黒猫荘
(mobile版)

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カフェ「白梅軒」
オーナー:川口且真
(OPEN:1999年7月19日)
「白梅軒」へようこそ。
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4753. 2012年03月12日 00時20分44秒
投稿:かわぐち
3月10日
熱海へ。MOA美術館では開館30周年企画として、なんと岩佐又兵衛の絵巻物「山中常盤物語」「浄瑠璃物語」「堀江物語」じが順次全巻公開されるという。
いずれも全12巻、長さにして各約150メートルという長大なもの。
その第1弾として「山中常盤物語」を見てきた。
又兵衛絵巻の特徴は、なんといっても「過剰」であること。
どぎついまでに鮮やかな色彩。精緻な描写。それに対してカリカチュアライズしたような人物表情。そして残虐さ。
この「山中常盤」にはそれらの要素がすべて満遍なく溢れている。
牛若に切り殺された盗賊の死体が何シーンもそのまま描かれているのが、なんとも不思議な感じ。
カルパッチョの「聖ゲオルグ」の地面に散らばる死体を思ったのも私だけではあるまい。
個人的に衝撃であったのは、切り殺された盗賊の死体を村人が筵に包んでいる場面。
退治する活劇場面は描く画家はいても、こんなところまで描く者はちょっと思い当たらない。
行って本当によかった。以前の千葉市美術館の展覧会のときは一部だけで、とくにその残虐性の描写部分が見られなかったので。
3〜5月は月に一度は熱海に行くことになりそうだ。
その後は韮山に向かい、願成就院へ。ここには運慶の仏像が5点もある。
先週公開の浄楽寺と2週続けて見たかったところだが、先週は不慮の事故で断念。
駅から結構歩いたが、その甲斐のある出来の仏像でした。
三嶋大社参拝し、沼津で食事をして帰宅。
3月11日
くすのきの古本市へ。
購入は、橋爪紳也『化物屋敷』(中公新書)、『バスター・キートン自伝』(筑摩書房)。
いずれも買い逃して数年探していた本であったので満足。
読了本
ロザリー・コリー『パラドクシア・エピデミカ』(白水社)
レニエ『碧玉の杖』(国書刊行会・フランス世紀末文学叢書)
マルセル・シュオブ『黄金仮面の王』(国書刊行会・フランス世紀末文学叢書)
辻惟雄『岩佐又兵衛 浮世絵をつくった男の謎』(文春新書)
4752. 2012年03月04日 01時29分47秒
投稿:かわぐち
2月29日
仕事帰りに三菱一号館美術館「ルドンとその周辺 夢見る世紀末」へ。
岐阜県立美術館が改装工事中で、その所蔵品による展覧会だそうだ。
同館には行ったことがあるので、無理して行くこともないかなあと思ったのだが、これが行って本当によかった。
やはり常設の展示替えのたびに行けるのならまだしも、たかが一度行っただけではコレクションの真髄はわからない。
これだけの質のものが岐阜県にあるのかと、驚かされる。
ルドンの幻想作品がすばらしいのは、いまさら言うまでもないが、ムンク、クリンガー、モローなど、その他の画家もまたハイレベル。
とくに最近クリンガーが見たい!という思いに駆られていたので、渇を癒す心持ち。
東京駅復元は、かなり外観が見えるようになっている。ドーム下の銅が葺かれたばかりで、まだピカピカしているのが嬉しい。
読了本
ユイスマンス『腐爛の華』(国書刊行会・フランス世紀末文学叢書)
全身が腐るという業病に冒されながら、献身を尽くす聖女リドヴィナの生涯。
キリスト教的には感動的な物語なんだろうか。私にはマゾヒズムのにおいがしてならないんですけど・・・・・・。
ペラダン他『パルジファルの復活祭』(同)
短編集。雰囲気のある話が多数。ラシルドという女性作家が気になる。アルフォンス・アレはいいなあ。
読書の愉しみを味わえる本でした。
3月3日は神奈川県浄楽寺で運慶仏5体が一般公開される(10月19日と年2日のみ)。
以前から行くつもりで予定していたのに、昨日、雨で濡れた階段を滑り落ち、脚を打ってしまい断念。
つくづく運のない男よ。
4751. 2012年02月28日 00時43分16秒
投稿:かわぐち
2月26日
横浜まで出かけてみた。
目的はそごう美術館で開催中の「京都 細見美術館展 PART1 都の遊び・王朝の美」を観るためだ。
その前に大倉山で途中下車。前々から行きたいと思っていた大倉山記念館の見学。
実業家大倉邦彦(のちに東洋大学学長就任)により設立された「精神文化研究所」の建物として、昭和7年に建てられたもの。
ここの特徴は、古代ギリシア以前のクレタ・ミケーネ文明様式を取り入れたこと。
エントランスホールの天井付近にはライオンとワシの彫刻が並び、加味の言葉を聞く殿堂になっているそうだ。
