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◆あまり変わらないところ(箇所)もありますが、状況は日々変わって行きます。初めての方もおられるので全文載せておきます。

<近況報告>(11月)

  近況報告
                       2011年11月 
               石巻栄光教会・栄光幼稚園 小鮒 實

 主の御名を讃美いたします。
 今般、皆様には多大なるご心配いただき、また温かいご支援をいただき、心より感謝しております。状況は日々変わって行きます。新しい近況を報告します。

1.教会の近況

 教会堂・牧師館の修理は、東京からボランティアの方々が来られ(10/8〜10/10)、ドアやサッシ等を治していただきましたが、本格的な修理は来年になります。ちなみに、教会堂 410,550円、牧師館841,050円、2,371,950円、計3,623,550円の見積です。牧師館の給湯器は、10月18日やっと入れ替えてもらいました。

 教会員の77%(17名)が全壊・大規模半壊の被害を受けましたが、大部落ち着きを取り戻して来ました。まだ、お家の修理が終わっていないご家庭も多くありますが、大工さんが忙しく順番待ちの状態なので仕方ありません。

 東北ヘルプ(仙台キリスト教連合被災支援ネットワーク)から、教会の被災支援として10万円をいただきました。また、新たに「教会の信徒の人的・住宅被害に対する義捐金」の申請も受付けて下さっています。日本基督教団からは、東北教区総会議長が「見舞金(一時金)」として3万円をいただきましたが、「教会の信徒の人的被害・住宅被害」などについては全くお話しがありません。

 教会員の人的被害
 石巻で全壊・大規模半壊の被災者には、被災者生活再建支援制度による基礎支援金(50万円〜100万円)及び住宅の再建方法に応じた加算支援金(50万円〜200万円)が支給されました。また、東日本大震災災害義援金(日本赤十字社・中央共同募金会等(国)に寄せられた義援金、宮城県に寄せられた義援金及び石巻市に寄せられた義援金)の配分(76万円〜101万円)もありました。しかしながら、家を失い、仕事を失い、家族を失った人たちに、どのような慰めの言葉をかけたらよいのか、心が痛みます。


 教会より、全壊の所には各5万円(逝去者の所にはご家族に)、大規模半壊の所には各1万円の「お見舞金」を差し上げました。ちなみに、震災後、現住陪餐会員は11家族17名になります。

◆教会の被災(被災教会)という場合、教会堂等の建物のことがよく報じられますが、教会(エクレシア)は、主イエス・キリストを信じる人たちの群れ(共同体)です。それ故、教会員の近況を詳述しました。教会の被災(被災教会)のことを語る場合、決して見逃してはならないことだからです。

2.幼稚園の近況

 幼稚園の建物は、来年(2012年)の夏休みに修理が出来ればと思っています。(2,371,950円の見積)大工さんが忙しく工事の目処が立たないのが現状です。

 幼稚園の保護者は、78%(38家族)が全壊・大規模半壊の被害を受けています。
幸い宮城県から保育料と入園料の全額減免処置がなされ

 園児については、家がすべて津波で流されてしまった子、津波に追いかけられながらも、なんとか助かった子、津波に流され隣の人に助けてもらった子、また、母親と妹を津波で失った子(5月に入園)等々、いろいろな子どもたちがいます。心に大きな傷が残っています。“子どもたちに寄り添う”歩みをしたいと願っていますが、時間がかかりそうです。また、最近では、以前と違う環境(祖父母や親戚と同居)の中で、嫁姑等の問題で母親の精神状態が不安定になり、それが園児に微妙に影響し不安定になっている子どもたちもいます。生活が少しずつ落ち着いて来ると、新たな問題が出てくるようになって来ました。

 幼稚園は、震災の影響で、4月16日(土)卒園式、4月20日(水)入園式を行い、多少の行事等の変更はありますが、順調?に歩みを進めています。園バスの送迎は、地盤沈下もあり、冠水、浸水時などは2時間近くかかることもあります。

