黒猫荘
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THE TELL-TALE HUT
オーナー:庵本譚

WELCOME TO “THE TELL−TALE HUT”

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17. 2004年10月18日 06時34分12秒  投稿:庵本譚 
庵主です。
たまたま書棚から手に取った鮎川哲也の「宛先不明」が
学研「ミステリー9」のN0.9だったものですから、
「そういえば、この叢書のラインナップはどうなっているのだろうか」
と目録ページをチェックしてみました。
すると、No.8に樹下太郎の名前があり近刊予定になっているでは
ありませんか。これまで、小島直記・陳舜臣・飛鳥高・三好徹・
邦光史郎・笹沢左保あたりは現物を見たことがあったのですが、
樹下太郎はみたことがありません。
果して刊行されたのでしょうか?
ネットで探しても樹下太郎の学研からの出版物は見当たらないし、
予告倒れで終わったのでしょうか?
またしてもミステリーが増えてしまいました。

昨日読み終えた本は佐野洋「遠い声」。
東都ミステリではなくて徳間文庫版。
主人公は、御用組合からの脱却を図るべく会社との対立
姿勢を打ち出してきた遣り手の労組副書記長・中井。
その彼が、あろうことか、自分の知らない間に
創業者の孫娘(只今失踪中)と戸籍上で結婚させられていた、
というシチュエーションコメディーのような幕開け。
そこへもってきて、組合専従の未亡人事務員が副書記長を
不実な男として告発する遺書を残して、薬物自殺するに至って、
トラブルは加速するばかり。
そして中井の前に現われる創業者の孫娘を名乗る女性。
果して彼女の正体は?そして中井に降り掛かった「女難」の
演出者とは?
シリアスでいくのか、ユーモアでいくのか定まらないうちに
あっさり終わってしまう軽さが「魅力」です。
只管長さに走る昨今の旧・新本格系の皆さんの本も
悪くはないのですが、この分量(文庫で180頁)でも
ミステリは書けるということに、今更ながら新鮮さを
覚えてしまいました。
重厚長大だと「時間泥棒」の罪は重いですが、
こちらだと「軽犯罪法」違犯程度でしょうかしらん。
(褒めてない、褒めてない)
また、自著文庫解説で、出版当時の辛い評を紹介する作者の
姿勢は称賛に値すると思いました。
16. 2004年10月17日 07時10分58秒  投稿:庵本譚 
庵主です。
昨日のこと、積録ビデオを整理していたら、
心理探偵フィッツの第8話(「孤独な男」の第1話)を取り損ねていた
ことに気がつきました。
ビデオを初めて購入した頃(あれは、そう20年以上前のこと:遠い目)
であれば、まるで世界が終わったように感じた事でありましょう。
しかし、最近ではCSも普及して、DVDでも「へえ、こんなものまで」と
呆れるくらいに沢山のタイトルが適価で販売されてます。
撮りそこねたフィッツの第8話も、レンタルで見る事ができるでしょうし、
好事家の友人の誰かはもっていそうです。
従って、メジャーな人気シリーズについては、「俺が残さねば、誰が残す?」
という憑き物は落ちてしまっています。
とはいえ、収集の鉄則である「マイナーな方を残す」ということを
突っ張ってみても、そちらはそちらで、
「クリスマス・キス〜イヴにあいましょう」だの
「FBI特別捜査官マンクーゾ」だの
「レイモンド・バーの法廷への招待」だの
「デニス夫妻の華麗な事件簿」だの
絶対見ている暇なんかないんだろうなあ、と思うと、積録ビデオを前にして、
身体の中を秋風が通りすぎていくのでありました。

読了した本はボール・アルテの「赤い霧」(ハヤカワポケットミステリ)
冒険小説大賞受賞作という鳴り物入りで、満を持しての登場です。
時代はヴィクトリア朝。ところはイギリスの片田舎。
新聞記者を騙り10年前の不可能犯罪を調査する謎の青年。
衆人環視の開かれた窓とカーテンに挟まれた空間から消え失せた犯人。
次々と関係者を襲う新たな死。そして新たな不可能。
恋の罠が仕掛ける心の迷宮に立ち込める赤い霧。
被害者である女達が最期に見たものは果して?
といったお話で、とにかく「これでもかっ!」という程、人が死にます。
部屋からの消失トリックはまずますですが、袋小路からの消失は肩透し。
二重三重のフーダニットについても、綾辻作品を読みつけた人間に
とっては想像を超えるようなサプライズに乏しく、
「賞取り作品というだけで、この作品から日本に紹介されなくてよかった」
というのが本音であります。
かろうじて、某有名私立探偵のカメオ出演については、某ラット・キングな
作家の類書よりも好感が持てるといったところでしょうか。
これは、年間ベストでの高得点は期待できないかも。

