黒猫荘
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THE TELL-TALE HUT
オーナー:庵本譚
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151. 2005年03月05日 10時46分29秒
投稿:庵本譚
2月9日「プリーストリー氏の問題」アンソニー・バークリー・コックス(晶文社)
アントニー・バークリーがコックス名義で送る英国諧謔小説。
この本が日本語で読める事は快挙ですが、作者がアントニー・バークリーで
なければ、おそらく訳される事もなく、存在すら知られぬままに終わってしまう
作品だったのではないでしょうか?
一人の平凡な独身遊民を、架空の殺人劇に巻き込み、その心理の有り様を楽しむ
という犯罪マニアたちの底意地の悪い企み。陰謀者たちの茶番劇は、田舎警察の
闖入によって想わぬ展開を見せる。戸棚の巡査、捏造されるバルカンの皇太子、
空砲と実弾。手錠につながれた逃避行。じゃじゃ馬ならしのから騒ぎ、
取り違えの喜劇の果てに待つものは?
中盤までは、そこそこに面白く読めたのですが、さる良識人の「裏切り」以降は
今ひとつ。完璧な陰謀ゆえに自壊する、というプロットでも書けたと思うのですが、
ミステリ仕立てであってもミステリではない良識あるユーモア小説の限界だった
のでしょうか?「ジャンピング・ジェニィ」の毒が感じられない「ひなた水」の
ようなヌルイ読後感でした。
150. 2005年03月05日 10時40分58秒
投稿:庵本譚
2月8日「またまた二人で泥棒を」ホーナング(論創社)
ラッフルズの帰還から、二人してボーア戦争に身を投じるまでの年代記。
ラッフルズの帰還ぶりと、戦火の果ての友情に泪する作品集ですが、ミステリ
として興奮できるというよりは、二人の紳士ぶりに拍手を送るといったところ
でしょうか。二人のヘボぶりに磨きが掛かり、ウエストレイクの読者からすると、
余りののどかさに、投げ出したくなるのではないでしょうか。
それよりも、解説に、オットー・ペンズラーが熱狂的なラッフルズマニアで、
百種類を越えるラッフルズ本を所蔵している、とあったのに驚きました。
日本人にはついていけない魅力があるんでしょうねえ。うーん。
149. 2005年03月05日 10時34分33秒
投稿:庵本譚
2月7日「大統領の密使」小林信彦(角川文庫)再読
2月7日「大統領の晩餐」小林信彦(角川文庫)再読
ミステリ読みとしての修業はそれなりに積んできたので、初読時に気付か
なかったくすぐりを楽しめるかと思って一気に再読してみました。
結論からも申し上げますと、ミステリ部分についての新たな発見はありませんでした。
結局、このミステリマガジン連載作品の魅力の5割は、シチュエーション・
コメディやら、日活ヒーロー映画やら、求道小説やら、テレビ・コントのくすぐりに
あったのではなかろうかと小一時間。こりゃあ、この作品の真価が分かるには
まだ百年はかかりそうです。
並べて読むと「密使」の方にミステリ趣味が凝縮されており、鬼面警部と旦那
刑事が登場する「晩餐」の方が、ドタバタに徹している事が判りました。
たまには再読もいいものです。
148. 2005年03月05日 10時33分16秒
投稿:庵本譚
2月7日「酔いどれひとり街を行く」都筑道夫(桃源社)
都筑道夫が、カート・キャノン名義で「マンハント」に連載したパスティーシュ。
その後も、文庫化されておらず、若いファンにとっては(聖典に収録された「背中
の女」を除いては)幻の作品かもしません。単行本化に際してクォート・ギャロンに
改められていますが、まずは翻訳者ならではの堂々たる文体模写ぶり。作品の内容も
最後の一編に悪乗りで日本人を登場させた以外は、本当にマクベインが書いた
ような出来映え。今の日本で他にこれが出来るのは木村二郎ぐらいではないで
しょうか?いや、実は我々がホックの作品と思っている幾つかの短篇は実は
木村仁良の作品なのかもしれません。
[NAGAYA v3.13/N90201]