黒猫荘
(mobile版)
[078号] [080号]
[入居者リスト]
THE TELL-TALE HUT
オーナー:庵本譚
WELCOME TO “THE TELL−TALE HUT”
← 121〜124件 →
[HomePage]
▼ 投稿する
95. 2005年01月08日 16時26分19秒
投稿:青縁眼鏡
こんにちは。55号室青縁眼鏡です。遊びにきました。
1日1冊ペースでミステリを読んでいらっしゃるなんて、すごいですね。目標にしたいです。
94. 2005年01月08日 12時14分39秒
投稿:庵本譚
庵主です。
昨年もなんとか一日一冊ペースで本を読む事ができました。
(上下巻が多かったので一日一作品とはいきませんでしたが)
新本格第一世代の復活やら、幻の本格作家の商業誌デビューやら
新たな翻訳探偵小説叢書の登場やら、犬は勘定にいれないけるべろすやら
ミステリ的にもえすえふ的にも話題が尽きない年だったといえるでのは
ないでしょうか?
そんな新作・旧作とりまぜて、一応、わたしなりの読了本ベスト12を
順不同で掲げておきます。
「無法地帯」大倉崇裕(双葉社)
最強オタク伝説の幕開けを告げる理想の軽ハードボイルド。
文句なしの傑作です。無理解な世間に対してこれが本当のオタクなのだ!
と秋葉の中心で愛を叫びたいです。
虎だ!虎だ!お前は虎の穴で本を買うのだ!
「貧者の晩餐会」イアン・ランキン(ポケミス)
作者の小説巧者ぶりを味わい尽せる贅沢なツイストのフルコース。
この作品集で作者を見直し、リーバスものの大長編も何作か読む気に
なりました。(読んだ長編のなかでは「死せる魂」が好みでした)
「魔術師」ジェフリー・ディーヴァー(文藝春秋)
リンカーン・ライム最大の敵の登場。逆転のインフレは青天井。
全編これツイストの固まり。裏をかく事に命の全てを掛ける真犯人像は
まさに21世紀の怪人二十一面相であります。
小林少年役の女性魔術師も良い味を出しておりました。
「唾棄すべき男」ジューヴァル&マール(角川文庫)
今年は月1冊ペースでマルティン・ベック・シリーズを読了いたしました。
その中から、一番犯人に感情移入したこの作品を代表で。衝撃のラスト
シーンが、これまたいいんですよ、うん。
(今年は、某慟哭作家が、短篇でこのシリーズのオマージュをやっていて、
シンクロニシティーに驚きました)
「ナイン・テイラーズ」ドロシー・セイヤーズ(創元推理文庫)
ようやく「学寮祭の夜」ともども読み終わりました。なるほど
これぞクラシックであります。読了後も、頭の中で幸せの鐘が
でぃーんどぉーーんと鳴り響きます。
「時の娘」ジョゼフィン・ティ(ハヤカワミステリ文庫)
非の打ち所のない知的遊戯。教養と探偵眼を試されるとびきりの
オモシロ読み物でした。やはり「魔性の馬」を蹴落としてでも
オールタイムベストにあげなければならない作品でしょう。
「ぼくのキャノン」池上永一(文藝春秋)
面白さに衒いのない作者が贈る沖縄戦への鎮魂のスラップスティック。
スーパーナチュラルは控え目ですが、どっこい、キャラの立たせっぷり一つで
エンタメ読みの予想を裏切り、期待に応える快作です。
キャノン様、万歳!!池上永一様 万歳!!
「6ステインズ」福井晴敏(講談社)
長いばかりが能じゃない、ところをみせた作者の隠し玉集。
短い分、作者の作劇法がよく見えます。格好良さの見本市。
「津町湘二作品集」津町湘二(京都大学推理小説研究会)
幻の同人誌作家の集大成。「巽昌章」としての鋭い評論の裏には
このような実作でのトレーニングが隠されていたのであります。
天城一ばかりが目立った一年でしたが、こちらもも商業ベースで
復刊するだけの値打ちがある作品集でありましょう。
トマス・フラナガンを彷彿とさせる中世ものの本格推理の連作が
凄いです。
「武器と女たち」レジナルド・ヒル(ポケミス)
昨年は、精力的にダルジールシリーズの積読を消化しましたが、
その分厚い教養が最も軽やかにストーリーに馴染んでいたのが
この作品でした。骨太のフェミニズムがなんとも心地よいお話です。
「天使の帰郷」キャロル・オコンネル(創元推理文庫)
この作品を読むために、マロリー・シリーズを固めて読みました。
女性ハードボイルドの歴史的傑作として断然オススメします。
この後に続編を書けるのが不思議なほどの魂の燃焼がここにはあります。
「ボートの中の三人男」ジェローム・K・ジェローム(中公文庫)
今年は何故かこの作品に因んだミステリやSFの出版が相次ぎました。
で、コニー・ウィリスやロナルド・ノックスやピーター・ラヴゼイの
「本歌取り」を読む前に「一応原典を」と手に取ったところ、丸谷才一の
名訳とも相俟って、爆笑と苦笑に翻弄される幸せな読書時間を体験する
ことができました。これが、英国の伝統の厚みといふものなのですね。
青年諸君、コックス云々する前に、まづはボートにのりたまへ。
(お、我ながら綺麗なオチだ)
新作に絞れば、上記以外に
「紅楼夢の殺人」「キマイラの新しい城」「百器徒然袋 風 」
「暗黒館の殺人」「生首に聞いてみろ」「サイコトパス」
「誰でもない男の裁判」「白い果実」「蛇の形」「閘門の足跡」
「イデアの洞窟」「サム・ホーソンの事件簿3」「幻のハリウッド」
「奇術師」「荊の城」といったところが印象に残っています。
あと、ベスト映像作品はNHKBSで放映された「名探偵モンク」で決まり。
とりあえずそんなところです。
93. 2005年01月07日 06時47分58秒
投稿:庵本譚
庵主です。
おくればせながら
新年のご挨拶を申し上げます。
ここ1ヶ月ほど、ふと気がつくと口ずさんでいる歌があります。
NHK教育「ドレミノテレビ」のテーマソング(?)
