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◆教会の近況、幼稚園の近況については、あまり変わりませんが、状況は日々変わって行きましたので、全文載せておきます。

<近況報告>(7月)

  近況報告
                               2011年7月 
                   石巻栄光教会・栄光幼稚園 小鮒 實

 主の御名を讃美いたします。
 今般、皆様には多大なるご心配いただき、また温かいご支援をいただき、心より感謝しております。教会、幼稚園、地域の近況を報告します。

1.教会の近況

 教会の建物は、全体的に少し歪んでいますが(ドアやサッシ等閉まりにくい)、少し手をいれれば大丈夫です。牧師館の給湯器は、やはり入れ替えないとダメですが(一時直ったと思いましたが、海水に浸かったためやはりモーターがダメでした)。

 教会員は、津波で1人逝去。被災の混乱の中で1人逝去。教会員の家族では、母が津波で、父が被災の中で逝去された人が一人、夫が被災の中で逝去された人が1人います。また、家が全壊で他県に移住された教会員が3名、関係者が1名います。

 教会員のお家は、全壊6(37.5%)、大規模半壊(床上浸水等)6(37.5%)、一部損壊(床下浸水等)1(6.25%)、比較的軽微(壁の表面が落ちた等)3(18.75%)です。全壊・大規模半壊のお家は合計で75%。被災前の現住陪餐会員は22名、77%の人たち(17名)が全壊・大規模半壊の被害を受けました。お家の修理・修繕が始まっているお宅もありますが、経済的負担は甚大です。
(参考までに、義援金の石巻市の配分(一部)を記しておきます。)
  人的被害(1人当たり)  死亡者・行方不明者 51万5千円
住家被害(1戸当たり)  全壊 46万円
大規模半壊 26万円

 全壊のお宅は、逝去者1名、他県に移住3名、家族の所で生活している者1名、2階で生活している人が1家族います。半壊のお宅では、アパートに移住1家族、あとは自宅で生活しています。一部損壊者等も自宅生活。避難所生活者はいません。

 教会より、全壊の所には各5万円(逝去者の所にはご家族に)、大規模半壊の所には各1万円の「お見舞金」を差し上げました。ちなみに、震災後、現住陪餐会員は11家族17名になります。

◆教会の被災(被災教会)という場合、教会堂等の建物のことがよく報じられますが、教会(エクレシア)は、主イエス・キリストを信じる人たちの群れ(共同体)です。それ故、教会員の近況を詳述しました。教会の被災(被災教会)のことを語る場合、決して見逃してはならないことだと思うからです。

◆5月22日、教会総会が開催されました。教会員のほとんどが被災者であり、自分たちの生活で精一杯なので、「教会としての」積極的な地域への支援活動等は検討されませんでした。動けるとしたら、牧師夫妻くらいです。(6月後半頃から車を入手した教会員も救援活動をしてくれています)また、教会員が減少し、皆被災しているので月定献金の増額も難しく、牧師謝儀減額の提案がなされましたが、特別会計から繰り入れることで減額はしない(昨年度と同額)ことになりました。

2.幼稚園の近況

 幼稚園の建物は、2階軒下の天井が一部落下、壁に亀裂、また壁に穴(2ヶ所)も開いています(その他一部修繕が必要箇所あり)が、修繕工事はまだ出来ていません。業者が仮設住宅の建設に忙しく、また材料も手に入りにくいということで、しばらくは手つかず状態です。見積も依頼していますが、まだ届いていません。

 砂場の砂(ヘドロで汚れた砂)については、6月27日、東京の経堂緑岡教会が全額費用を出して新しい砂に入れ替えてくださいました。(石巻では砂場の砂が手に入らないので、仙台の業者に依頼してくださり、また、10名のボランティアも教会より派遣してくださり、新しい砂に入れ替えてくださった。心より感謝。)

 幼稚園の先生方(3名)のお宅ですが、1人は実家が津波で完全に流され、祖母様も犠牲になりました。現在アパートで家族と共に生活しています。もう一人の先生はお家が全壊扱い、2階で家族と生活。もう一人の先生は、地震の被害だけで軽微だとのことです。教会より、2人に各5万円、1人に1万円の「お見舞金」を差し上げました。また、東京の昭島幼稚園では、特に先生方のことを覚え、励ましの寄せ書きやお見舞金等を届けてくれました。夏休みになったら、研修を兼ねて先生方と少しゆっくりして来ようと思っています。(他にも幼稚園関係者よりお見舞いをいただいた)

