黒猫荘
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MAY茶房「ミステリ談話室」
オーナー:MAY

本に関する談話室です。

  229〜232件 
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1035. 2002年03月03日 17時01分01秒  投稿:SAMANA 
16号室SAMANAです〜。

 『ターン』 北村薫氏 読了

  世間では「時」三部作と呼ばれてるらしいシリーズの二作目
  であります。
  優しい気持ちになれる素敵なファンタジィだと思うのですが、
  それゆえに「不鮮明な形」の解釈が残念です・・・(苦笑)。

  私、北村作品でみられるこんなセンス・感覚が好きなんです。
  ・P.177とP.178のつなげ方
  ・P.232の10〜15行目にあるシーン
  ・P.338の7〜10行目にあるシーン
   ※全て新潮文庫H12.7.1発行初版によります
  特にP.232のシーン。普通こういうシーンは男性作家は思いつ
  けないと思うんですが・・・(笑)。
  すんごく上手だなぁ〜と思いました。

  最初に書いた「不鮮明な形」解釈については、「作品世界」を
  重視するならば、とるにたらないささいな問題として、取り上
  げないほうが良いと考えられるかもしれませんが、これって非
  常に大事な問題であって、取り上げないほうが実はおかしいん
  じゃないかと感覚的に思いました。
  ミステリ作家だから「そこまで考えてしまう」といったもので
  はないと思います。SF作家だったらもっとシビアに対処する
  かもしれない(汗)。

  だからこそ巻末に「付記」をつけた北村さんの行為はとっても
  正しい行動だと、私は思います。
  (単行本に付記はついてるのかしら?)
  んでも、やっぱりあの解釈はちと苦しいような気が・・(汗)。

  いっそ、疑問点をそのまま「正」とし、作品中にその事態を
  一場面として描いてしまい、その結果「じゃあ次には・・・」
  という流れになっていたほうが、本格ミステリのアクロバット
  効果もあって、私はより満足したかもしれません。
  ・・・・なんだかすっごく偉そうなこと喋ってますね(爆)。

 そいでは!!
1034. 2002年03月01日 23時08分26秒  投稿:SAMANA 
16号室SAMANAです〜。

 『探偵の秋あるいは猥の悲劇』 岩崎正吾氏 読了

  エラリィ・クィーンの宿命のライヴァル(笑)である、バーナ
  ビー・ロスの超有名四部作のうちの代表的作品『Yの悲劇』の
  様々な要素が取り入れたこのミステリ。
  なぜか横溝風味もしたんですけど、これは私の気のせいか(笑)?

  実は『Yの悲劇』だけでなく、他のロス作品の要素もかなり見
  られますし、ロス作品を下敷きにしたネタもあるので、これから
  読もうとされる方は、出来ればロス(=エラリィ・クィーン)の
  四部作を前もって読んでおかれたほうが絶対にいいと思います。
  この作品自体はロス四部作を事前に読んでなくても楽しめること
  は楽しめるんですが、この作品を読んだ後にロス4部作(特にあれ
  とあれ)を読むと、かなり味わいが薄くなってしまうように思う
  もんですから・・・(苦笑)。

  作品自体はそこそこ楽しめました。解説に書かれてるように「ど
  本格」ではありませんが、横溝風土着展開とタイトルの妙に惹か
  れました(笑)。

  全くどうでもいいことを一つ(汗)。
  「八田リカ」という登場人物の名前は、岩崎さんが「八田」とい
  う苗字を活かし、「お遊び」でわざわざつけた名前であるように
  思えて仕方がないんですけど・・・(笑)。
  ・・・きっと同じように思った人は既にいるに違いない(苦笑)。

 そいでは!!
1033. 2002年02月28日 10時58分38秒  投稿:SAMANA 
16号室SAMANAです〜。

 『棺のない死体』 クレイトン・ロースン氏 読了

  名前だけはだいぶ前(私が中学生の時?)から聞いていた作家
  さんの作品。初読です(汗)。

  奇術研究の大家と言われる人の作品だけあって、細かなトリッ
  クが随所に見受けられます。わりとオーソドックス(笑)な不
  可能興味ものなので、好きな人が読めば悶絶しそうなほど喜ぶ
  タイプのミステリだと思います。
  ユーモアのある軽妙な会話も面白く、これまた奇術というエン
  タテイメントのなせる業なのでしょうか(笑)?
  アクロバティックなトリックもさることながら、トリックの信
  憑性をなにげなく示唆している記述・伏線が軽やかで素敵でした。

  ただ、この手のタイプのミステリには、やっぱり館の「平面図」
  が私には欲しいですね。あと、事件がリズミカルにハイテンポで
  進んでいくため、複雑な状況が今いち把握しづらかったです。
  このハイテンポは、読者への「煙幕」にもなっているんでしょう
  が、私みたいな「ぐうたら読者」には、少しの休憩を兼ねた検証
  シーン(「事件をここで一度振り返ってみよう」ってやつ)が欲
  しかったのも事実(汗)。

  んでも、とても好ましいミステリと感じたことも事実であります。
  う〜ん。こうなると『帽子から飛び出した死』も読んでみたくな
  りましたねぇ(笑)。

 そいでは!!
1032. 2002年02月25日 12時50分58秒  投稿:SAMANA 
16号室SAMANAです。

 『ガラスの麒麟』 加納朋子氏 読了

  黒猫荘各お部屋のトップに記載されているファンサイトの「主役」
  でいらっしゃる加納朋子さんの連作短編集。
  いやー、小林オーナーさんが勧められる作家さんだけあって、非常
  に素敵な短編集でございました。
  私からもお勧めさせていただきます(笑)。

  解説にも触れられていますが、ミステリとしてみた場合だと「鏡の
  国のペンギン」がやっぱり一番驚かされました。いや、こんな考え
  方も出来るんですねぇ(驚)。
  続いて「三月の兎」、「暗闇の鴉」といったところでしょうか。
  でも、一番ミステリとして優れているのは、見事なまでに閉じられ
  た世界を作り上げたこの連作短編集そのものの「構成」だと感じま
  した。いや、ホント素晴らしいですー。

  実は「ダックスフントの憂鬱」だけは、他のアンソロジー集で読ん
  でいたんですが、その時にはほとんど面白さを感じませんでした。
  それもそのはず、やっぱりここにおさめられている各短編は独立し
  て読むものではなく、絶対に短編集として通して読むべきものだと
  思います。

  ミステリ部分だけでなく、他の要素から見ても、今まで読んだ加納
  作品の中で、この短編集が一番感動的でした。
  個人的には「三月の兎」「暗闇の鴉」がとても良かった。やっぱり
  私はハッピーエンドが好きみたいです(苦笑)。
  ただ、先ほども言いましたけど、やっぱり一番感動的なのは、この
  閉じられた世界で繰り広げられた一連の出来事。最後の主人公の一
  人である人が涙を流したシーンを含め、これら一連の出来事に私は
  いたく感動してしまいましたとさ(嬉泣)。

そいでは!!

[NAGAYA v3.13/N90201]