黒猫荘
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THE TELL-TALE HUT
オーナー:庵本譚
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38. 2004年11月03日 06時47分19秒
投稿:庵本譚
庵主です。
気がつけば、いつの間にか
お隣の80号室が空き家になっていました。
「一度も顔を見せない住人さんでしたよ、
ひと気も感じませんでしたし」
と、刑事が聞込みきたら答えることにいたしましょう。
で、昨日の投稿でまたしても脱字してました。
ファンジックじゃなくてファンタジックです。
チェックしているつもりでも、漏れてしまうんですよねえ。
こういう誤字脱字をやらかす人間は、絶対殺人には向いていないと思います。
昨日はとっぷりと暮れた古書店街を駆け抜けて参りました。
木枯し紋次郎風にいえば
「古書街の闇を駆けろ」
「百均棚に風を切る」
てな感じでしょうか?
いやもう、古本の香りを嗅げただけで満足しております。
というのは格好つけで、しっかり某Y書房で、買い物をしてしまいました。
「おとなしい妻」多岐川恭(新潮社)2500円
「Catch Me a Phoenix!」Carter Brown(Signet US1st)300円
多岐川恭は著者あとがきによれば「7冊目の短篇集」だそうです。
おそらく持っていない筈なので、古書価格で買ってしまいました。
カーター・ブラウンの方は、1965年作品というのを確認したうえで、
「不死鳥をつかまえて!」なんて題名はなかったよねえ、と思いながら
運試しのつもりで買ってみました。
1965年は丁度カーター・ブラウンの翻訳の分水嶺にあたる年で、
66年以降の作品ならば、まず未訳。65年作品ならば、
既訳も未訳もあった筈。いざ、勝負!
帰宅してしらべると、とほほほほ、翻訳が出てました。
「殺人は競売で」なんだそうです。
ダニー・ボイド・シリーズは65年に2作出ていて
「The Sometime Wife」の方が未訳なんだそうです。
くうう、かすったあ!
ここは、シグネットのカバーアートに300円出したと思うことにします。
ついでに洋古書サイトで検索したら、やはり3ドルから5ドル程度の
値段でした。なるほど300円というのは適正価格ではないですか。
「落穂に賭けた賽ひとつ」
「二度と拝めぬ希覯本」
あっしには言いわけなんぞござんせん。
読み終わったのは佐野洋の「壁が囁く」、角川文庫版です。
一流新聞の特別企画部に籍をおく敏腕記者を主人公に配した
トリッキーなサスペンスでした。
1年前の海外赴任中に、妻にガス自殺された新聞記者・志原は、
最近付合い始めた婦人部の記者に再び自殺されてしまう。
ひょんなことから、女性記者には秘密のパトロンが存在した
ことを知らされる志原。やがて、興味半分で事件を追い始めた彼に
悪意の手が伸びる。なんと警察に、女性記者の死は自殺ではなく、
志原が犯人である事を仄めかす密告電話が入ったのだ。
やさぐれ記者、辣腕政治記者、サツ周りの事件記者に謎の女も相乱れ
志原が辿り着いた、連続自殺の真相とは?
連続自殺といえばカーですが、どちらかといえばフランス・ミステリ
タイプのお話。権田解説ではガーヴの「新聞社殺人事件」を引き合い
に出していましたが、情熱的な男女を描きながら清く美しい描写に
留めるガーヴに比べ、のっけから「ケダモノ的うっふん」にページを割く
佐野洋では、作品の「品格」が違うと申し上げておきましょう。
まあ、それはそれとして、ミステリとして及第点。
犯人像にはなかなか怖いものがありました。
37. 2004年11月02日 04時49分01秒
投稿:庵本譚
庵主です。
本日読んだ本はグラディス・ミッチェルの「月が昇るとき」、
今年も快調な晶文社ミステリの最新刊です。
原書でも持っていたのですが、読みそびれている間に
翻訳がでてしまいました。グラディス・ミッチェルが
普通に本屋に平積みされている姿というのは、オールド・
ファンからすると隔世の上にも隔世の感があります。
「ソルトマーシュの殺人」の翻訳が遅れて焦らされたせいも
あるのでしょうか、「次の翻訳は又30年先」といったタイガース
ファンの心理にも似た諦念を抱いていただけに、何の思わせぶりも
なく、当たり前のように新刊として出てしまったことに
驚きの念を禁じえません。
中身のほうは、すでにいろいろなところでも紹介されていますが、
ミッチェル版の「トムソーヤーの冒険&探偵」。
いわゆるリッパーものなのですが、書きようによっては、
随分と新鮮な少年文学になるものだと感心しました。
真犯人像も含めて、本当は残酷な「童話」の要素もふんだんに盛り込んだ
ファンジックな作品。戦前ならば「魔女対魔人」みたいな訳題がぴったり
きたかもしれません。
例によって、「なぜ、月夜なのか?」といった疑問に明快で合理的な
解が与えられるわけでもなく、事件の語り手のみえないところで
ちゃっちゃと進展してしまうという透かし技も炸裂して、
ファン(いるのかなあ)を喜ばせます。
ミステリとしてはともかく、少年文学として一読の値打ちはある一品でした。
さあ、次の翻訳は何年後になるのでしょうか?
36. 2004年11月01日 05時55分18秒
投稿:庵本譚
庵主です。
昼寝から覚めたら、家人が映画をみていたので、途中から付合いました。
モノはリチャード・ギア主演の「プロフェシー」。
妻を亡くした一流紙の記者が、不安な「予言者」たちに遭遇し、
人類史の開闢以来、そこかしこに姿を見せていた蛾男(モスマン)の
存在に気付く。やがて、彼自身にも災厄の予言や、冥界からの電話が
届き、導かれた人々はイブに集う……
暗い造りの真面目な「予言」もので、そのまんま「Xファイル」の
1エピソードになりそうな話でした。そういえば、リチャード・ギアの
面立ちって、どことなくデヴィッド・ドゥカブニーに通じるものが
あるように思いませんか?
