黒猫荘
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MAY茶房「ミステリ談話室」
オーナー:MAY

本に関する談話室です。

  141〜144件 
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1123. 2002年08月14日 18時14分27秒  投稿:SAMANA 
16号室SAMANAです〜。

 『朱色の研究』 有栖川有栖氏 読了

  国内ミステリ作家の中で、書かれた作品の「本格度」に私がと
  ても期待し、信頼している作家さんの一人に有栖川有栖さんが
  います。その有栖さんの火村長編ミステリ。
  結論から言えば「大満足」の一作でした(笑)。

  前半部のトリックと後半部のロジック、少し本格パーツが分離
  してるように思えますが、当然のことながらプロットは全体に
  通じており、同様に全体に通じている犯人の「動機」が何より
  もいい味だしてます(解説にも書かれてますが)。

  世間一般の味気ない常識から考えれば、あまりにも自己中心的
  な「動機」なんでしょうけれど、自己中心的でおセンチな私は、
  不覚にも深く納得してしまいました(笑)。
  また、本格ミステリの「袋小路の要素」としての代表格の一つ
  だろうと私が勝手に考えてる「裏の裏の〜・・裏をかく」行為
  が、動機とリンクさせて一つの回答を提示している仕組みにも
  感動しました。

  読後、「本格」の盛り具合と、ある意味性別の違いを感じさせ
  るような「動機」において、笹沢左保の名作『霧に溶ける』を、
  読後、なんとはなしに連想いたしました。
  あそこまでの連発技じゃないけれど、それでもしっかり本格し
  てるのみならず、若竹『八月の降霊会』とは別の路線ながら、
  本格の「進化形」として位置付けしたいこの作品。
  派手さはないけど、本格の基本が押さえられた秀作として歓迎
  したいと思います〜。

そいでは!!
1122. 2002年08月12日 13時16分22秒  投稿:SAMANA 
16号室SAMANAです〜。

 『八月の降霊会』 若竹七海史 読了

  カー・綾辻・今邑の「あれら」の作品を彷彿とさせる作品です。
  いわゆる「あのタイプ」のミステリですけれど、この物語は「あ
  のタイプ」のストーリーが進化してきたすえの一つの「成果」と
  して、私は「とても面白い」と言いたいですね(笑)。

  裏表紙の梗概には「サスペンスフル本格ミステリー」と書かれて
  いました。正直、サスペンスとはまた違うと思うんですが、この
  サスペンスにあたる部分を読んでいる間は、話の輪郭がつかみづ
  らく、ぼやっとした印象しか持てませんでした。人間関係を追う
  のに忙しく(結局把握できませんでした)、また個々の現象も意
  味がありそうでなさそうで、派手な出来事もおこるんですけど、
  今いち把握しづらかったです。

  んでも、第二部の「手記」あたりから興にののりはじめ、第三部
  からは、「うわ。こういうことだったのか!」「ほんでこう始末
  つけていくんやな・・」「え。実はこんなことでもあったんか」
  「ふえ。でもこうなってくの?」「あわわ。これはほんますごい
  すごいぞ!」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・。
  結果、かなり堪能させていただいたと断言いたします(笑)。

  「あのタイプ」の進化形、ある意味、「一つの到達点」ではない
  かと私は思ってます。
  実は有栖川有栖さんがこういう進化形ミステリを書いてくれるん
  じゃないかと思ってたんですが、若竹さんが形にしてくれました。
  他作家の他作品でもいろいろ書かれてるとは思うんですが、ここ
  まで本格ミステリが有効活用され、かつ、○○○として成立して
  いる作品は、まだ私は読んでいないと思います。

  P.427(文庫版)の「5」以降なんて、ほんとどんな環境で若竹さ
  んが書き上げたのか、教えてほしいです。トランス状態になって
  ないと「本格ミステリの呪縛」にとらわれてなかなか書けないよ
  うに思うんですけど・・・(苦笑)。
  「晩御飯の材料を考えながら書いた」とか言われたらそれはそれ
  でかなり恐いですが(汗)。

そいでは!!
1121. 2002年08月09日 12時58分16秒  投稿:SAMANA 
16号室SAMANAです〜。

 『白紙の殺人予告状』 由良三郎氏 読了

  久々に読んだ由良作品。
  一読驚嘆!! 今までの作品で一番由良さんらしさが爆発してい
  る、まさに「快作」でありました!!
  ただ、ほとんどの人にとっては「怪作」なんでしょうけれど(汗)。

  どのキャラも由良さんの人柄がにじみでてるようで、何とも憎め
  ません。全部「いい人」に見えてくるから不思議です(笑)。
  そんな人達が突拍子もない目にあって、突拍子もない考え方をし
  て、突拍子もない行動に出て、突拍子もない事件にまきこまれて
  いきます。
  で、最後に突拍子もない真実が明かされます。凄いです(笑)。

  ほんまにこんな人間おるか?
  ほんまにこんな行動とるか?
  この主人公、どんな思考回路してんやろ?
  ところどころ、いかにもお爺ちゃんらしい表現がある!!
  警察はいったい何してるんや?
  はちゃめちゃなすぎる展開ちゃうか?

  ・・・そんなこと気にしちゃいけません(爆)。

  由良さん自身は絶対に意識していないと思われるこれらの部分を
  味わって楽しむべきであろうこの作品。
  脱力するか、怒りまくるか、大笑いするか、ほのぼのするか。
  読まれた方の反応がぜひ知りたいです(笑)。
  
そいでは!!
1120. 2002年08月08日 23時12分10秒  投稿:SAMANA 
16号室SAMANAです〜。

 『九つの答』 ジョン・ディクスン・カー氏 読了

  本格ミステリのフェア・プレイ精神を作中で正面からうたった
  ミステリ。正しい解答が明かされる直前に、なぜかこの作品の
  大ネタの見当がついてしまった(しかも当たってた)だけに、
  かなり損した気分になっております。ああ、悲しい・・・(泣)。

  骨格は本格ミステリなんだろうけど、いかんせん活劇ものの匂
  いがきつくて本格テイストを実感するところまではいきません
  でした。でもかなりの「大ワザ」なので、読む人が読めば好き
  なカー作品として名前が結構あがりそうな作品だと思います。
  
  カーの冒険活劇ものも面白いことは面白いんですが、ここまで
  の長さになるとちょっと疲れてしまいます(汗)。オカルティ
  ズムから反転しての本格ものなら、まだ本格テイストを実感し
  やすいだけに、大丈夫だと思うんですけど(苦笑)。

  それでも作中の「註」(特に9番目のもの)で見られる本格ミス
  テリに対するフェア・プレイ精神のこだわりは、読んでいて本
  当に嬉しくなっちゃいますね。
  私は決してそこまでこだわってミステリを読む(読み取る)こ
  とはしない(出来ない)んですが、「ここまで拘ってる人がい
  る」という事実が、とても嬉しいです〜(笑)。

そいでは!!

[NAGAYA v3.13/N90201]