カモ



   ■デコイ猟




ダックハンティングの朝は早い。
どんなものでも、大抵のハンティングは朝早いが、カモを
一ヶ所で撃とうなんて日は、日が昇る前から日が沈むまで
川原で一日を過ごす事が多いのだ。
デコイを川に浮かべて、遠くにカモの姿を見れば、カモ笛を
ガーガー吹きながら、飛来したカモを撃ち落とす。 
そんな駆け引きがデコイ猟の楽しみなのだ。

ワタシらの場合、デコイ猟と言っても鳥屋(カモ撃ち小屋)を
利用するワケじゃないので、やたらと荷物は多くなってしまう。
陣取る場所の近くまで車を乗り入れられるトコロがあれば
理想的なんだけど、そーゆートコって大抵は人が近くにいた
りするから、人が殆どいないトコまで荷物を担いで歩くのだ。
特にデコイを使ったカモ撃ちは、場所を探すのも大変だ。 
しかし、どんなハンティングでも、用心に用心を重ねるのは
決して大袈裟な事ではないのだ。



一般の人の気配以外に、他のハンターの事も充分に
留意しながら、川原の草むら等に陣取って、装備や
服装、風除け等を偽装するのが我々のスタイル。
この写真はオレンジが目立つ服装だけど、移動時の
写真なのでツッ込まないで欲しい・・・。
ハンターがいる事を人に知らせる意味もあるけれど、
他のハンターからの万一の誤射を防止する意味もある。

そして陣地に着くと、まずはオレンジのベストや装備を
カモからは見つけにくく、人からは視認し易い方向や、
人が来そうな方向のあちこちにセットする。
つまり我々は、オレンジのグッズに少し離れて取り囲
まれるような状況になる。
もしキジ撃ち等の他のハンターが近寄れば、すぐに
我々がいる事が分かるようにする為だ。
そして、すぐに着用出来るオレンジも勿論装備する。










おぉ、カモがいっぱいいるじゃんか!?
ってワケじゃなく、これはデコイをセットしたトコ。

我々全員が全てのデコイを持って来たら、そりゃカモの大群
が出来上がってしまうんだけど、いつもは1〜2名が半ダース
から1ダースを持って来ては浮かべる事が多い。
そしてデコイ持参者の目的は、合理的な浮かべ方や新しい
デコイのセットの仕方、自作研究した装置の試みなどの意味
もあり、色々と楽しんでいるようだ。

それにしても遠くからだと、人間が見てもカモだかデコイだか
は判らないモンだ。
いつかは誰かが誰かのデコイを穴だらけにするんじゃないか
と思っているんだけど、いまだもって撃たれたデコイはない。



デコイの出来はメーカーによって多少リアルさが違う。
でもって、ダックハンターは、あれにしようこれにしようと
色んなデコイに手を出してみるモンなのだ。
しかしこのデコイ、人間の見るリアルさと、カモの見る
リアルさとではかなり違いがある。
そりゃ、リアルに越したことはないけど、大事なのは遠目
に見たフォルムと色合いなのだ。
それは人間からも同じに見えて、手元で見ると多少出来
栄えの悪いデコイでも、水に浮かべて遠くから眺めれば
本物のカモに見えてしまうモノであれば問題ない。

じゃ、デコイをどうに浮かべるかって言うと、特別難しい
事はなく、船をイカリで係留するのと同じだ。
デコイの底に水深より長めのヒモを着けて、ヒモの先に
重りを着け、テキトーなトコを狙って水に放り投げるだけ。
回収はフック付きの竿や、リールで行う。









この写真。これを撮った日、デコイの中に本物のカモがいた。
ワタシらは弁当を食べながら、クダらない話で盛り上がってた。
「さて、こんな事してる間にカモが来ないかなぁ〜?」と、銃を
持ってデコイを眺めた瞬間に3〜4羽のカモが飛び上がった。
「デコイが飛んだ!」と、GH北部方面隊長のあべべさん・・・。
「飛ぶワケないでしょ〜・・・。 あ〜ぁぁ・・・。」と、涙のワタシ。
デコイの具合を見ようと、タマも入れずにズカズカと近寄った
のはワタシだったのだ。

