ブッシュミルズ BUSHMILLS
 
 
   生産地  :アイルランド
   種 別  :シングル・モルト・アイリッシュ・ウィスキー
   評価ボトル:オフィシャル
   熟成年数 :10年
   購入価格 :4,500円前後
 
完成度はイマイチだが、ほのかな麦の香りが懐かしい
 アイリッシュ・ウィスキーはスコッチほど有名ではないが、歴史はスコッチよりもむしろ古い。なかでも、このブッシュミルズは、世界最古のウィスキーの蒸留所であることをうたっているディスティラリーの製品。一般的なスコッチ・ウィスキーの2回にたいし、アイリッシュ伝統の3回蒸留をおこなっている。シングルモルトの特徴である、はっきりした個性を持っている酒だ。
 口当たりはややきつく、そのあとで口中に残るやさしい麦の香りがとても印象的である。古谷三敏の酒マンガ、「BARレモンハート」では、飲むとかならず少年時代の思い出話をする酒、として紹介されているが、なるほど、焦がした麦の味というのは、子供のころの記憶をよびおこすものらしい。
 そういえば、ジャック・ヒギンズ「鷲は舞い降りた」に登場するIRAの闘士、リーアム・デヴリンも、このブッシュミルズを愛飲していた。彼のかたわらには、かならずこの酒のボトルがあったように記憶している。ときには平然と人を殺し、だまし合いや裏切りが日常になっている世界に身を置いていながら、やはり心のどこかに子供のままの部分を残して大人になったような男だった。デヴリンもまた、ブッシュミルズの少年時代を思い起こさせる味わいを愛したのだろうか?
 すこしクセが強いため、モルトを飲み慣れていない人にはおすすめできない。悪くいえばこなれていない味で、多少舌にざらつく感じがするのも気になった。好き嫌いが分かれる酒だろう。もっとも、僕個人としては、かなり気に入っているボトルだ。
 
 
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