 全国から園児に対する救援物資、励ましの言葉、支援金等もいただきました。わざわざ訪問し子どもたちを励ましてくださった幼稚園関係者もいます。また、マジックをしていただいたり、応援コンサートを開いていただいたり(5/16)、炊き出しをしてもらったり(5/21)、春物衣料の無料配布(6/1)をしてもらったりもしました。心より感謝しています。6月25日、幼稚園の「運動会」が盛大裡に終了。子どもたちから元気をいっぱいいただきました。

 ◆4月、ボランティアでお手伝いくださった方の紹介で、TOTOが出資し長谷川豪建築設計事務所が設計する建物(“TOTOギャラリー・間”(長谷川豪展2012.1/14〜3/24)に展示する建物、10坪程度500万円相当)を幼稚園に寄贈してもらうことが決まりました。「子どもたちが安心し、喜んで遊べる空間(建物)」ということで現在設計を依頼しております。展示終了後、来年の3月末頃、当幼稚園に移築する計画ですが、移築には諸費用がかかります。具体的には、輸送費、こちらの遊具の撤去費(老朽化していた上、津波の直撃を受け現在使用禁止の冒険ロッジ(ログハウス)、物置、鶏小屋、犬小屋等の撤去費)、また、移築のための基礎コンクリートの工事費等です。これらは当方(幼稚園)で負担しなくてはなりません。合計すると100万円近くかかります。また、この建物に付属するものとして「親子ベル」を設置する計画ですが、この費用が150万円位必要です。これらは当方(教会・幼稚園)で負担しなくてはなりません。総合計で250万円位です。

 現在、この移築費用捻出に頭をかかえていますが、「主の山に備えあり」の信仰に立って歩んでいます。ご協力いただける方は、下記の口座にお振り込みいただけるとありがたいです。(現在“募金趣意書”を準備中)
 (口座等省略)

3.地域の近況

 11月24日現在の石巻市の被災状況は、死者 3,282名、行方不明者 669名となっています。2月末日(被災前)の住民基本台帳によれば、石巻の人口は 162,822人、60,928所帯でした。10月末現在の人口は 153,247人、58,119所帯になっています。1万人近くの減少です。他県に一時避難していた人たちも大部戻って来ましたが、仕事がなければ人口はもっと減るかも知れません。

 石巻市は10月11日全避難所を閉鎖、仮設住宅や借り上げ住宅に入居した者、自宅に戻った人たちもいます。自宅の修理が終わらず自宅に戻れない人たちは22所帯32名で、今4カ所の待機所で生活しています。

 仙石線についてですが、仙台−松島海岸間は開通。矢本−石巻間も開通しています。しかし、松島海岸−矢本間は不通(バスは出ている)なので、直接、仙台からバスで石巻まで来ることをお勧めしています。

 石巻市は合併でかなり広域になりましたので(多くの浜、島等を含む)、全体を把握することは到底困難ですが、教会・幼稚園のある地域、また周辺は、大部きれいになりました。(津波で全壊、大規模半壊の家は解体作業が進んでいます、また、自宅の修繕もかなり進み、1階で生活できる人たちも多くなって来ました。)しかし、地盤沈下のため満潮、大潮のときの「浸水・冠水」の問題は未だ解決されていません。

湾岸の護岸工事はまだまだです。取りあえず海水が入らないように工事を進めていますが、高潮のときなどは、やはり海水が入ってきます。抜本的な工事(防波堤、防潮堤)はこれからです。

 福島第一原子力発電所事故に伴う放射線量については、定期的な測定が行われていますが、石巻は最高値でも0.225マイクロシーベルト/時ですので、取りあえず大丈夫のようです。(当幼稚園の園庭は、0.09マイクロシーベルト/時)

