黒猫荘
(mobile版)

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カフェ「白梅軒」
オーナー:川口且真

(OPEN:1999年7月19日)

「白梅軒」へようこそ。

  33〜36件 
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4778. 2013年09月19日 20時12分38秒  投稿:かわぐち 
マーガレット・A・マレー『魔女の神』(人文書院)読了。
1931年初版刊行(翻訳は52年新版に基づく)。魔女学の古典。
ノーマン・コーンやギンズブルクに手厳しい批判を受けたマレーではあるが、やはり「古典」として目を通しておいたほうがよい。
さて、本書の感想としては、魔女というのがどの文明にも見られるシャーマンでしかないということ。「キリスト教に改宗しなかった者」なのだ。
魔女の悪魔との関係、サバト、妖術の類の話はほとんどがキリスト教の審問で〈明らか〉にされたものであることを認識しておきたい。
その手法は、民俗学的調査を踏まえ、その論にフレイザー「王権論」に負うところが多い。
先に「読んだほうがいい」と言ったのは、あくまである程度見極めようとする場合。
「魔女」研究については、上田安敏『魔女とキリスト教』(人文書院、のち講談社学術文庫)をまず第一に推したい。
4777. 2013年09月18日 19時54分17秒  投稿:かわぐち 
W・ハース『ベル・エポック』(岩波書店)読了。
ベル・エポックは大方では1900年から第一次世界大戦までの時期をいう。
本書はその時期、ヨーロッパ(といっても英独仏の3国だけだが)の綺羅星のように輝いた文化人たちのエピソードが綴られる星座図のようだ。
私が関心深く読んだのは、この時期に貴族階級でない女性の活躍が目立ち始めたこと。ルー・サロメ、コジマ、サラ・ベルナール等々、名前は知っていても詳しくは知らなかった女性が出てきたことが新しい時代を象徴するようだ。
4章までは割りと知っている人たちの「おさらい」のような感じで読み進めていたのだが、やはり著者はベルリンで活動していた文芸誌編集者であって、5章以下のドイツに対する記述が一番力が入っており、またこちらも一番知らなかったことなので新知がいろいろあった。
ベル・エポックというとセットで登場する感がある万国博覧会であるが、本書にはその記述が全くないのもかえって新鮮味を覚えたことを付言しておこう。
4776. 2013年09月11日 20時44分14秒  投稿:かわぐち 
店主でございます。2日続けて出てみました。

>よしださま
あら、またもやすごい早いお越しで痛み入ります。新宿には中央かどうかはわかりませんが、区としては所蔵があります。文庫にもなっているみたい。

トム・スタンデージ『謎のチェス指し人形「ターク」』(NTT出版)読了。
ポオ『メルツェルの将棋指し』でミステリファンにも御馴染みの、自分で手を考えてチェスを指す自動人形という触れ込みで欧米で人気を集めた「ターク(トルコ人)」の歴史。
これまで漠然としか知らなかった自動人形の誕生からその死まで、関連エピソードも交えて紹介する本書は、私にとってはありがたい存在だ。
2002年に原書が刊行され、05年にamazonのカートに入れたままにしていた本書だが、知らない間2011年に翻訳が出ていた。

タークを造ったのは、ケンペレンというハンガリー人。ハンガリー=オーストリア帝国の女帝マリア・テレジアの命で18世紀に造られた。これを見てもわかるように、このケンペレン、宮廷付きの文官で、インチキ人形でひと山たくらむ山師などではなかった。
乞われて仕方なくタークを披露はしたものの、晩年は見せることもなく物置に仕舞われたままであったという。
ケンペレンの死後、これを入手したのがメルツェルという興行師。彼はタークを従えて、欧州、そして米国へ。詳しいことはお読みになっていただくとして、ポオにその秘密を暴かれたわけだが、覚えておきたいのは、その正体を言い出したのはポオだけでもなく、またメルツェルが認めたわけでもなく、あくまでも推測に終わったということ。
ともかくメルツェルはほぼ破産に近い形で船上で死を迎え、タークはその後オークションで売られたあと、1854年7月5日、フィラデルフィアの火事でその生命を終えた。

前々から不思議に思っていたことは、タークの〈中の人〉のことだ。タークは相当強く、名人と呼ばれる人たちにもかなりの勝利を収めている。マリア=テレジアはもちろん、ナポレオン、フリードリヒなどとも対戦している。
しかし、中の人は拝謁も叶わず、どんなに名人に打ち勝ったところで名乗りを上げるわけにもいかず、人形の中で息を殺して腕と頭脳を振るっていたのだ。彼は〈王様の耳の秘密〉をついに吐露することもなかった。
本書11章では、その中の人の推定も描かれているのだが、これだけ秘密を死守できたのだから、ケンペレン時代に1人、メルツェルで3人くらいだろうと思っていた。しかし、著者によればこちらの想像以上に多くの人間が中に入っていたようだ。


4775. 2013年09月11日 12時31分16秒  投稿:よしだ まさし 
ちょうど11ヶ月ぶりの書き込みですね。
ご紹介いただいた本はたいそう興味深いので、機会があれば読んでみようと思います。はたして、新宿の図書館にあるかなあ?

[NAGAYA v3.13/N90201]