黒猫荘
(mobile版)

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THE TELL-TALE HUT
オーナー:庵本譚

WELCOME TO “THE TELL−TALE HUT”

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42. 2004年11月07日 11時02分21秒  投稿:庵本譚 
庵主です。

魚塚さん
いらっしゃいませ。
これからクイーンの著作をすべて初見で読めるなんて羨望の極致です。
本当に羨ましいです。
もしお読みになるのであれば、
「Xの悲劇」「Yの悲劇」「ギリシャ棺の謎」
「エジプト十字架の謎」「災厄の町」といった歴史的傑作から
から読みすすめてみてください。(晩年の作品には駄作も多いので:汗)
短篇集でしたら「エラリー・クイーンの冒険」
「エラリー・クイーンの新冒険」がオススメです。

本棚探偵といえば、喜国雅彦&日下三蔵両氏のトークショーでは
「神保町の中心でダブりとさけぶ」という限定冊子が配られたそうです。
限定版と言われると萌えますねえ。
「セドリの中心で買いをさけんだんだもの(はあと)」

今後ともよろしくです。

金曜日は赤坂の文士バーでワインをしたたか呑んで、
へべれけになって参りました。相当に記憶があやふやです。
土曜日は朝から二日酔でした。
読み終えた本は早速にROM叢書のアンソニー・アボット「シャダーズ」。
NYPD本部長サッチャー・コルトが挑むは、魔人ボールウィン博士&妖女マルセラ。
3年前、一人の天才的犯罪者がコルトの慧眼によって死刑台に送られた。
男の名はジュリー・テイラー。彼は、老銀行王に巧みに取り入り、その一族を
根絶やしにするとともに巨万の富を掠めようとしたのだった。
その死刑執行の夜、テイラーはコルトを呼び出し、彼の妻を奪い、陰謀の
全てを唆した真の「悪魔」の名を告げ、電気椅子で焼かれる。
3年後、その悪魔ボールドウィン博士が華々しい新発明を引っさげて実業の表舞台に登場する。
そして死神の鎌は、静かに、テイラーの死刑執行に携わった者たちを刈り取っていく。
全く何の痕跡も残さず。
死の恐怖に怯えながらコルトの面前で悶絶死する犠牲者たち。
コルトたちNYPDの必死の探索と追求を嘲笑うように、
泰然として獲物を屠る悪魔夫妻。
そして、その魔手は、テイラー事件の最後に残された立役者、
サッチャー・コルトその人に伸びようとしていた!
消えた二百万ドル、見えざる死神の手、罠と罠の応酬の果てで
勝利するのは正義か?邪悪か?

1943年の作品ですが、黄金期以前の大時代がかった探偵小説を
彷彿とさせる問題作でありました。
明らかに時代に逆行するかのような破天荒な設定に、科学的なようで
実のところトンデモなトリックが炸裂するオモシロ・サスペンス。
全編に仕掛けられた大ドンデン返しに至っては「いくらなんでも」
の領域であります。
なるほどこれまで、日本人の目に触れなかったのもむべなるかな。
それでも、このリーダビリティーの高さは素晴らしい。
大探偵サッチャー・コルトの活躍はROM叢書にて一大披瀝中。。
親愛なる読書諸氏の倍旧のご愛顧を乞う

41. 2004年11月05日 23時37分23秒  投稿:魚塚塵 
はじめまして、こんばんは。
先日80号に入居いたしました魚塚です。
こちらからご挨拶をと思っていたのですが
思いがけないご来室とご挨拶に
驚くやら慌てるやら嬉しいやら嬉しいやら。

クイーンは(というより海外モノ)は
残念ながら読んだことがありませんが
いろんな作品のなかでも目にするので
一度は読んでおきたいと考えています。

庵本譚さまは古書などにもお詳しいみたいですね。
『本棚探偵〜』を読んだことがあったので
喜国氏のくだりは思わず笑ってしまいました。

またお邪魔させていただきますね。
頼りないお隣ですがよろしくお願いいたします。



40. 2004年11月05日 07時00分08秒  投稿:庵本譚 
庵主です。
帰宅すると噂のROM叢書1、アンソニー・アボットの
「シャダーズ:サッチャー・コルトの事件簿1」が
届いていました。
21世紀が「アンソニー・アボットの翻訳が同人出版で読める時代」
になろうとは、モノリス様でも気がつくめえ、