「どれみみずんど」
エスニックな音階と南国風リズムに
エンリコ・モリコーネっぽい合いの手が入る、
歌詞はぶっとんでいるかとおもうと
We are the Worldだったりする、
踊っているUA(ううあ)は、ぎんぎらな鶏の格好してるし
珍しいキノコ舞踊団の振り付けがまたなんとも「妙」
あまりのインパクトの強烈さに、
家族で一日一回は踊っているかもしれません。
昨年末からの読了本は以下の通りです。
12月28日「天城一の密室犯罪学教程」天城一(日本評論社)
伝説の寡作家による本格推理ショートショート集。
同人誌バージョンで大体読んでいるために事実上の再読でした。
書かれた年代を踏まえて読まないと「ありゃりゃあ」で
「何を今更」なトリックが居並んでいます。
この作品集がこのミスでも入賞したというのは、
ひとえに作者への敬意故でありましょう。
グランド・マイナーに捧げるエールとでも申しますか。
12月29日「隠花平原(上)」松本清張(新潮文庫)
12月30日「隠花平原(下)」松本清張(新潮文庫)
脂の乗り切った頃の作者による長編大凡作でした。
なるほど、これは連載以降20年以上単行本にならなかった
だけのことはあります。
静かな導入部と素人探偵による探索行が進む上巻は
まずまずなのですが、下巻に入って行き当たりばったりで
ご都合主義の因縁が縺れ、終盤に入って扇情的なまでに
ばたばたと殺されるメインキャラクター、
そして、驚愕の真犯人とその動機!
とどめは怒涛の「告白書」でこじつけの一本締め。
題材が、同族金融機関の闇や、絵画市場の暗部、
新興宗教の裏側といった今の時代にも堂々と通用するテーマな
だけに、腰をすえて書き込めば、清張中期を代表する作品になった
のではないかと残念至極です。
まあ、どんな選球眼のいい4割バッターにも6割の凡打はある、ということで。
12月31日「終戦のローレライ(上)」福井晴敏(講談社)
1月1日「終戦のローレライ(下)」福井晴敏(講談社)
「戦後60年」がキーワードとなる2005年の夜明けを迎えるにあたり、
年越し本としてスーパードレッドノート級の潜水艦架空戦記を召集してみました。
里程標的大傑作「亡国のイージス」に比べて、よりSF色が濃厚で、
骨だけ切り出せば、未来少年コナンか、Vガンダムを思わせる
「ボーイ ミーツ ガール小説」でありました。
ただ、キャラクター造形の巧さは認めながらも、潜水艦戦エンタテイメントと
しては、「沈黙の艦隊」で描きつくされた世界の焼き直しといった印象に終りました。
「沈黙の艦隊」を読んでいなければ、更に評価は上がったと思いますが、
この書を手に取る人の8割以上は、かわぐちかいじの読者のような気がします。
アイデアには星野之宣の処女作も入っているかもしれません。
エピローグも冗長で、作者の思い入れだけが滑ってしまった感を免れません。
「亡国のイージス」が万人に薦められる作品なのに対して、読者を選ぶ
作品といえましょう。
1月2日「セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴」島田荘司(講談社ノベルス)
「占星術殺人事件」直後の事件として描かれたクリスマス・ストーリー。
エカテリーナ2世の放埓な性談義から昔語りに入った途端、御手洗の人格が
ぐんにゃりとワープするのが笑えます。なるほど、昔の御手洗はこんな感じで
石岡君を振り回すばかりでしたよね。御茶ノ水の教会で起きた奇妙な一家の
振る舞いから、事件を洞察していく過程は圧巻の一言。得意の都市論も交えながら
綴られる物語は、奇跡を呼ぶ「宝捜し」へと収斂していきます。邪を挫き、
聖なる想いを助ける奇矯な騎士物語。いい仕事です。
1月3日「死の笑話集」レジナルド・ヒル(早川書房ポケットミステリ)
ポケミス史上最大ページの新作に挑んでみました。これはあらゆる意味において
「死者との対話」の後日談で、この物語でようやく「言葉に淫した犯罪絵巻」が
完結します。「ワードマン」の魔手から逃れたカップルの物語、論壇に立つ
元犯罪者とパスコーの葛藤、冤罪疑惑に追われながら「大仕事」に挑むダルジールたち、
文芸の魔を散りばめながら綴られる3つのタペストリーがやがて渾然一体となって
