黒猫荘
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THE TELL-TALE HUT
オーナー:庵本譚
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26. 2004年10月22日 05時33分34秒
投稿:庵本譚
書棚の整理をしていたら、東方社の新編現代日本文学全集が一巻でてきました。
残念ながら渡辺啓助の巻ではなく、木々高太郎の巻です。
でも、所載の「幻影の町」「海光」の二長編は、朝日新聞社の木々高太郎全集
(どこが全集なんでしょうね?)には収録されていない話なので、なんとなく
得した気分になってしまいます。
それにしてもこの東方社の現代日本文学全集、50巻中10巻を探偵作家に当てていて
なかなかに壮観です。
そこで、ふと思ったのは、今仮に、21世紀現代日本文学全集 全50巻を編んだ
として、内10巻をミステリ作家に当てたらどうなるか?
講談社の現代推理小説大系や大衆文学館に採られた昭和のビッグネームは除くと
すると、果たして原典の水谷準に相当するのは阿刀田高として、渡辺啓助に当たる
変化球作家は一体誰かなあ?芦辺拓?
ちょっとやってみましょうか?
赤川次郎「マリオネットの罠」「三毛猫ホームズの推理」「幽霊列車」
内田康夫「死者の木霊」「後鳥羽上皇殺人事件」「少女像は泣かなかった」
京極夏彦「姑獲鳥の夏」「魍魎の函」「巷説百物語」
宮部みゆき「火車」「理由」「心とろかすような」
泡坂妻夫「11枚のとらんぷ」「乱れからくり」「亜愛一郎の狼狽」
島田荘司「占星術殺人事件」「北の夕鶴2/3の殺人」「御手洗潔のダンス」
奥泉光「葦と百合」「吾輩は猫である殺人事件」「ノヴァーリスの引用」
笠井潔「サマー・アポカリプス」「天啓の宴」「天使は探偵」
山田正紀「火神を盗め」「ミステリ・オペラ」「風水兄妹の事件簿」
芦辺拓「殺人喜劇の13人」「紅楼夢の殺人」「名探偵博覧会」
阿刀田高「ナポレオン狂」「冷蔵庫より愛をこめて」「過去を運ぶ足」
だめだあ、絶対10人なんて無理!
読了本は綾辻行人の「暗黒館の殺人(上・下)」講談社ノベルス。
結論を申し上げれば、マラソンの完走者を称える人間としての素直な
気持ちで読み終えることができました。序盤から中盤にかけては、
仕掛けが見え見えで「ああ、もう…、これは、どこかで見た…、既視感が…」と
非常に辛かったのですが、下巻も中盤を過ぎたころから(つまり、犯人が特定
されてからは)その力技の連続に大きくうなずきっぱなし。
狂った論理と倫理の迷宮で手繰り寄せたアリアドネの糸、その先に繋がれた
悲劇の虜囚たち、儚きは人の夢、血と闇の定礎は永劫の惑い、ここに館は囁きを
呑み込み、屍鬼を使役する。
作者も読者もお疲れ様でした。
ところで某書店で、ビニール袋に入った豪華版「暗黒館の殺人」函・付録付
を見かけました。なあんだ、本屋で買えるんじゃないですかあ。
さて、ここで気になるのは、オマケの喜国本に何が書かれているのか?です。
私が想像するに、きっと書き下ろしパロディ漫画が入っているに違いありません。
例えば、
−伝説の菓子職人・中村青磁が次々と生み出した創作羊羹。
斬新な形で羊羹の常識を破った「十角羹」、清涼感溢れる透明な「水車羹」
人形をかたどった「人形羹」、サンリオとタイアップした「黒猫羹」
科学的に不可能といわれた「青色大王羹」を開発した直後、夭逝した青磁。
その彼が残したといわれる幻のレシピ、究極の黒を実現した「暗黒羹」を求めて
江南は、熊本の山奥の湖に聳える館にたどり着く。
「私は美崎」
「私は美陽」
「私たちは蟹なの」
「私たちは蟹シュウマイなの」
「それもいうなら蟹姉妹なの」
「おほほほほ」
「おほほほほほほ」
鶯色で統一された鶯の間、
転がる大納言、
その隠し扉を抜けた空間は、
ただ一面の肉が蠢いていた、
視肉か?
