吾妻郡について

  

 

は じ め に

 私は幼いころから吾妻郡に住んでいます。意識して植物観察をするようになったのは最近ですが、これだけ自然と植物に恵まれたところにいることを感謝しています。
 そこで、この吾妻郡について簡単に説明したいと思います。

 

群馬県における吾妻郡

 吾妻郡は、「鶴舞う形の群馬県」の尾の部分を占め、郡の西はじは長野県と接しています。そして、中之条町、吾妻町、草津町、長野原町、高山村、東村、六合村、嬬恋村の4町4村から成り立っています。
 人口は少ないですが、嬬恋村のキャベツなどが有名です。また、草津温泉などの温泉が各地にあります。そして、夏は別荘地として北軽井沢などがにぎわう一方で、冬は万座スキー場などの各地のスキー場に人が集まります。
 この吾妻郡の公共交通の中心となるのが、郡を東西に横切るJR吾妻線です。ただ、それ以外の鉄道はないうえにバスもあまり発達していません。そのため、郡内における移動手段は、主に自家用車となっています。

 

吾 妻 郡 の 地 形

 吾妻郡は山地によってほとんどが占められ、最も低いところでも標高が300メートル近くもあります。そして、長野県との県境である郡の西部、つまり群馬県の「尾」の輪郭部は、2000m前後の山が連なっています。その中には、現在も火山活動を続けている草津白根山(2138m)や浅間山(2560m)があります。また、郡の東南部は榛名山(1449m)の北斜面となっています。
 吾妻郡のほぼ中央を西から東に流れている吾妻川は、長野県との県境から流れ出て利根川に合流しています。郡内で平らな部分は、中之条盆地などの吾妻川やそこに流れ込む川に沿ってあるだけです。そのため、このような場所に人口のほとんどが集中しています。

 

吾 妻 郡 の 植 物

 群馬県は内陸にあるため、海岸性の植物はありません。けれども、3200種類もの高等植物があります。この数は、面積の割合から言うと全県でベスト5に入るものと言えるでしょう。
 さらに吾妻郡だけでも、この中の2000種はあると考えられます。イギリスは北海道を除いた日本とほぼ同じ面積がありますが、このイギリス全土の植物種数は1700種あまりと、吾妻郡よりも少ない数になっています。このことからも、吾妻郡の植物の豊富さがわかるかと思います。
 このように、吾妻郡にたくさんの植物の種類があるのは、太平洋と日本海からほぼ等距離にあるなど、様々な環境要因に由来する植物が見られるためと考えられます。その主なものを挙げてみると、次のようになります。
 ・関東要素(タマアジサイ、タイアザミ等)
 ・日本海要素(シラネアオイ、ヤマモミジ等)
 ・そはやき要素(レンゲショウマ、ヒカゲツツジ等)
 ・フォッサ・マグナ要素(キンレイカ、アカギキンポウゲ等)
 さらに、大陸と共通した植物や、史前帰化植物や新帰化植物などがあります。
 以上のような複雑な環境要因が、この吾妻の豊かな植物を成り立たせているのです。