。

『これではひどい。序盤の指し手に全く関連性がない。第3図の大作戦勝ちの局面を
前にして、私はある思いが頭をよぎった。
「なぜ、亮介は負けたのだろう」』

プロは巧みにアマの駒組みの隙をつきながら、着実に優勢を築いていきます。

『そうか、まあ油断はするなよとだけ彼に言い、まさか亮介が負けることはないだろうと
思っていたのだが、ある日亮介が負けたことを知って呆然としてしまった。
「亮介のバカたれが・・・」
このとき私に“敵討ち”という言葉が頭に浮かんできた。』

プロは心に期するものを持ち戦いに臨みます。そして優勢に戦いを進める中・・・、

『さて、この後どう料理してやろうかな、とりあえず一服するかと煙草に火を付けて
チラリと時計を見た瞬間、飛び上がった。そう時間がないのである。この時点で私の
残りは10分、対して天野さんは1時間近く残していた。



これは推測だが、天野さんはプロ相手に作戦勝ちをできるとは思っておらず、初めから
得意な中、終盤の追い込みにかけていたのではないだろうか? だとすればこれぐらいの
作戦負けは“想定の範囲内”だったはずで、途中で私が首をかしげた手も、天野さんに
してみれば“時間を使わせるための軽いジャブ”だったのである。完全にだまされていた。
全く恐れ入った勝負師である。』

勝負にアヤが生まれます。

『とにかく1分将棋になる前にトイレをすませておかなくてはと思い駆け足で対局室を出たが、
その瞬間高い駒音が聞こえてきて慌てて戻る。私は精神的にも追い詰められてしまった。』

時間攻めというのは、食らうと死ぬほどつらいです。プロは残り一分を切ると自動的に
秒読みが始まる1分将棋になりますが、アマチュアの対局には「切れ負け」という
ルールがあり、時間がなくなった時点で勝ちの一歩手前でも負けになってしまう恐ろしい
ものです。こういった将棋では相手の持ち時間が少なくなってきたと見るや最も長手数に
なるであろう局面に優勢・劣勢を問うことなく誘導するということもあるくらいです。
当然天野さんもそういう修羅場の経験がある指し手で、その作戦にプロはどっぷりと
はまってしまったのでした。

『そんなことを考えながら秒読みに追われ一瞬の判断で指した手は▲6五歩だった。これは
悪手、というより考えられない手である。天野さんは当然△5五桂と打つ。その間わずか
5秒。たったの5秒であれだけよかった将棋は逆転してしまった。』

一手ばったり、という言葉があるのですが、将棋にも人生と同じく取り返しのつかない
一着というものが存在します。

『以下の手順は放心状態で指した手順である。私の思考は完全に停止していた。そんな中で
頭をかすめたのは、
「阿久津がこの将棋を見たら、どう思うのだろう?」』

あまりのことに反射でしか手を指せなくなっている中、プロはライバルのことを思います。
そしてこのライバル阿久津主税五段は同じくこのアマプロ戦で四段を勝ち抜いたアマ強豪の
秋山太郎さんに勝利しています。プロの心中いかばかりか。

『本局は私の完敗であった。



打ち上げも終わり、私はとぼとぼと歌舞伎町を歩いていた。昼間の平和な雰囲気はもうなく、
街のネオンが敗者の私をいつまでも切なく照らし続けていた。』

どんな勝負であれ負けは負け。敗者を癒すものは勝利しかない・・・というのは嘘で、
実は癒すものは何もなく、ただ敗北という結果のみが重くのしかかるのみです。後悔
しても時すでに遅く、「せいぜい」捲土重来を胸に期するぐらいなのです。橋本五段には
今後決してアマの方に負けることなく、会心譜の実戦記を書き続けてくれれば、と勝手
極まりないことを妄想しています。
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39. 2005年10月30日 18時19分59秒  投稿:かい賊 
>語弊だらけ様
こんばんは。書き込みありがとうございます。

