ゼロエミッション研究構想は廃棄物ゼロの循環型産業システムを目指し着々とその歩を進めている。科学研究も進み、先進国、発展途上国で経済的メリットも兼ねた実践的なものへと熟しはじめている。現在、世界各地で20以上のプロジェクトが進められている。
このゼロエミッション研究構想は3年前、日本において草創期を迎えた。国連大学はこのプロジェクトを短期の間に効果的に浸透させた。国連大学の新しい学長はこのゼロエミッション研究構想を「今までに実行に移されたプロジェクトの中でも最も画期的なものの一つである」と評した。これは国連大学内での20年にも及ぶH.G.デソウザ教授の業績の集大成といえるだろう。
これらZERI概念を一般に実践可能な方法論へと実現することは成功した。この分野はさらなる吟味と発展とが必要である。この構想が具体化されていく中、研究者は世界各地のパイロットプロジェクト、商業計画のインプットから多くを学ぶことができるようになった。産業界の支援を受け東京大学の生産技術研究所はフィジーでの最初のゼロエミッションのパイロットユニットを指導している。鈴木教授が率いる東大の研究チームは1998年2月20〜25日に現地を訪れる予定である。ここではカーボン、ニトロゲン、酵素の循環モニターをしている。このデータを元にゼロエミッション概念の核である自然循環の綿密なモデルを造ることができる。
ナミビアでのゼロエミッションの最初の産業への適用は多方面からのさらなる研究を刺激した。スロヴァキア、ハンガリー、スウエーデン、オランダ等の学術機関の協力により新しい技術が開発された。ビール醸造、醤油、ヨーグルト生産の発酵過程における廃棄物から茸、ミミズを培養する方法である。この革新的な方法は今、この副産物から酵素を抽出、生産するまで発展した。付加価値の高い新製品の一例である。このようにZERIはまず最初に発展途上国に魅力的なシステムを構築した。(鶏の飼料となる安価な蛋白質の供給など)最新のバイオテクノロジーを使ったシステムは次第に先進工業国にも特別な関心を示されるものとなった。
ZERI財団の創設により、欧米において、新たな産業パラダイムのデザインをするというよりも平和維持活動や貧困の軽減対策などと連想されがちであった国連の機関が、関心をもたれるようになった。アメリカのエネルギー省はZERI財団に米国のエネルギー分野でのゼロエミッション構想の適用に関しての学習コースを依頼する契約を結んだ。ゼロエミッションの方法論は軍事施設を民間施設に転用する際にも適用できる。米エネルギー省はこの概念を沖縄の米軍施設にも適用することに興味を示している。これは沖縄の大田知事の関心とも共通するものである。
ドイツでは、西暦2000年の世界万国博覧会(EXPO2000)の準備委員会が21世紀の核となる概念の一つとしてこのゼロエミッションのコンセプトを発表することを決定した。ZERI財団は独自のパビリオンを設け、2000年の6月から10月にかけて会場を訪れると予想される6千万人に、ゼロエミッション概念の導入で成功したプロジェクトを紹介する。このパヴィリオンは建築材料としてリサイクルのセメント、自然繊維のセメント板(秩父小野田セメント)竹(コロンビアのコーヒー生産者からの)、再生銅(南アフリカ)を使用したユニークなものとなる。屋根は土とガラスで覆われる。竹を使った建築のデザインで世界的に知られるシモン・ヴェレス氏が設計を担当することになっている。
この2000年のEXPOへの参画はZERI財団にとっての大きな挑戦であり、ゼロ・エミッション構想を広く人々に普及させるには絶好の機会となるだろう。財団は10個の完全な実証例を展示する予定でいる。EXPO2000年選考委員会はナミビアのビール工場、フィジーのパイロットユニット、コロンビアの再植林計画、ヴィクトリア湖の水ヒヤシンス計画を承認した。今後2年の間に日本、スウェーデン、インドネシア、メキシコ、アメリカ合衆国、ブラジルでの計画がこのリストに加わることが予定されている。ZERI財団は計画の実施をその活動の中心に据えている。現場での完全な結果を得ることが、それを他の場所でも同じく適用可能なものとし、また、新たなインスピレーションや模倣の基礎となる。そのためにも、子細な記録がなされていなければならない。
方向性を持った実施には同じ方向性をもった教育と、高度な学識が必要となってくる。ゼロ・エミッション研究構想が国連大学で温められている間に最初の20時間の訓練コースが開発された。このコースはすべての大陸で実施された。この学習コースはさらに専門化され、広域にわたるようになり、現在、この3年間にZERIが培ったノウハウを包含している。ZERI の完了コースは500時間となり統合バイオシステムのマスターコースの核をなすものである。このMIBSは1999年の1月よりメキシコとコロンビアの大学で始まる。このコースは酵素学、好気性細菌鉱物学、消化器官の構造デザイン、畜産学、植抽出、菌類学、土木工学、ミミズの生産など多岐にわたる履修項目をもち、体系的に徹底的に学習できるようになっている。
しかし、この徹底的な履修コースと同じく重要なのは、プロフェッショナル・トレーニング・プログラムの設計とその適用だろう。欧米の企業はこの情報共有型のアプローチに特に興味を持っている。結局のところゼロエミッションとはキャッシュフローの劇的な改善をみせる隠れた財産を見つけだすことにあるのである。生産性の高いゼロ・エミッション製造工程を可能にする産業の再構築化には財務の意思決定者が不可欠である以上、経済界にこれらの洞察を提供する時期がきたのである。この研修セッションは1997年12月にロンドンで実施され、1998年1月にはサンフランシスコで開かれる予定である。また1998年の3月にはアメリカビール醸造協会の協力を得て、ビール醸造業者への一週間のトレーニングコースも予定されている。
下河辺篤教授が所長をしている東京海上火災研究所は日本の経済界にZERI概念を紹介するイヴェントを企画することに協力することを申し出た。この方法 でZERI 財団は異なった状況下でこのシステムがいかに働くかといった有益な洞察を現場での実践者に与えるためのノウハウの伝達を保証できる。
日本の産業はゼロエミッションのコンセプトへの興味を増加させている。荏原制作所や秩父小野田セメントといった有力な企業がパイオニア的な役割を果たしていることは世界的に知られている。アサヒビールの廃棄物ゼロ工場はこのコンせプトを広く喧伝している。しかし現実には廃棄物ゼロからはかなり遠いところにいるようである。実際にアサヒビールがこの目標を達成することを望む所である。もっともこのスローガンがこのように使われることは、日本の市場で大きな力を持つ有力企業が良質な製品と公害のない社会に人々が大きな魅力を持っていることを認識し始めたことをも意味する。
ゼロエミッション構想による再植林化計画の日本語版のビデオも広く興味を喚起した。(ビデオのコピーを希望する方はZERI財団まで連絡を)コロンビアのラス・カヴィオタスでのこの計画の拡充のための資金援助をいくつかの日本企業が検討している。コロンビア東部での一万一千ヘクタールもの再植林計画の成功はカーボンの分離抽出が新たな産業開発、生態系の復元と予防医学の適用と手と手を結んで進行できることを示した。
ゼロエミッション構想とは:同じあるいはより少ない物質へのインプットで、より収益をあげ、かつ無公害であるということに帰結されるだろう。
ZERI Foundation(ZERI財団) の連絡先は 日本:03-5351-8850
次のゼロエミッション世界会議は1998年9月19日から25日まで南アフリカのナミビア共和国で開かれることに決定された。