黒猫荘
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THE TELL-TALE HUT
オーナー:庵本譚

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34. 2004年10月30日 04時38分54秒  投稿:庵本譚 
庵主です。
恒例の神田青空古本市が始まったのに刺激を受けて、久しぶりに
古本屋に寄ってみました。
といっても神保町ではなくて、帰り道のお話。
買ったのはこんなところ。
「妄想ニッポン紀行」小松左京(講談社文庫)50円
「少年殺人事件」ローレンス・ヤップ(晶文社:帯)520円
「お嫁にゆけない」笹沢左保(春陽文庫)70円
「東亜旋風秘録」山中峯太郎(同朋出版社)300円
小松左京のSFルポは、続編を先に(古本屋で)購入していたので、
ローレンス・ヤップは「マーク・トゥエイン殺人事件」が面白かったので、
笹沢左保の短篇集は、園生義人の明朗小説のような題名に惹かれて、
山中峯太郎の冒険小説は、昭和16年の初版本が余りの安さだったので、つい
というのがそれぞれの購入動機です。
山中峯太郎の本は、探している人は探している本かもしれません。
グラシン紙がかけられて、1万円とかの値段がついて
ガラスケースの向うに並んでいれば、それはそれで納得してしまうこと
でありましょう。
ぱらぱらと目次を見ているだけで、わくわくしてきます。
「密偵何をか言ふ」とか
「忠臣より鼠賊へ」とか
「あゝっ、劉!」とか
「Z・Z・Z」とか
「怪女の行方は?」とか
…でも、絶対読まないでしょうねえ。

本日読み終わったのは結城昌治「振られた刑事」文春文庫。
文庫オリジナルの拾遺集です。いわゆる中間小説紙に埋れていた作品を
まとめたものですが、いずれも男女の機微を軸としたサスペンスで
統一されてます。多趣多芸な人なので、拾遺集を編もうとするとユーモア系や
ショート・ショート等が混じる可能性も高くなるのですが、
無作為の作為なのか、それなりのまとまりを感じさせます。
ただ、シリアスな作品ほどあっけなく終わってしまい、皮肉な落とし噺の方が
印象に残るというのが私的読後感です。
奇妙な味わいの「諦めない男」がベスト。
いかにもロスマク風の「悪夢の明日」は長編向きの作品でありました。
33. 2004年10月29日 05時44分49秒  投稿:庵本譚 
庵主です。
二階堂黎人の「魔術王事件」を読み始めたのですが、
冒頭の「紫の魔術王」で既にめげかけています。
サム・ホーソンとの密度の差がこれほどにもあったのかと
戦慄しております。
犯人が「あの人」だったらイヤだなあ。
いや、まあ、魔術王なんでしょうけど。

読み終わった本はミネット・ウォルターズの「蛇の形」、
勿論、創元推理文庫版。イアン・ランキンがハードカバーに
移る今日この頃、その逆を行くウォルターズには拍手喝采、
それだけでポイントが高くなってしまいます。
今回の話も、作者お得意の一筋縄ではいかない騙りの迷宮小説。

20年前、イギリスのリッチモンドの余り品のよくない住宅街で
一人の孤独な有色人種女性が惨めな死を遂げる。名誉も蓄えも
全て奪われ、ただのアル中の交通事故死として処理されたその死の
真実を「復讐の天使」となって追う元女性教師ミセス・ラニラ。
自らの魂の復権を賭けた彼女の執拗なまでのフィールドワークは、
やがて悪意と暴力と欺瞞と誤解に塗り固められた「過去の事件」と
その真相を暴き出していく。
誰もが嘘と威嚇を繰り返す時の壁の向うで、舌を出す蛇の形。
操りと誇りの闘い、その勝利者は、果して?

いつもながらの多層構造の「嘘」に翻弄される快感。
孤立無援の闘いは、何も卑しい街を行く一匹狼のだけのものではない
ことを諭される雄編、というか、雌編と書いて「ゆうへん」と
読ませたくなるような話です。
おそらくこの物語の主題は「弱き者」なのではないでしょうか?
作者は様々な形の「弱き者」を描き、そして真の悪がどこに潜むのかを
モンタージュ技法も交えながら、浮かび上がらせていきます。
なんとも昏い話ですが、頑張って読み通した者には、最後にカタルシスが
待ち受けています。
「正義」の在り方、探偵たる者が潜らねばならぬ地獄の姿、
イギリスのクライムノベルのレベルの高さをまざまざと思い知らされる
作品でした。タフな小説が好きな人にオススメ。
32. 2004年10月28日 02時29分27秒  投稿:庵本譚 
庵主です。
今月号のHMMを買わねばと書店を覗いたところ、HMMはおいておらず、
SFMばかり5冊も並んでおりました。
しかもなんと、偏愛している作家の一人、ジョージ・R・R・マーティンの
特集ではありませんか。これは、買わずばなりますまい。
っていうか、特集を組めるぐらい短篇を翻訳するのであれば、
「サンドキングス」に続く第2短篇集を編んで頂きたいものであります。

本日読み終わったのは、角川文庫版の佐野洋「二人で殺人を」。
法曹一家出身の新進女弁護士と結核で休職中の新聞記者のコンビが、
懸賞小説のネタ探しのつもりで素人探偵業に手を染めます。
隣接するデザイナー事務所と写真家事務所を跨る愛憎の死亡遊戯。
トップ・アーティストたちが隠しつづけた15年目の真実、
写真は告発し、嘘が死を招く。二人で小説を、二人で探偵を、
二人で犯人を、そして二人で殺人を、てな、お話。
幾ら法曹一家の長女とはいえ、ここまで警察が協力しちゃう
もんだろうか?と突っ込みをいれたくなるほど、ファンタジックな
読み物です。最後は、締切を競争するように、皆を集めて
さてと云う、ところなんぞも実にすちゃらかほのぼのしています。
最近、立て続けに佐野洋の初期作品を読んでいますが、
いずれも軽妙洒脱な筆致に、「推理日記」での五月蝿いご意見番の
印象がすっかり拭われてしまいました。
名探偵役の女弁護士を指して「女メイスン」などと銘打ってしまう
ところには、時代を感じさせますが、高木彬光の百谷泉一郎シリーズで
百谷明子を「ペリ」と呼ばせるノリに比べれば、まだ赤面度は低い
といえます。佐野洋は殆ど積読ばかりでしたので、思わぬ鉱脈に
けつまづいた思いです。
31. 2004年10月27日 06時03分06秒  投稿:庵本譚 
庵主です。
本日のアップを終えてから
32号室の紅さんの収穫を拝見して、自分のチョンボに
気がつきました。
<LAST ONE>叢書でクイーンJr.の第9巻を
「青い鳥の秘密」とやってしまいましたが、
ジューナ・シリーズで、青といえば「にしん」ですよね。
ったく、メーテルリンクでも、芦田豊雄でもないんだからさあ。
第9巻、正しくは「紫色の鳥の秘密」であります。
謹んで訂正いたします。

[NAGAYA v3.13/N90201]