いや、そうではない、
餡だ、餡なのだ。
小豆餡、鶯餡、白餡、胡麻餡、肉餡
この世に存在するありとあらゆる餡が蠢いている
赤い餡、緑の餡、白の餡、黒い餡、肉色の餡
声が響く。
「トラヤの祝福を!」
声が唱和する。
「トラヤの祝福を!」
声が促す。
「さあ、君、トラヤの<肉>を食したまえ!!」
おそるおそる口に含むや、餡はそれ自身が意思を
持つものであるかのように、私の喉奥を目差す。
誰か、助け……
……悪夢から醒めた私の眼前に鹿谷がいた。
「随分、唸されていたぞ。一体、何をそんなに恐れてたんだ?」
「…餡が」
「餡だって?餡が怖いっていうのか?」
ほうと溜め息をついて、私は答えた。
「…今度は、熱いお茶が怖い」
『餡子喰う館の殺人』おしまい。
…いや、まさか、挿絵と対談だけなんてことはないにちがいない…
…いえ、そういうことはあるのです…
餡主でした。
24. 2004年10月21日 17時44分21秒
投稿:庵本譚
庵主です。
えー、開設からまだ2週間なのですが、思い立って名称を変更しました。
既に黒猫荘さんには46号室に「密室」というお部屋もございますし、
「秘密室ボン」の流れから清涼院ファンの部屋と勘違いされる方もいらっしゃるようですので、
「秘・密・室」改め「The tell-tale hut」に致します。
(と申しましても別にエドガー・アラン・ポーのファンサイトでもなんでもないところが、
いやはやなんともですが…)
「ミステリ本についてお話する寓居」ぐらいのイメージで、受け止めていただると幸いです。
要は「庵・本譚」ですね。はい。
23. 2004年10月21日 06時40分41秒
投稿:庵本譚
庵主です。
森下様
貴重なお時間を割いていただいた第二期のアイデア出し、
ありがとうございました。
思考の流れも含めて楽しませて頂きました。
さすがに幅広い目配りですねえ。勉強になります。
(「クリスピンのジャーヴィス・フェンはどうだ?
くそう、まだ2作ある」とか、私もやりました)
「THE SEALS」は個人的に最も読みたい未訳作の一つなので、
熱くなってしまいました(ディキンスンは日本語でも
眠たいというか難解なので原語でチャレンジする気にはなれないのです)
プレイボーイスパイの第4作は凄く気になります。
通し番号に弱い庵主でした。
本日は台風23号の影に怯えて、帰宅時間したのが18時半。
時間に余裕ができたので、家人と積録洋画を一本消化しました。
ものは知る人ぞ知る「ゴスフォード・パーク」。
1932年、英国の貴族の館を舞台にした人間往来を
「見えない人」である使用人たちの日常を中心に描いた佳作。
時代背景はまさにミステリの黄金期、ハリウッドスターや
チャーリー・チャン映画のプロデューサーも絡まって、
貴族とその富に群がる係累たちの身勝手さ、
生まれながらにして下僕たることを運命づけられた人々の
諦観と反骨が活写されます。一応、館の主が殺害され、
メグレもどきの警部が押っ取り刀で捜査を行うのですが、
謎の解決は二の次で、ドラマの中心はあくまでも人間模様。
表舞台では解決編のない状態でエンディングを迎えます。
それでありながら、脇役たちの世界では、大団円を迎えている
という仕掛けがなんとも素晴らしい。
まだご覧になっていない方には、黄金期ミステリに対する
一種の反テーゼとしても楽しめる作品として、強くご推薦いたします。
読み終わったのは海渡英祐の「トラブル・ハネムーン」双葉ノベルス版。
ヒッチコック映画の(題名の)パロディで綴る「二人で探偵を」。
高等遊民系の主人公と法律家の娘であるそのパートナーが
トラブル・コンサルタントを開業し、休業に至るまでの顛末記。
収録作はそれぞれにツイストの効いた作品ですが、続けて読むと、
(主人公の慨嘆ではないですが)探偵がいるという事が事件を呼ぶという
パターンが見えてきて、少々辛いものがあります。
また、無理矢理のユーモアもすべっており、同じ作者の
吉田警部補ものには及ばないなあ、と改めて感じました。
22. 2004年10月20日 21時29分50秒
投稿:森下祐行
>ピブル警視は第3作の「THE SEALS」も未訳の筈なので、
完全に見落としです。ああ、情けない。
ジプシー・ローズ・リーは、苦しまぎれでした。
やはり、しばりは三作以上あるシリーズで、未訳があと一作という
ことでしょうね。
うーん、こーなったら、なんとしてもあと二シリーズ探さなくては!
ハイスミスのリプリー・シリーズはこの前、最後の一編がでたし、
ウェストレイクやローレンス・ブロックなど、新作がでそうなシリーズ
ははずさないと駄目だろう。
ハニー・ウェストは……
あと二作、未訳がある。
ニコラス・ブレイクのストレンジウェイズ・シリーズは……
駄目だ、これもあと二作残っている。
エイプリル・ダンサーは……
ああ、あと三作もあるじゃないの。
ジョン・ガードナーの新ジェームズ・ボンドは……
なんと、まだこんなに書かれていたのか! どうした文春!
ハワード・ブラウン(ジョン・エヴァンス)のポール・パイン・シリーズも
いまじゃ、『悪魔の栄光』と『紙の拳銃』の二作あるし、ケメルマンのラビ・
シリーズも「対話」以降もけっこう書かれたんだなあ、と今さら気がつくしまつ。
ナンシー・ピカードのジェニー・ケインは1995年以降、書かれていないから
未訳の一作 No Body (1986)でもいいかもしれないけど、もう少し大物ということ
で、以下の二シリーズに差し替えたいと思います。
第4回配本:『プレイボーイ・スパイ4』ハドリー・チェイス
マーク・ガーランド・シリーズ (The Whiff of Money)
第5回配本:『黄色い影の謎』ロス・トーマス
マコークル&パディロ・シリーズ (Cast a Yellow Shadow)
これで、勘弁してください。
[NAGAYA v3.13/N90201]