 幼稚園の先生方は、私学共済に加入していますので、そちらから災害見舞金等が出ます。(全壊の方で634,800円)しかし、もともと基本給が低いので(初任給11万+調整手当6,000=116,000)、他の幼稚園の被災された先生方と比較しますとかなり見舞金等も少ないです。(初任給17万円ですと85万円)宗教法人立の小さな幼稚園ですから仕方ないのかも知れませんが、このような所にも“弱者にしわ寄せが来る”現実があるように思います。

 幼稚園の保護者も、ほとんどが被災しています。約1/4が全壊扱い、半数近くが半壊扱い、被害がなかったお家はごくわずかです。新年度予定していた在園児、新入園児のうち6名が震災のため園に来れなくなりました。(新年度52名予定していた園児が4月当初46名、現在48名)他県や実家、親戚の所へ移住した人、また今も狭い家で祖父母や親戚の方と同居しているご家庭も多い。中には仕事を失った人もいます。このような中で、環境の変化で悩んでいるご家庭も多く、子どもへの影響も出ています。

 園児については、家がすべて津波で流されてしまった子、津波に追いかけられながらも、なんとか助かった子、津波に流され隣の人に助けてもらった子、また、母親と妹を津波で失った子(5月に入園)等々、いろいろな子どもたちがいます。心に大きな傷が残っています。“子どもたちに寄り添う”歩みをしたいと願っていますが、時間がかかりそうです。また、最近では、以前と違う環境(祖父母や親戚と同居)の中で、嫁姑等の問題で母親の精神状態が不安定になり、それが園児に微妙に影響し不安定になっている子どもたちもいます。生活が少しずつ落ち着いて来ると、新たな問題が出てくるようになって来ました。

 幼稚園は、震災の影響で、4月16日(土)卒園式、4月20日(水)入園式を行い、多少の行事等の変更はありますが、順調?に歩みを進めています。園バスの送迎は瓦礫撤去の車が多く2時間近くかかることもありますが。

 全国から園児に対する救援物資、励ましの言葉、支援金等もいただきました。わざわざ訪問し子どもたちを励ましてくださった幼稚園関係者もいます。また、マジックをしていただいたり、応援コンサートを開いていただいたり(5/16)、炊き出しをしてもらったり(5/21)、春物衣料の無料配布(6/1)をしてもらったりもしました。心より感謝しています。6月25日、幼稚園の「運動会」が盛大裡に終了。子どもたちから元気をいっぱいいただきました。

3.地域の近況

 7月7日午前8時現在の石巻市被災状況は、死者 3,128名、行方不明者 1,012名となっています。2月末日(被災前)の住民基本台帳によれば、石巻の人口は 162,822人でしたから大変な数です。また、石巻市内で避難所生活を続けている方は、7月5日現在4,540名、避難所数は80箇所です(仮設住宅等に入居しているため少しずつ減少)。仙石線についてですが、仙台−松島海岸間は開通、松島海岸−石巻間は不通。7/15、矢本−石巻間開通見込み。しかし、全線がいつ開通するかは見通しつかず。(当地へ来るには、自家用車、あるいは仙石線で松島海岸まで来てバスorタクシー利用です)

 石巻市は合併でかなり広域になりましたので(多くの浜、島等を含む)、全体を把握することは到底困難ですが、教会・幼稚園のある地域、また周辺では、連日、瓦礫の撤去作業が続いています。少しずつきれいになっていますが、まだまだ時間がかかりそうです。最近は、地盤沈下のため満潮、大潮のとき「浸水・冠水」の問題も出て来ています。津波でなんとか助かった家も他に移らなくてはならないご家庭も出てきています。電気、水道などは6月になって大部復旧しました。勿論、まだの地域もありますが。

 仮設住宅も大部完成し、入居者も増えて来ました。仮設住宅には、キッチン、風呂、トイレ、冷蔵庫、洗濯機、テレビなど基本的なものは備わっています。ただ、水光熱費、生活費等は入居者負担なので、抽選に当たってもそれなりの収入がないと入れません。年金生活者などは入居可能ですが、家を失い、職を失って収入のない人たちは抽選に当たっても「避難所生活」をしています。また、仮設住宅の場所によっては、車がないと買い物にも行けない人たちもいます。