「ツァラトゥストラはかく語りき」が流れる中、
直立二足歩行を始めたミステリ・マニアが空に向って両手をつきあげる、

世紀のばんざい、

であります。
出来る限り今年のうちに読んでSRベストに投票しよう
ではありませんか。

読み終わったのは多岐川恭の「おとなしい妻」新潮社刊行。
実は、この本をダイニングのテーブルに積んでおいたところ
家人が目に留めて、
「そーかあ、『おとなしい妻』ねえ。ふーん。こんな感じ?」
とお淑やかに肩を竦めたり、しなを作ったりして遊んでおりました。
「全然違うと思うぞ、それは」
と感想を述べつつ、多岐川恭描く「おとなしい妻」が本当は
どんなものなのか気になって読んでみました。
「おとなしい妻」
貞淑な妻が闖入してきた押売りに犯された事から新たな日常が始まる。
静かな夜と乱れる昼。危うい関係の清算はオンナの身体でつけられる。
柔らかでしたたかな夫と妻に捧げる犯罪。
普通の人々の怖さを淡々と描いた郊外派ミステリ。
「蝶」
幻視の蝶が、暗鬼を掻き立てる。
嫉妬は殺意へと変態し、
狂気の淵で操りの蝶は炎に晒される。
緊張感漂う、サイコサスペンス。
鮮やかな逆転が光る逸品。意外哉、物理トリック!
「殺意」
裁判官に届けられた一編の手記。そこには、戦後の混乱期の
中で、一人の敬虔な聖職者が遭遇した魂の遍歴と殺人の
真相が記されていた。信仰とは?人間愛とは?を問いかける
感涙の逆転劇。お涙頂戴ながら、格の違いを感じさせる傑作。
「はるかな空の祭り」
無頼の社長秘書が女たちの想いと欲望の狭間をさ迷う。
仕組まれた脅迫劇が臆病者たちを笑い、不器用な者たちに
愛の手をさしのべる。虚無的な主人公が印象深いサラリーマン
ミステリ。こんなサラリーマンいない。
「あいつを殺して」
堅い筈の銀行員が美人局に引っ掛かり、その女の虜にされていく。
ヒモの殺害を唆し、懇願する女。
そして結成される「穴兄弟」たちの殺人連盟。
果して、殺人プロットの行く末に待つ裁きとは?
渇いたユーモア倒叙ミステリ。意外な展開と痛快な逆転が楽しめる。
「春の水浴」
体力自慢の女たらしが、ピクニックに誘われた時、
女たちは競いあって、男に抱きついていく。
昼飯時、春の湖に待つ、復讐の顛末とは?
尾篭で残酷なクライム・ストーリー。男の勝手な思い込みを
笑い飛ばす一編。
「コミック三編(「酔った仲間」「憎いやつ」「悪運」)
ボスの女に手を出した仲間の始末を命じられた男たち。
その酔いどれ道中を会話のみで支えた「酔った仲間」
靴磨き少年の純愛とささやかな復讐を描いた「憎いやつ」
警察につかまりたい男のトライアル&エラーを綴った「悪運」
「酔った仲間」がベスト。

というわけで「おとなしい妻」は怖いということが
よくわかりました。
39. 2004年11月04日 07時31分05秒  投稿:庵本譚 
庵主です。
休日出勤の上、11時間パソコンと格闘して
最寄り駅に向う途中で、新たなリサイクル系の
古本屋を発見しました。
おお、神様。ありがとうございます。
目の覚めるような掘り出し物はなかったのですが、
文庫化を待っているうちに目録から消えてしまった
ジョナサン・キャロルの第2短篇集
「黒いカクテル」帯付きを300円でゲットできました。
なによりの御褒美です。

読み終わった本は幻冬舎から出た麻耶雄嵩の「螢」。
名前も変換しにくければ、題名もでてきやしない
というぼやきが聞こえてきそうな旧字体の「螢」です。
狂気の天才バイオリニストが、配下のアンサンブル
全員を惨殺した館「ファイアフライ館」。
オカルトスポット探訪がテーマの学生サークルが集う時、
新たな惨劇の幕は既に上がっていた。
徘徊する死美人、滅びゆく主宰者、封印されたリッパー
嵐の中、孤立する館に螢はその韻律を刻み、
壊れたRPGの果てに超絶のロジックがコーダを奏でる

ああ、びっくりした。
まだこんな手が残っていたのか、と思わず頭から読み返し
たくなるような幕切れでした。
この隠れロジックは巧い!「11枚のとらんぷ」並み。
これは今年大量に輩出された重厚長大新本格新作の中でも
頭一つ抜けている感じがします。
惜しむらくは、サプライズに奉仕するため、重要人物の
異常心理が全く説明されずに終わったところ。
あと、作者独特の後味の悪いエンディングもなあ。
また自社出版物しか持ち上げない幻冬舎の帯も問題。
しかも、誰やねん、「ジョニー」って?
それでも快作と呼ばざるをえません。はい。

[NAGAYA v3.13/N90201]