今週も「名探偵ポアロとミス・マープル」はお休み。
中越地震報道の影で、国会喚問されたNHKの首脳陣たちは
「人の噂も75日」と指折り数えているに違いありません。
「そうそう、シュリンプさんにそっくりだわ。
村の拡声器と呼ばれていた人よ。
でも、村のお金を使い込んだという噂が出てきて、
そうした途端に、急に教会に熱心に通うようになって、
チャリティー・バザーを開こうと、働きかけたのよ。」
アガサ・クリスティー著「予告殺人」より(←うそ)
読み終わった本は、原書房刊行、CDキング著の「海のオベリスト」。
森英俊コレクションの一冊。
オベリスト・シリーズの第1作にして、作者の処女作。
覆面作家バーナビー・ロスが「Xの悲劇」を引っさげてデビューした
1932年の船上ミステリの古典です。
豪華客船での夜のお楽しみ、ディナー後のマイル数オークションの最中の停電、
その一瞬の隙をついて心臓に鉛玉を食らった実業界の大立者。
事件の真相を4人の心理学者がそれぞれの学説を基に推理する。
だが、彼等を嘲笑うように、死体は消え、新たな死が訪れるのであった。
といったお話。
読み物としては些か単調ですが、良く言えば「悠々たる筋運び」ということでしょう。
複数の銃弾手品に、人間消失トリック、クライマックスの逆転、
そして意外な真犯人と手掛り索引の妙など、見所はそれなりにある作品といえましょう。
ただ、終盤で真犯人の名前を隠すために持ち込んだ、強引な「沈黙」については、
不自然の一言。全く納得がいきません。
これでは、小説の面白さで、同じ32年作品の「Xの悲劇」や「Yの悲劇」や
「邪悪の家」や「魔女の隠れ家」に敵うわけがありません。
さはさりながら、幻の作品を読めた事に感謝の意を表しておきます。
「いずれ、同じ作者のABCシリーズも日本語で読めますように」
「その時は、順番通り読めますように」
35. 2004年10月31日 08時29分05秒
投稿:庵本譚
庵主です。
「SFマガジン」「ミステリマガジン」の今月号を買いがてら、
買いそびれていた雑誌を2誌買いました。
「ミステリーズ! 7号」「ジャーロ17号」
これら4誌の中では、「SFマガジン」が唯一誌名に変更のない
雑誌ということになりましょうか。
いや、前身(日本版EQMM)から通し番号が振られているHMMや、
題名に小さく「EQ Extra」と添えられているジャーロと違って
「ミステリーズ!」は「創元推理」とは別物と考えるべきなのかもしれません。
「創元推理」は本当のところ、Tetsuya Ayukawa's Mystery Magazineと
冠したかったのではなかろうかと邪推しているのですが、驍将亡き今と
なっては、改めてその名を冠するわけにもいなかいでしょうしねえ。
(そういえば後期の「宝石」に「江戸川乱歩’sミステリマガジン」と
英語で書かれていたような気もするのですが、記憶違いでしょうか?)
今の日本では「季刊 島田荘司」がこのたぐいとしてはトドメを指す
のでしょうが、〇〇MMというネーミングには、なんとなく「王道」を
感じてしまうのでありました。
それに照らすと「ミステリーズ!」という誌名はどうもピンときません。
「ミステリーズ?」って感じです。
夢想してみました。
東京創元社が、中高年男性向けに「ミステリーズ!」増刊を編集。
「エロティック・ミステリーズ!」創刊!
「エロティック・ミステリーズ!」が改題する。
「旅とミステリーズ!」新創刊!
穴場情報満載!一撃必殺、一発昇天の極楽旅情推理専門誌、
峰隆一郎、木谷恭介の大好評連載は乗り継ぎです。
新人作家募集!「西村京太郎賞応募規定」掲載
受賞作は土曜ワイド劇場でテレビドラマ化!
主演:山村紅葉!
♪悲喜劇一斉、新刊は早や我が記者を離れたり〜
と申しますか、
♪絶叫だ!絶叫だ!楽しいなあ
と申しますか。
読み終わったのは10年前角川書店のハードカバー、
ジェーン・S・ヒッチコックの「魔女の鉄槌」。
文庫落ちもしていますが、積読山脈から元版を掘り出してきました。
カバーや装丁に力をかけており、なかなかお洒落な造りです。
帯に大きな級数で、こうあります。
「魔女裁判、現代に蘇る」
「驚愕の問題小説」
…それだけの話でした。
序盤、やや生臭さを漂わせたビブリオ趣味に、
中盤、カルト探訪に戦時陰謀、三十女の閨房が縺れて、
終盤、狂気が暴走し、「魔女」が再生する
ラストがバタバタしすぎで、余り楽しめませんでした。
結局のところ、飽くまで人間の理性と狂気の範囲で物語が
収斂してしまい、逆転の妙味に欠けます。
同系統の話としては、純粋にオカルト側に踏み込んだ
「サンテリア」の方が好きです。
魔女のお話は「火刑法廷」や「妻という名の魔女たち」と
いった古典から「哀しみのベラドンナ」やら「女フィスト」
「エコエコアザラク」といったコミック系も含めて
偏愛しておりますが、このお話は頂けませんでした。
女性読者の感想を聞いてみたいところです。
[NAGAYA v3.13/N90201]