 救援物資はかなり行き渡っていますが、まだ必要としている地域もあります(牡鹿半島や北上地域)。石巻市のホームページには、【現在不足している救援物資】として、【食料品】お茶(ペットボトル500ml)、スポーツ飲料(ペットボトル500ml)、カップ麺、酢、みそ等(炊出し等で使用)、じゃがいも、人参、玉ねぎ、ピーマン、きゃべつ、ホウレンソウ等 【衣類】男性用夏用衣類、女性用夏用衣類、子ども用夏用衣類(全て新品)【日用品】タオルケット(夏用)、シーツ(夏用)、防虫剤、殺虫剤、土のう袋、食器用洗剤、洗濯洗剤、住居用洗剤、トイレ用洗剤、消臭剤等が挙げられています。

 最近、大量のハエが発生し、ペットボトルでハエを捕る方法が人気です(ネット上にも公開されている)。私も作りました。また、暑さが厳しくなり、扇風機を必要としている人たちも多くいます。「電気屋さんでは売り切れ」とのお話を聞きましたが、今日(7/9)ホーマックに行ったら沢山ありました。

 福島第一原子力発電所事故に伴う放射線量について、石巻市もやっと小・中学校の調査を開始しました。測定した結果の放射線量最高値は0.22マイクロシーベルト/時で、取りあえず大丈夫のようです。幼稚園の園庭も調査してくれました。(7/9、0.08マイクロシーベルト/時)

 行政の対応は、後手後手の所が多いです。二次災害等の発生が予想される危険な状態にある家屋等の解体が始まっていますが、家を流された所は、調整地区として家を建てることは出来ません。何とか1階部分を修理して住もうとしている人たちも多くいますが、いつ立ち退きになるか不透明です。でも、あちこちから修繕工事の音が聞こえて来ています。湾岸の護岸工事はまだ手つかず、土嚢を積み上げているだけです。罹災証明書はじめ、諸証明書は大部スムーズに発行してもらえるようになりました。ただし、市役所への電話(災害関係部署)は未だに不通が多いです。結局、出向くしかありません。

4.石巻の復旧・復興に向けて

 復旧作業は毎日続いていますが、まだまだ時間はかかります。復興については、4月に石巻市震災復興推進本部が設置され「石巻市震災復興基本方針」が策定されました。5月に石巻市震災復興ビジョン「有識者懇談会」が開催され、まちづくり(都市基盤整備)に関するアンケート結果(6月)を踏まえ、8月には第4回石巻市震災復興基本計画市民検討委員会で、震災復興基本計画(素案)の検討、震災復興推進本部において基本計画(素案)を決定する予定だそうです。

 行政の取り組みが迅速に行われることを願っていますが、行政だけに任せてはおけません。民間でもいろいろな動きがあります。その一つを紹介してみます。6月1日(水)NHKの「クローズアップ現代」でも取り上げられた「三陸海産再生プロジェクト」。生産者(漁師)・加工業者・消費者をつなぐコミュニティの実現を目指して立ち上げられたプロジェクトです。津波で船が流された漁師が沢山います。また、加工業者も施設を失いました。そこで、会員を募集し、会費で漁船や漁具を買い、加工や出荷の施設を整え、準備が出来次第、海の幸を消費者に会員価格で届けるというプロジェクトです。(COOPみたいなもの?)年会費は個人1万円、法人3万円。10万人の会員で約10億円の資金を集めようとしています。詳しいことは、ホームページに載っていますのでご覧下さい。(http://www.sanriku-pj.org/)このような民間のプロジェクトに協力することも復興支援の一つではないかと思っています。現在、当教会の役員(1名)がこのプロジェクトの理事をしており、私も会員登録しました。

 今回の被災で職を失った人たちも沢山います。なんとか仕事が見つかればよいのですが、現実は厳しいものがあります。幼稚園の保護者の中には、給与の80%で会社の泥かき、撤去作業をしている人もいます。その仕事が終われば、福島の原発の所に行くようにと言われているとのことです。さもなければ解雇になるそうです。(会社も被災、再興の見通しが立たない由)また、給与の60%を「休業保証金」として支払い、会社の商品(訳あり商品)を義援金という名目で販売させ、その益金をプラスαして社員に支払っている会社もあります(小鮒も協力している)。「津波保険」に加入していた会社は復興も可能でしょうが、未加入の会社はかなり厳しい状況です。

 多くの漁師さんは、海の瓦礫処理に従事しています。石巻から気仙沼まで行って瓦礫処理をしている人もいますし、近くの海で自家用車などを引き上げている漁師もいます。今、漁業権の問題で、宮城県(行政)と宮城県漁業協同組合(本所・石巻市)との間に意見の相違があり、もめていますが、漁師さんには、震災前から、跡継ぎ問題(漁師の後継者問題)等があり、漁業権の問題はかなり複雑で難しいものがあります。

