LA BELLE


 貴方の瞳に映るのは、誰?
 貴方の心に住む永劫の恋人。


 ねえ、ラベール。
 ううん、今日くらいは、ミシェーラって呼ぼうか?
 あははは…何だか、別の人みたいだね。


 その名で呼ばれるのは久しぶり。懐かしくて心地好くて、少しだけ淋しい名前。

 宴の後はふたりだけの時間。
 ちょっと照れたように笑う貴方は、今日見た中でいちばん素敵。
 ランプの灯りがゆらりと揺れて、貴方の手が私に触れた。


 どうしたの?どうして泣くの?


 世間では一目置かれる存在の貴方が、こんなにもうろたえてる。
 その姿を見て、彼女も可愛いと、思った?

 まっすぐに見つめてくる瞳が、痛いよ。
 彼女と私と、どっちが好き?なんて意地の悪い事、訊いてしまいそうになる。

 適わない。
 もういなくなってしまった彼女には、永遠に。
 でも私もいなくなったところで、貴方の悲しみが増えるだけよね?
 だから、私は。


 ずっと、傍にいるからね。


 私がそう言ったら、貴方はちょっと驚いて、でもとても嬉しそうな顔を見せてくれた。


 ねえ、ミシェーラ。
 僕達、幸せになろうね。


 信じてもいい?
 優しいだけの同情が、偽りの恋が、愛に変わる日を。

 それまでには私も
 彼女を想う気持ちごと、貴方のことが大好きよって
 胸を張って言えるようになるから。



(1999/07 WRITE)
(2007/03 RENEW)


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