この話に出てくる人物は実は同一人物
…なるほど、そんな見方もありますか。小説の構造上少なくとも「彼女」は別人でないと
具合が悪いかなと思いましたが・・・。

それは作者だ!
…多かれ少なかれ登場人物は作者の投影像となるので、当然といえば当然なのですが、
作者は神の視点を持つ「神」なので、たとえ私小説であっても別のものとして考えるのが
ワシの小説作法です。やはり他者からの働きかけを受けて成長する少年と猫の物語であると
読みたいです。

矛盾だらけ
…不可思議な点はいくつかありますが、そこまで辛いことはないかなと。むしろ矛盾に
見える世界や心情を描きたいからこそファンタジーという形態をとったのでは?
まあ、もちろんわかりませんが。

小説家としてはどうか
作家としては最低
…大きなお世話かもしれませんが、語弊だらけ様、表現が強烈過ぎます(笑)。
物語世界というものがどう表現されているかということは、作者や物語の必然に支配
されているとワシは考えます。難解であったり説明不足であるのは、少なくともそれを
書いた時点での作者の必然であったことと思いますので、そこまで一刀両断にしてしまうのは
むごいのではないかと。

好きな一冊
…ならばなおさら。
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38. 2005年10月28日 22時37分16秒  投稿:かい賊 
>語弊だらけ様

コメントありがとうございます。
↓てなわけで、あらためてレスいたしますので、よろしくお願いいたします。
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37. 2005年10月28日 22時29分32秒  投稿:かい賊 
橋本崇載「アマプロ平手戦 自戦記」(週刊将棋10/19&10/26)

大昔(昭和四十年頃まで)は将棋のプロとアマは神と人ほどの違いがあったと思います。
今でも将棋を指さない人にとっては、ゲームでメシが食えるということはだからこそ
とてつもなく強いはず、という印象を持たれて当然でしょう。

ちなみになんで将棋のプロがご飯を食べられるのかというと、簡単に言ってしまえば
各棋戦の棋譜掲載料が巡り巡って対局料となります。各棋戦はそれぞれスポンサーが
ついており、掲載新聞(雑誌)と日本将棋連盟に資金を提供します。スポーツのように
明確な宣伝や企業アピールにはならないと思うので、いまいち出資する意図はわかり
かねるのですが、文化振興なり連綿と受け継がれるしがらみなり何かしらあるので
しょう。現在タイトルと言われる冠は、名人・竜王・王将・棋聖・王位・王座・棋王の
7つで、一時期局地的にフィーバーした羽生七冠王ブームの「七」はこれです。それら
以外に一番なじみがありそうなNHK教育チャンネルの「NHK杯(スケートじゃないっす)」を
はじめとしたトーナメント戦がいくつかあります。プロたちはそういった戦う場を与え
られて、その精進し極めた芸を棋譜として世間様に提供するのです。

さてその「芸」はかつて門外不出のイメージを持つ崇高なものとして素人目には見えましたが、
出版やネット環境が急速に充実してきた今日に至ってはプロの強さが必ずしも聖域とは
言えなくなってきたということは自明の理であると思います。竜王戦・王座戦・銀河戦・
朝日オープンなどはあらかじめアマ枠が設けられていますが、そこでアマチュアがプロに
勝つことは珍しくもなんともない図となっています。

今回の「アマプロ平手戦」は第七回を迎える週刊将棋の企画で、アマが四段から順々に
プロを勝ち抜いていく(将棋のプロは四段からで九段まで昇段します。アマとは段級の
強さ感覚が違い、アマの四段はプロの6級にもなかなか勝てません)、夢のあるものと
なっています。

天野高志アマは中村亮介四段(イキのいい若手、強いです)に勝ち、次なる五段戦が
この橋本崇載プロとの一局で、弟分の中村四段のリベンジに燃える橋本五段は「祭りは
ここまで」と言い切り必勝を誓います。

結果から言えば、橋本五段は負けてしまうのですが、プロがアマに負けてしまうことの
重大さが多少はわかる者にとって、今回の自戦記は血を吐くよりもつらいものであった
ろうと僭越ながら同情を禁じえません。正直文章がうまいとは言えませんが、それを
補って余りある魂の名文です。

