黒猫荘
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THE TELL-TALE HUT
オーナー:庵本譚

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30. 2004年10月27日 05時39分21秒  投稿:庵本譚 
庵主です。
時期を逸しましたが先週の「新選組!」は「龍馬暗殺」。
今年に入って「QED〜龍馬暗殺」、「乱歩邸土蔵伝奇」を
読んでいたもので、ミステリ映画の真相場面を見るかの
ようなノリで興味深く観ることができました。
結局、三谷幸喜は「黒幕:薩摩藩、実行犯:幕府見廻組」説で
手堅くまとめ、新選組犯人説の拠り所となる「こなくそ!」発言
にもケリをつけてました。なるほど、なるほど。
「大政奉還」をナレーションですませてしまうという大胆な
刈込ぶりが、かえって隊士たちの困惑ぶりを引き立てるという
演出にも感心しました。

SRマンスリーの最新号が着きました。
今回は乱歩賞50周年で、いつもの合評(今年もボロクソ)に加え
50年間のベスト、ワースト(作品、タイトル、作家)の会員
アンケート結果を発表。私は、参加しませんでしたので、ここで
枠外参加しておきます。
Q1.ベスト作品:「猿丸幻視行」井沢元彦
Q2.ワースト作品:最近作を読んでいないのでパス。
Q3.好きな受賞作家:高橋克彦
Q4.ベストタイトル:「猫は知っていた」
Q5.ワーストタイトル:「剣の道殺人事件」
Q6.乱歩賞の意義:普通の人々をしてミステリを手に取らせる効用は
今も尚あるのではないでしょうか。
Q7.落選作ベスト3:
「占星術殺人事件」「『禿鷲城』の惨劇」「虚無への供物」
Q8.自由記述
良くも悪くも「紅白歌合戦」のような国民的イベントなのだろうと思います。
文学賞で「直木賞」「芥川賞」に並ぶ賞は「乱歩賞」だけでしょう。
普段は推理小説を読まない人に、推理小説の面白さを知って貰う賞という
位置づけに照らすと、最近の作品はどうなのでしょうねえ。

他、マンスリーの記事では、「ベストテンを二シーズン制に」という
緊急提言に激しく同意してしまいました。ここ1、2ヶ月の重厚長大作の
氾濫には時間的にも財政的にも悲鳴を上げております。

東京創元社からはやっと「帆船」マークのピンバッジが届きました。
ちゃんと塗りが黄褐色だったのが嬉しい驚きでした(これまではすべて黒)。
帆船マークも一通り買ってはいるのですが、分厚い本が多いのと
主戦場ではないため、積読の宝庫です。
どなたかお立会いの中に「アレキサンドロスの宝冠」と
「虚栄の神」を読破された方はいらっしゃいますか?
これと「異星の客」「月長石」で旧マーク四天王ではなかろうかと
考えております。
個人的には帆船マークの作品では、ジョン・ジェイクスの「戦士ブラク」
シリーズを武部本一郎画伯のカバー・挿し絵ゆえに偏愛しております。

本日読み終わった本は佐野洋の「赤い熱い海」、角川文庫版です。
火災で函館沖に緊急着水した旅客機の乗客3人が死亡。
業界大手の探偵社に持ち込まれた行方不明者の捜索依頼が
事故に隠された怨念を暴き出す、といった話。
読売新聞社の「新本格推理小説全集」の一冊として出版された作品。
鮎川哲也の「積木の塔」、陳舜臣の「影は崩れた」、
高木彬光の「黒白の囮」など傑作の多い意欲的な全集ですが、
この作品も充分期待に応える内容で、4人以上のチームの私立探偵が
活躍するという珍しい趣向も、旅客機事故という派手な道具立ても
ツイストとサプライズに貢献しているところがお見事です。
ただ、サプライズの根っこに偶然を介在させてしまったのが
玉に疵でしょうか。読売の全集を担当した女性編集者の解説も
佐野洋の人柄や、当時の出版業界の息吹きを伝える楽しい
エッセイです。元版をお持ちの方も、ブックオフで解説を立ち読み
してください。
29. 2004年10月26日 06時39分39秒  投稿:庵本譚 
庵主です。
読んだ本は、勢いに任せて笠井潔の「ヴァンパイヤ疾風録
<九鬼鴻三郎の冒険3>」角川ノベルズ版。最も最後に書かれた
ヴァンパイヤ戦争サーガ、ということになるのでしょうか。
昨日は調子に乗って「クメン編」などと口走ってしまいましたが、
実際に読んでみるとこの2巻・3巻で「ザ・ラスト・レッドショルダー」に
相当する内容というべきでした。
3巻目はベトナムを舞台にした、二重、三重の陰謀と殺戮のフーガ、
密林への捕虜救出作戦の果てに待つ裏切りのアルペジオ、
縺れるはKGBとCIA、フィナーレは血まみれのQED
甦りしファム・ファタールはパーフェクト・ソルジャーだったのか?
何故か、ブライアン・フリーマントルを彷彿としてしまいました。
この作品が書かれたのはベルリンの壁の崩壊直後ですが、
「冷戦下のエスピオナージュ」に対する作者のオマージュとも思える
ノリでありました。
今回の本編の復刊はこの続編もスコープに入っているんでしょうか?
そもそも角川でさえ文庫化されなかったんですものね。
28. 2004年10月25日 07時26分15秒  投稿:庵本譚 
庵主です。
今年度の翻訳ミステリ「<何を今更>大賞」は
嶋中文庫「グレート・ミステリーズ」に決定!なのでしょうか?
ふと早川書房の世界ミステリ全集から文庫化が相次ぐ
なんて夢想をしてしまいました。やはり目玉は、単独では本に
なっていない「アリゲーター」と「メグレの回想録」なんでしょうか?
(「裏切り」もないのかな?)
37の短篇を「スモール・ミステリーズ」として3分冊で出すとか。
(>どうやらこれがいいたかったようです)

