黒猫荘
(mobile版)

[001号] [003号]
[入居者リスト]


探偵作家・大阪圭吉の掲示板
オーナー:小林文庫


  113〜116件 
[HomePage]   ▼ 投稿する

313. 2001年11月08日 17時00分27秒  投稿:てつ 
はじめまして、まさか大阪圭吉に関するHPがあるとは。
幻影城世代としては、本当に嬉しい限りです。

最近発売された2冊の文庫はファンとして嬉しい限りですが、
25年間気になって仕方が無かったのが、出征前に甲賀三郎に預けたと言われている
長編の所在。行方知れずと言われているが本当に存在しないのか?
誰かに預けられたまま60年間何処かに埋もれているのではないのか。
また、幽霊妻が戦後、雑誌に掲載された際、「未発表原稿」の中から
選ばれたとあった。と、言うことは、他にも作品が!

どこかの土蔵の中から、古いフィルムのようにひょっこりと
大阪圭吉の作品が出てこないものだろうか。
312. 2001年11月08日 15時41分32秒  投稿:松村武 
>群竹さん
早速のご回答、有難うございます。「反戦思想で日本脱出を企てる」・・・、そんな華々しい(?)経歴があるとは知りませんでした。
プロレタリア文学については、僕も大して語る資格もないのですが、葉山嘉樹や岩藤雪夫、平林たい子など名だたるプロレタリア作家が「新青年」に作品を発表しているし、アナーキズムであれ、マルクス・レーニン主義であれ、分化されて間もない当時の左翼運動では、互いに影響を受けあっていたようで、大阪圭吉も、接触する機会は多かったのだろうと思いますね。
彼自身は、その点について何も書いていないようですが、そんなことを語るのは非常に危険な時代だったから仕方がないのでしょうね。作家となり、表面上、左翼思想は消えてしまっていても、丁寧な取材と描写による「労働の現場」を題材にした探偵小説を書くことで、精一杯の抵抗を示していたのでは、とも思います。
例えば「気狂い機関車」の真相なども、「労働災害に対する弱者の抗議」だと僕は解釈しました。あの作品のメイン・トリック、どうも良く分からないメカニズム(笑)を読むたびに、僕の頭には、チャプリンの映画「モダン・タイムス」に出てくる、故障した自動食事機に叩きのめされるシーンが浮かんできてしまうのです。機械文明を皮肉った「モダン・タイムス」と同様の風刺が「気狂い機関車」にもある、とは断言できませんけど、「モダン・タイムス」は昭和11年製作で、「気狂い機関車」は2年先駆けている点は注目して良いと思います。

なお小林多喜二「蟹工船」は、「戦旗」誌の昭和4年5、6月号に掲載されています。これはネタバレに近くなるので一部伏せ字にしますが、「蟹工船」には、僚船のSOSを聞いた船が××する件や、ある船の××を××して、××にしてしまう、という話が出てきます。この辺りに「動かぬ鯨群」に近いものを感じ、「ひょっとして、大阪圭吉は『蟹工船』を読んで、アレを思いついたのでは?当時、これを読むには、かなりの度胸が必要だから、そうとう影響を受けていたのでは?」などと、突拍子もないことを思いついたものです。
また、瑣末な疑問やら素っ頓狂な思いつきを書き込ませていただくかも知れませんが、どうぞ宜しくお願いします。

311. 2001年11月08日 12時06分34秒  投稿:群竹 
松村武さん はじめまして。

 プロレタリア文学というのは、どうでしょう、当時の作家たちはそれなりに接していたのではないかと、勝手に想像します。ま、こんなことでは、松村さんのご質問のご趣旨には満足しないものでありましょうが。

 一応、豊橋の夜間商業高校を退学になった理由ですが、

−−圭吉が左翼思想に興味をもち、「左」がかった言動によったとか、また、同級生2人とブラジルに雄飛することを考え、日本脱出をはかって名古屋駅で保護されたためだとも言われている。また、長男の鈴木荘太郎氏は「反戦思想で日本脱出をくわだてた」と語っている−−

というような感じでして、「左翼思想」にはそれなりに、というよりは、人並み以上に興味はあったようです。

 わたしは、プロレタリア文学についてはくわしくないのですが、学生時代のテキストなどを見ると昭和8年の小林多喜二の虐殺を一つのプロレタリア文学の退潮の時期としておるようなのですが、昭和8年といえば圭吉は21歳で「白鮫号」を発表した年にあたります。また、昭和7年に懸賞に応募した「人喰ひ風呂」には、それほどプロレタリア文学的な匂いは感じられません。

 いっぽう、同時期の「カンカン虫殺人事件」は、現代人の私からみると、「カンカン虫」のような仕事の人にスポットが当てられているということだけで、「プロレタリア」という言葉を連想してしまいます。あるいは「坑鬼」とかも。

 力不足で、こんなことしかお答えできません。なにか、松村武さんのお考えがあれば、お伺いしたいです。

310. 2001年11月07日 14時30分09秒  投稿:松村武 
初めまして。少々お尋ねしたいことがあって書き込ませて戴きます。
「13の密室」シリーズ以来、国書刊行会版を経て現在に至る大阪圭吉ファンですが、今回の創元推理文庫版を再読していて、巽氏の解説で「労働の現場へのこだわりを示し続けた・・・」との一節があったことで思い出したことがあります。
それは「動かぬ鯨群」で最重要のポイントとなっている例の件が、かのプロレタリア文学の名作、小林多喜二「蟹工船」でもちょっと似た形で扱われている点です。また「坑鬼」の書き出しなども、左派系の「改造」誌に掲載ということもあってか、意識的にプロレタリア文学の手法が取り入れられているようにも思えます。
そして権田萬治「日本探偵作家論」所収の「大阪圭吉論」には、「社会主義、特にアナーキズムに関心を寄せていた」との一節があります。
これらの点からもプロレタリア文学が大阪圭吉に与えた影響は少なくないと思うのですが(アナーキズムならボルシェビキの小林多喜二とは対立しますけど)、その辺の事実関係は如何なものなのでしょうか?例えば「戦旗」誌を愛読していたとか。…もしご存知の方がおられましたらご教示願います。


[NAGAYA v3.13/N90201]