普遍性のある部分を抜粋しながらコメントしたいと思いますが、本日時間がなく尻切れでは
ありますが次回に持ち越します。

・・・まあそんな引っ張るほどのネタでもないのですが、あしからず。
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36. 2005年10月28日 22時03分43秒  投稿:語弊だらけの彼女 
大野美波「きっとだれも責めはしない」(碧天舎)について。感想。
 途中でだれが死のうと、殺人者が出てきようと、悪徳商法があろうと、詩の技法が用いてあって、ファンタジーという分類に疑問の声が上がろうとも、作者は「笑顔でファンタジーです。」と言い切るこの作品。かい賊様の感想はとても深いです。私同意見です。現実に似させてるのでしょうか。この話は明確なストーリーはなく、何が事件が起こるわけでもなく、淡々と時が過ぎてゆくという感じです。本の内容と身の回りの現実と作者の目的や心理、3つをあわせて見ないとわからないようなジグソーパズル的要素を含んでいると思います。そこで話の最後についているあとがきを注意して読んでみたのですが、肝心なことは何も書かれていません。(注意して読むようなあとがきでもないし!)嫌がらせだろうかと思うほど簡潔なあとがきでした。これはワザとか。(読者に対するお礼がありました)
 かい賊様の感想にもありましたが、少年が主人公なのか猫が主人公なのか判然としないです。確かにこだわりがないように思います。私はこう思いました。この話に出てくる人物は実は同一人物ではないかと。それは作者だ!と言いたいわけではないのですがそんな気がします。『機械の国』の男はエルスの影(シャドー)ということですね。全体的に暖かいのですが一種の冷たさもあるように思います。この本は矛盾だらけで矛盾を矛盾のまま表現しているという感じです。
 私ははっきり言ってこの作者、小説家としてはどうかと思います。本文からあとがきまで徹底して不親切です。むしろ道を歩いていた時偶然、遊んでいる中学生が面白いと言っていたのに驚きました。(そのあとどうしたかはご想像におまかせします。)作者が変なトコに出てきて、変なトコに出てこない変な話でした。

 
 以上。いろいろな意味で作家としては最低だと思いますが、こういう本は他にないと思うので、好きな一冊だと思います。(こういう作品しか書けないのは作者がさみしがりやだからではないだろうか―)

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34. 2005年10月26日 22時58分46秒  投稿:かい賊 
大野美波「きっとだれも責めはしない」(碧天舎)
第2回碧天ファンタジー文学賞 出版化奨励作(なんやようわからん、
賞はあげらんないけど、面白そうだから本にしてみようか、ってとこなのかなあ)

ファンタジーと童話と詩の平均をとったような(ファンタジーと童話はかなり重なって
いるような気もしますが)作品。3原色の重なった部分にある、色(赤青黄・中心は黒)
ではなくて光(赤緑青・中心は白)のほうですね、というようなわけのわからん喩え。

旅をする(漂泊する)少年と猫の話。物語ではない。明確なストーリーがあるという
わけでなく、さまざまな場所に行き、さまざまなものに出会い、イメージを巡らせる。
最後に大きな啓示があり、唐突に語り部はその役目を終える。

三人称の形態をとってはいるが、地の文の諸処に独白や感触が入り込み、少年が主人公なのか、
実は猫が主人公なのか判然としない。その辺りに作者のこだわりは無いように思え、
この辺りが一つのポイントなのかもしれない。

小説というのは「1:多」であるべきものと考えます。出版物である以上はジャンルの
差はあってもいわゆる、普遍性を持つことを意識しなければ上梓される資格がないと
ワシは思っています。大袈裟な物言いでしたが、要は読まれることを前提にしなければ
ただの自己満足に過ぎなくなってしまうという至極当たり前の話です。「1:個」は
ただの手紙ですし、結果として誰かへのメッセージとなったとしても見た目じょうは
万人に対するものであるべきです。そういう目でこの作品を見るとワシには「1:個々」の
ものに感じられるのです。断片的に浮かぶイメージや語りかけは、作者を含め受け取る側の
自由度がやたらと高いように思えます。読者を突き放すわけではなく、共有できる部分は
共有して好きな思索を巡らしましょうよ、というような誘いがそこにはあります。