そごう美術館へ。岩佐又兵衛、俵屋宗達、若冲、抱一、応挙なども出品されているが、多くは名もない作者による作品。
しかし、こうした無名のものにも日本の美というものはしっかりと表現されており、この国の美意識のレベルは高いことを認識させられる。
残念ながら、照明はなんとかならなかったのだろうか。
暗いし、ガラスの外側からあたった光は反射して映り込みが激しい。
焼けや退色の問題もあるのは充分察しがつくが、いまならLED照明でなんとかケース内で光を当てるようにしてもらいたかった。
同展は20日まで。5月にはPART2があり、こちらは「琳派と若冲」中心になるようだ。
せっかく横浜まできたのだからと、これまた前から行きたかった「宮川香山 眞葛ミュージアム」へ。
明治時代、海外の万博で絶賛された眞葛焼。その租は宮川香山といい、最近、つとに評価が上がっている。
昨年も「幕末・明治の超絶技巧」展や「華麗なる日本の輸出工芸」展でも紹介されていた。
ここでは初代香山の作を中心に40点くらい(?)を観ることができる。
あまり知られていないみたいだが、横浜のおすすめ。
時間があるので、さらに足を伸ばし「文身資料館」へ。
ここは実際のタトゥーのお店なのだが、刺青に関する資料博物館もあるというので、後学のためにもと足を運んでみた。
だが・・・・・・着くなり、私には敷居が高そうな入り口。下には「開館中・OPEN」とネオン(電光板)も出ている。
ビルの2階に上り、ドアに手をかけたのだが・・・・・・鍵が掛かっている!
もう一度外に出て確かめた。確かに看板も出ているし、電光板も点いている。
再び階段を上がったが、やはり鍵。ノックもしてみたが、反応はなし。
しばらく待って諦めた。せっかくここまで来たのに!という思いはもちろんあったのだが、反面、ちょっとほっとしたのも事実。
(小心者なんで。でもそれくらい「妖しい」雰囲気でした)
読了本は、オクター・ミルボー『責苦の庭』(国書刊行会・フランス世紀末文学叢書)
『デカダンスの想像力』に刺激され、この叢書をすべて読むことにした。
といっても刊行時、半数くらいは読んだはずなのだが、いかんせん、どういう内容だったか、まるで記憶にないのだ。
本書は牧神社版を含めると再々読。ちなみに牧神社版には第1部がなく、第2部のみなので、これから読む場合はこちらをおすすめ。
いや〜、こんな刺激的でおもしろい本だったのか。
第1部を牧神社版でカットした理由もうなずける。第2部が圧倒的におもしろいのだ。
舞台は中国である。主人公を責苦の快楽(といっても観るだけ)に誘うクララ。
このクララが魅力的。『ドリアン・グレイ』のヘンリー卿、『ファウスト』のメフィストのように、甘い毒で破滅の道へと導く。
こうした願望は誰にでもあるのだろうか。クララという名前が、『家畜人ヤプー』のヒロインと同じなのは偶然なんだろうが、
イースで考え方のすっかり変わったクララが時空を超えて登場してきたかのような気さえしてしまった。
頭に浮かぶイメージは、アルフレッド・クービンの版画である。
蛇足だが、2008−09年にニューヨークで開かれたALFRED KUBIN DRAWINGS 1897-1909図録はかなりおすすめ。
4750. 2012年02月25日 00時18分07秒
投稿:かわぐち
スコット・ウェスターフェルド『リヴァイアサン』(新ハヤカワSFシリーズ)読了。
冒険スチームパンク小説3部作の1作目。
「スチームパンク小説」って読むのは初めて。アート分野ではつとに気になっており、
VanderMeer&ChambersのSteampunk Bibleも買おう買おうと思ってはいるのだが、いまだアマゾンのカートに入れたまま。
架空歴史ものと機械憧憬を組み合わせたSFファンタジー、というのが通説なんだろうが、読んでみると、宮崎アニメの「ナウシカ」「ラピュタ」を思わせる。
ジャパニメーションを思わせるストーリー、キャラクターのような気がしてならないんだけど、こういうものなのか。
予想より面白く、これは続編も楽しみ。
もしも本書が「新ハヤカワSFシリーズ」なんて体裁でなく、アニメ絵カバーの文庫本で出ていたら、読むことはまずなかったはず。
そういう意味で、本書を読むことができたのは幸運であった。
蛇足 前回言い忘れたこと。
『デカダンスの想像力』で、これまで意識していなかった幻想作家としてのモーパッサンに関心を抱いた。
モーパッサンの幻想文学といえば「手」「オルラ」が定番だが、他の作品もあたってみたい。
『ジョン・ハンター』は漫画も出ていることを知る。
私は読んでいる間ずっと、ハンターのイメージは「フリンジ」のウォルター博士の顔でした。
[NAGAYA v3.13/N90201]