 行政の対応は、後手後手の所が多いです。二次災害等の発生が予想される危険な状態にある家屋等の解体が始まっていますが、家を流された地域は、調整地区として新しいお家を建てることは出来ません。1階部分を修理して住んでいる人たちも沢山いますが、いつ立ち退きになるか分かりません。また、商店等を営んでいた人は、お店を修繕しても立ち退きになればすべて無駄になりますので、お店の修理に慎重な人もいます。お店を再開しなければ生活できませんから、皆頭をかかえています。

4.石巻の復旧・復興に向けて

 復旧作業は毎日続いていますが、まだまだ時間はかかります。復興については、8月22日に「石巻市都市基盤復興基本計画図(案)」が公表されましたが、財源等のこともあり詳細はまだ決まっていません。

 行政の取り組みが迅速に行われることを願っていますが、行政だけに任せてはおけません。民間でもいろいろな動きがあります。そのいくつかを紹介してみます。6月1日(水)NHKの「クローズアップ現代」でも取り上げられた「三陸海産再生プロジェクト」。生産者(漁師)・加工業者・消費者をつなぐコミュニティの実現を目指して立ち上げられたプロジェクトです(6月28日「ガイアの夜明け」でも放映)。津波で船が流された漁師が沢山います。また、加工業者も施設を失いました。そこで、会員を募集し、会費で漁船や漁具を買い、加工や出荷の施設を整え、準備が出来次第、海の幸を消費者に会員価格で届けるというプロジェクトです(COOPみたいなもの)。年会費は個人1万円、法人3万円。詳しいことは、ホームページに載っていますのでご覧下さい。(http://www.sanriku-pj.org/)このような民間のプロジェクトに協力することも復興支援の一つではないかと思っています。現在、当教会の役員(1名)がこのプロジェクトの理事をしており、私も会員登録しました。

 また、「セキュリテ被災地応援ファンド」(市民ファンド)というものもあります。これもNHKの「クローズアップ現代」(7/21)で紹介されたものですが、被災された事業者(企業・商店)などに、出資金5,000円と出資取扱手数料500円、応援金5,000円の10,500円から参加できるプロジェクトです。(詳細は、http://oen.securite.jp/を参照) 被災事業者の多くはマイナスからのスタート(被災前の借入金等あり)です。このファンドに投資しても、元本保証はありません。ただ本気で再興を願っている事業者を応援するだけです。上記のHPのビデオ等をご覧いただき、ご検討いただければと思います。(小鮒も1口加入、石巻の商店を応援しています。)この他にもいろいろな復興支援のプロジェクトがありますので、ネット等で調べていただければと思いますが、中には詐欺まがいのものもありますので、十分気をつけていただければと思います。

 今回の被災で職を失った人たちが沢山います。なんとか仕事が見つかればよいのですが、現実はなかなか厳しいものがあります。幼稚園の保護者の中には、給与の80%で会社の泥かき、撤去作業をしていた人もおりました。しかし、その仕事が終われば…。被災し再興の見通しが立たない会社に勤務していた人たちは本当に大変です。いつまでも失業保険だけで生活することは出来ません。また、給与の60%を「休業保証金」として支払い、会社の商品(訳あり商品)を義援金という名目で販売させ、その益金をプラスαして社員に支払っている会社もあります。「津波保険」に加入していた会社は復興も可能でしょうが、未加入の会社はかなり厳しい状況です。

 多くの漁師さんは、海の瓦礫処理に従事していました。石巻から気仙沼まで行って瓦礫処理をしていた人もいますし、近くの海で瓦礫処理をしていた漁師もいました。今、漁業権の問題で、宮城県(行政)と宮城県漁業協同組合(本所・石巻市)との間に意見の相違がありもめていますが、漁師さんには、震災前から、跡継ぎ問題(漁師の後継者問題)等があり、漁業権の問題はかなり複雑で難しいものがあります。