巻末の著者略歴を見ると新風舎の詩のコンテストで最優秀賞を受賞しているとのこと。
なるほど、これって詩の手法なのかもしれない、とまるで門外漢にも関わらず妙に納得する
かい賊でした。

装画はキリノさんという方が描いていますが、作品の雰囲気に合ったふんわりとした
イメージでなかなかいい感じです。「エムズ*キリノ」で検索するとこの方のサイトに
行けると思いますが、独自の世界観があって非常に魅力的でした。帯に「十代の暖色の
感性」とあり、なるほどと納得するやら感心するやら。
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33. 2005年10月25日 21時13分34秒  投稿:かい賊 
>語弊だらけ様
はじめまして。ネタばれが怖くて本の具体的な内容がなかなか書けないかい賊です。
よろしくお願いします。

日日日
…ワシも「ひひひ」です。


赤坂真理「ミューズ」(講談社文庫)
野間新人賞&<文庫化にあたり大幅に加筆修正>に惹かれて積んでおいた本。

モデルのバイトをしたり、援助交際をしたり、妻子持ちのセレブな歯科医とオシャレに
不倫関係したり、そのくせ母親は宗教かぶれで小さい頃から巫女修行させられたり、と
なかなかお忙しい女子高生が主人公、彼女の心身の解放(or開放)が描かれています。

なんかエッチっぽかったんで、桜井亜美的な方面を期待して読みましたが、全然違いましたね。
もっと観念的だった。あ〜、イメージの奔流なんてのは似てたかもしんない。クルーザーの
シーンなんかは秀逸で、かなり引き込まれましたねえ。

単なる風俗小説や都会派恋愛小説で終わりそうな内容を、宗教という危険なメソッドで、
避け得ない自己変質をうまく表現したと感じました。
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32. 2005年10月23日 12時38分49秒  投稿:語弊だらけの彼女 
 こんにちは。ご紹介いただきまして、お邪魔しています。「語弊だらけの彼女」です。語弊だらけと呼んでください。(呼ばれながら落ち込むかもしれません(笑))投稿してもいいのかなっ♪と迷っていたのですが、ハンドルはなんでもいいって、書いてよいという意味ですよね。嬉しいな。本について楽しみながら読ませていただきました。日日日最近インターネットでよく見かけますが、あきらで辞書登録して「日日日」と打ってる人は少なくて、むしろ絶対みんな「ひひひ」と打ち出していると思う今日この頃です。すみません。つまらない話で。  
今後ともよろしくお願いします。
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31. 2005年10月22日 23時45分45秒  投稿:かい賊 
>砂時計様
「SPAM」ご感想いただきありがとうございます。

語り手を取り巻く環境と謎解きの方法との結びつき
…「ヘコみながら学ぶ」興味を刺激されそうな話題を現代ワトスンが華麗に?紹介。
なかなかやるなあとも思いましたが、ワシはなんか鍋やしゃぶしゃぶの灰汁を取り除いている
ようなイメージが湧いてきました。

謎と真相と手がかりの部分に意外性が無く納得性にも欠けていて
…そうですね、これはたしかに残念です。もう少し意外性をあおるような書き方も
あったように思いますねえ。そうなれば、謎解きに説得力が上乗せされたかもしれません。

キャラに依存した作品という印象は受けませんでした
…そうですか。なるほどキャラに依存していたのはワシだったかもしれません。

…あらためて見直してみると、砂時計さんが仰られる「ミステリとして」というところを
意識的に取り組んでもらえると、もっと魅力的な作品になったかもしれません。
ラノベもいいけどこっち方面でも頑張ってほしいものです。

あらためて、書き込みありがとうございましたっ!


