黒猫荘
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幽霊だし。
オーナー:soka

 <最近の読了本>
 一週間に文庫本一冊程度という遅いペースの読了リスト。
 漫画は小説の三倍は読むので入っていません。
 書名をクリックすると、アマゾンかセブンアンドワイの紹介ページに飛びます飛びます。日本を印度に、しーてしまえ。


  29〜32件 
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68. 2005年10月29日 16時27分17秒  投稿:soka 
 久々の読了本。

黒後家蜘蛛の会 5」(アイザック・アシモフ)

 毎月一回、7人のメンバがゲスト一人を招いて晩餐会を開く<黒後家蜘蛛の会>。ゲストが持ち込む謎に対し、各々が推理を疲労するが、最後に真実を掴むのは決まって給仕のヘンリーなのでした、という短編集。
 一編一編が短いので読みやすかった。なんでも単行本未収録の「黒後家蜘蛛とバットマン」という短編があるとか。創元さんには是非訳して頂きたいです。

「同音異議」
 途切れ途切れに聴こえた言葉から、遺言を推理する話。タイトル通り、英語の同音異義語がテーマ。訳し難かったでしょうね。

「目の付けどころ」
 「わたしはある極めて特異な元素の名前を思い浮かべているが、それが何だかきみはわかるか?」という化学教授の謎賭けに悩む学生がゲスト。自力で解くには化学より英語の知識が少し必要かも。

「幸運のお守り」
 ホテルの広間でのコイン消失。コナン君に出てきそうなトリックでした。

「三重の悪魔」
 貧乏な新聞配達の青年が、仲良くしていた裕福な家の老人に、「書斎の本で、好きなものを一冊贈る」という遺言をもらう。蔵書の中に一冊、とても値打ちの本があることを聞かされていた青年は、老人が遺した暗号「トリプル・デヴル」から、その一冊を探り当てる。自力で解くにはイギリス文学の知識が必要かも。

「水上の夕映え」
 手紙の文面から差出人の住所を当てる話。この解決は結構凄い。そうか、アメリカなら尚更○○もんなぁ……。

「待てど暮らせど」
 人間消失もの。アシモフの実話だそうです。

「ひったくり」
 バッグをひったくられた翌日、バッグの中身だけが玄関の前に返されていた。現金などもそのまま。盗まれたのはバッグだけ。犯人の目的とは? これもアシモフの知人に実際起こった事件だそうですが、こちらは作品と違って真相は解からずじまいだったとか。

「静かな場所」
 自分を「ダーク・ホース」と呼ばせる男の本名を当てる話。自力で解くには、アメリカの歴史の知識が少々必要。

「四葉のクローバー」
 テロリストに殺害された人物が描いた四葉のクローバーは、何を意味するのか。謎解きはちょっと強引だと思いました。

「封筒」
 受け取った手紙をゴミ箱に捨て、封筒だけを大事そうにポケットに仕舞うスパイの珍行動。後書きにありますけど、「水上の夕映え」とネタが少し被ってます。

「アリバイ」
 アリバイ崩しもの。自力で解くには、バーミューダの歴史の知識が少々必要。

「秘伝」
 一度だけ紙に書いて、すぐに破ってしまったメモの内容が、密室の中で盗まれる謎。今回はヘンリーの推理より、トランブルの推理の方が凄いと思いました。

【グッと来た文】
あなたは何をもってご自身の存在を正当となさいますか?
67. 2005年04月02日 20時54分47秒  投稿:soka 

DVD付き限定版 キノの旅−the Beautiful World− 『旅人の話』−You−」(時雨沢恵一/黒星紅白)

 小説と画集とDVDがひとつになったステキな本。それぞれの感想をちょこちょこっと書きます。

 小説
・始まり方が「優しい国」や「大人の国」を思い出させるお話。どうして旅をしているのか、どうやったら旅人になれるのか――ある国で知り合った子供に、キノはそう問われます。キノの答えが深い。

 画集
・黒星紅白さんのウルトラビューチホゥなイラストが四十枚くらい収録されています。体操着のキノ、スクール水着のキノなど珍しいものもあって良い感じ。一番気に入ったのは、七十四ページの十七歳くらいのキノ。他のイラストでは少年っぽかったキノが、かなりの美人さんになってます。

 DVD
・七巻に収録されている「何かをするために ―life goes on.―」がアニメ化されたもの。歳をとった師匠ってこんな感じなんだー。原作になかったコインのエピソードも、無理なく効果的に入っていました。

【グッと来た文】
 一つではない。
 方法はいくつもある。
 ”旅人になるための正しい方法”などない。
 だが、自分が進むことのできる方法が――”決してない”なんてことはない。


66. 2005年03月20日 22時44分11秒  投稿:soka 

六の宮の姫君」(北村薫)

 大学四年の<私>は卒論である芥川龍之介を調べる内、彼の著作「六の宮の姫君」について、彼自身が「あれは玉突きだね。……いや、というよりはキャッチボールだ」という謎の言葉を残していた事を知る。でもこの台詞って史実なんでしょうか? まぁとにかく、その言葉の意味を<私>が調べていくんですが、引用する本の量と、読み込む深さがとんでもないのです。上質な文学ミステリでした。ああ、芥川龍之介と菊池寛が読みたくなってきました。

【グッと来た文】
 作者が説明という引き算を重ねていって、後に何も残らないような舞台なら、あるいは早々に、もう引き算すら出来なくなるような舞台なら、そこに当てる照明は光熱費の無駄遣いだろう。

 思いを、そう表に出せば、くすぐったく羞ずかしい。嘘にさえなりそうだ。だからそれは、実は、言葉に出来ないものなのだ。
 それは一瞬に私を捉えた、大きな感情の波なのだ。


 今回は二つ。
65. 2005年03月16日 23時48分28秒  投稿:soka 

九マイルは遠すぎる」(ハリイ・ケメルマン)

「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない。ましてや雨の中となるとなおさらだ」
 主人公の『わたし』がふと耳にしたこの台詞。この一言から思い浮かぶ仮説を、友人のニッキィ・ウェルト教授が重ねていく内、その背後には犯罪の影が――(「九マイルは遠すぎる」)など、探偵が現場をほとんど見ずに推理していく、アームチェア・ディテクティブと呼ばれるジャンルの短編集。でも表題作より、「おしゃべり湯沸かし」の方がそれっぽい感じがします。向かいの部屋から湯を沸かす音が聞こえた、というただそれだけの事実から推理していくのです。最後の「梯子の上の男」も良かった。
 私が注文してすぐセブンアンドワイでは品切れになったみたいです。

【グッと来た文】
 作家はしばしば、一篇の物語を書きあげるのに、どのくらいかかるかと問われることがあるものである。ここにそのひとつの答がある。それは一日で済むかもしれないし、十四年かかるかもしれない、どちらと見るかはひとそれぞれの見かたによる。

 解説でも引用されていた「序文」から。


[NAGAYA v3.13/N90201]