黒猫荘
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カフェ「白梅軒」
オーナー:川口且真

(OPEN:1999年7月19日)

「白梅軒」へようこそ。

  45〜48件 
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4765. 2012年07月01日 22時22分28秒  投稿:かわぐち 
読了本
深谷大『岩佐又兵衛風絵巻群と古浄瑠璃』(ぺりかん社)
ウィンフリート・フロイント『冒険のバロック 発見の時代の文化』(法政大学出版局)
イアン・マクドナルド『サイバラバード・デイズ』(ハヤカワ・新・SFシリーズ)
スコット・ウエスターフィールド『ベヒモス』(ハヤカワ・新・SFシリーズ)
木下直之『股間若衆』(新潮社)
漆原直行『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』(マイナビ新書)

本を読んでいると、だいたい4つのタイプに別れている気がする。
1 個人的な関心分野で読んでいる研究書、古典の類。
この類は他人におすすめすることもまずなく、要は自分さえ読んでおけばそれでいいので、長々と感想を書く必要はない。
今回でいえば、冒頭の2冊が典型。

2 ミステリ、SFなど、いわゆるエンターテインメント系の本。最近はそれほど読んでいるわけでもなく、
私なんかより知識もはるかに上で、文章力にも長けている読み巧者がいくらでもいるので、無理に私が感想を書くこともないかなと考えている。

3 洋書、さらに知的好奇心を掻き立てる入門書の類。この分野は私自身がネットで情報を拾うにも紹介が少なく、
そのため少しでもあるといいなと感じている。実際、当店閉店中も気になる本を調べてみると、なんのことはない、
自分が数年前に書いた文が見つかるだけということが何度もあったので、
ないよりはマシという気持ちで、あえて紹介を心がける。
といっても、想定している読者は、20年前の自分自身。自分が若い頃にこうした本の紹介が欲しかったというものが多くなっている。

4 エンターテインメント小説系の読書だけではなかなかアンテナに引っかかってこない良書・奇書の類。
掲示板をやっていて、この類の紹介ができることは、一番嬉しい醍醐味である。
なかなかそんな本には出会うことは、私自身もないけど。

で、ながながと、いまさらのようなことを書いたのは、後の2冊、『股間若衆』と『ビジネス書を〜』が、この4の類にあたると感じたからだ。

『股間若衆』 これが『古今和歌集』のもじりであることは、容易に想像いただけたと思う。「ネーミング大賞」があるならば、まず筆頭として挙げたい。
「股間若衆」「新股間若衆」と章立てが続くが、つづいての「股間漏洩集」にはヤラレタ!
で、内容はというと、一見ふざけているように見えるが、男性ヌードの図像学の研究として、実に奥が深い。
駅前にある男性像を皮切りに、ヌード絵画、写真、さらにはホモ雑誌のグラビアへと対象は広がる。

『ビジネス書を〜』(長い!これもよくあるビジネス書の書名を皮肉っているんだろうけど) 
当店のお客の中にビジネス書読者なんているんだろうか。私自身のことをいえば、年間3冊くらいは〈読む〉ことがある。
ただし、それはあくまでも校正という仕事でだ。
当然、仕事上、同じ本を2度、3度、それなりに〈熟読〉しているわけだが、たいがいどっと疲れてしまう。
「成功」と「自己啓発」をこれでもかと連呼し、たいがいは著者の異常なまでの自己アピールが顔をのぞかせる。
著者によれば、この手の本が登場しだしたのは2000年代に入ってからだとか。
それまでは(好悪はあろうが)成功した企業経営者、学識者あたりが常連執筆者だったのが、21世紀に入ると実績がはっきりしない、
アジテーション力のある厚顔な著者が跋扈しだしたらしい(特に名前は挙げませんが)。
ビジネス書の大雑把な歴史と、それに騙されないためのコツを本書は要点よくまとめあげている。
もし、当店のお客様の中にも、ビジネス書を読む必要のあるかたがいらっしゃったら、ぜひその前に本書を一読いただきたい。
私自身が校正をしていて「こいつ、こんなことも知らないで本を書いているのか」「え〜、こんな奴に騙されて本を買っちゃう人がいるのか」
などと思うことが多いので、そんな著者に騙されないためにも。

購入本は
Carel Willink: zelfportret en architectuur
2000年ロッテルダムのボイスマンス・フォン・ベーニンゲン美術館で開かれた展覧会の図録。
オランダ魔術的リアリズムの代表的画家カレル・ウィリンクの作品がカラーで並ぶ。
以前、イギリス・アマゾンで取扱いがあったので注文したところ「品切れ・キャンセル」。
今回、英米アマゾンにもない本が、なんと日本国内のアマゾン・マーケットプレイスで買えました。