日日日「うそつき」(新風舎文庫)
局地的に超話題の新人(去年デビューだし、一応まだ新人ということで。ちなみに
「あきら」と読みます)の最新作。

最初に苦言を並べておきます。
「人の顔を形が変わるくらいぶん殴った奴をスルーする警察のいる世界には住みたくないなあ」
「そんなんこいつ死ぬじゃん」
「ある人物の魔王ぶりがあまりにも凄まじくて、物語上プカプカと浮き過ぎ。しかもそいつの
苗字が某漫画の個人的にお気に入りのキャラの苗字といっしょなもんだからなおさら・・・」

いやあ、面白かったですねえ。特に作者の言う「恋愛小説」のパート(作者に言わせれば
総てが恋愛小説なのでしょうが)はかなり好きです。キャラも魅力的ですし、特に男の子の方が。
いろんな意味で『私の優しくない先輩』と対になる作品かもしれません。

真剣に恋愛することができない、ふたまたどころかよつまたの女の子が主人公。
そうなってしまった(「よつまた」の方じゃないです)経緯と、主人公のこれからまで
きっちり描かれます。消化不良はないので、爽やかな読後感とも言えるでしょう。

とはいえ、毒満載です。現代の少年少女が持つ「冴え渡るならぬキレ渡るキレ味」が
全編を通じて堪能できます。悪意や嫌悪や良心の無痛覚ぶりが自然に描けているところは
舞城王太郎や山田悠介などに通ずるものがあるのではないかと。

ちなみに表紙カバー絵があの(何が“あの”?と言われてしまうとつらいですが)
高橋葉介師なのです。しかもタッチは初期の「奇妙な世界」風(あそこまで濃くはないですが)!
しかもカバー裏にまでイラストが! しかも全面。物語世界を象徴する素晴らしいイラストです。
羨ましいぞ日日日。
妬ましいぞ日日日。
幸せ者だぞ日日日。

というわけ(?)で、今後も期待します。
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30. 2005年10月22日 20時39分32秒  投稿:砂時計 
11号室の砂時計です。
こちらには初めてお邪魔します。

桜坂洋「10月はSPAMで満ちている」、読みました。
語り手を取り巻く環境と謎解きの方法との結びつきの着想なんかは面白かったんですが、肝心の謎と真相と手がかりの部分に意外性が無く納得性にも欠けていて、アイデアをうまく生かしきれていないのが惜しいなあ、と思いました。POSシステムなんかも美味しいネタだし、生かし方によっては、もっとミステリとして魅力のある謎と謎解きが生まれたんじゃないかという気がします。

で、坂崎嘉穂というキャラクターを知らない自分にとっては、それほどキャラに依存した作品という印象は受けませんでした。語り手の内省的な独白の方が前面に出てたからかな。

ではでは。
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29. 2005年10月21日 23時12分26秒  投稿:かい賊 
>のりりん様

はじめまして。かい賊と申します。書き込みありがとうございます&よろしくお願いします。

石動シリーズは舞台がデカくならなければいいなあ(大仰な話になればなるほど危険に・・・)、
と勝手に思っています。アントニオのキャラクターは好きなので、なるべく地味に活躍して
くれると嬉しいなあ。


西澤康彦『夏の夜会』(光文社文庫)

地味といえばこれまた地味な外見の小説です。約30年ぶりの小学校の同窓会で集まった
メンバーが、過去の発生したはずの殺人事件を頼りない記憶を手繰り寄せながら推理してゆく、
というか思い出そうともがき苦しむというストーリーです。それが18時間ほどの間に
ある意味淡々と進んでいきます。

しかし解説の池波志乃が『毒と知りつつ飲むお酒』と評するこの作品は、記憶や精神という
不安定な自分自身への不審を掻き起こす、痒いところに手が届かない全くもってイヤらしい
(いい意味で)ものになっています。見ようによっては捜査対象があやふや極まりない
「記憶」なので、推論を論理的に「実証」へと近づけることの限界を示した作品、とも
言えるかもしれません。

