黒猫荘
(mobile版)

[006号] [008号]
[入居者リスト]


MAY茶房「ミステリ談話室」
オーナー:MAY

本に関する談話室です。

  125〜128件 
[HomePage]   ▼ 投稿する

1140. 2002年09月17日 23時05分57秒  投稿:SAMANA 
16号室SAMANAです〜。

『ヴァンパイアの塔』 ジョン・ディクスン・カー 創元推理文庫

 短編集。
 ラジオドラマの脚本9本にクリスマス・ストーリー1本、それに松田
道弘氏による「新カー問答」がおさめられております。

 いやぁ。やっぱりカーのラジオ・ドラマは面白いですぅ!!
聞き手を飽きさせちゃいけないから、内容に無駄がないのにトリック
は濃く、ハッタリもかなりきいていてかなり楽しめる一冊だと思いま
す。『死の四方位』のネタは久々に見ましたけど、やっぱりこういう
のも好きなんだと改めて実感しました(笑)。

 新カー問答にも挑戦しようと思いましたが、やはり未読作のネタバ
レがなされていたので途中で挫折。乱歩のカー問答に続いて、やはり
こちらも読まないことにしました。
 新旧カー問答を私が読む日は、果たして本当にやってくるのでしょ
うか(爆)?

そいでは!!
1138. 2002年09月14日 10時57分29秒  投稿:SAMANA 
『翼ある蛇』 今邑 彩 角川ホラー文庫

 長編。
 同じ角川ホラー文庫からでている『蛇神』の続編です。
 いや、参りました。まさかシリーズものになってるとは思いも
しませんでした(汗)。

 今作に限っていえば、伝奇部分は資料の羅列で終わってるように
思えてさほど面白みを感じませんでしたが、その後の展開は、やや
テンポがゆるやかであるものの、だらけた感じではなく、最後のい
かにもミステリ的なツボがおさえられた真相も含め、とても楽しむ
ことが出来ました。
 地道な捜査部分は前作を覚えていなかったのでかなり損をしたよ
うに思います(泣)。もし本作を読まれるなら、前作とあまり間隔
をおかずに読まれることを皆様におすすめいたします〜。

 このシリーズ。シリーズものにすることによって、ひょっとした
ら今邑さんの代表作といえるほどのレベルのものになりそうな予感
がしてきました。 大風呂敷がまだたたまれていないので、きっと
まだ作品はこれからも書かれていくはずです。
 京極作品とはまた違った、今邑流の伝奇本格ミステリ大作が生み
だされるかもしれないことに、少し期待をふくらませてます(笑)。
いや、これほんとにそう思いますよ。

そいでは!!
1137. 2002年09月11日 14時39分22秒  投稿:SAMANA 
16号室SAMANAです〜。

 『ループ』 鈴木光司氏 読了

  『リング』『らせん』に続く3部作の最後が本書。先に各作品のエ
  ピソードをおさめた短編集『バースデイ』を読んでおりましたが、
  やはり先に読んではいけなかったようです。
  これから鈴木作品を読む方は必ず、
   『リング』→『らせん』→『ループ』→『バースデイ』
  の順に読みましょうね(笑)。

  『リング』は、とてもよく出来たホラー。
  『らせん』は、そのホラーを科学的に検証し、最終的にはとんで
  もない結末に着地させたセンス・オブ・ワンダー(不思議な物語)。
  そして今作の『ループ』は、神の領域にまで踏み込んだSFとな
  り全ての道筋に合理的説明がなされ、結果、ホラーとSFが奇跡
  的に同一世界におさめられた、良質のエンタテイメントとなった
  のではないでしょうか。
  
  ただ、『ループ』のSF的解釈に無理なく読者を導くための手法
  だと思われる、超自然を使った神秘的体験の記述に新興宗教色を
  感じ、ちょっと乗り切ることができませんでした。神の領域にか
  かるんだから、そういう色がでるのは仕方のないこととは思うん
  ですが・・・・(汗)。
  また、肝心のSF的解釈に関する記述も少し弱いように感じまし
  た。小松左京さんや堀晃さんだったらどういう風に展開・記述し
  ていたか、非常に気にかかるところでございます(笑)。

  とはいっても、やはりホラーからSFにまで昇華させたその圧倒
  的なストーリー展開は素晴らしいです。
  まだこのシリーズを読んでない人は、もし読まれるならば『バー
  スデイ』を含めた4作を、別作品を間に読むことなく、一気に読む
  ことをお勧めします。
  ホラーを期待、SFを期待、といった限定はせず、あくまでエンタ
  テイメントを楽しむといったスタンスで望んでいただければ幸いで
  す(笑)。

そいでは!!
1136. 2002年09月09日 23時07分50秒  投稿:SAMANA 
16号室SAMANAです〜。

 『殺人喜劇のモダン・シティ』 芦辺 拓氏 読了

  以前、加納一朗『浅草ロック殺人事件』の感想で私は以下のような
  ことを書いてました。

  >昭和初期の全般的な風俗描写という点では、長坂秀佳『浅草エノ
  >ケン一座の嵐』と同等、もしくは超えているようにも感じました。

  >この当時の浅草のように、昔の大阪でもかなり賑やかで活気があ
  >ったんじゃないかとように思うんですが、誰かそんな時期の大阪
  >を舞台にしたミステリを書いてくれないかしら?
  >大阪びいきの私は、たぶん読むんですけど(苦笑)。

  今日、思いがけなく、そしてこれ以上ないというほど完璧なレベル
  で、私の願いがかないました。
  私の望んだ世界が、ものの見事に形になった作品。それがこの『殺
  人喜劇のモダン・シティ』であります。
  いやはやなんとも・・。本当に恐れ入りました、芦辺様(ぺこり)。

  この作品を書くにあたってはきっと膨大な資料数にあたられていると
  思います。文化・風俗のみならず、当時の「大大阪」の街並みや都市
  計画、ひいてはモダン・シティに暮らす人々の動向についても記述さ
  れてるんですから。これ、すごいことだと思います。

  文庫版P.62の11〜18行目に書かれてる内容なんて、そのたぐいの専門書
  の文章でないと触れられてないように思いますし。
  膨大な数の調査に疲れながら、それでもなぜか嬉々とした様子で「阪急
  古書のまち」あたりを歩き回ってる芦辺さんの姿が、どうしても妄想で
  浮かんでしまい、頭から離れません(笑)。

  そこまで綿密に調べられて構築されたモダン・シティはまさに圧巻。
  この作品。ミステリのみならず大阪の歴史を生き生きとかえりみること
  ができる、一般者向け文献としても非常に価値のあるものではないでし
  ょうか。

  あ。ミステリのみならずと書きましたが、ミステリとしてもすごく良く
  出来た作品だと思います。良質なネタ(盲点や文書やアリバイ)が惜し
  げもなくぶちこまれてますし、最後は作品中のあちこちに張り巡らされ
  た記述に「うわぁ!」っと驚けますし、探偵小説好きには「もーたまら
  ん!」と思われる記述がいくつもありますし(笑)。活劇要素も充分、
  ラストもほんのりほろ苦く、まさに「エンタテイメントな一作」ではな
  いでしょうか?

  惜しむらくは、謎を解こうと読む人にとっては、ちょっとした素養がな
  いとむつかしいかな? といったところでしょうか。んでもこれにして
  も「本格」の着眼点を駆使すれば、見当つけることは出来るものだと思
  います。

  最後に。NHK大阪放送局によるこのミステリの忠実&リアルなドラマ化を
  切に切に望みます!!

そいでは!!

[NAGAYA v3.13/N90201]