 仕事のことについては、個人的には何も出来ませんが、個人でも出来ることはあります。小さなことですが、地元にお金を落とすということも復興支援の一助になるのではないでしょうか。震災後しばらくたってボランティアの人たちと地元のラーメン屋(らーめん専科 夢工房TAKE(たけ)、ネットで検索可)に行きました。おいしいと評判のお店です。そこのご主人は、お家が被災し避難所生活をしながら、昼間お店に来て(お店(借店舗)には水があがらなかった)、ラーメンを作っていました。お話を聞いて、そのことが分かったのですが、このようなラーメン屋さんに食べに行くのも、復興支援の一つにつながると思います。6月に食べに行ったときには、7月から家族でアパートに移れると言っていました。今日(7/9)行きましたら、無事アパートに入居されたとのことです。今日は焼肉定食、生姜焼定食を注文しました。これらもおすすめです。

 教会・幼稚園近くの「すうぷ屋」さん(和洋折衷料理、お弁当の配達もする、お店の中1m浸水、2階で生活していた)も7月から営業を再開しました。おいしいお店なので(小鮒家推薦、ネットで検索可)、利用してもらえるとありがたいです。「栄光幼稚園の園長から紹介してもらった」と言っても、とりたててサービスが良くなる訳ではありませんが、情報はいろいろ聞けるかも知れません。

 また、救援物資等を地元で購入することも地元にお金が落ちるので、少しは復興に役立つかも知れません。(特に、小さなお店での購入をお勧めする。大手のスーパーなどよりは少し高いかも知れませんが、弱者を支援する意味で大切に思います。勿論、悪い品物を買う必要は全くありません。)

 勿論、お金だけの問題ではありません。家を失い、家族を失い、職を失った人たち、彼らの心の痛み、悩み、苦しみを聴いてあげることも必要だと思います。聴いてあげることだけでも少しは心の傷がいやされるのではないでしょうか。ルーテル教会の「傾聴のボランティア」がしばらく当教会に宿泊していましたが、そのような働きも大切になってくると思います。石巻市が行っていた「東日本大震災対応心の相談緊急電話」は5月31日で終了。「こころのケア支援チーム」の活動などは今も継続されています。

 まだまだ長丁場です。多くの人たちが疲れ切っていますが、現実から目をそらすことは出来ません。復旧、復興に向けて何が出来るか、これからも祈りながら目を向けて行きたいと思っています。

5.最後に牧師家族の近況

 震災後4ヶ月近くが経ち、現在、教会・幼稚園も大部落ち着いて来ましたが、月曜日から金曜日までは幼稚園、土・日曜日は教会の仕事がありますので、休む暇はありません。そんな中で、葬儀が入ったり、見舞客があったり、支援のための電話があったり、また救援物資の依頼で物資を届けたりと忙しくしています。牧師夫人は、震災後2度倒れ、牧師も最近「虚脱感」を覚えています。“何もしたくない、する気がしない”病です。勿論、やらなければならないことが沢山あるので実際にはやっていますが、ミスも多く、時々「どうにでもなれ」といった、そんな心境にも襲われます。
 「リトリート」ということが言われますが、牧師家族にとっては、教会員の理解が得られないとなかなかかないません。多くの教会員が被災して大変なときに、「牧師にもリトリートが必要」なんて言い出せないのが現実です。
 今年の夏は夏期伝道神学生の受入を計画しています。(費用は神学校持ちで)また、説教応援をしてもよいという牧師もいます。6月19日の教会役員会で牧師一任ということで承認されましたので、うまく行けば、牧師の夏期休暇も少しは取れるかも知れません。ただ、夏休み中には、8/20(土)に石巻栄光教会・栄光幼稚園「夏祭り」が計画されています。関西のグループ(約30名)が数日前から当教会・幼稚園に宿泊し開催してくれる予定です。その他、ほかのボランティアの宿泊等も依頼されておりますから、牧師の夏期休暇が実際どうなるか、今のところよく分かりません。

 皆様にいつも覚えられていること感謝です。どうぞ皆様もお身体を大切に、神さまに喜ばれる歩みをなさってください。皆様方の上に、主の豊かな祝福が豊かにありますように、心よりお祈りしています。
              在  主
   
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