読み始めに感じていたことがやっぱり伏線だったので嬉しかったです。
やっぱりこの人は「歪み」を書かせたら天下一品だなあ。
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28. 2005年10月20日 13時55分20秒  投稿:のりりん 
 初めまして、24号室・のりりんです。

 殊能将之『鏡の中は日曜日』って文庫になっているのですね。あまり文庫をチェックしなくなってしまっていますので、時の経つのは早いなあと思いました。

 『黒い仏』は全く受け付けられませんでしたが、この作品はかなり好きです。
[219.98.196.177][Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1)]

27. 2005年10月20日 02時48分58秒  投稿:かい賊 
>キリ様
こんばんはです。いらっしゃいませ♪

真相は闇の中
…そうですねえ、警察も全くと言っていいほどやる気なさそうだし、というかむしろ、
やりたくない特別な理由でもあるんかい、勘繰りたくなっちゃいますね。
そもそも特養ホームそのもがうさんくさ・・・自己嫌悪、中断。

この猫、2週間も敷地内に閉じ込められてて食べ物にはとても苦労していた
…そうだったんですか、かわいそうに。にしてもどういう「敷地」なんだろう、
まさか、首に縄(だったらエサぐらいあげるでしょう?)でもあるまいし。

猫はおいしくないものは食べない
…なるほど、ワシって不勉強♪ ただ、猫にとって人間の肉がおいしいかどうかは
それこそ猫に聞いてみないとわからないし、そんな実験や観察結果(例えば、犬・猿・
雉・人間のそれぞれの死体が転がっていたのに猫は人間の肉しか食べなかったとか、
エグいですね、すみません)があるわけもなく。実際、仔牛や仔羊のように赤ちゃんや
子どもならともかく(またエグいですね、すみません)、88歳の人間の足指を
食べてもおいしくもなんともないような。でもそれって人間の尺度ですよね。
犬は喜んで骨をガジガジしゃぶってますし。

結論→犯人は犬・・・・・・おいっ(アニマル浜口風)! 失礼しました〜


殊能将之「鏡の中は日曜日」(講談社文庫)

例によって今年の積み本より。→だんだんモノ悲しくなってきたし、いつまでたっても
最新のものに追いつける見込みがないので、今後今年発行のものは「積み」申告なしにします。

ノベルスでは別々だった表題作と「樒/榁」が合本になっています。とってもお徳だなあ、
と感じつつ、読んで納得。確かにこれは一緒のほうが4倍楽しめますね。

もちろん(エバることではないが)、文庫読みのワシは「ハサミ男」「美濃牛」「黒い仏」しか
読んでいませんが、「黒い仏」のサイキックな流れに違和感を感じまくっていたので、
今回は非常に安心しましたし(いやなに「美濃牛」が好きなもんでしたから)、逆に、
もう少し冒険してもいいのにな、などときわめて勝手なことを考えました。

特に表題作は、前半が島荘「眩暈」を思わせるような作りで、現在と過去のアンマッチぶりが、
なかなかにもどかしくて、それが故に大変楽しませていただきました。結局叙述トリックにも
やられちゃいましたしね、このパターンは「○○館」を始めとしてやられまくりです。
どなたか助けてください♪

「樒/榁」の方は二つの話の融合に大仕掛けを期待していただけにちょっと肩透かし感が
ありました。石動が間抜けすぎて哀れで・・・。

水城の、オタクやオタク道への理解(特に表題作のラスト)に感謝!
[59.159.65.58][Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)]

26. 2005年10月19日 11時45分05秒  投稿:キリ@65 
その猫のニュース、真相は闇の中って感じですよね。

この猫がやったことは、もともと血が出ていた部分を舐めただけって気がしますけどね。
猫はおいしくないものは食べないって言われてます。
でもこの猫、2週間も敷地内に閉じ込められてて
食べ物にはとても苦労していた状態だったらしいんですよね。
そういう状態だと、おいしくなくても食べますけど、でも骨までは食べませんねぇ。