読んだ本はホックの「サム・ホーソンの事件簿3」創元推理文庫と
笠井潔「ヴァンパイア風雲録」カドカワノベルズ。
前者は、相変わらず安定感のある面白さ。よくもまあ、毎度毎度
これだけの不可能トリックを思い付くものだと感心してしまいます。
それもあれだけの短い頁数に律義に伏線を引いているのですから
お見事としかいいようがありません。「幾らなんでも、それはなかろう」
と突っ込みを入れたくなる話も0ではありませんが、概ね楽しませて
頂きました。禁酒法時代とその直後といった時代背景も活かした
黄金期へのオマージュ。私の好みは巻頭作の「ハンティング・ロッジ」、
あとは「描きかけの水彩画」「消えた空中ブランコ乗り」です。
なお、巻末リストをみると、まだ3,4巻分はお話がたまっていそうなので、
更にワクワク。第4巻も是非刊行希望。ホックの伝道師ジロリタンが既に
(第4巻用に)選んであるというボーナス作品を推理してみるのも一興かと。

「九鬼鴻三郎の冒険」の第2巻は、文字通りのブリッジ作品。KGBの
トップエージェントに鍛え上げらた九鬼が、懐かしの新宿でヤクザと
香港マフィアを向こうに回して軽く汗を流します。まあ、ボトムズ
でいえばウド編の長閑さです。伝奇の要素は欠片もございません。
次回クメン編で完結。サンサ編、クエント編は本編11巻に戻って
最後は宇宙で決着がつくわけですね。うん。
27. 2004年10月24日 07時49分42秒  投稿:庵本譚 
金曜外泊につき、二日ぶりの庵主です。
まずは金曜日の分から。

均一棚で古い春陽文庫に遭遇しました。
源氏鶏太の「鶴亀先生」、昭和36年の第6刷でした。
「よく売れていたんだなあ」と驚きつつも、結局購入しなかったの
ですが、帰宅してから、どんなストーリーなのか気になって
ネットを検索したら、ちゃんと梗概が載っていました。
なんと新東宝で映画化されていた事も判りました。
さて、ここで問題です。
以下の五つの記述のうち、ホントはどれでしょう?

1.鶴亀先生は数学の先生である
2.鶴亀先生は見事なカイゼル髭の持ち主である
3.鶴亀先生の「鶴亀」は本名である
4.鶴亀先生を映画で演じたのは笠智衆である
5.鶴亀先生は「小説新潮」に連載された


読んだ本は石持浅海の「水の迷宮」、装丁一新のカッパノベルスです。
既にネットでも今回のカッパの装丁については「何、あれ?」という
声が寄せられていますが、帯なのか、表紙なのか、良く分からない体裁は、
後の世の古本屋を泣かせるかもしれません。
以前、服部まゆみの「この闇と光」でも、大胆な装丁に恐れ入ったもの
ですが、そのような一発勝負ならともかく、今後、カッパは全体として
白を基調にデザインしていく、ということなのでしょうか?
それよりも、挟み込みで「サブテキスト」と称するかなりの分量の
著者インタビューと解説がつけられていた事の方が「事件」です。
ここまでの情報量が、例えばブックオフ愛好家にはゲット出来ないと
なると、それなりのインパクトではないでしょうか。

話の中身は、羽田にある第三セクター水族館を舞台にした脅迫と
殺人の時限サスペンス。ただ、作者の狙いは飽くまでも
「サラリーマン(たち)の浪漫」であり、謎もロジックもそれに
奉仕する装飾物にすぎない、といった雰囲気です。
一応、いつもながらのエレガントな解法はついているのですが、
感動の導火線は、別の爆弾に繋がっています。
この作者もいずれコドコロさんのように、ミステリから遠く離れた
前線にいってしまうのでしょうか?それとも、なにかしら「謎と
解法」にこだわったストレートノベルに辿りつくのでしょうか?
何かにつけ、目の放せない人です。

では最後に、鶴亀先生の「ホント」の発表です。

1.鶴亀先生は体育の先生
2.鶴亀先生は顎鬚の持ち主
3.鶴亀先生はニックネームで本名は中林千万年
4.鶴亀先生を演じたのは上原謙

というわけでホントは5番「小説新潮連載」でした。


[NAGAYA v3.13/N90201]