怒涛のクライマックスに流れ込んでいく悠々たる筋運び。やはりこれはヒルにしか
書き得ない小説でありましょう。果してこれを推理小説と読んでいいものなのか
どうなのか、戸惑いを感じます。キャラクター小説もここまでくれば文学。
教養の厚みに言葉を失う逸品でした。
1月4日「目撃者」中町信(講談社文庫)
でました、温泉で地震!お得意の叙述トリック炸裂の連続殺人譚。
はっきり申し上げて、素人探偵夫婦のリアリティーはゼロで魅力もゼロ。
中盤の密室トリックや、ダイイングメッセージは「ためにする」ガジェット。
それでも、この作品の叙述部分に秘められた一発逆転ネタには、久々に
一本とられました。改めて題名の意味に唸らされた次第です。
中町信ファンの評価は高いだろうなあ、と感じました。
1月5日「ニワトリはいつもハダシ」火浦功(角川文庫)
年賀状に使ったので、とりあえず読んでみました。すちゃらかSF作家が
缶詰になったホテルで遭遇したニワトリ連れの殺し屋、そして死体と謎の
メッセージ。はたして締め切りは間に合うのか?一攫千金はなるのか?
金のようかん、銀のみみ、探偵はいつもかけあし、ニワトリはいつもハダシ。
「軽ハードボイルド」と言うと「軽ハードボイルド」ファンに叱られそうな
すちゃらか小説。なんと連載時の結末は更にトンデモだったようで、こんな
いい加減な仕事が仕事として罷り通っていたバブルな時代の墓標としての
値打ちしかない作品でありましょう。30分で読み飛ばせます。
1月6日「上高地の切り裂きジャック」島田荘司(原書房)
内臓を持ち去られた美人女優、落ちそうで落ちない容疑者、おぞましい残滓が
語る因縁のドラマに御手洗の喝が飛ぶ表題作。山の手の屋敷の地下で起きた
不可能な餓死事件と鉄道の幽霊譚が交錯する悲劇「山手の幽霊」の二編を
収録した中編集。いささか野卑な表題作よりも、作者らしい奇想と悲劇性が
光る幽霊譚に軍配をあげたくなります。トリック先行でありながら、きちんと
感涙も絞らせるプロット力に脱帽であります。
とりあえずそんなところです。
今年もよろしくです。
92. 2004年12月28日 06時33分47秒
投稿:庵本譚
庵主です。
この終末もとい週末は、風邪で死んでました。
熱にうなされ、活字を受けつけない身体になり、
どっぷりとアニメ(ガンダム)三昧してしまいましたとさ。
SAMANA様
私も「キングとジョーカー」は傑作だと思います。
私が読んだディキンスンの中で、
ジュヴィナイルを除けば唯一眠たくならなかった作品です。
こういう書き方であれば、日本でも「天皇探偵もの」が
書けるのではないかと思ったりもしました。
仮面ライダー剣ネタなら「カテゴリー・キングとジョーカー」
というヤオイ本がだせます。
いずれにしても探究するだけの値打ちのある作品だと思います。
ホント、これを復刊し、続編を新訳して、セットで出す勇気ある出版社は
どこぞにないものでしょうか?
通りすがりのM様
爆笑感謝です。
元ネタは「色事根問」とも「いもりの黒焼き」とも
呼ばれるネタで、10までいくと少しダレますが、
とりあえず「五精、六おぼこ」ぐらいまでは
作れると思います。事情が許せば失笑覚悟で
ご披露いたします。
金曜日と月曜日に読んだ本は
原書房のホームズアンソロジー「ワトソンの災厄」と、
文春ミステリ10の第1位、双葉社の雫井脩介「犯人に告ぐ」。
前者は、生真面目で可もなし不可もなしのパスティーシュが並ぶ中、
ホームズ役者が劇場で起きた盗難事件を解決せざるを得ない立場に
追込まれるという設定が素敵な「うろたえる女優の事件」が
印象に残りました。最後まで笑わせてもらえます。
後者は「劇場型犯罪に対するには劇場型捜査だ!」というおバカな設定を
こてこての浪花節と警察裏話で、感涙サスペンスに仕立てた一作。
悪くはないのですが、新宿鮫あたりにくらべて、やや腰高な印象を
うけました。「チョンボの小川」という道化まわしの使い方など、
もう一押し「泣き」をいれてもいいのになあ、と思いました。
ここは「笑いどころ」、ここは「泣かせどころ」というト書きが
透けて見えるというべきでしょうか。
ただ値段分の仕事はしてますので、一読の値打ちはあると思います。
とりあえずそんなところです。
[NAGAYA v3.13/N90201]