ということで、結局
『この人の足の指はどこに行ってしまったのでしょう。』という謎は残るわけです。^^;

おじゃましました〜。

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25. 2005年10月17日 23時32分55秒  投稿:かい賊 
10月13日のニュースより

『埼玉県北埼玉郡の特別養護老人ホームで6日午前5時ごろ、ナースコールが鳴り、
職員が駆けつけると、入所している認知症の女性(88)の両足から出血、右足の指
すべてが第1関節近くからなくなっていた。女性は寝たきりで会話が出来ない状態で、
同室の入居者からの通報だった。

同ホームによると、女性の部屋は1階で、当時、窓が約30センチ開き、網戸の下にも
穴が開いていた。床などに猫の足跡があり、職員が中庭にすみ着いている猫の口の周りが
赤く染まっているのを目撃していた。県警は、この猫が女性の指を食いちぎったという
見方を強めている。』

なるほど猫って怖いですね、と思いきや、

『NPO(特定非営利活動)法人「アニマル・サポート・メイト」(さいたま市)の
野田静枝代表理事は、猫の口中写真を見せながら「猫の犬歯は左右2本しかなく、
100回以上ゴリゴリかまないと人の骨をかみ切れない」と説明したうえで、
「猫が人の骨を食べた話は聞いたこともない」と強調した。

動物愛護団体がこのほかに猫の仕業を否定する根拠は、
▽猫には餌を食べたら口元をなめてきれいにする習性がある。口に血が付いているのは不自然
▽特養ホームで使われていた消毒液のにおいを猫は敬遠する−−など。』

だそうな。確かに片足だけ全部第一関節までだけ食べてあるというのは不自然にも
感じますなあ。詳しくは書いてありませんが、傷口が鋭利であるということもなさそう。
もともと鋭利だったのだけれど、傷口周辺だけ食べちゃったとか?

だとしても、なんで足の指なんか切り落としたんだろう、不思議ですねえ。
なんとも本格テイストなニュースです。

こんなコメントも。

『「猫の病気とケアがわかる本」などの著書がある宮田動物病院(東京都葛飾区)の
宮田勝重院長(61)は「猫は肉食で足の指をちぎる力はあるが、人間の肉は美味では
なく食べないはず」と話す。』

美味かどうかは全く関係ないような気がしますが。
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24. 2005年10月15日 00時12分51秒  投稿:かい賊 
「パラダイス・キス」(フジTV 木曜深夜)

ハチクロのあと番組&主人公の声を山田優、不安要素は絶大だったが、なかなかどうして、
オシャレな(当然か)作りで、今後に期待できる作りになっています。

原作は矢沢あいで全5巻すでに完結していますが、残念ながら未読です。これを機に
読んでみようかしら、あんま長くもないし。公式ホームページを覗いてみましたが、
日本語版はもちろんですが、英語版の表紙がメチャかっこいいっす。気に入ったら
読めもしないのに思いっきり購入しちゃいそうで怖い。

ハチクロがアニメの作りは大してはじけていなかったので、今回は製作側の意欲を大いに
感じます(別にハチクロやる気なし、という意味ではありません)。「サムライ・チャンプルー」
といい、フジの深夜アニメは挑戦的・実験的・ついでにスタイリッシュで見ていてワクワク
します。どこかアンバランスな危うさを持ったこの作品、とりあえず山田優はプカプカと
浮きまくっていますが、それすらも計算の上?とか思わせるパワーを秘めています。
今後が楽しみ♪
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23. 2005年10月14日 23時43分42秒  投稿:かい賊 
新井輝「Room No.1301 #6 お姉さまはストイック!」(富士見ミステリー文庫)

話が進んでるんだか停滞しているんだか。新キャラも登場しているし一応匍匐前進ぐらいは
してるのかしらん。それはそれでまったりとしていて好きなんですねえ。この調子で
細く長く頑張ってほしいものです。だって物語の終着駅はたぶん幽霊マンション(での生活)
消滅なのだろうし、そうでなくても最悪冴子との訣別までは語られなくちゃいかんし、
刻也のエピソードとか入ってきたらいったい何時になったら完結するのか想像するだに
わくわくしてしかたがない。