西桂『日本の庭園文化』(学芸出版社)
庭園の歴史を通覧する本。教科書みたいなつくりで、リーダブルとはいえないが、飛鳥時代以前からの庭園史を紹介。
資料性も高く、関心があれば手元に置いておきたい。
実は、私自身、図書館で借りていま読んでいるところであるが、これは欲しいと思い、紀伊国屋書店に注文。
アマゾンのほうは品切れであった。

4764. 2012年07月01日 22時21分38秒  投稿:かわぐち 
忙しくて仕事に追われていると、(後からまとめて)日記を書こうにも、もはや忘却の彼方ということが多々ある。

6月22日
仕事が思いのほか早く終わったので、明治大学図書館「城市郎文庫展 出版検閲と発禁本」へ。
入り口前の小さな一角ではあるが、思いのほか出品点数は多い。
(出展リストを見ると228点。そんなにあった?)
冊子はカラー16頁。「一人1点にしてください」とあったので、他人の分を持ってくるのは控えた。
決してエロに限らない、出版文化史の充実した資料。

6月24日
GW以来、ようやくの連休確保。土曜はひたすらTVと昼寝。
日曜になり、疲れも取れてきたので、哲学堂公園に出かけてみた。
井上円了が精神修養の場としてつくった、ちょっと不思議な公園。
「哲理門」「宇宙館」など、名称からも伺えよう。
学生時代、サークルで散策して以来なので、約25年ぶりの訪問となる。
案内ビデオもあり、建物内部もほぼ開放。25年前に比べ、中野区が憩いの場として積極的にアピールしているようだ。
以前は行かなかった、近くの蓮華寺の円了の墓にも参る。
「井」の上に○(円)が乗った本人発案のデザイン(意味はわかりますね)。

6月30日
またも土曜出勤。帰りに三菱一号館美術館「バーン・ジョーンズ展」鑑賞。
これまで何度でも開かれた気がしていたが、驚いたことに単独の展覧会としては本邦初だという。
言われてみると、確かに「バーン・ジョーンズと前ラファエロ派展」のように、何か付いていた気もする。
それなりに美しく、すばらしい作品が並ぶのだが、先のエルンスト展のような感動が生まれてこない。
これは、展覧会のせいではなく、私の感性が荒んで、想像していたところから飛躍することがなかったせいであろう
4763. 2012年06月18日 23時26分13秒  投稿:かわぐち 
妙に仕事が忙しくなってしまい、何もできない状態が続く。

6月5日
仕事Aの後、合間を縫って東京堂へ。いわずと知れた杉本一文原画展だ。
予想以上の点数に満足。最近でもこのような収集欲をそそるようなカバーの本があるのだろうか。
画集がないのが本当に残念。文庫カバーなんだから、ポストカードセット100枚1万円なんていいと思うんだけどなあ。
もっとじっくり眺めていたいのだが、仕事Bへ向かう。

6月6日
仕事帰りに夜間開館の東京国立博物館へ。会期もあとわずかになった「ボストン美術館展」は、さすがに混んでいるようだ。
「人が多すぎる」と不平をこぼす人多し。
私は恒例の常設展鑑賞。1〜2月に一度、こうして常設展に通いだして2年以上3年近くになると思うが、いまだに見ていなかった作品が出てくるんだからすごいよな。
1階仏像コーナーには十一面観音が3体並ぶ。上村松園「焔」がすごい!

6月10日
単行本の仕事をむりやり土曜に終わらせ、千葉へ。
千葉市立美術館「渓斎英泉展」観賞。
期待していたより状態がいまひとつの作品が多い気もしたが、文句はいえないだろう。
英泉をまとめて観ることのできる貴重な機会なのだから。
気になったのは、歌麿や清長と比べると、着物のデザインが垢抜けていないと感じられたこと。
まさか英泉のモデルだけが趣味が悪いとも思えないので、あの服装というのは、画家が作り出したデザインなのだろうか。
中期〜後期にかけては、着物も垢抜けてきたように感じる。
藍刷の魅力に目を見開かれる。
同時開催の「モダンガール 万華鏡」では、これまで意識にも止めていなかった山本昇雲、小早川清が俄然気になりだした。
「英泉展」の図録を購入。300頁超の労作。千葉市立美術館の図録は買い逃すと後悔することになるのは、これまででいやというほど思い知らされた。
「鈴木春信」なんて、いまだに探しているが、8000円以下では見たことがない。
今回も入手困難になるのはまず確実だと思う。

