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「二銭銅貨」に始まる綺羅星の如き名短編群、『孤島の鬼』を筆頭にした胸躍る長編小説の数々、『幻影城』等の推理小説研究・評論……と、我が国推理文壇に隠れもない巨大な業績を遺した江戸川乱歩。だが、時局が第二次大戦へと突き進み、創作活動を休止せざるを得なくなると、乱歩は自分に関する新聞記事、書簡、生原稿、写真等を整理、手製のスクラップ帳に貼って手書きの解説を加え、図版を添えて、自らの足跡を記録するようになった。この克明な自分史の記録が「貼雑年譜」である。殊に戦前の分二冊は、乱歩研究に欠かす事のできない第一級の資料であるばかりでなく、現代史資料としても意義深い。乱歩直筆の添え書きも、二冊目までが懇切を極めている。これを可能な限り原本に近い形で復元できないものか――それが初めて「貼雑年譜」の原物を目にして以来の念願であった。しかし、製版、印刷、製本……いずれにしても様々な困難が待ち構えていた。頒価も高額なものにならざるを得なかった。特に手作業に近い製本作業を考えると、今回の試みが可能になったとしても、おそらくこれが最後の上梓であろうと予想される。それだけに、この復刻版製作には念入りな準備と最新の造本を心掛け、自信をもって愛好家の方々にお贈りしたいと考える所存である。 一九九二年九月 東京創元社 |




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