 仕事のことについては、個人的には何も出来ませんが、個人でも出来ることはあります。小さなことですが、地元にお金を落とすということも復興支援の一助になるのではないでしょうか。震災後しばらくたってボランティアの人たちと地元のラーメン屋(らーめん専科 夢工房TAKE(たけ)、ネットで検索可)に行きました。おいしいと評判のお店です。そこのご主人は、お家が被災し避難所生活をしながら、昼間お店に来て(お店(借店舗)には水があがらなかった)、ラーメンを作っていました。お話を聞いて、そのことが分かったのですが、このようなラーメン屋さんに食べに行くのも、復興支援の一つにつながると思います。6月に食べに行ったときには、7月から家族でアパートに移れると言っていました。7月に行きましたら、無事アパートに入居されたとのことです。焼肉定食、生姜焼定食などもおいしいので、是非一度ご賞味ください。

 教会・幼稚園近くの「すうぷ屋」さん(和洋折衷料理、お弁当の配達もする、お店の中1m浸水、2階で生活していた)も7月から営業を再開しました。おいしいお店なので(小鮒家推薦、ネットで検索可)、利用してもらえるとありがたいです。「栄光幼稚園の園長から紹介してもらった」と言っても、とりたててサービスが良くなる訳ではありませんが、情報はいろいろ聞けるかも知れません。

 最近、復興商店街「ホット横丁石巻」(石巻市大街道北1丁目)もオープンしました。(http://blog.beatemotion.org/2011/0728_2322.html)11店舗あります。その他、今までのお店が被災し営業が出来なかったところも、新しい所で営業を再開したお店も増えて来ました。震災前とは大部違いますが、それぞれ皆頑張っています。

 また、救援物資等、地元で購入することも地元にお金が落ちるので、少しは復興に役立つかも知れません。特に、小さなお店での購入をお勧めします。大手のスーパーなどよりは少し高いかも知れませんが、弱者を支援する意味で大切に思います。勿論、悪い品物を買う必要は全くありません。

 勿論、お金だけの問題ではありません。家を失い、家族を失い、職を失った人たち、彼らの心の痛み、悩み、苦しみを聴いてあげることも必要だと思います。聴いてあげることだけでも少しは心の傷がいやされるのではないでしょうか。ルーテル教会の「傾聴のボランティア」の人がしばらく当教会に宿泊していましたが、そのような働きも大切になってくると思います。震災後半年が過ぎました。これからのボランティアの働きで大切になるのが本格的な「被災者の心のケア」だと思います。阪神・淡路の大震災の時のような「孤独死」の問題が生まれないためにも。

 キリスト者として、「喜ぶ者と共に喜び、泣く者と共に泣く」(ローマ12:15)ような支援のあり方、「共に生きる」あり方、困っている人・助けを必要としている人に「寄り添う」あり方が求められているように思います。(伴走型支援もその一つ)

 まだまだ長丁場です。多くの人たちが疲れ切っていますが、現実から目をそらすことは出来ません。復旧、復興に向けて何が出来るか、これからも祈りながら目を向けて行きたいと思っています。

5.最後に牧師家族の近況

 8月には、多くのボランティアの宿泊を受け入れ、また、東日本大震災復興支援石巻栄光教会・栄光幼稚園「夏まつり」(8/20)も行っていただきました。夏期伝道神学生の受け入れ、諸教会の牧師先生の説教応援等で、本当に助かりました。

 いろいろなところから「リトリート」のお申し出をいただいていますが、今しばらくは難しいのが現実です。今でも突然の来客あり、また、ボランティアの宿泊等、結構忙しく過ごしています。以前「牧師夫人が震災後2度倒れた」なんて書いたものですから、多くの方々からご心配いただきましたが、大丈夫です。牧師以上にタフなところがありますから。確かに、最近、牧師も牧師夫人もミスが多くなって来ています。でも、それは多分年のためでしょう。(二人とも還暦を迎え、もうすぐ61歳です)
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