その後は今週にいたるまで、休みなく働いております。ああ、録画が溜まる一方だ・・・・・・。

読了本
谷崎潤一郎『乱菊物語』(中公文庫)
サイモン・ウィルソン『イギリス美術史』(岩崎美術社)
メアリー・ボイス『ゾロアスター教』(講談社学術文庫)
畑井弘『物部氏の伝承』(講談社学術文庫)
『怪奇・幻想・綺想文学集 種村季弘翻訳集成』(国書刊行会)
サミュエル・リチャードソン『パミラ、あるいは淑徳の報い』(研究社・英国十八世紀文学叢書1)
ウォルポール/バーク『オトラント城/崇高と美の起源』(研究社・英国十八世紀文学叢書4)

谷崎は手持ちの本が乱丁で、中断され何年も未読のままであったもの(ちなみに未完なので、いずれにせよ結末まで読むことはできないのだけど)。
乱丁本なんて、交換するか処分してしまえばいいとわかっているものの、なんとなく「エラー本」というのは探したくとも見つからないものという惜しむ気持ちがあって・・・(切手収集の悪影響だと思うが)。
『パミラ』は読むのがつらかった! 古典といえばなんだろうが、英文学研究者でもない限り、これを楽しく読むなんて人がいるのかなあ?
パロディも多々書かれたようだが、なんといっても読みながら頭の中で想起されたのはサド『美徳の不幸』。
物語は、清い心のパミラが、貞操を狙う若主人に逆らい、心打たれた主人は反省してパミラと結婚する・・・という話。まさかこのまま終わるんじゃないよなというところまできて、残りはまだ300頁以上もある。
で、結局その「まさか」でした。おいおい。
ウォルポールは訳者解説が、その所持の城「ストロベリーヒル」のことを延々と紹介、ウォルポールの代表作は小説ではなく、その城の設計とそこでの生活とまで。
そこまで言われると行ってみたくなるじゃないか。先に購入した Strawberry Hill & Horace Walpole で火をつけられているだけに。
訳者は、この2010年に一般公開された邸宅を紹介するためにもこのように「偏った」解説にしたと告白している。
バークは今読んでも示唆に富む、本当に名著だと思う。

4762. 2012年06月03日 23時15分25秒  投稿:かわぐち 
読了本
『益田勝実の仕事4 秘儀の島』(ちくま学芸文庫)
『益田勝実の仕事5 国語教育論集成』(ちくま学芸文庫)
ピエール・ルイス『紅殻絵』(奢灞都館)
E・R・バローズ『火星のプリンセス(合本版)』(創元SF文庫)

なんと「火星シリーズ」読んでしまいました。初読からは30年以上、1作目だけは20年位前に再読したけど、それでも・・・。
先にキャプテン・フューチャー読み返したときに、意外なほど面白くて喜んでしまったのですが、バローズはさすがにそこまでは楽しめませんでした。
とにかくきれいさっぱり忘れていたことに驚き。まあ映画『ジョン・カーター』を観る前にも読んでおいたほうがいいかなと思い。
もともとバローズがそれほど好きだったのかと考えると、さーて、どうだったか。
実際に読んで面白かったというよりも、大学生のころ、某サークルで知り合った方が大のバローズファンで、その方の影響が強かったのかも。
いまでも深夜の喫茶店でだべっていたとき、バローズの魅力を目を輝かせて話す彼の姿が思い出される。
彼を夢中にさせた魅力を知りたくて、自分は追いかけていたような気が、いまになるとしてくる。
思えば、あれだけ夢中に魅力を語れる作家を自分は持っているのだろうか、なんて考えてしまいました(今回、自省が多いなあ)。

バローズの本といえば、日本では武部本一郎の絵とセットのようなもの。
じゃあ、アメリカではどんな絵がつけられていたのか。昔なら知りたくてもわからなかったのだが、いまなら資料はある。
そんな感じで、SF美術の本を取り出して眺めていたのですが、いつしか「やっぱりパウルとボク、そしてフィンレイ。この3人が飛びぬけていいよなぁ」なんて横道に。
フィンレイはもとより、パウルも先に紹介した本が出ている。ハネス・ボクも画集は出ているんだけど、そういえば持ってないや。
そう思うと、さっそくネットに向かい・・・以前買おうとしたことがあったのだけど、内容もわからず、頁も少ないのにそれなりの値がするとあって買っていなかった画集を注文。
するとAmazonで発見したのは、なんと、Hannes Bok: A Life in Illustration なる本が9月に出るではないか!
456ページもあるというのだから、これまでとは比べ物にならない厚さだ。値段は(定価で)150ドルもするけど。
こちらも思い切って注文!

[NAGAYA v3.13/N90201]