15. 2004年10月16日 05時41分48秒  投稿:庵本譚 
庵主です。
ポケミス新刊のアルテと007が出ていました。
アルテは今年も年間ベスト投票のシーズンには間に合ったようです。
年間複数冊出版して票が分かれるよりは、一作を丁寧に売る、
という方針でもあるのでしょうか?
ファンとしては、もっと(せめて年に2冊は)出して欲しいものです。
梗概を眺めると、今回の「赤い霧」(山口百恵ドラマみたいな題名
だな)は、どうやら番外編のようです。

「ツイスト抜きでツイストを」

で、その2冊の挟み込みやら帯を見て

「リーバスよ、おまえもか」

なんと、リーバス警部の最新作「血に問えば」はポケミスではなく
ハヤカワ・ノヴェルズで出版されるのだそうです。
スペンサー、競馬シリーズ等に続くポケミスからのスピンアウト。
今やダルジールや87分署に並ぶポケミスの看板シリーズになったと
思っていたら、そうきましたか。
確かに、ランキンの本はポケットにねじ込むと、型崩れどころか
ひっちゃぶけかねない分厚さではありましたが、、
初期作は文庫オリジナルで出るとかいう話をどこかで見掛けましたし、
ポケミス愛好家からすると一抹の寂しさを覚えます。
が、ここはハードカバーへの成り上がりを祝すとともに
末永き繁栄を祈念して

「転籍苔むさず」

と唱えておきましょう。

本日読んだのは鳴山草平「柔道社員」(春陽文庫版)
昨日200円で買った本です。一応、昭和39年の初版。
いかにも昭和30年代を思わせるサラリーマン柔道家の
恋と鬱屈と冒険の日々を描いた純情明朗小説。
掴みはなかなか読ませるのですが、中盤以降は
行き当たりバッタリのプロットに翻弄され、
「伏線などない!」と開き直るかのような唐突な
「ハッピーエンド」にはただ呆れるばかり。
ヒロインの方程式から逸脱したサプライズエンディング
でありました。
恐らくは連載小説だったのでしょうが、章の終わりで引くだけ引いて
おいて、次章は何事もなかったかのような日常が始まったのには、思わず

「落丁か?だから200円だったのか?」

と焦りました。
読み飛ばされ、消費された「娯楽小説の時代」の香気を漂わせた、
ちゃらんぽらんなイッピンです。とほほ。

14. 2004年10月15日 05時09分30秒  投稿:庵本譚 
庵主です。
某古書店のプレミヤ文庫棚に鳴山草平の「柔道社員」が並んでいました。
おお、ついに鳴山草平の春陽文庫がプレミヤ化する時代がきたのかっ!
時代は明朗なのではないかっ!
と思い、手にとって値段を確認したところ、
200円でした。
元値の定価が90円なので、そりゃあプレミヤ価格には
違いないですけど。

「滅入ろう」と「明朗」、同音逆義語。

読み終えた本は、ディーヴァーの最新刊「魔術師」。
御存知リンカーン・ライム・シリーズ第五作。
「逆転に次ぐ、逆転」のインフレーションを支えきった
ハイカロリーのノンストップ・ジェットコースター・ノヴェル。
劇場型犯罪者を敵役に配することで、逆転に淫するディーヴァーが
陥りやすい<「なんて、面倒な事を!」の罠>を回避した作品、てな
御託はツボを押えた法月解説に任せて、素人は

「ああ、面白かったあ!」

とだけ申し上げておきましょう。

原題は THE VANISHED MAN。
シリーズ第3作までは翻訳を放棄した邦題だったものが、
第4作は堂々の直訳。そして遂に第5作では、超訳に!
「消えた男」だとチェスブロのモンゴ・シリーズ第1作
Shadow of a Broken Man とかぶると思ったのでしょうか?
「魔術師」と書いてわざわざ「イリュージョニスト」とルビを
振ってあります。
ところがどっこい、作中でライムたちが容疑者に与えた通り名
「魔術師」の原語は、Conjurer(手品師)だったりします。
マジシャンでもない、イリュージョニストというルビは
「デヴィッド・カッパーフィールド+ハンニバル・レクターを
目指した」とする作者の言葉を受けた超訳なのでありましょう。
(どうでもいいことですが、マジシャンというと、どうしても
ビル・ビクスビーが主演したテレビシリーズの景気のいいテーマ曲
のブラスが頭の中に鳴り響いてしまう庵主でした。)

ところでアメリアの昇進を巡るサブプロットで、
自分がNYPDの仕組み誤解していた事が判りました。
そうか、そうだったのか。

[NAGAYA v3.13/N90201]