それより何より、考えてみれば本物が知らない間に混じって
いればデコイかと思っちゃうのだ!
その本物のカモは、飛んで来たのならメシを食ってても分かる。
しかし、飛んで来たのではなく、岸沿いに泳いで来てたのだ。
流石に音もたてず、姿も見せずに近寄られると全く分からない。
ネイビーシールズ並みの特殊部隊のカモだった。




ワタシらのカモ撃ちの場合は、2〜3名の時もあるし、
多い時には10人近くが集まって楽しんだりする。
そんな時はミンナが話に夢中になって騒ぎ過ぎるから、
カモもたまにしか飛んで来ないのだ。
そりゃ〜、もしワタシがカモだとしても、テッポ持ったヤツ
らがワイワイやってるトコなんかにゃ〜怖くて降りたくな
いモンね! 
よっぽどカモが来ない時は、キジバトやヒヨドリ、カラスや
川鵜がターゲットになる。
それに、そんなモンでも、なんたって良い実技練習に
なるし、カラスや川鵜は駆除して欲しいと言う声が多い。
川で会う釣り人は口を揃えて、「カモもいいけど、川鵜を
撃ってもらえないだろうか?」と頼んでくる人が多い。
川鵜が狩猟鳥獣に認定された今でも、川鵜が河川や
湖水の魚に与える影響は少なくないらしく、むしろ深刻な
問題が継続中だと言う。











対岸や目に入る範囲に人間の動きがあった場合は、
即座に「シース・ファイア(射撃中止)」となる。

レンジファインダーで距離を確認した者が「350m!」とか
声をかけると、しばしの射撃中止タイムなのだ。
あ、ここで言っとくけど、河川のカモ撃ちって、双眼鏡は
必須装備だからね。

でもさ、ちょうど射線の先に人が見える時に限ってカモが
目の前に着水したりすんのよ!
まぁ、撃ってもタマは届かない距離に人がいたりするんだ
けど、万が一の万が一、風とかに乗った跳弾で事故が発生
したら大変だから撃たないのが正解なのだ。
でも、絶対カモってそういう時は「コイツら今撃てないんだ♪」
ってのが分かってて近くに着水してるような気がしてならない
のはワタシだけだろうか?




写真のM870のバレルの先は川で、安全の為にハンマー
がファイアリングピンを叩かない位置まで機関部を開放
して撮影したけど、タマが覗いてるのが判る。 
川で最前列に陣取った者は、セイフティーをオンにして、
フルロードする事も多い。
そして持ち場を離れたり、休憩の時は確実に脱包する。

カモを狙う時は、バレル交換が出来るショットガンなら
長いバレルを装着するのが効率的だ。
ただ長いだけではなく、チョークは絞りのキツイものが
カモ撃ちには都合が良い。
もし、バレルが短いとしても交換チョークでどうにかなる
モンだから、銃の取り回しを考えてそのパターンを選ぶ
人もいる。
それに、各自が自分の銃の射程を分かっているので、
短いバレルの人も近距離でのカモの撃墜を狙う。












カモが一服している。
人のカモにイタズラしたつもりだったけど、実は自分で撃った
カモだった事に後から気づいた・・。
これはマガモのメスで、銃で撃っても回収不能な場所にいたの
を他の人が追い出し、待ち構えたグループが撃ったヤツ。
何人かの仲間と行くと、そんな事が出来るのでオモシロイのだ。

写真のカモが寝タバコしている布団は、ペットシート。
アタシゃ猟期にはこれを車に積んでいる。
ほら、血でも水でも吸い取ってくれるし、ビニール袋のように
ムレムレになる事はない。
ムレムレになっても良いのは・・・・○△□だけなのだ。
何を言わせるんだよ、もぉ〜、ヘンタイっ!