今巻のベスト台詞
『悲しすぎるだろう』

もともと好きなキャラ(かなり笑えるので)だったけど、さらに好きになりました。

プロローグとエピローグのギャップがたまらん。実際おさまるもんじゃないよなあ、
とバリ共感。
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22. 2005年10月12日 23時14分04秒  投稿:かい賊 
川原正敏「修羅の刻 雷電編」(月刊少年マガジン 11月号)

究極を求め続けることは幸せなのか不幸せなのかどうにもわかりませんねえ。
でも間違いなくそこまで、または見えるところまでたどり着けば、本人は幸せなんだろうなあ。
また間違いなく本人に近しい人間は、近しければ近しいほど不幸せなんだろうなあ。

雷電は本当に幸せそうだったし、それで納得だ。
問題は葉月さん。女の身であるが故に最強の称号(“業”と言ってもいいだろう)である
「陸奥」を名乗ることができず、子を産みその子を鍛え上げ「陸奥」を継がせ、「陸奥」を
切望するものと闘わせる。それをあくまで「あたしの仕合だ」と言い切る。
想いは昇華したものと信じたいです。

これはこれで、切ないお話。
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21. 2005年10月12日 22時18分54秒  投稿:かい賊 
小林めぐみ「星屑エンプレス 僕がペットになった理由」(富士見ミステリー文庫)
今年の積み本より。スラップスティックSF……かな?

世界解説&キャラクター紹介編ですね。多種多様な宇宙人が出てきて、
みなそれぞれかわいくていいです。すべて地球上の生物の発展系というのは
ツッコミどころじゃないのかな。だからこそ親近感がわくというものかもしれないし。

主人公はいきなり「ぷちっ」と踏み潰されお亡くなりになりますが、わずか三十分で
サイボーグとして復活します。機械の身体と人間の意識の狭間で苦悩する石森章太郎な
展開があるわけもなく、典型的な引きずられキャラとしてその実力を遺憾なく発揮します。
あまり悪人の登場しない、というか、悪人だけれども憎みきれないかわいい奴らの
ストーリーです。

作中殺人事件が起こりますが、真剣に推理するとしっぺ返しを食らう可能性が大きいので、
主人公といっしょにそのドタバタ劇に巻き込まれながら読むのが、もっとも楽しい
読み方だと思います。

緊迫感を削ぐ、という点で、イラストがかわいすぎるというのが欠点?かもしれません。
肩の力を抜いて一気に読んじゃってください。
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20. 2005年10月11日 21時02分19秒  投稿:かい賊 
羽生善治「決断力」(角川oneテーマ21)
かい賊は将棋も趣味です。暇なときにはよく「24」でネット将棋なんぞを。

現棋界第一人者の筆者が、将棋を通して勝負に勝つ、勝ち続けるために必要なものを説く啓蒙書。

将棋に詳しくない人にでも理解できるようにとかなり気を遣って書かれています。
多少将棋を知っていれば面白さ4倍増。なるほどハブさんって日頃こんなことを
考えているんだなあ、とか思いながら読むのは幸せです。

『勝つのは一点差でいい。五点も十点も大差をつけて勝つ必要はない。
常にギリギリの勝ちを目ざしているほうがむしろ確実性が高くなると思っている。』

“かっこつけやがって”と思われる向きもあるかもしれませんが、実際ワシ自身、
負けるときは大差でボロ負け、勝つときはギリギリで逆転、ということが多いです。
へたくそなので大抵序盤で不利になります。逆転できるときは相手が安全勝ちを
「ねらいすぎて」いるときです。
物事、勝負でも仕事でも集中力を切らさない距離というものがあるのかもしれません。

いろいろな局面に応用が利く一冊です。
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[NAGAYA v3.13/N90201]