たまに群れが飛んで来たりすると、一斉射撃が始まる。
「な、な、なんだ!?戦争か〜っ!?」と思うほどの銃声
が響き渡ったりする。
・・・でもね、そんな時に限って、落ちたのは"1羽だけ"
だったりすんのよ、これがまた。

写真は、仲間がワタシと違うのを狙って落としたコガモ。
そして彼が我々に背中を向けてオシッコしてる間に、彼の
ベネリにコガモのアタマを突っ込んだイタズラなのだ。
「あらら!誰だ、こんな事をすんのはっ!!」
と言ったトコロで、「他にいないでしょ・・・?」と、ワタシを
見つめる目は冷ややかだった・・・。
犯人をスグに見破ってしまう、皆さんは実にスルドイ!











自称ビギナーのナガ君が獲ったカモをミンナで喜んでるトコ。
経験や年齢を問わず、仲間とバンバン出来るのは楽しい。

しかし、楽しくやれる事の大前提として、銃器の取扱いに問題が
ない仲間である事が必要条件だ。
また、新しく参加する初心者がいた場合でも、参加者の殆どは
ハンティングそのものじゃなく、銃器の取扱いとモラルに関して
指導している様子を良く見かける。
それ以前に我々と行動を共にする人達の場合、狩猟だけでは
なく、射撃そのものも趣味にしている人が多いので、銃の取扱い
や銃器に関する知識レベルは一定のライン以上であるとワタシ
は確信しているのだ。
カモ撃ちとは言え、グループ行動である事に変わりはない。
自分勝手な行動をする人が一人もいないのは、我々のトコに
集まる人達の良いところで、それもワタシが自慢出来るトコだ。



COLTのショットガンは珍しい。
コガモを木にぶら下げて、ニヤケ顔でポーズを取る、
GHF北部方面隊長。
最近カモ撃ちの深みにハマリ出したと思ったら、この日
なんと、定数の5羽のカモをゲットしてゴキゲンなのだ。

この時ど〜して木にカモをぶら下げたかと言うと、たまに、
キジ撃ちの人のワンちゃんがカランコロンと鈴を鳴らしな
がら我々のトコまで来る事があるので、鈴の音を聞くと
ワタシ等はカモを持っていかれないようにカモを避難させ
るのだ。
と言っても、川原の猟犬は大抵はしっかり訓練されている
ので、人も噛まないし、人の物にも手を出さない。
それに良く行く場所なら、見覚えのあるワンちゃんが多い。
ま、犬から見ても、「・・なんだ、またコイツらか」と思って
るに違いない・・・。











ここにもニヤケて、しまりのない顔のヤツがいた。
こちらも定数の5羽を獲って上機嫌なのだ。
ショットガンは、ありふれたレミントン、870だ。
気合を入れて30インチ銃身を持ち出し、良い結果だったので
バカな顔のしまりが余計に無くなっている・・・・ワタシだ。

こっちも負けずに、コガモを木にぶら下げてみた。
大物は大物で楽しいが、カモはカモでやっぱり楽しい。

ここで出会う他のハンターは、「昔はここにゃ〜、カモ撃ちの
人が大勢いたけど、今じゃ殆どいないなぁ〜。」と、カモ撃ちで
賑わった頃の話をする人が多い。
確かに、たかが数年前でもここで我々がカモを撃ってると、
一日に何組かのハンターと会ったり話したりしてたけど、最近
ではめっきりハンターが減っていて、たま〜にキジ撃ちの人と
会うくらいだ。




最終日の2月15日、普段は山で大物を追い掛け回す事
が多い北部方面隊長も、この日ばかりは川に沈む夕日を
眺めながら物思いにふける。
・・な〜んて風な写真だけど、実はカモ撃ちにハマってて、
「ね〜ね〜、来年はもっとカモ撃ちもするべ!ウッシシ♪」
と、ただ単に一服してるトコなのだ。

やっぱりダックハンティングは楽しい。
そりゃ、北風の吹く寒い日もあるけれど、それはそれで
カモ撃ちをする人達の風物詩となる。
それに雨の日だって、朝から夕方まで川原で過ごす事
だってあるけど、撃てるチャンスは多い。
カモは、大物猟の楽しさとまた違う楽しさがあるから、
どっちが一番とかって順位は付けられないのだ。




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